月の好い日は窓を開けて

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投稿者:  [2015年 10月 14日 11時 17分] ---- ----
良い点
鴇と塔子の関係性。その構築のしかた、変化のしかたがとても自然です。
気になる点
いろいろ気になる点が出てしまい、物語に集中できない部分があったこと。(「一言」で詳述します)
一言
初めまして、鹿紙路(しかがみ みち)と申します。

ずっと月の光が照らす無機質な部屋のなかにいるような、静謐な雰囲気に浸れました。

大きな事故、肉親の度重なる死、肉体を食べるということ、血を分けるということ……。ショッキングな事象が出てきますが、わたしが感じたのは、これらはだれの人生にでも起こりうる、通過儀礼の暗喩なのかなあ……ということでした。

主人公と塔子の関係性は、ふたりの性格設定(鴇がまわりに壁をつくり、冷静。塔子は誘惑者のようでありながら、その実真摯)もあいまって、とても自然に感じられました。
抱き締める、髪を撫でる、などの動作や、会話の内容は、ふたりがほぼ恋人同士のような描写ですが、性的な要素を排除されていて、その分暗喩の役割が濃くなっているように感じます。

喪って、傷ついて、それでも思い続ける、思い続けてもよいのだとわかる、といううつくしいラストシーンでした。


さて、気になった点ですが。

(1)文体
どうにも十代の女性には似つかわしくない文章で、これは回想なのか? かなりあとになってから記録したもの? それがストーリーになにか関係がある? と思ってしまい、気が散ってしまいました。同義語を繰り返す表現が多いのも、主人公の性格と乖離しているように思えて、「??」となりました。

これは鵜狩様の小説を初めて読むせいかもしれませんが……。

(2)黒部の行動
塔子の死体を確認しなかったのは、彼の行動原理から言って不自然じゃないかなあ、と思いました。


最後に誤字脱字の指摘を。
「氷解」
 入院中に病室で見た、鏡の中の自分の体が腐れて落ちて、部品ごとに解体され(て)いく夢だ。やがて私は骨だけになり、空っぽの虚ろを晒して自嘲する。

「promise you the moon」
 香奈さんの、他の生還者(の)人たちの話を聞いた時。まず私の胸を過ぎったのは、

「sin after sin」
 それから椅子(を)引きずり私の枕元に設置すると、身を投げ出すようにしてそこに陣取った。

「月の好い日は窓を開けて」
 私と人とを隔てるガラスが、半ばは自分で(←不要?)で張り巡らせたものだと気がついて。そうしたら、ふっと楽になった。

深い縁(淵)


以上です。
鵜狩    [2015年 10月 15日 20時 12分]
 初めまして。そして感想ありがとうございます。
 誤字脱字のご指摘も感謝です。おかしな部分はこちらの意図に沿うように、早速訂正しておきました。
 そして「ずっと月の光が照らす無機質な部屋のなかにいるような」というお言葉を、とても嬉しく思います。
 一番高くて一番さみしい部屋に月影が差している。
 そんな硬質な中にほんの少しだけ温かみがある空気を描こうと四苦八苦した物語ですから、雰囲気に浸っていただけたというのはとても喜ばしいです。
 タイトルと重ねるラストも思い入れのあるものなので、うつくしいと評していただけて何よりであります。
 これもまた感じ取っていただいている事ではありますが、本作は寓意や暗喩を多く含んでもいます。
「テセウスの船」というテーマに取材してトランジスタシス、ホメオスタシスに至るような話であります。通過儀礼もまた、その一部と呼べましょうか。
 鴇、塔子、黒部。
 メインの三人は三様に肉親の死という痛みを経てきていますが、それへの向き合い方はてんでばらばらです。そのいずれもの主張が決して間違ってなどいないと、私的は考えています。

 文体について。
 本作のベースイメージのひとつに、レ・ファニュの『カーミラ』がありまして、その影響から回想手記めいた述懐の体裁になってしまった感があります。文章が硬めなのの一因はここにもあるかもしれません。
 けれどこうした文体を選択した一番の理由は、内向的だが思考を言語化して反芻し、深く様々を咀嚼するという鴇の性格を表す上で最もよかろうと判断したからです。
 自分の中でくり返しくり返し熟考した結論がラストの感慨に繋がるわけで、似た語義の言葉を繰り返すのも、この反復的な特徴を印象づけたいという思惑がありました。いや俺の文章リズム的な趣味もきっとあったりしますけれども。
 とまれこれらが「似つかわしくない」「乖離している」という感覚を生み、ストーリーから気を逸らさせてしまったというのは残念な事です。
 
 黒部の行動について。
 表現、描写の不足で伝わらなかったかもしれません。彼の行動原理は口で言うように「塔子を殺す」ではなく、「自分の責任から目を逸らす」です。全部人の所為にして憎んでさえいればいいのなら、それはとても楽ですから。
 そもそも塔子を殺す事が目的であったなら、念願叶ったその時に自殺する意味がわかりません。
 作中でも「自己完結している」と描写している通り、彼は非常にセルフィッシュな父性です。
 そして彼が娘について語る言葉は、とても一方的な彼の側からだけのものです。
投稿者: 奇々怪々  [2015年 08月 17日 22時 37分] ---- ----
良い点
純粋に面白いです
一言
どうもはじめまして、奇々怪々ともうします、えっと感想らんの他の人逹のように上手く感想を書けないので作中のテセウスの船について、少し書かせていただきますね。
自分的には、それをテセウスの船と誰かが認識していればその誰かのなかでは例えパーツがそう入れ換えされていてもテセウスの船だと思うのです。
少し変わりますが名前は自分を自分だと認識するものであり曖昧模糊としたものをそうだと確定するものだと考えます。
だから上の答えとなります。
長々とした乱文失礼しました
鵜狩    [2015年 08月 18日 21時 19分]
 はじめまして。そして感想ありがとうございます。
 拙作を楽しんでいただけましたとの事で、何よりの喜びです。

 テセウスの船。
 有名なパラドックスのひとつであるこれを、この話では自己同一性の、引いては他者との関係性の基幹として用いてみました。
 仰る通り誰かがそれを同じ船と認識していれば、細部が異なってもそれは同一の概念とされるでしょう。けれどそれは必ず「自分以外の他の誰か」という関係性を必要とするものでもあります。
 名前もまた同様で、仮に世界に自分しか存在しないのなら自らを名づけて他と区別する必要はありません。
 それらを含めて、「入り混じって組み変わって元の船ではなくなって──それでも確かに、私は私自身としてここに居る」という述懐に本作では至ります。
 奇々怪々さんのものと近似の答えで、これが面白く感じていただけた所以かと思ったりもいたしました。
投稿者: 雪麻呂  [2015年 04月 28日 18時 12分] ---- ----
良い点
鴇の心理描写が細やかで、どこか退廃的な美しさを感じました。ホラーというよりは、ホラーちっくな青春小説と言うのでしょうか。なんとなく甘酸っぱくてノスタルジックな味が致しました。鵜狩さんの作品の中でも、就中独特な雰囲気。

あと、各話タイトルが面白いなぁ。
気になる点
悪いというか、ちょっと理解に時間が掛かった点。
塔子さんがログアウトした後、黒部は自決したという解釈で良いのかな? だとしたら、あと一言二言、彼の死を明確に表わす箇所があっても良かったかも。
一言
遅くなりましたが、読了しておりましたので、感想を添えさせて頂きます。
…といっても、陸さんの仰る通り、橘さんの感想が完成されているので(文庫本の巻末解説かとオモタ)、個人的に反応したことをチマチマと書こうかな。

まず、作品のテーマであり、鴇の比喩でもある「テセウスの船」について。
これ、面白い話ですね。シュレディンガーの猫みたいな論理学の一種なのかしら。不安定な場所で安定する、というのは、まさに船の原理そのものですが、これは鴇の精神状態を表しているわけですね。結末まで読んでからもう一度読み返すと、タイトルや文中でのさりげない言葉など、伏線のポイントがバッチリだと気付きます。上手い。
伏線と言えば「段違いの住人」にはやられた! それは言い得て妙だと黒部さんに感心していたら、そういうことかよ! あぁもうこれは、してやられた。サブトンあげる!

あと、黒部が塔子と対峙する場面。
黒部の気持ちは凄くわかるんだけど、私的には塔子さんの言い分を認めざるを得ない。「殺すのではなく、死を長引かせただけ」。彼女のしたことは、延命された本人や黒部のような家族をとても苦しめたことに違いはないのだけれど、じゃあ死んでた方が良かった? と問われると…首を縦には振れないんじゃないかな。
塔子さんの口調から、そんなことを言っている自分を自嘲しているんだろうな、というのは読み取れますが、彼女はたぶん、間違ってない。少なくとも、現在の法の下では。病院での執拗な延命治療と何が違うっていうのさ…。

最後に、鴇と塔子の関係について。
これはちょっと私だけが思ってることで、鵜狩さんが意図したテーマとは掛け離れてるかもしれないけど。一読者の感想ということで。
身も蓋もなく言うと「それなり」だった鴇が塔子との時間で「本物」を手に入れる…という、一種の成長物語という解釈で合ってますよね? で、この二人の間には、百合っぽい遣り取りが幾らか交わされますけど、こういうことって、小学校くらいまでの女子には、よくあることだと思うのです。
というのも、女子って、大人になって異性に関心が向くまでは、基本的に百合的なんじゃないかなぁと。子供の頃の女子って、異常に仲が良かったり(男性は驚くかもしれないが、チューぐらい普通にする子は結構いた)、友人に対する独占欲が強かったり、そういうところがあるんですよね。
でも、それは大人になるとなくなってゆく感情であって。
つまり、鴇は塔子さんと出逢うことで思春期から子供の頃に戻って、やり直しているんじゃないかなぁと。
だから、塔子さんのことは忘れないけど、このまま大人として成長して、同性愛には走らずに、素敵な男性とハッピーエンドを迎えるんじゃないかなぁと。勝手に妄想したりしました。発達心理学で言う「育て直し」みたいな。

なんか長い上に繁雑になってしまいましたね。
…ごめんなさい(;´Д`) 


鵜狩    [2015年 04月 28日 22時 06分]
 感想、ありがとうございます。
「退廃的な美しさ」とか「甘酸っぱくてノスタルジック」とか、今まであまり言われた事がないような気がして喜色満面の鵜狩です。昔書いたものがベースという事で、現行の俺の作風とは少し変化しているのがあるのかもしれません。
 普段あまり各話にタイトルをつけないのですが、今回はそこの話の焦点が明確になるようにと、意図して拘ってみました。「階違いの住人」や「promise her the moon」辺りはその後や意味を知ってから眺めると違う感じに受け取れるかなと、自分でも気に入りのところです。

 黒部の最後について。
 はい、自決したで正解です。「こめかみに銃を当てる」→「部屋の中で脳漿撒き散らすのは迷惑だと思い至る」→「外に出てバーン」ですね。
 言われて見返したら、「黒部さんの死体は引き取る人がいなくて」云々のエピソードを冗長として削った際に、その死に関しての言及まで全部すっぱり切り落としていた模様です。不自然にならぬように言及を付け加えてみようと思います。
 しかし「塔子さんがログアウトした」の表現にしてやられました。なんか剽げてていいですな、これ。

 テセウスの船。
 同一性に関するパラドックスなのですが、これを聞いた時に俺は思ったわけですよ。「『人が変わってしまった』なんて言うけれど、人間の場合はどんなに変化しても同一人物だよな」と。あの偉い発明かも凶悪な犯罪者も皆昔子供だってね、みたいな。
 というわけでその辺りを組み込んで、ご明察の通り、これは鴇の成長物語となっております。

 対峙シーン。
 これまた仰る通りで、正答のない状況です。延命治療に対してリビングウィルが存在するように、何が幸せかは、どうしたいかは、当人に訊かなければわからない。
 しかも塔子も黒部も、自分が思う理想の形を他人に押し付けて、そして駄目にしてしまった人です。そのまま止まってしまっている存在です。
 黒部は自分の過ちを見ないようにして憎しみの薪に変えていますが、塔子は「自分は間違えた」という感覚をそのままずっと抱え込んでいるので、こうして負い目があるような言い振りになっています。
 回答いかんよりも、答える本人の姿勢こそが色濃い場面であろうかと思います。

 鴇と塔子。
 俺は十代の美少年なのでそうした女子心理はまるで存じませんでしたが、なるほど、そういう側面もあるのですね。
 鴇と塔子はお互いの傷を舐めあうような形をイメージしていますし、育み直しというのは確かかもしれません。
 それに鴇は「女性が好き」ってよりも「塔子が特別」って感じなので、いつかそういうハッピーエンドを迎える可能性も十分にありそうです。
 
 そして末尾になりますが、長くて煩雑などとんでもない。
 橘さんの巻末解説もそうですが、こうして人様から自作について熟考していただけるのはありがたい限りです。ご意見とご視点、とても参考になります。
 いつも深く感謝しております。
投稿者: 陸 理明  [2015年 04月 15日 23時 13分] ---- ----
良い点
非常に女性陣の描写がうまい。
男性が書いているとは思えない繊細さがある。
「病いは君から」でも感じられた丁寧な心情描写が少女小説のようでした。
一言
橘塔子さんの感想が凄すぎて、改めて私の書くことがないほどです。
それに対する鵜狩さんの返信でまた多くのことがわかりますし……。
しかし、鴇のように考えすぎて話すのが苦手な人というのはわりとたくさんいますね。
思考の流れが段階を追っているから口さえ開ければわかりやすいのですが……。
鵜狩    [2015年 04月 16日 20時 48分]
 感想ありがとうございます。
 10代の女の子の一人称かつGLという事で、今回の心理描写には大変苦慮しました。なのでそこをお褒めに与れるのはとても嬉しい事です。

>男性が書いているとは思えない繊細さがある。

 今まで隠してたんですが、実は私、22歳の黒髪ロングの女の子(チャームポイントは耳チラ)だったんです。……すみませんなんでもありません調子に乗りましたごめんなさい。
 冗談口はさておき、橘さんの感想は凄いですよね。ここまで読み込んでくださって、もう本当に感謝の念が尽きません。そして本編ばかりならず、他の方の感想や活動報告にも一筆くださる陸さんへもまた、いつも感謝をしております。作品にレスポンスを頂戴できるというのは、やはり喜ばしくてありがたいです。

 話下手。
 俺もこの手のタイプは結構いる気がしています。気を遣いすぎて言えなくなったり、考えすぎてタイミングを逸したりしてるんですよね。 
 話しだすと面白い人が多いので、そういうの勿体無いなと思います。
 俺はわりと後先考えずにぽんぽん物を言ってしまう輩なので、常々聞き上手にならねばと心がける次第であります。
投稿者: 橘 塔子  [2015年 04月 12日 17時 21分] ---- 女性
一言
完結おめでとうございます。
毎日の更新を楽しみにしていました。ホラーというジャンルに収めるにはもったいないほど、繊細で美しい作品だったと思います。

ヒロイン、鴇の心理描写が何と言っても圧巻でした。
内向的で喪失感を抱いていて、ともすれば読み手の実感と乖離した地の文になりそうなところを、十分なリアリティをもって伝わってきました。彼女の言葉で語られる彼女自身の内面は、非常に主観的ではあるのですが、きちんと筋が通っています。理性的な感情描写というのでしょうか、読んでいて違和感を覚えませんでした。それだけに彼女の静かな諦観と孤独感、そして会ったばかりの塔子に惹かれていく過程に説得力がありました。

考えてみれば、周囲との間に壁を感じる鴇の感性は、実はそれほど特殊なものでもないのかなと思えます。自意識のピリピリしていた十代の頃、他人との距離感に戸惑う青春時代、誰もが一度は覚えのある感覚ではないでしょうか(特に小説なんて書いてた人たちには……)。その意味で、この作品は良質な青春小説のようにも感じられるのです。

マンションの窓から入り込んできたもう一人のヒロイン、塔子の透明感が印象的です。たぶん人間ではないのだろうなと思いつつ、鴇の主観のフィルターを通すとまったく邪悪さを感じさせないところがよかったです。いわゆる魔性の女的な魅力にやられる展開はよくありますけど、ここまで優しく包容力のあるヴァンパイア(じゃないけど)は珍しい。二人が異性でなく、また男性同士でもないところが、この不思議な関係性を作り出しているのかもしれませんね……あ、GLタグはつけて正解だと思います(笑)。

一方で、黒部の存在感もまた鮮烈でした。女性二人の優しく静かな世界に土足で踏み込んでくる彼は、まさに残酷なハンターといった感じで……過去話を含めてあまり詳細に語られていないだけに、なおいっそうその不気味さと執念深さが引き立ちました。

塔子の正体、目的を含め、本当は何があったのかということがあえて曖昧にされているところを、もしかしたら物足りなく感じるか方もいらっしゃるかもしれません。けれど私はこの作品はこれで完成されているように思えます。
ヒロインの心の拠り所となる優しい塔子、破綻が決定づけられた塔の上の二人だけの世界、現実的な手段をもってそれを終わらせに来る大人の男性――何やら全部が象徴的で、実は鴇の内的世界での妄想だったのでは、という解釈すらできそうですね。彼女が現実世界に適応できるようになった今、もう塔子は帰ってこないのかなあと。

美しくて妖しい世界観を堪能させて頂きました。今後とも頑張って下さい!
鵜狩    [2015年 04月 13日 07時 08分]
 いつもながら丁寧にして詳細な感想、ありがとうございます。毎日目を通してくださったばかりか、お名前の被りを快く許していただいた件もあって、橘さんに頭が上がりません。
 結局のところこの物語は、鴇という主人公がちょっとだけ大人になる話です。だから彼女に共感してもらえるように、現実から乖離して諦めて孤独で居場所がなくて、それでも理解不能な存在にならないようにと、その性格と心理には心を砕きました。その描写をお褒めいただけて、試行錯誤が報われた気持ちです。
 そしてまたしてもの慧眼ぶりに慄き気味いたのですが、「自意識のピリピリしていた十代の頃、他人との距離感に戸惑う青春時代、誰もが一度は覚えのある感覚ではないでしょうか(特に小説なんて書いてた人たちには……)」。
 この一文がずばりもう正鵠で、実は「それなり」だとかヤジロベーのように揺れながら不安定に安定するだとかのそれは、俺の当時の感覚を下敷きにしていたりします。あ、やめて。痛い子を見る目で見ないで!
 とまれまあその辺りがこの作品が未公開のまま御蔵入りになっていた理由だったりなのですが、もうそこらを咀嚼して上手くやりくりできるであろうと引っ張り出してきたこれが「良質な青春小説のようにも感じられる」と評価していただけたのはとても嬉しくありました。

 その主人公を取り巻く残りのメインキャストふたりへも、それぞれ存在感を感じていただけたようでこれまた書き手としては喜ばしく感じています。
 塔子は色々と矛盾した存在という設定でした。作中で水墨画のようと描写した黒と白の服装もその表れで、異常の現況でありながら誰よりもそれに心を痛めていたり、包容力のある大人の女性のようでいて不器用でひどく脆かったり、信用のならない異物めいていて憎めない人懐っこさがあったりといった具合を意識しています。
 ちなみに活動報告では苗字の由来である諏訪湖であるとだけ書きましたが、その諏訪湖は御神渡り、神様が渡っていく跡が見えるとして有名なところ。つまり渡ってくるもの、ってなイメージを含有しています。
 また女性間の独特の空気(『カーミラ』のそれです)を描いてみたいがこの話の根っこにあったりしますので、GLタグはつけて正解と仰っていただけてひと安心。「この程度ならタグの必要性すらないぜ」とか言われたら意外とダメージが大きかった気がしてます。

 もう一方の黒部は、こちらはある意味駄目な大人の見本です。
 名前の由来は黒部ダムなのはこれから、水をせき止めるもの≒他人と共感せずに止まってしまった人、みたいな。
 作中でも「自己完結している」と述されてますが、自分の意見だけを振りかざして他人を顧みない暴力的な父性であり、最終的に水槽をなくして窓を開ける鴇との対比を意図したつもりです。
 ちなみに昔書いたままだとこの人善意の妖怪ハンターで、単純に事態を詳らかにして鴇を助けてくれるだけだったという。後半が殆ど書き直しになったのは、彼のこの変更が原因でした。

 そしてこの両者に通じる曖昧さ。
 二人の過去についてを詳細にやらなかったのは、最初に述べたようにこれが鴇の物語であるからです。
 やはり昔書いたバージョンだと、何故塔子が鴇のところにだけ姿を見せたのかとか暗いマンションの下から何を思って鴇の部屋の窓明かりを見上げていたのかとかの答え合わせをする場面もあったのですが、ここらは皿の上に出さなくてもよいものとして、書き直しの時にバッサリ切り落としました。なので「この作品はこれで完成されている」のお言葉が非常に心強いです。

 内面的物語。
 言われて気づきました。
 アニムスとしての黒部に阻まれつつも、成りたい自分の投影としての塔子(大人、という事で父母=喪失した庇護者のイメージも重なる)を救う事で自分自身が救われる。テセウスの船と船材については処女性を交えて解釈すれば、そんな形で綺麗にまとまりそうですね。
「どちらともとれるようにやってます!」とか言えたら頭よさげな感じだったのですが、「言われて気づいた」とか書いちゃってる通りでございます。そんな高度な真似をする知能はなかった!

 長々と乱文書き連ねてしまいましたが、今回も拙作にお付き合いくださり、誠にありがとうございました。
 お言葉を励みに気張っていきたいと思います。
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