図書館ドラゴンは火を吹かない

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そこにあるのは、溢れんばかりの愛

投稿者: GB(那識あきら) [2015年 09月 20日 08時 08分]
 物語好き、本好きならば、喰いつかずにはいられない、ストーリーテリングという魔法。その威力たるや、物語の外側にいるはずの我々読み手すら、虜にしてしまうほど。複数の時間軸を自在に行き来する語りに、心地よく踊らされます。
 少女の姿に身をやつした火竜と、その「親友」である比類なき語り部の、絆の深さに何度も泣かされたかと思えば、因縁の宿敵「左利き」のアンビバレンスに萌えいやむしろ燃え、「相棒」の空気を読まないハイテンションっぷりに癒やされ(ええ、大いに癒やされ)、そして何より端正な文章そのものにも酔いしれました。

『それでは、説話を司る神の忘れられた御名において――はじめましょう。』

 胸の奥の本棚に大切に並べるだけでなく、何度も噛み締めるように読み返したい物語です。

一人の少女の『喪失』と『再生』の物語。透明な色彩のエピックファンタジー。

投稿者: 虚月 [2015年 09月 19日 09時 24分]
抽象的なパステル画とでもいうべきだろうか。
情景の雰囲気を損なわないように、敢えて人物やトポスの名を明かさない事で、読者のイメージを飛躍させるような、そんな趣向が施されている。

煌めく星の天蓋。蜜蝋と夜風の匂い。広場を包む聴衆の熱気。物語師の雄弁な語り。それらを宝石を彫琢したような文で綴り、清冽な水のような味わいを出している。

これは作者氏の豊かな文藻と、繊細な感性、ファンタジーへの理解が為せる技なのだろう。妙手という言葉では表せない程の細密で丁寧な筆致だ。

深きの森の司書王。悠久の時を生きる竜。踊りの天稟を持つ麗しい舞姫。野心に満ちた呪使い。彼らが生きる瑞々しく壮大な世界、そこには魂を焦がすような光が満ちている。

薫るような高級な木で作られた書架の間を歩き、埃を被った重厚な装丁の本を恐る恐る開くようなファンタジー。稀代のストーリーテラーによる聖性に満ちた物語を是非ともどうぞ。

説話を司る神の忘れられた御名において、現在と過去が近づいていく

投稿者: いろは紅葉 [2015年 09月 19日 04時 11分]
ドラゴンのリエッキは、親友との約束で、図書館とその蔵書を守っています。
彼女は火竜ですが、本を狙う不届き者たちを屠る時でも火を吹きません。
火は本を燃やしてしまうから。
本が燃えたら、親友との思い出も燃えてしまうから。

リエッキの親友は、すでにこの世の者ではありません。
彼女は百年間、たったひとりで、死んでしまった親友を想い泣き暮らしてきました。
夢の中で幸せだった日々をめぐり、目を覚ませば喪失感を味わい。

ある日、図書館に古い知り合いがやってきました。
手に赤子の眠る揺りかごを持って。
なんだかんだで、知り合いと一緒に赤子を育てることになったリエッキは、隠れて泣きながらも忙しい日々を送ります。
そして、ぽつりぽつりと語るようになるのです。
親友と、もう誰もいない、大好きな人たちとの思い出を。

喪失から再生する現在と、親友たちと過ごした過去。
二つの物語は、徐々に近づいていくのです。

語り部からの美しき物語が幕を開ける

投稿者: 足軽三郎 [2015年 09月 18日 23時 23分]
 言葉にすると陳腐なくらい美しい文章に目を奪われた。そして二重構造の構成にもまた。女の子の姿になれる火竜リエッキの視点からなる"今を見る物語"と。もう一人の主人公ユカの生い立ちから始まる"過去を語る物語"は。別れつつもまた重なる二本のレールのようにして、独立した美しさを保ちつつも互いを引き立てる。

 稀代の語り部としてのユカの素性が反映されたかのように、文章の一つ一つ、語彙の一つ一つが輝くように洗練されている。だがそこには気取った様子はまるでなく、さながら豊かな自然の恵みが結実した森を思わせる。

 人と竜、今と過去、語り部と聞き手、素晴らしい物語を届ける作者とそれに引き込まれる読者。幾多にも組み込まれた対比構造の果てに紡ぎ出されるは、きっとユカとリエッキの絆から生まれたあなたへの最高のプレゼント。異色にして絢爛たる物語の頁は――まだ終わらない。

語り部の神髄、ここに在り

投稿者: 室木 柴 [2015年 07月 13日 11時 34分]
 忌み嫌われ、恐れられる深き森に住まう骨の魔女。彼女に拾われ、慈しみに満ちた母と森の家族に愛を受けてすくすくと育ったユカ。
 彼は不遇な魔法使いたちの真実を広めるため、語り部となる。
 赤竜リエッキを唯一無二の友として、土地を巡り、歩き、歌い、紡ぐ。人々の心を。染み渡る言の葉を。

 魔法使いを憎む呪使いのなかで、嫉妬と高慢に溺れる同胞を憎む宿敵≪左利き≫とその相棒との対決も見逃せない。
 互いの関係は一概に言い表せないだろう。
 そして、それはこの物語にもいえる。もろ手を挙げて賞賛したいのに、あまりに芸術的である為に読者は選ぶ言葉に苦しむ。
 どんな輝きを用いても、本作品で軽やかに踊る美しく優しい言葉たちにはとても及ばない。
 読むうちに、まるで自分が彼の聴衆となったかのような幻想に包まれる。そのような作品は稀だ。
 最終的にいえることは、結局ただ一言だけ。
 是非、読んでほしい。

世にも美しい言葉と物語は、聴衆を魅了する

投稿者: 背側宇一 [2015年 02月 19日 23時 23分]
私がこの「図書館ドラゴンは火を吹かない」を見て毎度思うのは「この人には絶対に勝てない」という作者(笑)としての敗北感と「ああ、次の更新はいつなんだろう」と言う期待の感情です。

読み終わった後に、毎度ため息が出るほどの文体と物語の美しさ。
まるでそこに語り部であるユカがいるような、その隣に彼の無二の親友のリエッキがいるような、そんな感覚にとらわれてしまいます。

古今東西多種多様、世界中にある様々な素晴らしい物語は、読者を虜にしてしまう程の魔力があると思います。

この図書館ドラゴンも、ひとたびその物語に入り込めば読者……もとい聴衆の魂を引き込む魅力に溢れています。

まあ……何が言いたいかというとですね。
とりあえず読め、騙されたと思って読め、そして聴衆は魅了され作者は敗北感に打ちのめされるがよい。

ていうか次の更新まだーーーーーーー!?

美しい文章は、美しい物語を生み出す

投稿者: 退会しています [2014年 12月 09日 22時 44分]
他の方もレビューで語られていますが、図書館ドラゴンは火を吹かないは、極めて抒情的で文章が美しい。美しい文章が、更に美しい物語を引き立てる。
優しい竜のエリッキと純粋な物語師のユカの邂逅から、いずれ訪れるだろう別れの時までを、精妙に文章の一言一句を取捨選択し、決して読者の皆様を飽きさせることはない。
もし娯楽作品に機能美が存在するならば、図書館ドラゴンは火を吹かないが、まさしくそれであろう。
美しさと優しさを描写するのであれば、文章も構成も登場人物も、物語の盛り上げ方も、全てが美しくて繊細であるべきだ。それこそが、古典的な王道の先にある機能美なのだろう。
他の読者の皆様にも、是非図書館ドラゴンは火を吹かないを読んでもらいたい。
この作品は、感傷も娯楽であると教えてくれる。当たり前のことではあるが、それすらも抒情的に教えてくれる。
必見の価値有りとは言わない。必読の価値がある娯楽作品である。 

優しすぎる夢のように

投稿者: 奥沢 一歩(ユニット:蕗字 歩の小説担当) [2014年 11月 19日 12時 30分]

 使い込まれ磨き抜かれた古いロッキングチェアのように、この物語の手触りは限りなく優しい。
 大人と子供とに、わけへだてなく、優しい。
 腰かけ、揺られて、語り部の声に耳を傾けている間に、だれしもが、きっと読者になってしまう。
 おじいちゃんの昔語りみたいに、すこし古くて難しい言い回しも出てくるけれど、すばらしい冒険や仲間との友情が待っていてくれる。

 ただ、この古い揺椅子で、大人は「眠ってはいけない」。
 ああ、大人っていうのは、挫折したり失ったり亡くしてしまったあと、それでも、立ち上がることを選んだひとのことだ。
 年齢の問題じゃない。

 そういうひとたちに、この物語は別の作用のしかたを、する。
 優しすぎる夢は、鮮やかにする。
 過ぎていってしまったものたちのことを。
 それが、どう作用するか、はわかってもらえると思う。

 だから大人は、隠れてこっそり読んでください。

これなるは美しき愛情の物語。

投稿者: 満倉 電津 [2014年 11月 06日 16時 17分]
『図書館ドラゴンは火を吹かない』

 一見して題意を汲み取りがたい作品ほど、得てして物語に触れた者しか出逢えない感動が充ちている。

 ならば、全く理解の及ばない--それでいて心を掻き立てられる題名のこの作品には、どれほどの感動が吹き荒れているものだろうか。

 そう考えた私は、この作品を発見したときの困惑を上回る期待を持って文章を追い始め……気付いたときには、この愛に満ちた物語の虜であった。

 いや、愛に満ちた、と言う表現ですら過小である。何故なら、これは『愛』そのものを物語としたのだから。

 誰かを、何かを、大切におもう気持ち。それこそが根底で、全て。後に司書王と呼ばれる少年、彼と共に歩む竜、踊り子に膚絵師、骨の魔法使い……あらゆる人物を通じて語られる、宝石のような愛情の数々にどうぞ傾聴ください。

さて、では。
説話を司る神の忘れられた御名においてはじめよう。これなるは--……。

光の中を歩むような、幻想のエピックファンタジー

投稿者: 竹尾 練治 [2014年 11月 04日 22時 06分]
この物語には、あなたを驚かせるものは無いかも知れない。
奇想天外なストーリー、予想を裏切る斬新な展開、読者を悩ませるトリックや伏線――
それらは、この物語には無いかもしれない。
『図書館ドラゴンは火を吹かない』は、世界で100万回は繰り返されて語られただろう、王道のファンタジーだ。
だが、この作品を読んだあなたは、きっと感じることだろう。
この物語の瑞々しさを。王道にして正道の物語の、光に向かう美しさを。

表紙が擦り切れるまで読み飽いた本が、優れた朗読によって、初めて読んだ時以上の感動が蘇ることがあるように。
この作品は、圧倒的な文章力で、あなたに誰もが求める王道の物語の面白さを思いださせる。

純真にして清廉な主人公の歩む、真っ直ぐな道。
この作品は、主人公の物語を回顧的に語る叙事詩的ファンタジーである。
物語師の少年と竜の少女の光輝く足跡を、あなたも辿ってみてはいかがだろうか。
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