トラフィック・キングダム

レビュー一覧 ▽レビューを書く

閉塞した世界で、息詰まるような焦燥が胸を締めつける

投稿者: 扇智史 [2016年 06月 07日 20時 12分]
道路を車が埋め尽くす、という突飛な世界観だが、圧倒的なものに追いつめられる閉塞感は非常にリアル。
その息苦しい世界を生きる少女の一人称の文体は、乱暴だがぎりぎりで品位を失わなず、読者の心を強くつかんでくる。
パケットと呼ばれる乗り物で、街を駆け抜ける彼女たちの生き様は、まるで綱渡りのようで、しかし、閉ざされた街をぐるぐると巡るばかり。
遠くに行きたい、という希望と、友達といっしょにいられれば、という願いと、どこにも進めない、という絶望とが、急いているような文体の中で混然となる。すべての色が混じったものは真っ黒になる。彼女の言葉は、ブラックホールの外周を回転するように、凄まじい速度で疾走する。
ありふれた突然の暴力が彼女たちを襲い、そしてその暴力さえもさらに上位の暴力に破壊される。そんなうつろな世界の果てに、少女たちが見いだした光が、ちいさな救いになって欲しい、と願わずにはいられない。
― お薦めレビューを書く ―
レビューを書く場合はログインしてください。

↑ページトップへ