胡桃の中の蜃気楼

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硬質で美しい数式、或いは楽の音のような

投稿者: 九藤 朋 [2017年 08月 09日 14時 50分]
柄にもなく緊張している。なぜなら私の言葉一つで、この素晴らしい作品の良さを損ねてしまう危険性を感じるからだ。
簡便な読書を好まれる人には向かないかもしれない。
けれど物語を味わい、舌先で転がし、咀嚼するような読書を好む人であれば、これに勝る作品はそうそうあるまい。
まずもってこの物語の魅力は各登場人物たちの魅力である。
それが、作者の入念な下調べを経て紡がれた英国の空気の中で、きらきらしく輝き、読み手を魅了する。金融経済に触れるくだりに足踏みする人もいるかもしれないが、その難しさを凌駕して物語世界に浸れるのではないだろうか。事実、私がそうだからである。
あなたも主人公・ヘンリー・ソールスベリーの弾くヴァイオリンを聴き、パブリックスクールの喧騒に迷い込んでみてはいかがだろうか。
この物語は硬質で美しい数式、或いは楽の音のような作品である。
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