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[一言]
物語の本筋とはずれますが今の世界の現状と未来を顧みてみると感慨深いものがあるように感じられました。
この作品のようにウイルスではなく蝶を吐いて死ぬ病気であれば何か変わっていたのでしょうか。
  • 投稿者: 窒素狸
  • 2020年 09月22日 15時57分
お読みいただきありがとうございました。
三年前に本作を書いた時にはこのような事態になるとは思ってもおりませんでした。言い当てることができた部分もありつつ、(悪い意味で)現実に想像を越えられた部分もあり、作者としても複雑な思いで振り返る作品です。恐らくはタグの検索で見つけていただいたのでしょうか。今、このタイミングでご感想をいただけたご縁を嬉しく思います。
まだ先の状況が見えない中ですので、どうぞお体にお気をつけてお過ごしくださいますように。
[一言]
よく考えれば恐ろしい蝶の病、けれどいつしかこの奇妙な現実に慣れてしまう辺りが、とてもリアリティーがあるように感じられました。酸性雨も放射能も地震もある一定の水位を越えてしまうと、人間の心からはさっと波が引いてしまうのかもしれません。もしくは許容量を越えてしまうと、感覚が麻痺してしまうのでしょう。

日常生活で息苦しさを感じている主人公が、憧れ、希望としてすがっていた蝶の群れ。望みが叶うことはないのかもしれないと思っていた中でのラストは、きっと彼女は幸せだったのだろうと納得できるものでした。蝶の糧になるために羽化の現場をさすらい、病に気がついてからは淡々と身辺整理に動く。最後の蝶の群れの羽ばたきは、声なき主人公の歓喜の叫びのようにも思えました。

あり得るかもしれないとつい思ってしまう作品で、何度読んでもひきこまれます。
お読みいただき、また、レビューまでお寄せいただき、まことにありがとうございました。

放射能に感染症……現実の世界でも、社会現象になるほどの恐怖や不安を生みながら、そしてそれ自体は決してなくなった訳ではないのに、いつの間にか大きく取りざたされなくなったもの、あるかと思います。蝶の奇病を通して、危険と隣り合わせの平穏の不思議さを考えていただきたいという意図もありました。

そして主人公の「息苦しさ」も、穏やかで美しい幕切れに惹かれる想いも、多かれ少なかれ思い当たることがある方がいるのではないかと思っておりました。死という後ろ向きな願いであっても、ひたむきにまっすぐに成就を目指した彼女の生きざまに、想いを馳せていただければ幸いです。
[一言]
最初から最後まで私は主人公の気持ちでいっぱいでした。
溶け込みつつ、どうしてもうっすらと飛んでいきたいと願うような逃避傾向。
それが美しい蝶のイメージと重なって、それがまた描写がここに感じられるくらい、グロテスクなくらい美しくて、憧れざるを得ない主人公の気持ちがわかってしまう。
そのまま最後まで価値観を変えることなく成就することを願いました。
なので私はとてもハッピーだと感じてしまったのでした。
気持ち悪い感想失礼しました〜〜!
感想ありがとうございました。

SFなどでもそうなのですが、いわゆる「この世界」とは違う世界を効果的に読者に見せるために、作中世界に馴染めていないキャラクターを視点に据えることがあると思います。本作の主人公も、鱗粉が舞う世界で普通に暮らしつつ少しずれた「願望」を秘めていました。その彼女を通して舞い上がる蝶の美しさをお伝え出来ていたら良かったです。
彼女の願望は、ネガティブに取られてしまうかもしれないとも思っていたのですが、彼女にとってはこれしか道がないこと、何よりの救いのつもりで描きました。好意的に受け止めていただけてとても嬉しいです。
[一言]
完結おめでとうございます。

人が蝶を吐く奇病、鱗粉による感染、順応する社会……すべてが何かの暗喩のようにも思えました。花粉や紫外線や新型ウィルスや放射性物質や、現実の社会も数十年前には想像できなかったリスクに晒されていますが、根治はできなくても対処方法が広まっていますものね。「バタフライ・エフェクト」から社会秩序を取り戻すまでの過程が何ともリアルでした。テレビの鱗粉予報に蝶のマークが使われているあたり、今の我々からすると不謹慎に思えますが(人の生き死にが懸ってますからね……)、自然現象と同じく認知される頃にはそんなものかもしれません。映画にしてもそう。難病ものやデザスターパニックものの一ジャンルとして受け入れられていそうです。こういった巧みなシミュレーションが、ヒロインのどこか地に足が着かない内的世界と好対照でした。
羽化で直接命を落とす他にも、社会の変化で押し潰された人間がたくさんいることを知った上で、それでも羽化に憧れるヒロイン。その背徳的な想いの理由が最後に明かされた時はなるほどと納得しました。いわゆる醜形恐怖症なのでしょうか、外見描写がないので彼女の自己評価が事実かどうかは不明ですが(客観性をぼかしてるのも上手いな~)、羽化に救いを求める気持ちは分かる気がします。感染してから粛々と身辺整理を進める姿は、本当にこのためだけに生きてきたのだと寂しく感じるほど。おそらく鱗粉を浴びる前から、彼女の中には蝶しかいなかったのでしょうね。
もしも羽化現象のない世界なら、彼女はコンプレックスを抱えたまま怯えて生きていたのかもしれません。命と引き換えに魂を解き放つような羽化のシーンは、ひたすらに美しかったです。そういえば、ギシリャ神話では蝶は魂の象徴でしたね。

耽美な独特の世界観を堪能させて頂きました。文学フリマ、応援しております。

  • 投稿者: 橘 塔子
  • 女性
  • 2017年 06月16日 21時35分
感想ありがとうございました。

本作の世界観や人々の反応について、日頃ニュース等で見聞きすることを(意識した部分も、おそらく無意識の部分もありますが)織り込んでおります。リアリティを出したい・読んだ方に自分だったら、という意図があっての「どこかで見たような」描写です。蝶のマークの鱗粉予想は、花粉の飛散状況の予報からイメージしました。デフォルメしたモチーフが出て来ると、もう日常になってしまうのでしょうね……。
主人公の内面と外面について、深く読み取っていただいてありがとうございます。この世界の状況について詳しく描写したのは、それでもこの選択を取る彼女の想いの根の深さを印象づけるためでした。そして外面の描写がないのも同じ理由です。誰かが「そんなことないよ」と言ったとしても、彼女の心を動かすことができないから無意味なのです。

耽美な世界観と言っていただけてとても嬉しいです。ポイント重視を明言している賞なので参加することに意義がある奴だと思っていますが、発表までは少しだけ楽しみにしていようと思います。
[良い点]
 羽化登仙――、そんな言葉が浮かびました。幾分か体力の低下があっても、苦痛がなく蝶となるのなら、悪くない最期なのでしょう。
 洋の東西を問わず蝶は人の魂の姿。
 ファーブルやドクドルマンボウとは違った意味での、蝶に憑りつかれた人々の世界が、きらきらとした光景で想像できます。
 昆虫の学者さんでも、蛹の中の変化はよく解らないところがあるらしいですね。文字通り蛹から蝶になって、ヒロインはどこへ羽ばたいていくのでしょうか。夢のような大空、雲の上の世界なら、どんなにいいでしょう。
  • 投稿者: 惠美子
  • 40歳~49歳 女性
  • 2017年 06月14日 10時51分
感想ありがとうございました。

美しさに加えて苦痛がないことも、彼女が抵抗なくこの選択をした理由だったのかもしれません。
蝶になるというよりは蝶に喰われる最期で、彼女は地に這ったままなのですが、彼女は蝶の糧になったことに満足しているようです。正体が分からない、人間とは決定的に断絶しているからこそ、蝶の美しさに惹かれたのかもしれません。
[一言]
とても続きが気になる作品です(´ω`)

あらすじを読んだ段階でとても心惹かれ、読んでみたら特異ながらも果敢ない世界観と、それを色鮮やかに描写する文章に夢中で文字を目で追い、気づけばブックマークをしてました。

蝶の鱗粉が風花のように舞う世界は、例え死の匂いに満ちていてもとても美しいんだろうな、と思いました。

次の更新が待ち遠しい&楽しみですヽ(´▽`)/
  • 投稿者: 雪蛍
  • 2017年 06月07日 22時12分
感想ありがとうございました。

「蝶を吐く」をモチーフに創作するという企画の参加作品でして、モチーフの美しさから浮かんだ物語でした。
美しさと不安が同居する世界を描いてみたいと思っております。お付き合いいただければ幸いです。
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