感想一覧

▽感想を書く
[良い点]
自分の中に混ざった存在の正体を自覚した直後の、尚樹の意識が優位に表れているようで、しかし個としての意識として長い間出ていなかったからか、混ざりあっているからか言語選択がモザイク状になるくらい混乱していて、少し曖昧に尚樹が今こうなっていることを擁護するような彩花の意識が混じっている場面好きです。

憑依によって二つの精神が溶け合っており、自身の中にある他の意識の正体を自覚してからも二つの個が、意識の強弱という形で表出するくらい別の側面として残っていることにかなり不思議な感じを抱きました。

尚樹(彩花)当人の視点は無く、はっきりした戸惑いも物語中では最初だけで(拓斗との関係性が変化していく様子はともかく、尚樹と彩花の精神が溶け合っているという特異な現状には)そこまで悩んだりすることもなくあっさり受け入れてしまっているのではなく、もうちょっと悩んだりする姿が見たかった気がします(外伝的な病院で目覚めてからの彩花編など)。
とは言っても、大切な親友と再び会うことの出来た拓斗が、性別も異なる姿となった彼と元のような関係を取り戻すようで、それまでと少し違う関係へと変化していっていること。そして親友が今もそこにちゃんと在るのかということに不安を抱きつつ、新たな関係へと進む話であるから、彩花の視点を入れると横道が長くなりテンポが悪くなるので仕方のないことなのかもしれませんね。
[気になる点]
何度も会う内に尚樹としてではなく彩花として接されることも、混ざり合ってどちらという訳でもない意識のもとで接されたこともある筈なので、拓斗と過ごす日常でのそこの違いのような場面が欲しかったです。
最終的に拓斗は混ざりあった人格である彼女を好きになりましたが、過去を共有する尚樹だから惹かれ愛したとも、尚樹そのものとは別に違う混ざっている彩花の意識であろう女の子らしい部分に惹かれていったとも読み取れるので、ちょっと分かりづらいかも知れません。もし最後に尚樹としての部分が薄らいでいるといったことを話されたら、どういう反応になったのでしょうか……。
[一言]
ボリュームを二倍ほどに増やした中長編で見たかったかもしれません。
  • 投稿者: 咏兎
  • 2017年 06月08日 23時07分
詩雨さん
丁寧な感想を、ありがとうございます!!!


>憑依によって二つの精神が溶け合っており、自身の中にある他の意識の正体を自覚してからも二つの個が、意識の強弱という形で表出するくらい別の側面として残っていることにかなり不思議な感じを抱きました。

 二人のそれぞれの記憶は個別にあれど、感性や見識は融合しつつある……といった状態でしょうね。拓斗は逆に、彩花の中の尚樹が、記憶のみを残して他のすべてが失われやしないかと危惧を抱くわけですが……


>もうちょっと悩んだりする姿が見たかった気がします

 確かにあっさりしすぎな感はありますねww この短編自体が『親友の消失と、親友のTSをどう受け入れるか』をテーマの一つにして書いているので、なかなか底の部分を挿れる余裕が無かったのです! でも、もし中編や長編に組み直すなら、ぜひとも入れていきたい部分ではあります!!


>何度も会う内に尚樹としてではなく彩花として接されることも、混ざり合ってどちらという訳でもない意識のもとで接されたこともある筈なので、拓斗と過ごす日常でのそこの違いのような場面が欲しかったです。

 彩花にとっては見ず知らずの他人なので、精神の融合が未熟な段階では、もっと拒否されるような展開を入れても面白いでしょうね!


>過去を共有する尚樹だから惹かれ愛したとも、尚樹そのものとは別に違う混ざっている彩花の意識であろう女の子らしい部分に惹かれていったとも読み取れるので、ちょっと分かりづらいかも知れません。

 『自分との幼少期の思い出を共有している親しみと、再び親友に会えたという乾いた魂の歓喜の心、そして彩花の少女としての魅力が主人公を彩花に惹かれさせたんだと思っています!
↑ページトップへ