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[一言]
完結まで拝読しました。
壮大な骨格に丁寧なディテールが描き込まれ、最初から最後まで引き込まれる物語でした。作家としての腕力と器用さ両方を兼ね備えた方はなかなかいらっしゃいません。尊敬の思いでいっぱいです。
二つの文明が出会った時に起きるのは、歴史を振り返ってみても悪いことの方が多いような気がします(免疫のない伝染病の蔓延も含め)。本作のエクレイタの開拓団は、もともとその意図がなかったとはいえ、本国からの補給を絶たれた状態では侵略者に成り果てても無理のない流れでしょう。むしろマシゥのような存在の方が稀有で(彼は使者でしたが)、集団の意志が『得体のしれない原住民』を支配・隷属させる方へ傾いても致し方ないと思われます。個人レベルでなら友人になれても、集団同士となると容易にはいかないものですから……ビーヴァたちと接触して交友を深めるマシゥと、極限状態で狂気を募らせるコルデ、この二人の思想と生き様が実に対照的で、緊張感がありました。生まれ持った性格もあるのでしょうが、不遇な環境に過剰適応してしまったコルデは悲劇の人と言えるのかもしれません。
無慈悲な侵略と略奪が容赦のない筆致で描かれ、それに対する『森の民』の平和的な対応はある意味歯痒くすら思えました。しかしそのもどかしさは現代人である我々が「やられたらやり返せ!」の考え方に染まっているからでしょうね。最終的に戦いにはなりましたが、『森の民』が『麦の民』に復讐して追い払って大団円という安直なラストにしないところがさすがですし、考えさせられました。厳しい自然に暮らす民だからこそ、無暗に殺し合わず奪い合わず、譲れる所は譲る。彼らの宗教観もまた、環境に順応することで自ずと構築されたものだったのでしょうね。
過程は辛辣でしたが結末は救いのあるものでした。新大陸の例を見るまでもなく歴史上ではもっとシビアな現実があったのでしょうけども、本作においては異なる文明に共存の希望を感じました。作者様のお優しさかもしれませんね。
文明と価値観の違いがもたらす争いが縦糸だとすれば、横糸は丁寧な暮らしの描写です。特にビーヴァたちの日常は映画を観ているように鮮やかで、原始共産制の社会を疑似体験させて頂きました。人間の息遣いや動物の手触りや血の臭いまで伝わってくるようです。現実世界と同じトーンでビーヴァやキシムが浮遊する魂の世界が描かれ、彼らにとっては二つの世界が地続きなのだなあと自然に解釈できました。セイモアやソーイエたちの仕草も愛らしく、シビアな物語の中で救いになっていました。もちろんジルぼっちゃんの屈託のなさも……。
テクニカルなところですが、固有名詞にカッコ書きで説明が入るのは非常に親切ですね。翻訳文学を読んでいるような味わいがありました。最後の方は説明なしでも分かるようになってしまいました(笑)。
ビーヴァの結末は、マシゥの立場では身を引き裂かれる思いでしょうが、彼らしかったのではないかと思えます。彼がシャマンである以上遅かれ早かれですし、嫁を取って子を儲けて……というよりよほど腹に落ちるものでした。生き残ったラナとキシムにとってもその方がよかったかも、と世間ずれした私は思ってしまうのです。生身であれば嫉妬や遠慮やいろいろありますしね……(笑)。
乱文・長文失礼しました。細かく感想を書こうと思ったら原稿用紙が何枚あっても足りません。
また他の作品も読ませて頂きますね。素晴らしい物語をありがとうございました。
完結まで拝読しました。
壮大な骨格に丁寧なディテールが描き込まれ、最初から最後まで引き込まれる物語でした。作家としての腕力と器用さ両方を兼ね備えた方はなかなかいらっしゃいません。尊敬の思いでいっぱいです。
二つの文明が出会った時に起きるのは、歴史を振り返ってみても悪いことの方が多いような気がします(免疫のない伝染病の蔓延も含め)。本作のエクレイタの開拓団は、もともとその意図がなかったとはいえ、本国からの補給を絶たれた状態では侵略者に成り果てても無理のない流れでしょう。むしろマシゥのような存在の方が稀有で(彼は使者でしたが)、集団の意志が『得体のしれない原住民』を支配・隷属させる方へ傾いても致し方ないと思われます。個人レベルでなら友人になれても、集団同士となると容易にはいかないものですから……ビーヴァたちと接触して交友を深めるマシゥと、極限状態で狂気を募らせるコルデ、この二人の思想と生き様が実に対照的で、緊張感がありました。生まれ持った性格もあるのでしょうが、不遇な環境に過剰適応してしまったコルデは悲劇の人と言えるのかもしれません。
無慈悲な侵略と略奪が容赦のない筆致で描かれ、それに対する『森の民』の平和的な対応はある意味歯痒くすら思えました。しかしそのもどかしさは現代人である我々が「やられたらやり返せ!」の考え方に染まっているからでしょうね。最終的に戦いにはなりましたが、『森の民』が『麦の民』に復讐して追い払って大団円という安直なラストにしないところがさすがですし、考えさせられました。厳しい自然に暮らす民だからこそ、無暗に殺し合わず奪い合わず、譲れる所は譲る。彼らの宗教観もまた、環境に順応することで自ずと構築されたものだったのでしょうね。
過程は辛辣でしたが結末は救いのあるものでした。新大陸の例を見るまでもなく歴史上ではもっとシビアな現実があったのでしょうけども、本作においては異なる文明に共存の希望を感じました。作者様のお優しさかもしれませんね。
文明と価値観の違いがもたらす争いが縦糸だとすれば、横糸は丁寧な暮らしの描写です。特にビーヴァたちの日常は映画を観ているように鮮やかで、原始共産制の社会を疑似体験させて頂きました。人間の息遣いや動物の手触りや血の臭いまで伝わってくるようです。現実世界と同じトーンでビーヴァやキシムが浮遊する魂の世界が描かれ、彼らにとっては二つの世界が地続きなのだなあと自然に解釈できました。セイモアやソーイエたちの仕草も愛らしく、シビアな物語の中で救いになっていました。もちろんジルぼっちゃんの屈託のなさも……。
テクニカルなところですが、固有名詞にカッコ書きで説明が入るのは非常に親切ですね。翻訳文学を読んでいるような味わいがありました。最後の方は説明なしでも分かるようになってしまいました(笑)。
ビーヴァの結末は、マシゥの立場では身を引き裂かれる思いでしょうが、彼らしかったのではないかと思えます。彼がシャマンである以上遅かれ早かれですし、嫁を取って子を儲けて……というよりよほど腹に落ちるものでした。生き残ったラナとキシムにとってもその方がよかったかも、と世間ずれした私は思ってしまうのです。生身であれば嫉妬や遠慮やいろいろありますしね……(笑)。
乱文・長文失礼しました。細かく感想を書こうと思ったら原稿用紙が何枚あっても足りません。
また他の作品も読ませて頂きますね。素晴らしい物語をありがとうございました。
橘塔子さま、こんばんは。いつも楽しく御作を拝読しておりますv
この度は、拙作にお付き合い下さっただけでなく、大変ご丁寧な感想を、ありがとうございます。
(ブックマークさせて頂いている作品の更新を確認しようとユーザーページに入り、我が目を疑いました。
動揺して、しばらくモニター前で固まっていました。珍妙な日本語になっているかもしれません。ご容赦下さいませ。)
民俗や自然の描写が詳しい作品を拝読するのが大好きなので、それを目指して書いていたら、やたらと長くなってしまい(汗) 完結し終えた今では、「もう少し短く出来なかったのか……」と反省しきりなのですが。
壮大と仰って頂き、光栄です。ありがとうございます。
人物の造形も物語の構成もみごとな大長編を、いくつも書いておられる橘さまにお褒め頂くと、勿体なさと恥ずかしさに小さくなって消えそうです……。いやもう、お赦し下さい(/ω\)
文明の衝突……特に一方が戦闘に慣れた民族の場合、悲劇が多い気がします。アフリカといい、アメリカといい。仰る通り、コルデ達の方が普通で、マシゥやエクレイタ王の方が稀有なのだろうと思います。
ビーヴァたち『森の民』は、かつて氏族同士で殺し合った教訓から、「戦いを捨てた民」でした。王やビーヴァの歯がゆいほどの温厚さは、その表れです。また、私自身がアイヌやニヴフといった狩猟民の風俗や宗教観を知るうちに、彼らの「穏やかさ」に感銘を受けたせいでもあります。弓矢で動物を殺し、その手で直接捌く彼らだからこそ、生命の尊さを知っているのだなあ、と感じました。
復讐して追い払って大団円……にするには、ビーヴァとマシゥは、お互いを知りすぎてしまったかもしれません。冗談半分、ビーヴァが巨大化して「ダイダラボッチ」になれば解決するんじゃないか?(『もののけ姫』流に)と思いましたが、勇気が出ませんでした……orz←おい(汗)
森の民も、マシゥも、どちらも救いたくて足掻いた末の結末でした。すっきりしたものではないので、お気に召さない方は多かろうと思っています。希望を感じて頂き、安堵しています。
描写は、これも、読まれる方の好みが分かれるところだろうと思います(^^ゞ 私が民俗好きなので、ねぶねぶと描写していたら、あんなことに……。ファンタジーになりきれていない気がしたので、シャーマニックな場面には力を入れた覚えがあります。動物や子どもたちをお気に召して頂き、嬉しいですv
残虐な場面は、どうしようかと迷いましたが、この作品では敢えて挑戦しました。「目を背けたくなる」「あそこまで書く必要があったのか」というご意見を頂き、書き手としては(そこまで迫力があったのだから)「成功」と考えています。しかし、危険な賭けですね(笑)。
固有名詞、異文化の単語や造語は、多すぎると読み手には煩わしいですし、少ないと雰囲気が出せず、加減が難しいと感じています。カッコ、うっとうしくはありませんでしたか? 味わいと仰って頂き、嬉しいですv
この物語は、「ビーヴァが神霊になる話」と思って書き始めたので、彼の結末は、実は最初から決まっていました。しかし、なかなかシャマンっぽさが表現できず(^^ゞ 右往左往するばかりで、作者が心配になったほどです。唐突な印象でなかったのなら、幸いです。
父系氏族社会を形成する狩猟民族では、ラナとビーヴァの恋愛はあり得ませんし(ラナの恋は、幼い感情をぶつけているだけですね)、ビーヴァがシャマンである以上、神霊の掟から外れることはまずないと思います。彼がラナと一緒にいるためには神霊になるしか方法はなく、キシムは既に巫女ですので、仰る通り「これで良かった」と、作者も考えています。でも、ラナとマシゥには、殴られそうですね、私……(ソーィエには噛みつかれそうです・涙)
文庫本なら四冊分ほどもある長話にお付き合い下さったうえ、お優しいご感想を、ありがとうございますv
大変示唆に富む内容で、勉強になりました。これに懲りず、またお相手して頂ければ幸甚です。
本当にありがとうございました!
この度は、拙作にお付き合い下さっただけでなく、大変ご丁寧な感想を、ありがとうございます。
(ブックマークさせて頂いている作品の更新を確認しようとユーザーページに入り、我が目を疑いました。
動揺して、しばらくモニター前で固まっていました。珍妙な日本語になっているかもしれません。ご容赦下さいませ。)
民俗や自然の描写が詳しい作品を拝読するのが大好きなので、それを目指して書いていたら、やたらと長くなってしまい(汗) 完結し終えた今では、「もう少し短く出来なかったのか……」と反省しきりなのですが。
壮大と仰って頂き、光栄です。ありがとうございます。
人物の造形も物語の構成もみごとな大長編を、いくつも書いておられる橘さまにお褒め頂くと、勿体なさと恥ずかしさに小さくなって消えそうです……。いやもう、お赦し下さい(/ω\)
文明の衝突……特に一方が戦闘に慣れた民族の場合、悲劇が多い気がします。アフリカといい、アメリカといい。仰る通り、コルデ達の方が普通で、マシゥやエクレイタ王の方が稀有なのだろうと思います。
ビーヴァたち『森の民』は、かつて氏族同士で殺し合った教訓から、「戦いを捨てた民」でした。王やビーヴァの歯がゆいほどの温厚さは、その表れです。また、私自身がアイヌやニヴフといった狩猟民の風俗や宗教観を知るうちに、彼らの「穏やかさ」に感銘を受けたせいでもあります。弓矢で動物を殺し、その手で直接捌く彼らだからこそ、生命の尊さを知っているのだなあ、と感じました。
復讐して追い払って大団円……にするには、ビーヴァとマシゥは、お互いを知りすぎてしまったかもしれません。冗談半分、ビーヴァが巨大化して「ダイダラボッチ」になれば解決するんじゃないか?(『もののけ姫』流に)と思いましたが、勇気が出ませんでした……orz←おい(汗)
森の民も、マシゥも、どちらも救いたくて足掻いた末の結末でした。すっきりしたものではないので、お気に召さない方は多かろうと思っています。希望を感じて頂き、安堵しています。
描写は、これも、読まれる方の好みが分かれるところだろうと思います(^^ゞ 私が民俗好きなので、ねぶねぶと描写していたら、あんなことに……。ファンタジーになりきれていない気がしたので、シャーマニックな場面には力を入れた覚えがあります。動物や子どもたちをお気に召して頂き、嬉しいですv
残虐な場面は、どうしようかと迷いましたが、この作品では敢えて挑戦しました。「目を背けたくなる」「あそこまで書く必要があったのか」というご意見を頂き、書き手としては(そこまで迫力があったのだから)「成功」と考えています。しかし、危険な賭けですね(笑)。
固有名詞、異文化の単語や造語は、多すぎると読み手には煩わしいですし、少ないと雰囲気が出せず、加減が難しいと感じています。カッコ、うっとうしくはありませんでしたか? 味わいと仰って頂き、嬉しいですv
この物語は、「ビーヴァが神霊になる話」と思って書き始めたので、彼の結末は、実は最初から決まっていました。しかし、なかなかシャマンっぽさが表現できず(^^ゞ 右往左往するばかりで、作者が心配になったほどです。唐突な印象でなかったのなら、幸いです。
父系氏族社会を形成する狩猟民族では、ラナとビーヴァの恋愛はあり得ませんし(ラナの恋は、幼い感情をぶつけているだけですね)、ビーヴァがシャマンである以上、神霊の掟から外れることはまずないと思います。彼がラナと一緒にいるためには神霊になるしか方法はなく、キシムは既に巫女ですので、仰る通り「これで良かった」と、作者も考えています。でも、ラナとマシゥには、殴られそうですね、私……(ソーィエには噛みつかれそうです・涙)
文庫本なら四冊分ほどもある長話にお付き合い下さったうえ、お優しいご感想を、ありがとうございますv
大変示唆に富む内容で、勉強になりました。これに懲りず、またお相手して頂ければ幸甚です。
本当にありがとうございました!
- 石燈 梓(Azurite)
- 2017年 10月15日 22時09分
[一言]
昔、サイトの方で拝読してました!
なろうで読めるなんて嬉しいです。
美しく、創り込まれた世界観が大好きです。
じっくり読み返させていただきますー!
昔、サイトの方で拝読してました!
なろうで読めるなんて嬉しいです。
美しく、創り込まれた世界観が大好きです。
じっくり読み返させていただきますー!
- 投稿者: 退会済み
- 2017年 07月03日 22時58分
管理
こんにちは。かなこ様、はじめまして。
お声をかけて頂き、ありがとうございますv
はわわ……サイトで? そ、それはどれくらい昔の……(滝汗)
いったい何人の方が読んで下さっていたのか見当もつかず、かなり長い間、停滞していた時期がありましたので、当時お付き合い頂いた方には、誠に申し訳ありません。
今年の1月、サイトの方で完結いたしました。外伝も含め、こちらへ掲載させて頂きます。
お望みの結末になっているか不安ではありますが、またお付き合い下さり光栄です。
ありがとうございます。
お声をかけて頂き、ありがとうございますv
はわわ……サイトで? そ、それはどれくらい昔の……(滝汗)
いったい何人の方が読んで下さっていたのか見当もつかず、かなり長い間、停滞していた時期がありましたので、当時お付き合い頂いた方には、誠に申し訳ありません。
今年の1月、サイトの方で完結いたしました。外伝も含め、こちらへ掲載させて頂きます。
お望みの結末になっているか不安ではありますが、またお付き合い下さり光栄です。
ありがとうございます。
- 石燈 梓(Azurite)
- 2017年 07月04日 05時30分
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