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[良い点]
口寄せで出た名前の人がそのまんま犯人にされてしまうかもしれない。正解とも限らないのに。
古い文化は大事だけど、それを神聖視して重用しすぎる集落というのも恐ろしいですね。
ちはやさん、ご感想ありがとうございます!

返信が遅くなってしまい、申し訳ありません。

今回は「五色村の悲劇」をお手に取っていただいて、ありがとうございます。シリーズ中のキャラクターのうち、一番人気を誇る(?)胡麻博士の初登場作品で、一番クセのある作品かもしれませんが、よろしくお願いします……!
  • Kan
  • 2021年 08月09日 20時32分
[良い点]
口寄せとミステリーの絡め方が巧いですね。ご、ご、ご……にあんな意味が隠されていたなんて。

日菜と月菜の動かし方がとても巧い、容疑者たちのアリバイを崩す鍵として見事な動きです。事件の背景に双子あり、とか、双子は怪しくて当たり前、と金田一少年の事件簿の作者たちが言っていたのを思い出します。それでも騙されてしまうほど、さりげなく関わっていたことに感心しました。

犯人の動機と正体は……またしても切ない。一度、刑事を疑わせておいて、その後に疑惑を薄めていく手法が斬新です。一度は安全圏に入っていた容疑者たちが、再び怪しく見えて浮上してくる、テクニックですね。月菜の発言で、かなり際どいところまで読者に真相(のヒント)を与えていたのも大胆。

なんと言っても胡麻博士がもう、癒しをくれました。五色村の古風な舞台も好きだし、Kan様らしい穏やかな雰囲気を安定して味わえます。
[一言]
紫雲学園の感想、私だと解っていただけたのですか。おじいちゃん感激です(> <。)! きっとKanさんは文面だけで気づいてくれるはず……! と信じて託して良かったです(> <。);

これにて羽黒のゆうちゃん長編事件は、すべて読了できたので満足です。あとは真夏のリゾートだけね(^_-)≡★、最新話まで追いつきましたのよ。今後も楽しみに待っていますわね
  • 投稿者: おじいちゃんより
  • 2021年 05月04日 19時55分
ご感想ありがとうございます!

お久しぶりです。また感想をいただけて嬉しいです。乾さんの文章は、すぐにピンときます。あー乾さんだ!ってなりました。(^^)

つ、ついに羽黒祐介シリーズの長編をすべて読了されたのですね。勲章ものですね。最近、お絵描きにハマっているので、乾さんに挿絵を贈呈してもよいぐらいの嬉しい出来事なのですが、また小説を投稿されることがありましたら、教えていただければ、なんでも描きますよ。(僕の絵は下手くそですが……)(^^;;

真夏のリゾートも頑張ります。若干、道を見失っていましたが、ラストに向けて頑張りたいと思います!

五色村のトリックに関しましては、大掛かりな心理トリックと言葉遊び的なトリックをやってみたくて、今回、このようなものにしました。口寄せは難しい題材ですが、青森に恐山という霊場がありまして、旅行した経験から一度やってみたいテーマでした。(^^;;

五色村の村自体もどこかがモデルだっと思います。僕が旅する場所って、完全な温泉街がほとんどなくて、普通の田舎の片隅に温泉が湧いているなんてところがほとんどで、ふらりと立ち寄ってみると、なかなか面白かったりするのですが、コロナが収まったら、是非、乾さんも行ってみてください。あ、確か山形の湯殿山や羽黒山あたりもモデルになっていると思います。羽黒山に関しては、羽黒祐介探偵の名前の元にもなっています。民宿のモデルは三重県にあります(^^)

胡麻博士のことも、ありがとうございます。

胡麻博士「ありがとう。乾くん。わたしにとっては君が癒しだよ」(ホラー発言ではありません)

乾さんのご感想、胡麻博士もおっしゃっている通り、こちらこそ癒しになってます。あと返信が遅くなってしまいまして申し訳ありません。本当にありがとうございました!(^^)
  • Kan
  • 2021年 05月09日 15時00分
[一言]
ここから先の文章は本編のネタばらしを含みますので、本編を読み終わられてない方はご遠慮のほどをお願い申します。また、本編を読了されてないと、意味不明の内容であることをお伝えしておきます。

【注意! この下ネタバレ!】

愛理です。
物語としてのミステリ、として楽しませてもらいました。

連載で一通り読み終わり、今回これを書くにあたって、気になった点をチェックしながら全体を読み返しました。それでわかったのは、頭から通して読んだ再読のほうが、ミステリ色が強く感じられ、謎解きには適しているみたいです。連載で読んでいた時は、謎を解こうみたいな気はなく、流れにのって読んでいた感じで、そのせいで物語としてのミステリという印象になっているのかもしれません。

しかし、そのへんを差し引いても、Kanさんには不本意かもしれませんが、ゆる系のミステリです。ゆるいといっても、悪い意味合いでなく、心地よい感触で、です。胡麻博士なんて、ネーミングからして愉快ですし、根来警部を主とした警察の動きも、「こち亀」か「三毛猫ホームズ」を彷彿させます。構成も、わりと寄り道が多いし、文章も柔らかく――ヴァン・ダインの諸作あたりを硬派としたら、今作全体に漂っている「ゆるさ」はおわかりいただけると思います。
ですから、キーワードに「ハードボイルド」とあるのが、僕にはまったく解せません。なにかの間違いではないかと思うほどです。それに、Kanさんのミステリーランキングのどこにも、ハードボイルド作品は見当たりません。で思ったのは、Kanさんは僕なんかより思考に柔軟性があり、寛容性や適応能力が高いのではないだろうか、だから今作も、Kanさんにしてみればハードボイルドであっても不思議ではないのかもしれないということです。そしてKanさんのそういった柔軟性や寛容性が、「ゆるさ」として作品に反映しているのじゃないかと思っています。
ただ、ゆるいといっても、読んでいて癖になる、妙味のあるゆるさで、Kanさんミステリの独自の持ち味となっています。根来警部や胡麻博士に人気があるのも、そのゆるさが、欠点でなく魅力になっている証拠です。ミステリとしてだけでなく、そのゆるさを楽しみに読んでいる人も多いと思われます。本編にもあるように、温泉につかるつもりみたいにして(癒しかも)読まれているのですかね。ユーモアとは違う、この「ゆるさ」は、あまり意識されてないかもしれませんが、小説を書くうえでの、Kanさんの強みです。

口寄せや密室の仕掛けに関しては、いいなと思いました。口寄せのほうが僕は好きです。密室のほうは、二階堂黎人氏の作品に、基本的な仕掛けが同じのがあった記憶があります。密室の基本的な仕掛けは出尽くしており、要は使い方だと僕は思っていますから、基本が同じなのがあっても問題はないです。それよりも、仕掛けは違うものの、「プレーグコートの殺人」と比較されちゃうかもです。もしかすると、挑戦されているのかな?
僕的には、口寄せや密室よりも、クリスティのような、如何にして意外性を引き出そうかという、騙しの仕掛けのほうが興味深く、かつ面白かったです。なろうサイトでは、そういう技法を使う人が少ないです。また、再読して気づいたのですが、構成において、省いてもよさそうな寄り道の段落で、ヒントを出したり、伏線や予防線を張ったり、説明の足らない部分を穴埋めしたりして、細かい点に気を配られているのがよくわかりました。たとえば、16と45と47での書き込みを参考にしないと、温泉でなにがあったのかの具体的な全体像を描けないようになっています。なかなか巧妙な遣り方をされているんだと感心しました。しかしそのせいで、状況などがわかりにくくなっている点もあります。温泉を例にすると、16で温泉の内部の構造を全部書けるはずなのに、

>ガラス戸の外は露天風呂だ

みたいな曖昧な描写ですませ。45で

>脱衣場の先に、曇りガラス戸があって、湯気のこもった浴場となっている。その向こうには、さらに曇りガラスと窓があって、その先は露天風呂という構造である

と、ようやく全体像の描写があるのですが、16と45に開きがあるせいでわかりにくくなっています。しかもこの温泉の内部構造は、トリックのひとつに関わってきているなら、16では「ガラス戸」となっているのに、45では、なぜか「曇りガラス」という表現になっているという、ややこしさ。
情報を分断して提示するというのは、真相を見破れなくするテクニックのひとつですが、同時にわかりづらくなって、推理の楽しみを削ぐという面もあります。横造さんたちが言われている、わかりにくいとか、描写が欲しいとか、もっと説明をとか、の指摘が出る原因のひとつになっているかもです。僕の場合は、連載で読んでいて、状況や情報を把握しにくかったりしたので、推理するのは放棄し、ミステリとして読んでいました。

23の、

>そして、祐介の右隣に座っている白いワンピースの少女は、日菜なのだろうと祐介は思った。

とか、口寄せをする巫女を「巫女」としか記さないあたりに、慎重に書かれているなと、書き手の立場からつくづくそう思わされました。45では、絢子の回想という前提にされてますしね。26では、さすがに無理な箇所もある気がしますが、さぞかし書きにくかっただろうと想像します。こういった、表現ひとつにも配慮されているあたりは、推理小説好きには嬉しいとこです。気づいてくれる人が少ないのが、残念です。

84の解明の箇所での、腕時計と碁石のロジックが面白かったです。ただし、

>もっと、大胆に橋の上に置けば良かったのです。

とかには、それだと罪を被せようとしているのがあからさまじゃん、だから落したんだという理屈もなりたちます。碁石に関しては、僕も根来警部と同じように、中指の指紋のついていない碁石をどうやって手に入れたんだと思ったので、そこから先がほとんど進展せず、なんで尾崎にそのことを尋ねないんだろうと思ったりしてました。

あと、64の大胆さは凄いです。再読で気づいたんですけど、まさに気魄の直球勝負。ここまでするかというぐらいネタをさらしながら、ミスリードもするという、肉を切らせて骨を断つレベルの大技。この大胆さは見習いたいです。

全体的な感想としては以上です。で、ここで終わればいいのに、そうしないのが僕です。ここから先は気になった点について述べていきます。レベルとしては、チェックしながら読むあたりです。推敲レベルといっていいかもしれません。最高に厳しい担当者レベルまではいってませんが、横造さんのように優しくないので、キツイことをお断りしておきます。また、加筆・修正などをうながすものでなく、今後の創作の際の、参考として役立てばの主旨のものです。

①僕も横造さんと同じく、お寺での口寄せという設定に冒頭で首を傾げたクチです。Kanさんのほうになんらかの理由があるみたいですが、神社ならまだしも、お寺で口寄せというのは異例で、違和感があります。「本来は岩屋で行うのですが、さすがに事件の現場でもあり、思わぬ支障があってもいけないので、無理は承知と彼岸寺に頼んだところ快く引き受けてもらえました」みたいなのを信也に言わせ、和尚をそういう寛大な人柄にし、「なんのなんの、供養を施す者としてわしも見学してみたいので、口寄せには参加させてもらうつもりですわ。ワハハハハ」と和尚に言わせれば、違和感は解消すると思います。

②>この七回忌で村に戻ってきたのよ…… 6
勘違いだと思いますが、普通七回忌は、亡くなってから満六年後に行う法要です。8にも七回忌は出てきます。13では、母の法事として出てきます。

③>その時に御巫菊江が行った霊媒は 19
気になったので調べたら、「霊媒」は人とか職業をさす言葉なので、ここでは「霊媒術」になると思います。ちなみに、「口寄せ」は職業と行為の両方の意を含んでいるみたいです。会話の中なので「霊媒」だろうと「霊媒術」だろうと問題はありませんが、さすがにそれが専門家の胡麻博士の発言だと、ですね。18の霊媒講義では、「シャーマニズム」を「シャーニズム」と連発されてもいます。

④八年前の岩屋での菊江の口寄せですが、なぜ一人で行っているんですか。憑依型の口寄せは、聞き手なり、誰かが一緒にいて成立するものです。霊を憑依するのでなく、降ろして対話する型になっていませんか。この箇所以外でも、「口寄せ」の扱いには首をひねってます。イタコさんに悪いとか、そういうことではありません。横造さんも指摘されたように、日菜と月菜はどんな修行と訓練をしたんでしょうか。僕が気にするのは、内容より、修行と訓練をした事実のほうで、したからには口寄せはできるようになったのかという点です。

>実際には姉も私も、口寄せの後、三十分以上も目覚めないことはほとんどなかったんです。 64

この月菜の言葉から、以前にも口寄せの経験があったのがわかります。そのときは成功したんでしょうか? 成功したのなら、なぜ五色村では霊が憑依せず、記憶が戻ったりするのか? 口寄せと記憶が戻るのは、トランスに関係なく、まったく次元の違う話です。成功してなかったら、それなのに、なぜ五色村で口寄せをしようとするのか? 未熟で、成功か不成功なのかも、曖昧模糊でわからないレベルなら、それはそれで、事前に説明されるべきです。いまのままだと口寄せが、死者降ろしもでき、予言も神託もでき、霊能者でもあり、超能力者でもあり、確実で曖昧で、コチラではこうアチラではああといった、なんでもありになっています。たぶん口寄せを、その守備範囲を越えたシャーマニズムの範囲で用いられているので、そうなってるのではないかと思いますが、シャーマニズムならなんでもござれの万能シャーマンなんてありえませんし、胡麻博士に、

>御巫菊江の口寄せは五色村の伝統を正確に踏襲しながらも、その内容のレベルを遥かに高めたものでした。 19

なんて言わせたりもしてますが、具体性がなく、設定が飛びすぎだと思います。要するに、簡単にぶっちゃけますと、「口寄せ」の使い方が、ご都合主義になっている感があるということです。僕は、程度や使い方にもよりますが、ご都合主義や偶然を使わなかったら面白い話は作れないと考えます。ただ今作での「口寄せ」は、事件や謎の重要な背景だったり要素だったりして、解明や真相にも直結しているので、どこまでできて、どこまではできないのか、などの整合性とその説明はあったほうがいいと思います。いまは、事件の真相という観点からは整合性があるんですけど、口寄せ側からだと整合性に欠けています。ですから読後に、けっきょく口寄せはなんだったの? 的な、土台がグラグラして座りの悪いような感触があります。

さて、第一の殺人に関連してです。

⑤>それでも、彼岸寺には人の目に触れない場所がありませんでした。 63
すり替わりを戻す件についてですけど、別室に運ばれる際に、「私がつき添います」と言えばいいのではないかと、思った人が多いんじゃないかと思います。そうすれば別室で、誰にも見られず二人きりになれるし、入れ替わる機会はいくらでもあります。口寄せのあとに意識がなくなるのは、④での「三十分」発言でもわかるように、事前に知っていたでしょうから、打ち合わせもできたはずです。様子を見に来られて、いないのがバレる危険がある温泉での交替より、別室のほうがずっとよいはずです。

⑥温泉に行ったのは、すり替わりを戻すのが本来の目的なのに、どうしてそれを日菜と月菜は実行しなかったのか? 日菜は絢子と一緒にあがって、行きたいとこがあると絢子に言って別れればいいし、月菜は、日菜たちの動きを見て彼岸寺に戻るというふうに実行しても、二人に支障はないんですよね。かえって、そちらのほうがスムーズです。日菜が精神的に動揺していて、月菜もそうだったから、本来の目的を失念していたとするのも、うーんです。だって、

>「私には背中の傷があるから、あなたには演じられない」 64

>「絢子さんの前では、私の振りをし続けなさい。私には行くところがあるから」 64

という具合にしっかり理性が働いるんですよね。47の絢子との湯船での会話も問題なかったみたいですし。それなのに、なぜすり替わりを戻さなかったのか?
それと、温泉のとこはあまり突っ込みたくないんですけど、47での日菜に扮した月菜が、絢子の目の前で浴場に入る時ですが、あとずさりしながらうしろ手で戸を開かない限り、裸の背中を向けるはずです。それなのに、脱衣所は湯気もないのに、背中の真ん中にあるはずの大きな傷跡がないことに、なぜ絢子は気づかなかったのか。小さな傷跡でなく、大きな傷跡となっていますから、ですね。月菜が裸になるのをじっと見ているのですから、背中を向けた時だけ見逃したとするのもおかしな話になります。

>そして、姉には露天風呂に移動してもらおうと思ったんです。 64

そう言っている月菜にも、背中を見られまいとする気遣いなんてなかったみたいですしね。

⑦>尾崎蓮也は、彼岸寺付近で日菜さんを探していたのでしょう。(中略)ところが、その途中で尾崎蓮也と遭遇したのです。そして、二人は橋の上まで行きました。 85
厳密には、尾崎の行動にでなく、祐介の推理というより想像に対しての気になる点になります。
まずは、どうして偶然遭遇した尾崎に、彼女が日菜であることがわかったのか? 白いワンピースでなかったからでは、おかしいです。服が変わっているせいで、日菜なのか月菜なのか区別がつかないとなるはずです。じゃあ髪型か? しかし二人は入れ替わったりしてるのですから、髪型だけを決め手とするのは難しいでしょう。では、日菜が自分の口で言ったのか? 月菜に自分の振りを続けるように言い、それがどうなってるかもわからないまま、口寄せでのすり替わりに気づかれたくない日菜が、自分から言うのは考えにくいです。となると、尾崎が天才的な直観の持ち主か、聞き出しの天才か、脅すか暴力でも使わないとわからなかったことになります。それに、橋の上に行くまで、日菜と尾崎がどういう感じだったのか、僕には想像がつかないです。
また、尾崎は彼岸寺付近のどこをどう探していたんでしょうか? 日菜を殺害するつもりなら、別室を見張るか、すり替わりを戻すタイミングを狙うつもりで、日菜に扮した月菜を見張っていたほうがいいのではないでしょうか。

*この場合、僕だったらどう設定するかを大雑把に書いてみます。日菜を見かけた尾崎は、彼女が二人のどちらかわからないので、とりあえずあとをつけます。そのうち、岩屋に向かっているらしいことがわかり、それなら日菜の可能性が高いと思います。で、橋の前あたりで背後から「岩屋でなにをするつもりなんだ」と声をかけ、その反応を見て、「君は日菜さんだね。僕にはぜんぶわかっている……」から初めて、すり替わりと記憶が戻った件の話をし、自分を味方と思わせて安心させて、彼女が日菜であることを彼女の口から確認して殺したことにします。

⑧腕時計に関してですが、27では浅い川となっているのに、84の祐介の推理では

>川の底では、果たして、見つけられるかも分からないところです。 84

となっていて、深いようにも見えます。どっちなのでしょうか? 27での描写を読む限りでは

>川の流れに弄ばれ、衣服をひらひらと揺らめかせながらも、手足が岩肌に引っかかって、とどまり続けている人影があった。
 それは人魚のように美しかった。 27

>祐介は、清らかな水が流れ続ける川を見下ろせる土手の上に立っていた。 27

衣服がひらひらし、岩肌に人魚に清らかな水となると、流れの急な澄んだ渓流のようなものがイメージされ、それでいて遺体が流されてないのですから、浅手の川なのではないかと考えられます。では、それなら、どうして尾崎は落した腕時計を拾いにいかなかったのかという疑問が生じます。そうじゃなく、拾いにいけないような深い川だとしたら、落して二日も経っているのに、どうして納得のいく説明なり対応策を用意していなかったのかという疑問が出ます。それに第一、祐介の説だと、

>彼は日菜さんとの格闘の末に、足で時計を川の底に蹴り落としてしまったのです。 84

そんな腕時計を落した川の場所に、遺体を落したりするでしょうか。遺体を川に落したあとで腕時計がないのに気づいたのだと言われるなら、絞殺するためにわざわざ腕時計をはずすような注意深い人物が、そのはずした腕時計のことを、遺体を川に落すまで忘れているなんてことがあるでしょうか。

⑨尾崎についてはですね。口寄せの場で、記憶であることや、すり替わりを即座に見抜くなんて、ややスーパーすぎるという気もするのですが、それをヨシとしたら、「ご」がなにを指すのかも尾崎にはわかったはずです。祐介の説でも

>そして、口寄せの中で自分の外見が語られていることも分かり、

となっています。だとしたら、45の温泉で、自分から声をかけ、根来と祐介の前で火傷の跡を隠そうともしないのは、おかしくないでしょうか。

*ここでちょっと第一の殺人を僕なりに総括しておくと、irisさんが、タイト過ぎる、時間に余裕を持たせてもよかったのではないかと言われてましたが、僕も同意見です。咄嗟に思いついた犯行なのでどう仕様もないんですけど、それでも、余裕がなさすぎて、綱渡り状態になっているように思えます。もし日菜を探しだせなかったら犯人はどうしただろうと想像しただけで、あやういバランスの上で、無理してどうにかなっている話であるのがわかります。余裕をつけるには、遺体の発見を数時間後の夜にでも変更して、その後のお話の全部を変えるしかないです。

⑩第二の殺人で絢子を殺す動機が、いまひとつわかりません。

>月菜さんに心理的圧迫を加えるために行ったのが、第二の殺人です。 84

絢子を殺すことで月菜にショックを与えることはできるでしょうが、ショックだけなら、絢子以外の人物でもよかったはずです。祐介によると、絢子を殺すことですり替わりの真実を知るのが自分しかいないというプレッシャーをかけたになっていますが、63と64での月菜の告白を読む限り、信也への疑惑と姉が殺人者であることが告白の枷になっていて、真実を知るのは自分しかいないみたいなプレッシャーは、まったく感じられません。尾崎は、なにをどう考えて心理的圧迫になると思ったのでしょうか。
それにそもそも、尾崎が月菜に圧迫をかける必要性があるのは、温泉でのすり替わりを告白してもらうことで死亡推定時刻を広げ、善次にも犯行が可能であったことにするためです。
しかし、どうして尾崎は、月菜が告白すれば死亡推定時刻が広がり、善次にも容疑がかかることになるとわかったんでしょうか? 温泉でなにがあったのか、時刻の細々とした配分、善次のアリバイ内容。そういった諸々のことを知らないとわからないですよね。日菜や警察が、そういった情報を与えたとは考えられません。55と56の根来ですら、アリバイがない男は尾崎だけだとは、尾崎には言っていないほどです。

⑪仏像の窃盗の件の扱いが、唐突だし雑です。少しでいいから、なんらかの伏線があったほうがいいです。そのあとの月菜の告白と大いに関係していますし、紙を挟んだとか細かい配慮もされているので、もったいないです。それと、彼岸寺のセキュリティーはお粗末となっているのに、なぜ信也は倉庫の裏の仏像を、夜にでも、回収しに行かなかったのでしょうか。
ついでにここで述べますが、十六年前の事件の扱いは、輪をかけて雑(大雑把)です。高川先生がどういう状態での自殺だったのかの説明もないなら、最後に自殺に見せかけて殺したでは、読者は「なにそれ?」としかなりません。それだけにとどまらず、列挙したら切りがないほど、全体が説明不足です。あと、御巫遠山の印象や存在感がなさすぎます。「そんな人いたっけ。それ誰なの?」レベルです。重要な役回りの人物ですから、登場場面を増やすべきです。

⑫>犯人は、斧を使って、無理矢理、この鉄の扉をこじ開けました。そして実際には、この時に扉の閂は壊されたのです。 81
密室トリックのこの部分、さらっと書かれていますが、内側からの閂錠の鉄の扉を、どうやってこじ開けたのかぜひとも知りたいとこです。しかも閂が壊れる方法で、鉄の扉に、道具は斧でですよ。僕としては、密室以上にそちらのほうが不可能な気がします。よしんばそれが出来たとして、つぎに、そんなことして扉の外側に傷は残らないのでしょうか。村人たちは傷に気づかないのでしょうか。それと、菊江の支えがなくなった扉は、一撃で開くはずで、村人はその呆気なさに「あれれ?」と思わないのでしょうか。参考までに書いておくと、前記した二階堂氏の場合は、支えがなくならない設定になっていたと記憶しています。

⑬>また、閂には誰の指紋もついていなかった。菊江も、日菜もこの閂には触っていなかったのである。 78
犯人が入る時に扉をこじ開け、それで閂が壊れるからには、その時閂はかかっていたことになります。ではその閂をかけたのは誰なのでしょう? どうして指紋がないの?
あと、この密室の場合、扉が外でなく内側に開くタイプであることを、解明の前に提示しておいたほうがいいです。

⑭岩屋の殺人に関しても、全体的に説明不足を多々感じます。まず、時間の流れが、夜更けぐらいしかわからないです。犯人が立ち去って、どれほど時間が経って村人たちは岩屋に来たのか。もし長いとしたら、その間日菜はどうしていたのか。タイミングよく、犯人が出てすぐだったとしたら、村人の問いかけの声が日菜には聞こえたはずで、なぜ反応しないのか。体当たりの振動で菊江が意識を取り戻し、日菜が包丁を抜くのだけど、血を浴びた日菜は叫び声もあげないのか。

> 日菜は気を失っていましたが、その場で目を覚ますと、ひどく恐ろしい目にあったようで、しばらく大声で泣き叫んでおりました。 11

どうやら、声が出ないわけじゃないみたいです。事件当時の日菜は小学五、六年生にあたり、それぐらいの年齢の子供が、失神でもしない限り、扉の向こうに人の気配があるのに、なにひとつとして助けを求めないというのはやや無理があります。発見者の村人は複数表現がされており、斧を用意する間があったとしても、扉の前から誰もいなくなるとは思えないです。また、岩屋の内部が描写不足なので、木箱だけが浮いちゃってます。それ以外では鏡しか書かれてないです。
つぎに微妙なとこですが、

>その胸元から腹部にかけて……つまり胃のあたりですが……赤黒く濁った血肉が噴き出して、床に流れ出しておりました。 11

というのが菊江の遺体の状態です。これを読む限り、包丁が刺さっていたのは胃のあたりと考えていいみたいです。で思うのは、腕を振り上げて刺して、そんなとこに刺さるのだろうか、ということです。ちなみに、

>大きな疑問は、さらにもう一点ある。現場には、出刃包丁が落ちていた。それは殺人の凶器だ。犯人は凶器を持ち去らなかったのだ。 81

こういう提示をされたからには、なぜ犯人は凶器を持ち去らなかったのか? の答えを出さないといけませんが、それがないです。

⑮>第四に月菜さんの発言にのっとった殺人を行うことにより、月菜さんに容疑をかけることでした。 85
この「月菜さんの発言」が、どの発言を指すのかがわからないです。もしかして「月菜に扮した日菜の発言」のことですか。でもそうしたら、日菜の発言にのっとった殺人で、どうして月菜に容疑をかけることができるのかが、今度はわからないです。

さて、以上いろいろ書いてきましたが、ここまでを読み返してみて、推理小説を仕上げるのはほんと大変な作業だなと、我ながら思います。辻褄を合わせて、不自然でなく、違和感なく、話を仕上げなくちゃいけないのですからね。最初に述べたように、Kanさんのはゆる系のミステリと思ってますので、そういう作品に、上記したような突っ込みを入れるのは野暮もいいとこです。が、山椒は小粒でもぴりりと辛い。ゆるい心地よさの中にも、ぴりっとするとこはぴりっとしたほうが、作品がいいものになるのでは、で書かせてもらいました。次作からの参考にでもなればいいんですけど。

最後に、横造さんの感想返信で、横溝正史風を気にされてましたが、僕に言わせればまったくそんなことはないです。たぶん多くの人が、村、土俗、怪異趣味、風習、見立て殺人といったものがあれば、横溝正史風とされているんだと思います。間違いとは言いませんが、それは表面的な見方で、村とかの表層部分を取り払って見たほうが、正史の特徴がわかります。横溝正史は日本のクリスティだの僕には、今作は横溝正史の影響はありますが、そこまでで、正史を目指したものではないです。

で、横溝でなく、Kanさんには伊坂幸太郎氏あたりはどうだろうかと、僕は思ったりします。あの感じで謎解き小説というふうにです。または森見登美彦タッチでミステリ。森見氏を意識すると不思議ミステリになりそうです。森見氏は僕も考えるんですけど、Kanさんのほうが僕よりその線は上手そうです。制約の多い謎解き推理小説より、自由度の高いミステリのほうが、もしかしたら腕を振るえるかもです。

頑張ってください。

長文失礼しました。
おつき合いありがとうございます。
  • 投稿者: 愛理 修
  • 男性
  • 2017年 11月16日 21時09分
愛理 修さん、ご感想ありがとうございます!

昨日、お伝えした通り、こちらの都合で二回に分けてお返事をしております。こちらは後半です。

【後半】

 最近、寒さが増しておりまして、紅葉も一段と綺麗になってきておりますね。秋冬こそ、ミステリーの季節と思っておりますので、非常に嬉しいです。余談はともかく……(笑)

 浴室の描写は、お察しの通り、意図して分けて書きました。ただ、双子のすり替えに関しては、当初から刑事捜査によって暴かれる予定でしたので、多少アンフェアでも良いかなと思っていたところでもあります。ところどころの分かりにくさは、世界観を綿密に作り上げて、描写をしていく、力が不足していたかなと思います。

 五色村という村は実在しませんので、そこで旅情を楽しんだり、事件が起きたりという程度のことはまだしも、歴史があり、独特の習俗がありというところに関しては、非常に難しかったです。それが①でご指摘の、寺院での口寄せという問題につながるかと思います。僕は少なくとも、仏教と神道という問題に関しては、出羽三山のように神仏習合の名残を残した習俗は、地方にはまだあると思うので、この巫女がいたり、寺だったり、屋内で口寄せをしたりという点は、あまりおかしな気がしないでフィクションで書いてしまったのですが、皆さまが違和感を感じる結果になったことは反省点だと思います。

 これは当初(歴史的な話で、おそらく平安時代ぐらいの話でして、現在の仏教を批判するものではありません)寺院内である種の作用のあるものを焚いて、それを堂内に充満させて、三日三晩でしたか? 唱え続けて、そしたら、仏像の頭部がぱかっと開いて云々というやつを参考にして、やはりそうした話にしようと思ったのですが、ぎりぎりでやっぱり、それは駄目だろうということで、何故か屋内なのに、蝋燭が揺らめいているだけの状況になりました。

 ②これは、完全にミスですね(汗)以前も初七日を間違えたことがありますが、このミスは、少し全体の調整をしなければなりませんね。

 ③これも、ミスですね。ありがとうございます。修正します。

 ④岩屋で、巫女が口寄せの修行をしていたということですが、何故一人で行っていたのか、というご指摘ですが、これも参考不足でこのような結果になったかと思います。エクスタシーなのか、ポゼッションなのか、ということであれば、間違いなくこの口寄せはポゼッションであり、ポゼッションの、しかも対話型においては、常に聞き手がいなければおかしいということですね。僕は、修行ならば一人で行っても良いと思ってしまったのですが、これも修行の実態の参考資料がないことが原因でした。

 修行の実態に関しては、東北地方型のシャーマンは主に苦行をするということですが、住み込み・通いの後、水行、断食行を経て、初おろしに至ることは調べていました。それで、月菜、日菜は初おろしの後、奈良の方で数回に渡って、口寄せが行われていて、母の口寄せに関しては、まだ一度も行っていない、という段階だと捉えています。それについて、説明不足であったと思います。そして、本作はミステリーであるため、口寄せ、そして一切のシャーマニズムに関しては現実的、否定的な見地から書かれていますので、口寄せが成功したにも関わらず、なぜ霊魂が憑依せずに、記憶が戻ることになったのか、という問いについては、はじめから、この種の口寄せの結果は、トランス状態になるだけであって、霊魂が巫女に憑依することはないという立場を取らせて頂いています。それがまず本作の根底にありながら、やはり完全にそれを否定せずに、最後どちらともわからずに終わらせた。つまり、口寄せの実態を曖昧に終わらて、かえって、自然の風景の方に魂の行方を暗示させたりと、そもそも、本作の死生観をはっきりさせないでいたせいでもあるかと思います。いずれにしましても、この五色村の巫女の習俗は、日本全国や世界中のシャーマンを参考にしたため、一貫性のないものとなってしまったかと思います。これも、リアリズムよりも空想を愛するが故に、一貫したモデルを持たないでだらだらとやってしまったということ、それに口寄せの設定を徹底しなかったことが、所々に無理が出てしまったかと思います。ありがとうございます。次回の参考にさせて頂きたいと思います。

 ⑤この別室に入らずに温泉に行かせたところは、やはり、かなり無理がありましたね。自分でも分かっていましたが、どうにも、温泉に行ってもらわないと困ると思いまして、作者の都合を優先した結果だと思います。彼岸寺から離れたかった理由でもあれば良いですが。こういうところは、かなりあるかと思います。双子のすり替えに関しては、特に無理がたたった感じですね(汗)⑥も同じで、やはり二人に戻られるとどうしようもないので、日菜は、月菜に絢子の足止めをさせたと、なんで絢子の足止めしなきゃいかんのか分かりませんけど、二人でこの後、どこかに行くとかなら分かりますけど、よほど絢子が粘着質な人間だったのか、難しいですね。背中については、あまりはっきりと書きませんでしたが、やはり見られないように隠しながら、急いで移動したというぐらいしか想像できませんね。ただ、これは事前に計画されたことではないので、見たか見なかったかは、結果論だと思います。ですから、これは、月菜や絢子の心理描写などをもっと描いて、なにかしら、説得力を持たせるべきだったと思います。

 ⑦これは僕の作品の場合、大概、最後に犯人側の視点から事件を語るシーンがあって、その時になんでも理由づけをして説明するようにしているのですが、今回、事件に関しては、羽黒君の推理だけですので、もう細かいことが実際どうなっていたのか、分かりにくくなってしまっている気がします。これも、最後の早期完結の弊害ですね。どうも、いかんですね。

 参考例を教えてくださって、ありがとうございます。確かにそれならば自然ですね。

 ⑧川については、非常に曖昧な記述ばかりで申し訳ございません。この浅いというのも、相対的な記述で、どれぐらい浅いのか判然としないで、すみません。相対的な記述と言っても、ドナウ川や長江と比べて浅いというようなふざけたことは言いませんが、やはりある程度、浅くても深いところはある設定です。殺害が行われた場所、すなわち腕時計が落ちた場所と、死体を落とした場所の、位置関係含めて、さまざまな疑問が起こると思います。尾崎君は、腕時計を取りに現場に行く勇気もなく、対応策も貧弱です。

 ⑨尾崎君は、スーパーな人間ですね。でも、あの八年前の殺人の真相を知っている人間からしたら、むしろ、過去の殺人のことを語っているようにしか聞こえない気もします。それで、尾崎君が火傷の跡を見せびらかしていたのも、大変に危なっかしい人間ですが、小さな村のことで、火傷の跡のことはまず周知のことでしょうし、わざわざ隠そうともしなかったのでしょう。この火傷の跡も、エピソード不足という感じがありますね。

 ⑩これは、尾崎君が善次のアリバイ、絢子と月菜が分かれた時刻、日菜の死亡推定時刻を知っていたとしか思えません。尾崎君は、ここに至っても、限りなくスーパーな人間ですが、水面下でどのように情報が彼の耳に入ったのか、この点をやはり彼の視点から、多少不自然や偶然があったとしても、語らせるべきだったと感じています。

(11)やはり、仏像についてもっと掘り下げるべきでしたね(汗) それに、高川氏の自殺に関しては、かなり削ってしまいましたので、やはりまずかったですね。このあたり、動機に触れる部分は、五十枚程度、短くしてしまった感があります。このあたりをのことを、最後に盛り上げようと思っていたのですが、小さくしぼんで終わってしまった気がしています。

(12)(13)(14)これは非常に、問題のある部分ですね。かつて、シリンダー錠の方で、体当たりでやったことがありますが、そうするとそんなに不自然ではなかった気がします。閂を、斧でっていうのは、まずいですね。それでも、菊江や日菜が、内側から閂を閉めたという可能性が残ると、密室になりませんから、指紋をなくすなりしなければならなかったのですが、そうなると、今度は誰が閉めたのかよく分からないということですね。少なくとも、犯人が現場の指紋を拭いたのだと思います。ご指摘の通り、内側に開くということもはっきりと提示しておくべきだと感じました。

 日菜があの状況で叫び声を上げなかったのは、むしろ自然だと感じています。日菜は、その時、外部からの呼びかけがあったにせよ、少なくとも、外部からの浸入者を恐れて木箱の中に隠れた面もあるでしょうし、恐怖心は声を出なくするものだと思います。そのあたりのことも、やはり心理描写で、説得力を持たせるべきだったと思います。

 その後のことも、やはり出刃包丁を振り上げてから、そのまま一度に刺せたのかなど、尾崎君の視点からの供述がないので、色々と疑問が出てきていると思います。それで、やはりこのことは最後の方ではっきりと書いておくべきだったと感じています。

 (15)これは、月菜の発言と周囲に思われている日菜の口寄せのことです。そして、日菜さんの発言だというのはあくまでも真相がそうであるだけであって、それが月菜さんの発言であるという認識は共有されています。事実、口寄せの内容に基づく見立て殺人が進むことで、彼女は疑われていると思います。説明不足であったかと思いますので、加筆修正、等々検討したいと思います。

 ご丁寧なご指摘、ありがとうございました。ミステリーを書くのは、なかなか骨が折れますが、そこが書いていて楽しみでもあります。かえって、他の文学なんて読むと、どう批評していいのか分からなくもなりますから。僕のは、のらりくらりとした作品で、恐縮ですが、特に口寄せに関するところは勉強になりました。あそこが一番の挑戦でもあったのですが、力足らずなところがありました。フィクションながらもノンフィクションを織り交ぜていったりと、これからも試行錯誤を繰り返したいと思います。

 自分で感じましたのは、やはり説明不足な点と、設定不足な点が多かったということだと思います。やはり、50枚分、足らないなという気が致しております。後は密室トリックの問題がありますので、時間を空けて、また修正を施したいと思います。

 あれから僕もちょっと思い直したのですが、本作が横溝正史風と言えば、この作品は、五色村という村があり、霊媒師がいて、間違いなく横溝正史風だなと思いました。目指しているところは違いますけど。それで、今まで、残酷な事件を書くことにしているのですが、本作での日菜殺しは間違いなく残酷ではありますが、表現は控えめにしました。それで、これからはあまり人が死にまくらない作品にしようかとも思います。未定ですけどね(笑)

 伊坂幸太郎氏、森見登美彦氏、ありがとうございます。チェックして、検討してみますね。

 制約の多い作品、それは本作です(笑) 自由度を高めるとか、日頃から語っていながら、とんでもなく雁字搦めの作品だったという気がします。次回作こそは、本当に自由度の高い作品を書きたいと切に思いました。

長文のご感想、ありがとうございました。真剣に読んでいただいたのを感じて嬉しかったです。また、何度も読み返して、勉強させていただきたいと思います。それでは、次回作も頑張ります。
  • Kan
  • 2017年 11月18日 12時31分
愛理 修さん、ご感想ありがとうございます!

すごく長文のご感想をありがとうございます。目が覚めるようでした。それに、二度も真剣に読んで下さったようで、頭が上がりません。

こちらの都合で、二回に分けてお返事をお届けしますね。こちらは前半になります。


【前半】

 あらら、こんなにありましたか。やっちまいました。ミスだらけ。と言っても、ミスのない作品はいまだかつて書いたことがありませんが。

 五色村は、自分にとって色々な挑戦をした作品です。霊媒殺人もそうですが、民俗学っぽいものをからめたり、都会と田舎のコントラストを狙ったり、アリバイのない人が結局犯人だったりと、色々なことに挑戦しましたが、上手くいったものもあれば、不発なものもあり、結果的には突っ込みどころが増えてしまったかなと感じております。

 自分が好きな仏教をからめたのもはじめての試みです。もっとも、仏教ではなくて、シャーマニズムになりました。シャーマニズムというのは、仏教学や歴史学よりも、民俗学の範囲なのでよく知りませんでしたし、ミステリーにどう活かせるか、この点は実に悩みどころでした。それが、はっきりと定まらず、ご指摘の不安定感になっていると思います。

 小さくまとまった作品ではなく、大きなスケールでぶつかって砕けろ、と思っていたら、本当に空中分解しかかりまして、どうにか完結できたという感じです。狙いは多く、高いところにあったのが、眼高手底ということになって、上手く立ち回れなかったというところがありますね。

 物語のミステリー、それはある意味で、僕の希望通りだったかもしれません。中高生の頃は、僕もガチガチの本格推理小説を書きたかったのですが、今は推理小説らしからぬ推理小説を書きたいと思っています。

 ゆるいところが魅力ということで、安心しました。本当にゆるい人間なんですよ。そんな人間が書いたミステリーなので、硬派ではありません。ヴァンダインを、自分とはまるで違うなぁ、と思いながら読む感覚です。おまけに、ヴァンダインの推理小説作法を読んで「この堅苦しいのを、片っ端からぶち壊せばいいのか」と思ったクチです。

 仰る通り、僕は赤川次郎やこち亀の影響も受けています。さすがに根来警部は両さんではないと思いますけど、破茶滅茶なキャラクターは好きです。あとは「ハリーポッター」みたいに独自の世界を描く作品が好きですね。五色村はそういう訳で、リアリティのない、非現実的な感じになったと思います。

 それと今回、読者への挑戦を挟まなかったのは、謎解きに相応しくないミステリーになってきたな、と思ったからでした。それは、理詰めの本格推理小説というよりは、大衆の娯楽的な読み物みたいなものになってきたからでした。まあ、真相のロジックが飛躍的で不確かだから、読者への挑戦を挟むには都合が悪かったのもあるのですが……。

 口寄せや密室は、大真面目に考えました。メインは口寄せの方です。口寄せの意味の取り違えの方がメイントリックで、密室はそれに対応しているサブのトリックになります。口寄せに関しては、「獄門島」や「Yの悲劇」に出てくるようなやつを、豪勢に長文で、自分らしくやりたかったんです。

 お察しの通り、僕は史上稀にみる寛容でいい加減な人間ですので、本作をハードボイルドだと思い込んでいます。困ったものですね。と言っても、どう見てもハードボイルドじゃないだろ、というまっとうな視点に切り替えることもできる柔軟な人間なので、その点はご安心ください(汗)

 いや、僕のハードボイルドの定義づけが寛容というよりも、そもそも、本格も社会派もハードボイルド派も、僕は自作と関係ないと思っています。セクト化されるのではなくて、自分は自分の作風、自己流あるのみと思っています。といっても、一応は本格ミステリーということにしておいてほしいと思っています(笑)

「プレーグコートの殺人」も、本作とは基本的には無関係です。あの名作と比較されたら困ってしまいますね(汗)それと、僕が不可能犯罪を描く場合、最近は、好きで描いているのでなく、読者サービスで描いている場合が多いです。つまり、何かこう不可能犯罪がないと作品が地味になる気がするんですね。ところが、僕の正直なところは、謎の種類は、ハウダニットよりもホワイダニットの方が好きなのです。動機と言いますか。それで、今回も口寄せの方がメイントリックになっています。「なんで、口寄せであんなことを言ったのかな」という謎ですね。

 挑戦といえば、カーではなくて、クリスティに挑戦しようとして「一番疑わしい人物が、やっぱり真犯人」という、一周まわって意外になる真相を狙ったのですが、このブーメランが大きな円をまったく描いてくれなかったという……。これが、個人的に一番ショックですね(笑)結果、一番怪しい人物が、怪しいまま逮捕されて終わってしまいました。やれやれ(汗)

 騙しの技法は、苦労しました。なにしろ、誰でも想像すれば解けてしまうタイプの真相ですから、隠す方も必死です。本作では、推理する楽しみはほとんど皆無ですけど、とにかく、真相がばれてしまってはしょうがないと思いまして、足掻きに足掻きました。その足掻きを、かえって評価していただけたなら嬉しいです。

 とにかく、口寄せのシーンは「巫女」とでも書かないと仕様がありませんから書きました。でも内心、こんなところで「巫女」なんて書いたら、双子がすり替わっているのがばればれじゃないか、と思いまして、困りました。でも、すり替わっている場合と、すり替わっていない場合の両方を疑ってくれるかなと勝手に納得していました。常に選択肢は二つ以上ありませんと困りますからね。

 ロジックは、二回ひっくり返そうと思いまして、ああいうことをしたのですが、まあ、本作の弱いところだと思いますね。泣き所です。弱点ですよ。「よく、それで尾崎を犯人だと断定できたな、羽黒君」と我ながら思いました。

 64は、もうばれたらばれたでいいかということになったんです(笑)自分の中で。それぐらい、核心に迫りました。どちらにしても、ラストで真相を一度にばらしたのでは、ややこしすぎてよく理解されないと思っていたので、ここで半分ぐらいばらそうと。最後の最後で、「ややこしゅうて、よく分からん真相だった」と思われるのだけは勘弁なので。

 でも、この真相は、本来なら根来の刑事捜査で突き止める予定だったんです。刑事捜査によって徐々に暴かれてゆく真相と、名探偵の推理力で一度に暴かれる真相、二つとも用意して、二つとも味わってもらおうとしたのですが……。双子のすり替えも、月菜が自ら自白して終わってしまったので、思ったようなサスペンスは生まれず、上手く立ち回れなかったです。


 いやー、しかし、こうしてご指摘を見ると、けっこう突っ込みどころがありますね(汗) トリックに関するところは、やっぱり修正した方がいいですね。特に密室の扉の部分ですね。あとは、後半の書き足りないところ、これは我ながらまずいと思いましたね。現在、原稿用紙で350枚ぐらいになっていると思いますが、もともと、400枚程度の予定でしたから、やっぱり、最後は駆け足になって早期完結したのですね。この辺も、色々と考えないといけませんね。


 ご指摘に関しましては、後半でじっくりと述べたいと思いますのですが、ここで一旦、失礼します。

 後編へ続く……。
  • Kan
  • 2017年 11月17日 20時49分
[良い点]
中盤までは数回繰り返して読んだり、プリントアウトしてゆっくり読ませていただきましたが、後半は一気ですね。
とてもすばらしい作品でした!
執筆お疲れさまです。
読ませていただき、ありがとうございました。(#^o^#)//
[気になる点]
横造正史さまの指摘ももっともな所がありますねー。
説明を増やすと分かり易くなる所があります。
でもチャールズ・ミンガスが、
「単純なものを複雑にするのは普通だ。複雑なものを単純に、ごく単純にすること。それが創造だ!」
と言っているように、どこまで文字で表現するかって作家のジレンマがありますねー。(#^-^#)
  • 投稿者: 夢学無岳
  • 男性
  • 2017年 11月13日 19時57分
夢学無岳さん、ご感想ありがとうございます!

数回繰り返して読んだり、プリントアウトしてゆっくり読んだり……それはやばいですね、色んな意味で……嬉しくて顎が外れそうです(笑)

でも、やっぱり、分かりづらいところは多かったと思いますね。何しろ、自分でも手に負えない状態でしたから(笑)

ミンガスがそんなことを言っているのですか! よくは分かりませんが、抽象芸術って、混沌とした情報からの取捨選択が難しいですよね。ジャズが抽象芸術かは分かりませんが(笑)

この前、川端康成の小説を読んでいたら、やっぱり行間が凄いですね。僕の行間は、ぴったりくっついていて何もありません。お恥ずかしい(笑)
  • Kan
  • 2017年 11月13日 20時24分
[一言]
拝読しました。

今回は、公募の話を聞いた後なので、少しだけ厳しめに書いてみようと思います。普段はあんまり厳しめな感想は書かないのですが、敢えてです。お気を悪くされないで下さいね。でも書籍化された後でアマゾンレビューとか書かれたらもっときつい事が書かれるかもしれませんし、公募先の編集者からのコメントでも厳しい突っ込みがあるかも知れませんので少し慣れる事も重要なのではないかと思います。まあ、そこまで強く書くつもりはありませんけれど(笑)



最初の方で、月菜と日菜が奈良でどんな修行をしたのかの具体例を幾つか出して欲しい気がしました。より完成度が上がる気がします。そしてkan様ならそこも上手く書けると思います。

「記憶が戻らない方が良いとも思うのですが……」
「信也さんはずっと五色村に?」
「ええ、御巫家の屋敷にずっと住んでいました」

 上の文章の部分がちょっと唐突な感じがしました。


祐介は何か思うところがあったのかしばし考え、
「因みに、信也さんはずっと五色村に?」
と聞いた。


みたいな付け足しが欲しい気が少ししました。

 少し厳しめに云いますと、謎の牽引は良いのですが、事件が起こるまで少し長すぎる気がしました。私は平気ですが飽きっぽい読者はここで読む手を止めてしまう恐れもあるかもです。口寄せのシーンに至る所も御巫家に寄らず、いきなり彼岸寺でも良いのではないかと少々。

 そんな所でちょっと思った事ですが、巫女と寺。そして数珠。確かに恐山は寺になっていて、温泉もあり宿坊もあり、イタコも数珠を持っているようですが、イタコはあくまで季節的に恐山にやってきて、恐山の場所を借りて口寄せをしている存在だったと思います。なのでイタコが口寄せをする場所は恐山の敷地内ではありますが寺院内には入らず、テントのような物を張った中で口寄せをしていたと思います。(間違っていたら済みません)なので仏教とシャーマンの間にはまだ距離があるのかなと…… 和尚さんには興味があったのかもしれませんが、寺院内で口寄せをさせるのかなと思う部分が少々ありました。屋内の描写ぽかったので。まあ、そんな事を全然気にしない読者もいるとは思いますが、公募を狙うとなるとそんな部分も突っ込まれる恐れもありますので気をつけた方が良いと思いました。





 善次も堅いは良いが、脂肪も多かったので却下だった。(がたい)ですか?

 その後の行動。

 の部分なのですが、振り返るという形式ではなく。そのままの流れとして説明を聞きたい気がしました。物語としの流れを急激に止められたような感じもあります。それと口寄せで語られた事を、殺人予告として考察するのも早過ぎる気がしました。第一の殺人が起こってから、あれは殺人予告だったと検証しはじめる方がスムーズかと。




 ぐっと視界が開けた。まるで山の中といった印象だ。



 この文章にちょっと違和感を覚えました。山の中の印象は視界が開けない気がしますが……。山の中の谷間なら納得できる気もしますけど……。

33、34辺りになって状況が解り辛くなってきました。言葉が足りないというか何というか……

「三年前ですか。なるほど。分かりました。それと、犯人に心当たりはありますか?」



「三年前ですか。なるほど。分かりました」

 粉川はまた少し考える。

「それでは、犯人に心当たりはありますか?」



 この辺りは急がずじっくり説明した方が良いと思います。前半の読みやすく美しい文章が台無しになってしまいますよ。

 口寄せまでが文章構成含め本当によく出来ていて90点以上、そこからちょっと低迷といった感じです。事情聴取はどうしても単調になりやすいので、その間に何か別のエピソードを挟んだ方が良いかもしれません。30から41までがちょっと単調でした。飽きさせない工夫が少し欲しい気がします。

 (そして、高川俊二という人物の話がふいに話題になった)ふい過ぎ、唐突すぎる気が少々しました。ここは急がずに学芸員との会話シーンを作りその会話からこぼれるように高川俊二という人物を出した方が良い様に思いました。

60の第二の殺人からまた興味深くなってきました。そんな事を踏まえ第一の殺人の検証途中で第二の殺人が起こっても良いのではないかと少々思いました。38辺りで第二の殺人の挿入です。


小さな丸テーブルの並んだ足元の床、あれ、一つの部屋に丸テーブルが複数あるのですか? 状況が少し解り辛いです。それと善次さんの家の構造の描写も欲しいです。家の中で娘が殺されていたのが解らない程の大きな家の構造なのでしょうか? 

 えーと、本当に要らない余談ですが、敢えて書いちゃいました(汗)神保町の自宅。私は結構神保町に詳しいです。バイトをしていた事もありますし、神保町辺りに住んでいる知り合いもいました。最近は連絡をとっていませんけど……。神保町にはあまり人は住んでいる印象は薄いです。その知り合いも西神田とか猿楽町とか男坂女坂の下辺りに住んでいました。最寄り駅は神保町ですけど。ビルの二階に住んいるという形なら住んでいそうですが、塀に囲まれた一軒家となると殆ど無さそうな気がします。本当に余談です(汗)


 真相に関しては、かなり練られて作られているなと思いました。口寄せの使い方やその後の殺人、そして撒かれた証拠品などなど。真相にも納得出来ますし、さすがだなと思いました。面白いですし、本当によく出来ていると思います。




 ただ公募に出された際どうかというと些か弱い気がしました。それはどこか既視感があるからです。密室もQEDで似たようなトリックが使われているのを見た事がありますし、口寄せというのは斬新ですが、混乱した被害者が漏らした言葉を誘導して別の方向へ持っていくという流れは見た事があります。確かQEDの竹取物語や京極作品にもあった気がします。竹取物語の方では竹が光ったみたいな声、京極作品では背中に魍魎がいた…… みたいな証言です。

 それと色々過去を調べてみて思ったのですが、横溝正史風という作品は、5~6年、若しくは10年おき位のスパンで、受賞したり出版されたりしていると思います。私を含め書いている人は多いですけれどね(汗)

 最近の成功例では三津田信三先生の~は~べきものなりという刀城言耶シリーズがあります。こちらは受賞して出版されたケースではないのですが、受賞して出版されたケースでは、横溝正史賞の大村友紀美先生が思い浮かびます。ただやはりミステリー界のレジェンドと比較されるのは避けられませんし、超える事は相当に難しく思えます。アマゾン評価とかでも手厳しい事が書かれていますし、最近はそこまで横溝正史風として活躍はされていないように思えます。なので横溝正史風作品で攻めるならもっとアレンジが必要なのではないかと感じるのです。若しくは芦辺拓先生のように続編ぽいものを書くことを許可されるという状況に至れば良いのかもしれませんが、そこは難しいように思えます。いずれにしても、そんな部分も踏まえた上で公募作品を練り作られてみられる必要があるのかなと思うのです。

 なんだか厳しい目な感想になってしまって申し訳御座いません。kan様、頑張ってください応援しています。
横造正史さん、ご感想ありがとうございます!



 ご丁寧なご感想ありがとうございます。

 僕は、自惚れのような錯覚に陥って、完成度が伸び悩むことを一番嫌っていますから、横造さんのお言葉は、良い刺激として、本当にありがたく感じております。それに、厳しくと言いつつも、言葉を慎重に選んでくださっている、横造さんのお気遣いには、只々恐縮するばかりです。

 作品への愛情が深ければ深いほど、作者は時として落ち込むこともあるかもしれませんね。しかし、そこから気概と情熱を奮い立たせる跳躍力がなければ、やはり小説の生命も駄目になると感じております。少なくとも僕はそう考えて、今日までやってきました。


 柄にもなく、こんな暑苦しい言葉からお返事が始まってしまって恐縮です(汗)
親譲りの無鉄砲の戯言と思って、どうかお許しください(笑)


 まずご指摘がありました日菜、月菜の奈良での修行に関しましては、我ながら、調査不足と想像力不足だと感じております。御巫家について詳しく描けていないことも感じています。参考図書が揃わなかったのが一番の原因ですが、想像力で補うなり何なりすべきだったところが、ところどころあるかと思います。

 事件が起きるまでの長さに関しては、推理小説やミステリーの公募に挑戦する機会に、あらためて検討したいと思います。やはり、公募の場合には、色々意識しなければならないことがありますからね。気が引き締まります。なろうの次回作では、お言葉に反して、事件が起きるまでもっと長く書く可能性もありますが、そこはどうぞお許しください。未定ですけどね(笑)


 恐山は僕も旅行したことがあるのですが、はっきり言って五色村と似ても似つかない環境です。またイタコの習俗も作中の巫女との習俗とはかなり異なります。確かに、お盆の祭りで、イタコはあのお寺の前の空間にテントを張って、口寄せしています。イタコの映画と、余計ですが、映画の「羅生門」でも屋外でしたね。それを参考にしなかったのは、本当のシャーマニック・トランスというものを引き起こすのには、かつて仏教寺院の堂内で行われていたある儀式を参考にしなければならないと思ったからでした。しかし、それについて触れなかったのは、このことをはっきりと述べることは、やはり信心深い人が嫌がるからです。

 それはともかく、やはりこの作品において、恐山が意識されるのは知名度もさることながら「口寄せ」という表現を多用しているせいと思います。このことは、イタコの方々に大変申し訳ないので、前書きに無関連を示す注を加えようかとも思っています。

 

 それで、この作品の実際のモデルというのはどこかというと、地名については、これもかなり問題がありますので、この場でははっきりと述べられません。景観においては奈良のとある門前町と遠野であり、シャーマニズムのモデルは、イタコも一部参考にしていますが、主にモンゴルや日本各地のものを参考にしています。したがって、これらが誤解を与える可能性について、色々と考えさせられる次第です。


 事件について振り返るところに関しては、自分でも気になっていたところでした。さらに、ここから先が説明文になってしまったと思います。このあたりから、大きくストーリーが揺らいでいったと思います。強引にプロットに引き寄せようとするところも多々あり、その影響のひとつで、口寄せを「殺人の予言」または「予告」と登場人物に言わせてしまったのだと思います。つまり、心理的な流れよりも、予言と思わせる方向に持っていきたいという小説上の都合を優先してしまったのですね。


 違和感を感じる描写も次第に増えてきて、内容が分かりづらくなってくのも、僕の集中力の問題だと感じています。文章は集中力の問題なんだ、とかつて先生が言っていましたが、本当に没頭して書かないといけないと思います。それが、中盤の文章とストーリー展開に影響を及ぼしたのだと思います。

 文章も、取材も、情報量も、ストーリー展開の良し悪しは、そこに投じられている努力と集中力がかなり影響しますから、とにかくストイックにやりたいと思います。文章に関しては、また時間をあけて、修正を施したいと思います。


 真相に関しては、自分としては上手くいったところもあれば、完全に不発に終わったところもあり、悩みどころですね(汗) お気づきかとも思いますが、意味の取り違えというトリックは、もとを辿れば、横溝正史
エラリー・クイーンやクリスティなどに源流をもつもので、それ以前にドイルやポーがやったかははっきりと思い出せません。いずれにしましても、それぐらい古くからあるテーマを完全に自分なりのものにできるか挑戦した次第です。ですから、ミステリーの世界で、この手の意味の取り違えは、もはや新鮮さがないとも感じられてくるわけです。もっと言えば、これをダイイングメッセージの一種と捉えると、もっと変わり映えがしない在り来たりな真相に感じられてくるのです。ダイイングメッセージの多くは意味の取り違えですからね。


 僕の作品が横溝正史風というのは、よく言われていまして、特に前作と今回の作品は横溝正史風だという評価を頂いています。非常にありがたくお言葉を頂戴しています。ところが、ちょっと恥ずかしいのですが、僕は横溝正史の作品をあまり好んで読んではいません。それなのに、金田一耕助は探偵として好きというのは、おかしいのですけどね(笑)


 それなのに、横溝正史風になってしまうのはなぜかと自己分析しますと(これこそ、まさに余談ですが(笑))クリスティ、カー、ヴァンダイン、クイーンといった海外黄金期の作品と、横溝正史、高木彬光、鮎川哲也、坂口安吾あたりが築き上げてきた戦後本格探偵小説の作品を、中高生の頃に読み耽った影響だと思うのですよね。それが、推理小説のスタイルとして、僕の思考の根底を今でもがっちりと拘束しているんですよね。僕はその当時、社会派や新本格も好んで読みましたが、サスペンスはともかくとして、社会派ミステリーを執筆したことはこの十年間でたったの一度もありません。


 皆さまのお言葉を嬉しく思う一方で、僕が本格ミステリーを書こうとした時に、結果的にも横溝正史風になってしまっているとしたら、非常に複雑な気持ちにもなります。自分の求めている方向性とは違うのではないか、とも思っているんです。それで、知り合いにも「お前らしくない、お前の言葉じゃない気がするんだよ」と言われましたが、頷けることです。そこで、横造さんのお言葉にもあります通り、もっと自分の作風を模索すべきだと感じております。


 次回作はもっと自由なスタイルで、自由な小説を本音で書き綴りたいと思っています。(未定ですけどね)また、公募を目指すと言いつつも、また実験的で、風変わりで、世間受けのしない作品の投稿もあるかもしれませんが、そこは何卒、寛大なお心でお許しください(笑)



 この度は、ご丁寧なご感想ありがとうございました。横造さんの作品も期待しておりますので、熱心に読ませていただきますね。
  • Kan
  • 2017年 11月13日 17時12分
[良い点]
∀・)ミスリードな演出からよくぞ巧く結びついた感じの名推理でした。巧妙なトリックに至った事実といい、全く推理できませんでした(笑)ボクもまた大まかな流れのままに色々と推測を膨らませていましたね(笑)それを置いといても、全体的に見事なヒューマニックドラマを形成していたのはもう名作ミステリーとしての鏡でした。いやホント素晴らしい作品。そしてズバリ本作のMVPは胡麻博士でした(笑)最後の最後までみせてくれたぜ!!カッコいいです!!
[気になる点]
(´・ω・)百合子さん、あの子の面倒をしっかり優しくみたってくれ……今後のシリーズにて彼女が元気な姿で再登場することをひっそり願ってます。
[一言]
∀・)長きに渡る連載、たいへんにお疲れまでした☆今後も羽黒探偵シリーズ、1ファンとして応援したく存じます。またKan様のペースでいいので、ワクワクしてお待ちしております♪♪
IDECCHI51さん、ご感想ありがとうございます!

トリックに関しては、いつも心理的なものを意識しています。実は、推理自体も心理的な考察によって導きだされるものが好みでして、これから先、羽黒祐介は心理的探偵法に専念するかもしれません。分かりませんけどね。

今回は、個人的にはヒューマンドラマを発揮できなかった気がしています。やはり、中途で、犯人や容疑者の心情を明かせないせいでしょう。これから先、本格ミステリーでいくか、社会派ミステリーにいくか、純文学風ミステリーにいくか、分からぬのですが、いずれにでも心情とヒューマンドラマを強めていきたいという気持ちがあります。

胡麻博士は、頑張ってくれました(笑) 最後の決め台詞は、個人的には胡麻博士らしいと思っています。祐介の身近には、わりと根来警部や胡麻博士みたいな骨太で、わりと大味なタイプの人が集まっていますね。繊細な性格の似た者同士は、同族嫌悪ということになるからでしょう。

百合子さん、頑張ってください! ミステリーは、容疑者の再登場は控えるのが決まりみたいになっていますが、僕は出すかも、出さないかもしれません(笑)

次回作も頑張ります!
  • Kan
  • 2017年 11月10日 12時55分
[良い点]
完結、おめでとうございます。
巫女の口寄せというのが、事件をよりおどろおどろしい感じにしていて雰囲気が出てますね! 怖ろしい『予言』が表していた真実の意味が実は……ここ、暗号めいた感じもあってとても良かったです。
最後、胡麻博士もいいですね。今後のご出演を楽しみにしております(笑)
[一言]
実はこの『名探偵 羽黒祐介シリーズ』赤沼家~、白百合荘~、青月島~ときたので、タイトルも次は何色がくるんだろうと楽しみにしていました。
今回の『五色村~』を見たときは何となく、やられた、と思いました(笑)
とうあいさん、ご感想ありがとうございます!

皆さんに勘違いのないよう、語っておきたいのですが、今回の口寄せのシーンは、青森のイタコよりもモンゴル(?)のシャーマンなどを参考にしています。

予言の意味の取り違えを利用しました。僕はこの言葉の取り違えがトリックに発展するのが好きで、何回かこのパターンでやっています。今回は一番スケールが大きいと思います。
胡麻博士が、こんなに皆さんに愛されるとは思っていなかったので、思わぬ収穫でした。特に民俗系の事件で、彼を起用することになるでしょう。

今回、五色村という名前なのに何も五色ではないという……いつものことながら、色がタイトルにつきながら、ストーリーとはまったく無縁なのです。どうしても、色がつくと人名なり地名なりが映えるので、こんなことになってしまいます(笑)
  • Kan
  • 2017年 11月10日 12時32分
[一言]
長編完結おめでとうございます。それと、お疲れ様です。

密室トリックにしびれました。すごくいいと思います。
あと、回想の殺人というちょっと書きにくいテーマを、巫女の口寄せを手掛かりにして事件を解明するというアイディアが素敵です。私も次の作品では回想の殺人を書いてみたいなと思っていたので、先を越されちゃったって感じです。

前半のアリバイ崩しも面白かったのですが、20分というわりと短い時間で、登場人物一人一人ののアリバイの有無が調べられています。でも、1時40分に**しました、という目撃者の証言が実際にはどのくらい信頼できるのかを考えると、ちょっと時刻設定がタイト過ぎる印象を持ちました。たとえば、仮に1時40分に起こった出来事でも証言されるときは、たしか2時前だったように記憶しています、などと証言されることも普通にあり得るような気がするからです。もう少し時間に余裕を持たせてもよかったのかなと思いましたけど、ミステリーですからもちろん全然ありですよね。細かいことですみません。

次回作も楽しみにしています。頑張ってください。

  • 投稿者: iris Gabe
  • 2017年 11月08日 21時14分
iris Gabeさん、ご感想ありがとうございます!

密室トリックにしびれちゃいましたか。シンプルイズベストですからね。なるほど、口寄せを暴くことによって、回想の事件を解くということですね。僕の場合、霊媒殺人をテーマにしたくて、口寄せを先に考えたものでして……単に演技しているとか、脅迫されて言わされたとかいう真相ではつまらないので、どうしようかと考えた末に、言葉遊び、というか意味の取り違えでいこうと思って、結果こうなった次第です(笑)

アリバイ崩しは、正直手こずりました。タイトなのもそうですね。何よりも、このアリバイ崩しは、そもそもの目的が読者の疑いの目をアリバイのある人間に向けさせようとしたものですから、非常に難しかったです。このあたりのところを、綺麗なブーメランにして、犯人の意外性を出したかったのですが、はっきり言って上手くいかなかったです。これからも挑戦したいと思います。
  • Kan
  • 2017年 11月08日 23時37分
[良い点]
完結おめでとうございます!!

謎解きだけに止まらず、人間ドラマというか、登場キャラ達の深い心理描写が良かったです。

殺人事件なんて明るい話ではありませんが、決して陰気くさくなく、楽しく読めるのはkanさんの技量でしょうね。


[一言]
最後は栃木なんだ……(笑)

途中、横溝正史かと思うような、なかなか恐ろしい場面があって印象に残りました。

根来さんがやっぱり、いい味を出していますね!!
今回も面白かったです(*>∇<)ノ
  • 投稿者: 成宮りん
  • 女性
  • 2017年 11月08日 18時54分
成宮さん、ご感想ありがとうございます!

人間ドラマが描けたとしたら嬉しいです。この先、あまりトリック中心ではなく、ドラマティックなものを求めてゆくかもしれません。もちろん、トリックも必要ですが(笑)

さらっと描いていますが、悲劇も悲劇、かなりの大悲劇なんですよね(?) 動機や状況をよくよく考えてみたら、かなりの暗さでしたね。でも、探偵や刑事はある意味では、こういう暗さを中和する役割があると思うので、そういう意味でも根来さんには活躍してもらいました(笑)

最後は栃木という……五色村以外の村なら、いっそ群馬じゃない方が分かりやすいかという判断です(笑)

根来警部は、今回も暴れまわりましたね(笑)これからも暴れ続けることでしょう!
  • Kan
  • 2017年 11月08日 23時23分
[良い点]
根来さんや粉河さんの、刑事ならではのやるせない心情は、そうだよな~と共感しつつ読みました。

アクティブに動き回って頑張るすみれさんとか、謎めいた胡麻博士とか、登場キャラが生き生きしていいですね!!
[一言]
いよいよ、犯人が明らかになりましたね!!

しかし……羽黒さんも根来さんの足に下敷きにされたら、息が苦しかったでしょうね(笑)

謎の全解明まであと少し、ですか?!

続きを待っています~♪
  • 投稿者: 成宮りん
  • 女性
  • 2017年 11月05日 21時13分
成宮りんさん、ご感想ありがとうございます!

やるせない気持ちでいてこそ、刑事も輝ける気がします。というのは、人が死んでいるのに犯人を捕まえてハッピーエンドという話にはなりませんからね(汗)

すみれさんはアクティブになり続けています。何気ない行動の中に、根来警部の血を感じられるようにしています。しおらしいシーンも入れたいですが、根来警部のイメージが浮かんでしまってタフになってしまう(笑)胡麻博士も限りなく破茶滅茶ですね(笑)

いよいよ、犯人が明らかになりました。真相を語った後も、もう少し話が続きますが、実際、もうラストに差し掛かっています。今後の展開、乞うご期待!

根来の足は、金剛力士のように隆々としているので、かなり重いです(笑)


そして、エビ太もがんばれー!
  • Kan
  • 2017年 11月05日 21時50分
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