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[一言]
第2章 悪魔来たりて・Ⅳ 感想&解説

メタコム先生とモイレイン修道女の剣戟シーン。巧みに両者の立場を説明しながらの、息の合った口喧嘩。この二人仲が良いのでは。

こうした、よくある、宙を舞い斬り結ぶ人間離れした剣戟の描写や、ドラゴンなどのファンタジー上の怪物、天使や悪魔、魔女、ゾンビ等々、これら映画やアニメではありふれた存在にどう理屈をつけるか?

「神話も、魔法も、随分と安っぽくなったじゃないか」このエティエンヌのセリフが示しています。
つまり、すべて偽物であって、偽物であるからこそ、それらは実体となって現れることができるという逆説を採用しています。

聖体拝領が偽物になった途端、不死という実体となるように。

イエスの肉体の象徴としてのパンと葡萄酒を口にする聖餐式が、かたちあるもの(実証可能なもの)へと置換されたとき、実際に血と肉を食らって不死を得る「人身御供」となってしまう。
救世主が、吸血鬼やゾンビの元祖と化す。全く真逆のものになってしまうこの逆説。ヒーローものの裏返し、これを物語のコンセプトとする。

奇跡の陳腐化をコンセプトとすることによって、パンドラの箱を開けたように、魑魅魍魎や神話伝説の怪物が実体となって溢れ出す。不死の民というフェイクの数々となって。形而上にあったものを形而下に置けば、たちまち陳腐化する。
こうして、いわゆる英雄神話やお伽噺の心象風景を作品コンセプトが要求する仕掛けを作る。影が光を模倣するように、遺伝子工学技術が、神話や聖杯伝説などのおとぎ話を模倣する。
そんな世界観を提示しているのが本作であります。

マリアにあらわれた両掌、両脇腹の聖痕を指し、「我ら不死にとっては恩恵たる傷口」と語る、悪魔に扮した男。このセリフは白眉で、このおはなしがどういうおはなしなのか、改めて気づかされます。これはまさしく反キリスト的表現で、あまりに冒涜的で、大丈夫か?と思ってしまうが、映画エクソシストが大丈夫なので、きっと大丈夫でしょう。

  • 投稿者: tsubata
  • 2022年 06月23日 19時49分
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