感想一覧

[良い点]
主人公には「徹底的に欠落している部分」があるが、それを裁く側、主人公に最期の言葉を言わしめた男もまた、道具。
あんなことを続けていけば、この男もいずれ何かを欠落せざるを得ないだろう。いや、もしかするとすでに……

罪を憎み贖罪を求めるがゆえに新たな罪を作り出す。
人間の深過ぎる業、とでも言うべきものを感じました。

ギャー！と叫びたくなるような分かり易いホラーではなく、じわり、ズシリと、その「欠落」の重み、救われない痛みに心が侵食されていく「哀愁のホラー」とでもいいましょうか。

全体に暗いトーンの作品ですが、作者様が持っている断ち切れない人間性への希望が、ほのかな光にも似て見え隠れして、好きです。

タイトルにあるように、自分以外の誰かの幸せを願えること、は多分、人間が人間として生きる上で非常に重要なこと……救済、なんだろうなあ、と改めて感じました。

[一言]
あまり怖さに主題が置かれていないように感じて、これは果たして本当にホラーなのか？と少し思いましたが、ストーリーはとても面白かったです。話の流れが綺麗で着地も鮮やかだったので読後感がすごく良いです。