感想一覧

[良い点]
 いきなり「影を買う」という大きな違和感が、読者を作品の世界観へと引っ張り込んできて楽しい。
 この「僕」の葛藤と悔しさと悲しさが良く表現出来ていて、読み手に「僕」の強い後悔を訴えてきますね。
 こういった読後感のある作風はすごく好きです。
[気になる点]
 ここの慣習に合わせた空行の活用が、少し読みにくさに繋がっているのが気になります。

 冒頭一行目のリズムを崩してまで「一万円」という値段を倒置法で強調する必要が、本当にあったのかどうかを最初に考えました。
 しかしこの「一万円」という値段は「僕から見た女の子の価値」と「女の子から僕の価値」の絶望的な価値の差を表しているようで、非常に心苦しく、大きな悲しみに満ちた値段である事が理解できる。
 でも、やっぱり一行目で倒置法まで使って強調した「一万円」なのだから、どこかでその相場というか価値を、なんとなく察せられる程度で良いので書いておいて欲しかったかな。

>>運動場からは野球部の掛け声に混じり、下校中の学生のはしゃぎ声が聞こえ、廊下側の窓からは鮮やかな色をした夕陽が差し込み、教室は茜色の水の底に沈んでいた。
 この文は長くなっててダレていると思います。
 前半が聴覚情報ですし、後半が視覚情報なので、二文に分けるべきだったと思います。
[一言]
 何も考えず読める中二病ファンタジーが好きなので、普段それ系ばかり読んでいますが、久々にちゃんと考えて読まなきゃいけない作品を読んで、小説を学ぶ為に頭から煙出しながら文芸作品読みまくってた頃の感覚を思い出しました(笑)
 たまたま辿り着いた作品でしたが、面白かったです。
  • 投稿者: 勘太郎
  • 2018年 12月10日 18時11分
勘太郎さま、感想ありがとうございます。

拙作を丁寧に読み込んでいただけて光栄です。作家冥利につきます。聴覚表現と視覚表現を分けるというのは、なるほどと思いました。今後意識していきたいですね。

読んで色々と考えることもできるし、別に何も考えなくても直感的に楽しめるような作品を心がけています。両方の作品に精通している方に気に入っていただけて嬉しいです。
[良い点]
影を題材にした着眼点が良かったです。なんともしっとりとした作品に仕上がっていますね。
  • 投稿者: 石田 幸
  • 2018年 11月28日 18時57分
石田幸さま、感想ありがとうございます。

しっとりというのは確かにその通りですね。どこか切ない感じを汲み取っていただけたらと思っていました。
[良い点]
 良い。すごく良い。
 他の方の感想に先を越されましたが、文章表現が非常に綺麗。キンと冷やした鈴を鳴らしたような声、彼女の声に同意するように身体を揺らして笑う彼女の影。とっても素敵な描写です。憧れます。
 加えて構成の妙。もっと欲しいところで全部回収していく物語の畳み方は見事です。ラストが大好き。
[一言]
 これは、面白い試み。と言っては失礼でしょうか。いえね、普通、影を失った側の非日常を描くと思うんですよ。この場合。『バベルの塔の狸』的な。それを、それこそ、影を受け取った側の日常というのは、「出る」前の待機中の幽霊の哀愁みたいな、過剰な日常性というか、超現実ならぬ超日常の世界で。何を言ってるのか解らねぇとお思いでしょうが、私もです。とにかく、あり得べからざる領域への文学の浸食とでもいいますか、いや、それをこそむしろ文学的と捉えるべきなのではないかという、なんとも混沌とした感想を以って締めくくりたいと思います。
 今後の一層のご活躍に期待。
天理妙我さま、感想ありがとうございます。

文章表現を褒めていただけて光栄です。色々と迷った甲斐がありました。最後の描写も、少し短すぎるかなと考えたんですが、そのままにして正解でした。

日常性の話についてですが……すみません、ちょっと自分には理解が追いつきませんでした。個人的な考えとしては、影が売ることそれ自体がすでに非日常なのに、それが当たり前の世界の日常を描いているという点で超日常なのかもしれません。カメラの枠の中にすごいものが映っているのに、それには焦点があってないみたいな。あくまで自分の勝手な理解ですが。

今後もご期待に添えるように頑張りたいと思います。
[良い点]
 僕と彼女の関係がよく表されているところが良いですね。
 僕は尋ねる勇気もなく、慰める強さもない。だからこそ、きっと僕は彼女に近づけなかったのではないでしょうか(´・ω・`)
 2人は二度と会うことはないけれど、影だけが寄り添っているのは切ないですね。そして、影が消えてしまうところで孤独感が増す構成は素晴らしい!
[気になる点]
「紫雲の隙間から」〜「知らない」は、文章のリズムが良いですね。
「キンと冷やした鈴」「木枯らしが掠れた口笛」……。
 どうしちゃったんでしょう。いつもより、文章表現が巧み。
 でも、「教室は茜色の水の底に沈んでいた」は、ちょっとやりすぎ感があります。
[一言]
 影の相場がわからないのですが、1万円は安いのでしょうか、高いのでしょうか?
 くだらない質問ですみません笑

 羯諦さんは、切ない恋心を書くのがお上手ですよね。鼠が火鍋に飛び込む話も恋心を燃やす話も好きです! でも、たまにはハッピーエンドが見たい気もします(まさかのリクエスト)
  • 投稿者: 野田莉帆
  • 23歳~29歳 女性
  • 2018年 11月26日 21時58分
野田莉南さま、感想ありがとうございます。

もう二度と会えない人の影をこれからずっと携えて生きていく。そういう切なさを汲み取っていただけて嬉しいです。

文章表現については難しいですね。テンポはうまい具合にいったと思いますが、比喩表現も行き過ぎてはいけませんし。けれど、木枯らしが~の一文は自分でも気に入っています。

影の値段はめちゃくちゃ迷いました。安ければやるせなさが増す一方、安すぎると手放さなくない?と思われそうですし笑。相場としてはそこそこなんじゃないでしょうか。正直影が複数あっても邪魔ですし。

ハッピーエンドですか……。一番苦手なジャンルかもしれません。できる限り陸リクエストに答えたいですが、あまり期待はしないでください笑。
[良い点]
 すごく好みのお話です。最初の一文からスゴイ。
 主人子と彼女の気持ちがよく共感できましたし、影のストーリーもとてもよかったです。
 女の子が主人公を好きになれば簡単な話。それがとても印象に残りました。
 影を買い取る、面白かったです。
[一言]
 一番好きな話かもしれません。
  • 投稿者: えるえる
  • 男性
  • 2018年 11月25日 14時06分
えるえるさま、感想ありがとうございます。

迷いに迷って書いた冒頭の一文なので、そこを気に入っていただけて何よりです。あと、えるえるさまがこのようなお話が好きというのが少し意外でした笑。
[良い点]
 これはと感じた部分は、
>彼女の言葉に同意するように、彼女の影も身体を揺らして笑った。首を傾げ、肩を震わせ、風にそよいで震える木の葉のようだった。
というところでした。言われてみれば、影というのはけっこう躍動している。じっと見ていると、独立しているように見えてくる。そんな印象が目に浮かびました。
 また、そのあたりで、肉体と音のある影の動きも語られて、だんだんと現実感が無くなっていって、最後の、無音のなかの自嘲も痛みがありました。影だけがあることで、むしろこんなに寂しくなるなんて。人形遊びにふと醒めてしまう瞬間のような切なさを感じました。
  • 投稿者: 的野ひと
  • 23歳~29歳 男性
  • 2018年 11月25日 09時57分
的野ひとさま、感想ありがとうございます。

拙作の中にこれはと思わせるような一文を織り込むことができたようで大変うれしく思います。影に関しては、自分にとってはどこか切なさを感じさせる存在なんですよね。
[一言]
この人……自分の事を好きかもしれない。
そんな人わかりますよね。

生理的に無理な人とかには、自分の影という分身は売れない。売りたくない。

この人は嫌いじゃない。この人なら影を売っても良い。恋愛という形ではなかったけど、好感は抱かれていたのかな?

影の彼らは仲良く手をつなぐ。ifの世界で幸せになったかのように。

面白かった。
  • 投稿者: みかん
  • 2018年 11月24日 10時07分
みかんさま、感想ありがとうございます。

彼女も主人公に対して好感は抱いていたと思います。けれど、恋情とはまた別のものだったんでしょう。残念なことに。

恋愛という概念があるかはわかりませんが、せめて影たちは幸せになれるといいですね。
[良い点]
冒頭の一文に尽きます。
もうストーリー要らないくらいに素晴らしい!!
むなしさも妖しさも全て込められていて、それが読み取れる。
これは凄い。
  • 投稿者: さくや
  • 2018年 11月24日 02時11分
さくやさま、感想ありがとうございます。

そうなんです、冒頭の一文なんです笑。買い取り金額やら語感やらを何度も修正してたどり着いた一文なんで、そこに目をつけていただけて大変うれしいです。ありがとうございます。
[良い点]
忘れていたことを思い出させてくれるお話ですね。子供の時は良く影で遊んだ気がします。なつかしい記憶が呼び覚まされました。
坂井ひいろさま、感想ありがとうございます。

私も子供の頃にはよく影で遊んでました。昔はあれだけ遊んでいた影も、そういえば最近はあまり注意して見てないなぁと思います。
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