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[良い点]
 「小説ならでは」という仕掛けを入れて、読者を楽しませようという姿勢が素敵です。書き手側も楽しめているように感じますね。

 それから、クスノキ先生の作品は何本か読ませていただいておりますが、文章単体で見たとき、今作はかなり読みやすかったです。
 重たい内容ですが、それもあってあまり苦労なく最後まで読めたかなと。
 雰囲気ですかね? 全体を通してアンニュイな感じで統一されていて、それが心地よかった、みたいな。

 あと、杠先生のキャラクターがけっこう好きです。一本芯が通ってるように感じます。
 彼がそういう考えを持つに至った過程が知りたくなりますね。
[気になる点]
 考え方の領域なので詮の無いことではありますが、「いじめられる側にも原因がある」という論調は挑戦的過ぎるかなぁと思いました。
 今回のお話だと、かなり美里に対して酷に感じました。あまり彼女の背景が描かれていないから、尚更その印象が強まっていると思います。

 美里関連でもう一つ気になったのが、いきなり現れた知らない人に言われたくらいで、高校生まで持ち込んだ強固な「悲劇のヒロイン症候群」があっさり壊されたりするかなぁ、という点です。「ほら、誰も私のことを分かってくれない」という風になる気がします。
 その後の手紙と「人殺し」がトドメになっているのは分かりますが、そこへ持って行くための「揺らぎ」が早かったかな、と。

 どちらも短編という限られた文章量の中では難しいかと思いますが、一感想として書いておきます。
[一言]
 さて、ここからは本当にただの感想です。
 「人を救うとは」というのが本作の主題かと思いますが、難しいお話ですよね。僕自身も記憶を辿ってみましたが、「誰かに救われた」とはっきり言えることはないかもしれません。
 「人は自分で勝手に助かるだけさ」という台詞が某物語シリーズにもありますが、確かに、最終的に行動するのは自分です。
 他人にできるのは結局、「きっかけを与える」ということくらいかもしれません。それで人生が変わるか、救われるかは、その人の行動次第と。

 もう一つ印象的だったのが、「もう僕は嫌なんですよ。大切な人がいなくなってしまうのが。誰かを救うためには、その人の人生に深く入り込まないといけない。僕には到底できません」という台詞ですね。
 ここでクスノキ先生の仰ってるのは、「人を救うのは不可能ではない。とても難しいから、できる人も、相手も限られるけれど」ということだと愚考致しましたが、はてさて。

 とまあ、こんな風にいろいろと考える要素が沢山あって、ヒューマンドラマの短編としていいことだな、と思いました。
 今作は掲載予定作品の番外編ということなので、杠先生の本編登場を楽しみに待っています。

 長々と失礼致しました。
感想ありがとうございます。

読みやすくなっているという意見は素直に嬉しいです。特別意識したつもりはなかったんですが、文章力の上昇かなと思うので。描写の分量や雰囲気は統一できていた気がします。

「いじめられる側にも問題がある」という考えは確かに挑戦的だと思うのですが、私の本音でもあります。いじめはいじめる側が100パーセント悪いですが、理由もなくいじめられるのは、それはそれで理不尽じゃないかなぁと。

「いじめられる側にも問題がある」という考えを出したのは、自殺した二壁だったと思います。ただ本作に関しては、それだけ二壁が追い詰められていたというところを描写したかったという意図があります。

美里については、私もけっこう苦悩したところではあります。美里の情報不足でつたわりにくいよなと思いつつも、でも美里を深く描写しようとしたら、二壁視点を書く必要があって、そっちの方が文章量が多くなりすぎそうだと思ったのでできませんでした。

一応、美里の悲劇のヒロイン症候群は、彼女の雰囲気とか外見から道行く人から含めたみんなから「おかしなもの」「異常なもの」として見られたことを根底にしています。だから美里は視線に敏感で、杠の自分をどうでもいいものとして見る視線で揺らいだという理由があります。「私は特別な(不幸な)人間のはずなのに、どうしてこいつはそんな私を特別じゃないような目で私を視るんだ!」みたいな。あとは心を読める杠がピンポイントで美里を嬲ったのも理由にあります。

人を救うと言う点については、おっしゃる通りで、最終的に行動するのは自分だから、自分を救えるのは自分だけだという考えです。少なくとも杠の考えではあります。

私自身、難儀な精神構造をもった人と深く関わる機会がありまして、その方を見ていると、特にそう思うようになりました。この人を本気で救えるのは、深くつながっている身内だけだなと。少なくとも他人でしかない私には、不可能でした。

人生をともにする覚悟があるなら、人は人を救えるのかなと私は思います。

「もう僕は嫌なんですよ。大切な人がいなくなってしまうのが。誰かを救うためには、その人の人生に深く入り込まないといけない。僕には到底できません」というセリフは、もちろんおっしゃる理由もあるんですが、杠の中にある矛盾も表しています。

本作……というか本シリーズで描きたいのは「キャラクター」ではなく、「人物」であって、人物ならではの矛盾を内包させたかったんです。人は救えないと杠はいいますが、自分でも気づかないうちに、かつてヒーローになりたかった頃のように「人は人を救える」と思いたがっています。

仕事と言い訳しながら悩み相談を続けていたり。最後に佐伯を壊した時に気にしないと思いながらも、佐伯の泣き声を聞きたくなくて耳を塞ぎたいと思ったように。一歩間違えれば一貫性のない「キャラ」になってしまいそうで恐ろしいですが、そこは挑戦ということで。

余談ですが、ある意味では杠は美里を救ったのだと私は考えています。

白井さんの作品も楽しみにしております。短編や中編なども書いていただけると嬉しいです。
長文失礼しました。
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