感想一覧

[良い点]
「～と思った」などを使わない、鋭い感情描写がなされていることです。こういった作風には、とても効果的な手法のように感じました。また、周囲のようすや心の動きが、「一人称」で見事に表現されていることにも感銘を受けます。全体的なモチベーションに統一感があるので、非常に読みやすかったです。
[気になる点]
気になったところは「一人(ひとり)」と「3駅」など、漢数字と数字の混合です。他には「句読点」のバランスでしょうか。たとえば、青年が席をゆずる場面です。”青年は「……」と、どもりながら～”としたほうが、より読みやすくなるように思います。ただ、どちらの点も敢えてそう表現されているのでしたら、それは作品の個性です。差し出がましいようで、申し訳ありません。
[一言]
多之様の作品を「群集と偽善者と、群集」で初めて拝見いたしました。その時の正直な感想は「やられた！」です。もちろん良い意味で、まんまと騙されました。最後の最後で思わず、噴き出してしまいました。「お前だったのか」と。それらを容認する群集も、”現代”を感じさせます。この展開、ある程度は予測していたはずなのに……読んでいる内にタイトルを忘れるくらい、作品に入り込んでしまったのかも知れませんね。個人的にとても好きな作品です。