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[良い点]
 正しく消えゆく記憶は煙の如くに。
 手にした物が何を意するものかに読み手も思いを馳せる……

 蔑む嘘ばかりを流し捲くった壺派のファシズム以前は、煙草のイメージといえばこのような渋さ際立つ大人の嗜好アイテム。
 吐き出すそれを紫煙と表した古の表現者の思考も、紫が高尚さの象徴色と知れるからこそ、物思いに耽る思考に食む者が嗜好に吐き出す煙もまた高尚なものに見えるとして紫を充てたのではないのかと、子供ながらに思えたもの。

 これは魔の力なのか紫煙の趣深さ故か、遠い記憶に思いを馳せて背中に漂う哀愁を紫煙に覗かせる至高の時間を味わえるお話でした。
  • 投稿者: 静夏夜
  • 2022年 09月13日 22時33分
 これは静夏夜様、こちらの拙作をお読み頂きご感想まで送って下さり有難うございます。

 
 現代の日本社会においては忌避される「煙草」ですが、こと創作物においてこれほど際立ったアイテムはないですよね。

 煙草が齎す負のイメージゆえか、描写せずとも人物に深みを与えてくれます。私、自身が高尚な表現を用いることが出来ずとも、それだけでキャラクターに対する想像の幅を広げてくれる。有り難いことです。
 

 この作品は所謂「追放モノ」の逆バージョンのようでいて、実のところテーマは同じつもりなんです。

 「追放モノ」の根幹とはなにか『現状において周囲から認められていない人物が、そこから抜け出して都合の良い(居心地の良い)「居場所」を見つける物語である』

 これが私の解釈です。

 異世界転生と同じく、辛い現実から逃避していつの間にやら幸福な人生を得るパターン、そのバリエーションの一つだと理解しています。

 詰まるところ、人間本当に欲しいのは「ざまぁ」だとか「見返す」ことじゃなくて「居場所」なんだという当たり前なことを最期に悟る主人公、たとえ居心地が悪くとも、そこは確かな自分の「居場所」だったんだなというお話でした。
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