感想一覧

[良い点]
作者さんの展開の巧みさは今作品でも遺憾なく発揮されています。少年の出会いと成長のストーリー、仲間やヒロインとの心の距離が縮まる描写、そして最終決戦前の主人公機の強化と王道を押さえながらも、最初に出会った仲間との早すぎる別れなど各所にずらしたような要素もあり、話を最後まで分からなくする工夫がうかがえました。
キーワードを繰り返し登場させる事で印象付ける手法も見事に機能していました。「わーってるよ」という主人公の口癖は戦士として成長してもブレない軸の強さを感じましたし、冒頭で辟易され敵の象徴的な色でもあった「青」が地球の空に再び戻るラストシーンはまさにこの作品の締め括りにふさわしいと言えるでしょう。
一つの作品として展開や描写にそつがなく、美しく完成された10話だったと思います。
[気になる点]
文章に目立った落ち度は無くコンパクトにまとまっていたものの、悪く言ってしまうと全体的に淡白で盛り上がりの少ない文章になっているように感じました。
物語のほとんどは主人公の視点から綴ることが重視されていましたが、それだけに(メイリンを除く)他のキャラの内面が語られる事が少なく、彼ら彼女らの魅力を汲み取りづらかったです。ギアやジャックをはじめ、レイブンが死神と呼ばれるようになった経緯やティタノマキアがロシアの歌を歌う理由など、キャラ付けに対して具体的なエピソードや回想、あるいは独白を増やしもっと掘り下げても良かったのではないでしょうか。括弧書きしたようにメイリンの話は素晴らしい構成だったために他のキャラでは今ひとつそういった話が無かったのが物足りないと思います。
逆に戦闘は第三者の視点で描写されることがほとんどで臨場感が欠けている印象です。ベイダーの説明もあっさり気味で最終決戦も含め撃破した時のカタルシスが少ないと感じました。個人的には6話の「西洋のドラゴン」のようなベイダーに興味を惹かれましたがほかにこれといった外見の描写がなく、もっと恐ろしさを語って脅威を読者に印象付けても良かったのではないでしょうか。
読みやすさを意識してミニマルにまとめたのかもしれませんが、世界設定を構成する一つ一つの要素がとても面白いだけにそれらが十分に語られていないのは勿体なく思います。
[一言]
連載お疲れ様でした！最初は軽薄でいまいち感情移入しづらいと思っていた主人公がその本来の性格を保ちながらも出会いと別れを経て成長していく様に引き込まれ、最後まで堪能しながら拝読させて頂きました。
作者さんはストーリー展開や設定など骨格の組み立てに長けているので、話数を分けたりしながら肉付けを増やすとより面白さの増した魅力的な話が出来上がると思います。
次の作品も楽しみに待っています！