感想一覧

[良い点]
主人公のユークが甘くない点。
昨今の作品では、半端に『現代日本』の倫理を当て嵌めて、壮絶な悲劇に見舞われた主人公が誰も殺さないというパターンが多い中、初志貫徹した信念の強さは流石です。
[気になる点]
結局、世界や『ジルベール』がどうなったのか。
ユークによって、『ヒト』に分類される存在全てが滅ぼされたとはさすがに無理があるとは思いますけど、当のユークがいなくなった世界と、残されたはずの『ジルベール』がどうなったのかは気になります。
[一言]
割とよくある、幾つかの種族が混在する世界の中で人間が『選民思想』や『人間至上主義』を掲げて他の種族を差別・排斥する。
それに対する異種族の主人公が導きだした、ある種の極致的な物語でした。
序盤にのみ登場した主人公の故郷の人々以外、全てが敵というとんでもないディストピアですが、個人的に最もヘイトを重ねたのは劇中の相棒たる『銀の魔剣ジルベール』でした。
特に登場シーンにおいて、幼馴染みを殺されたばかりで絶望しているユークに対し、後に奮い立たせるためと言うもののあまりにも酷い言葉で煽る行為はさすがにイラッとしました。
全体を通せばどこにも救いのない、『少しダーク』どころか国家規模での滅亡が続いてまるっきり『ダーク』ではありますが、醜い内面を持つ人間を処す、という突き抜けたストーリー展開は読み応えがありました。
強いて言えば途中の展開が省かれて、突然ユークが通った後の町や村が壊滅していたり、多くの人々が暮らしているはずの王都や城内をあっさり壊滅させて玉座に辿り着く、など展開が駆け足気味なところが勿体無いと思います。
……ホント、救いは無いですね。