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[良い点]
どのような境遇でも挫けず腐らない主人公・アルフレートの真っ直ぐな心。

魔術適性ゼロと言われてもその分野から逃げ出さず、親代わりのフロレンツに言われた『話を聞く』事をひたむきに続けたその根気と、友人であるヴォルフに理不尽に見下されても心が折れない強い精神力に感服しました。

また、それぞれのキャラクターたちも個性的であり、特にヒロイン的立場の死霊魔術師のトトや領主の妹で光の魔術師でもあるラウラをはじめとした女性キャラも魅力的です。
個人的には、終盤で登場して割と重要なポジションにいた猫耳族のジルビィや、ブロータオールの村でアルフレートに求婚した幼女・ユッテもキャラが立っていてお気に入りです。
[気になる点]
・版権について

今作の登場人物であるウワズルーやモニモニの種族である『ホ○ット族』。
この名称には著作権が存在し、版権元は割と厳しい判断をすると伺っています。
某有名RPG『ウィ○ードリ○』で許されている事が不思議なくらい、時には訴訟問題も起こり得るとか。
なので、伏せ字を用いて誤魔化すか、あるいは同じ種族の別称で世間的には許されている『ハーフリング』に変更する事をオススメします。
[一言]
魔術師になれない不遇な主人公・アルフレートがひょんな事から『俺Tueee』へと成長(?)していく物語。
当初はアルフレートに対して過度なイジメや追放などが無い分、フロレンツが封魔を施したという情報が先行して開示された時点で『こいつが元凶か』とヘイトを溜めていました。

私は拝読中、主人公に自身を投影させて物語に没入するタイプなのですけれど、私がフロレンツこの野郎と腹を立てている一方で、淡々と受け入れているアルフレートの心情を踏まえると、これも一つの伏線なのかなと受け入れて読み進めました。

登場した当初は敵として立ちはだかったトトに対しても、どことなくメスガキっぽい言動にイラッとしましたけれど、【たき火を囲んで】での彼女の独白の後は、果たして今作は善悪どちらの物語なのだろう、と悩むようになりました。

全体を通して言えば、あらすじにさえその名が記されているのに登場せずに退場してしまったゲルルの傲慢さが引き金なのでしょうけれど、結末は後味が悪いものでした。
確かにトトは死霊魔術を用いて領内を混乱させ、死傷者も出してしまったかもしれませんけれど、その背景を見れば殺されてしまうほどだったとは思えないのです。
アルフレートに買って貰ったイヤリングを嬉しそうに自慢していたり、ウワズルーが庇ったと聞いて嬉しそうにするトトこそがメインヒロインだと感じていました。
なのに、自分に呪いの仮面を施した相手に操られた挙げ句に殺され、本名も知らされないどころか真の黒幕には逃げられたまま……。
悔しいです。

また、今作のキーワードにある【ざまぁ】タグにも違和感がありました。
おそらくはヴォルフ率いる【赤の爪】の凋落を指しているのでしょうけれど、そもそも彼らが『ざまぁ』されるほど酷いキャラかどうかは微妙なラインですし、アルフレートも悪感情や『ざまぁ』など思ってもいないようです。
……そもそもヴォルフが『どうでもいい』程度の適当な扱いをされていますので、名前持ちのモブとの違いがわかりませんでした。

残された伏線を鑑みれば、おそらくは全体の折り返し辺りで終わってしまっているのではないでしょうか?
前述のトトを操った黒幕との対峙はもちろん、アルフレートと共に旅立ったラウラとの掛け合いや、フロレンツから渡されたペンダントの秘密、共に死線を潜った『ロンギヌス』のメンバーであるジルビィやチャウニーのその後など、気になることが残されまくっています。

……私的には、トトの仇を討って彼女の本名が知りたかったです。
あまりにも、報われなさすぎます。

読了後はトトに対する悲しみと寂しさで胸が苦しくなりましたけれど、概ね満足のいく作品でした。
変に奇を衒った設定を延々と解説するのではなく、アルフレートが記した手記を挟むなど独特ではありますけれど、程よい情景描写と自然な流れの会話文でテンポよく進む物語に引き込まれ、『アルフレート』として物語を追体験できて本当に楽しかったです。

それぞれ個性的で魅力溢れるキャラクターたちが織り成す素晴らしい物語を綴って世に送り出してくれた先生と、本当の意味で救って欲しかったトトという少女に出会えた幸運に深い感謝を。

本当に、ありがとうございました。
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