感想一覧

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[良い点]
幻想奇譚、という感じですね。現在、季節がドンピシャということもあり、情景を想像してうっとりしてしまいました。禍々しくも美しい、まさに奇妙な昆虫の如き作品。
一歩間違えばグロになりそうなところを、主人公の淡々とした語りが、きちんと「物語」に仕上げていますね。とても好きな雰囲気です(*´ω`*)
[一言]
ウマバエとか、嫌ですよね…。

私の知り合いで、耳の中にムカデが入っちゃった人がいます。あまりのことに半狂乱で医者に飛び込み、大暴れするその有様は、さながら踊っているようだったそうです。
ムカデくんは無事摘出されましたが、耳の中を数十箇所も刺されており、40度以上の熱を出して、生死の境を彷徨ったのだとか。
…鳴かない虫も怖いですね(´Д`;)
  • 投稿者: 雪麻呂
  • 2013年 09月10日 21時08分
こちらにもご感想ありがとうございます。

まだまだ残暑が厳しいですが、夏が終わりかけて秋が始まる今の時期には合った作品ですね。

>禍々しくも美しい、まさに奇妙な昆虫の如き作品。

素敵な褒め言葉をいただき、大変嬉しく思います。虫というのはホラーの題材にしやすい気がします。
グロ描写は読むのも書くのも苦手ですね。だから淡泊な仕上がりになってしまいます。

ムカデって耳の中に入るんですか!? 想像するだけでゾッとしますね。一つお話ができそうな恐怖体験ですね。自分はハチを見たら一目散に逃げてしまいます。本当は逃げたら余計に危ないとわかっていても怖くてダメですね。

最近は庭でコオロギが鳴いていて何とも風情がありますf^_^;
[良い点]
・敬体一人称の文章が、猟奇的な事件を妙に予感させてくれます。昭和初期のようなレトロな空気感にも合致していますね。
・友人のキャラがいいですねぇ。本来は名前など不要なキャラであるにも関わらず、存在感が妙に大きいせいもあり、気になりません。
[気になる点]
・冒頭部分、主人公はてっきり女流記者か何かかと思いました。語りに男性らしさがまるで出ていないためだと思います。次の段落で主人公が男性だということがすぐに判明しますが、どうしても違和感が生まれてしまいますので、冒頭部分も少し意識して加筆なりされてみては。(懐中時計、パナマ帽など、男性らしい小道具を登場させてみるとか
・死んでいる祖母の様子を「永遠の冬眠を物語っている」と表現されている点ですが、人間はそもそも冬眠をしない生き物ですし、なにかこう、しっくり来ない気がします。
・友人が訪ねてきた辺りからしばらく、地の文の末尾が「~です」「~します」と連続し、やや違和感を覚えます。時折意識的に言い回しを変えてみては。
・「唯一ある連載小説」より「唯一抱えている連作小説」ぐらいの方が適当かと。
・「虫は執拗に鳴り響きます」だと微妙なねじれ文になるので、「虫は執拗に鳴き続けます」か「虫の音は執拗に鳴り響きます」にしてみては。「虫の存在そのものが鳴る」ということであっても「虫は」が主語だとどうしても違和感が……。
・「音蟲」の読みは「おとむし」でいいのでしょうか? そうすると病名は「おとむしびょう」? ルビがあった方が親切かも。
・医師の解説に「民話」という語が出てきますが、「奇談」ぐらいの方がふさわしいのでは。「民話」ではさすがに診断の拠り所としてアレな気が……。
[一言]
評価板にて評価依頼をお受けしましたnakonokoです。とんでもなくお待たせして申し訳ありません。拝読させていただきました。

洗練された雰囲気にまず惹きつけられました。敬体で書かれた一人称のホラーって、なぜか語りかけのようにも感じるため、より恐怖が迫ってくるというか、妙な臨場感があるんですよね。そしてこの文体を選ばれた辺り、さすが蒼目ハク様です。ホラーをわかっていらっしゃる!
文章そのものも、作品を増すごとに磨かれているのがよく伝わってきます。情趣にあふれ、それでいて読みやすい、上質な文章でした。

時代がかった設定にされているのは、おそらく、話が現代の最新医療にまで及んでしまうと、「こんな病気あるかい(笑)」で終わってしまう危険性が高いからだと思います。それが、医療技術もあまり進んでいなかった時代なら、こうした奇病にも説得力が湧いてくる。舞台は山村のようですしね。狙いどおり、おどろおどろしさの演出にもつながっていて一石二鳥だったかと。
下で別の方が指摘されている疾病としてのリアリティですが、あまり詳しく書いてしまうとモダンホラーになってしまう恐れもあります。そうすると恐怖感の醸成にはむしろ逆効果になる可能性もありますので、さじ加減が重要ですね。まだまだ奇病の罹患原因については知識が心もとない時代をあえて選んでおられるのですから、そこまで理詰めに語らなくてもいいような気もします。まぁ、私が読み手として大雑把ってことなんですけど。ただ、「音蟲」が「成長」するに従って耳鳴り以外の症状が出てくるようにした方が、確かに恐ろしさが増すかもしれませんね。甘い水が無性に飲みたくなるとか(……カブトムシか

「音蟲」が生物としての「虫」ではなく、腫瘍の一種だという意外性。さらには腫瘍でありながら生殖(というか分裂ですかね)までやってのける、という二段のオチ。なんだかんだ書きましたが、やはりお見事な手並みです。ホラー好きなら人によっては読める筋かもしれませんが、私は一読者として純粋に楽しませていただきました。こういう生理的な恐怖感っていいですよねぇ(いや、私、別に変態じゃないんですけど^_^;
祖母の死因、主人公の孤独な暮らし、日常の陥穽、夏の持つ独特な空気……すべてが実に鮮やかに有機作用を遂げていたと思います。個人的にとても好きな世界観でした。

それでは、以上です。
  • 投稿者: 退会済み
  • 2011年 07月31日 21時20分
管理
nakonoko様、この度は締め切ったにも係わらず評価依頼を引き受けて下さり、ありがとうございます。

あまり自信がなく覚悟をしていたのですが、まさかの高評価に嬉しさを噛み締めております。

敬体一人称は案外難しいなと書いてて思いました。おっしゃる通り末尾も同じ言い回しになってしまっていますね。レトロだったり昭和特有の和風な雰囲気が好きで、江戸川乱歩の作風を意識しつつ書いてみたのですが、苦戦しました。

冒頭、確かに主人公女性っぽいですね。一人称も私ですし。女性的で繊細なキャラクターでもあるので、男性的な部分が出なかったのかもしれません。懐中時計良いですね!好きです。小物とか使えますね。

友人のキャラクターは自分も気に入っているので、好きと言って頂けて嬉しいです。推敲する内にキャラ立ちしました。

「虫は〜」という主語は、思えば不自然ですね。音蟲病《おとむしびょう》もルビをふってませんでした。ご指摘を受けた点については、後日じっくり加筆修正しようと思います。

医師の解説は苦し紛れです(笑)奇談の方がしっくりきますね。
まさしくおっしゃる通り、現代設定にしてしまうと、それこそリアリティある病気じゃないと通用しないので、昭和の、医療がまだ未発達な時代にしました。リアリティ過ぎてもホラーらしさが薄まりそうですね。さじ加減、難しいです。

本物の虫が湧く事にするか、それとも虫のような腫瘍にするかは結構悩みました。後半は煮詰まりながら書いていましたね。自分の歯から虫が湧くという夢を見るぐらい考えました(笑)

文章を褒めて下さり、光栄です。きめ細やかな文章を心掛けるようになったのも、nakonoko様を始めとする批評のおかげです。感謝しています。それにしてもnakonoko様の影響力すごいですね。急にアクセス数が伸びてました(+_+)

この作品を純粋に楽しんでいただけたようで幸いです。

それでは、毎度の事ながら丁寧で細かい感想、評価、誠にありがとうございました。
[一言]
 掲示板から参りました後藤と申します。早速、感想を書かせていただきます。

 ホラーと短編は、私にとって鬼門です。何をもって恐怖となるかつかみきれず、同時に短いため設定を描写しきることもできません。
 この作品は、大変丁寧に書かれていて、短編としてもホラーとしても形を成しています。また、脳を侵されるというテーマの選択も人の本能的恐怖を引き起こすという面において正しい選択であると考えます。
 では、問題と感じた点です。
 ホラーの怖さとは、得体の知れない怪物が襲ってくるというより根元的な死の恐怖に訴えるかける場合と、もう一つ、現実に自分にも降り懸かってくるかもしれない身の丈の恐怖というものに大別されると私は考えています。
 前者の場合は、如何に怪物のおどろおどろしさや不気味さを描いてとにかく怪物を印象づけることが肝要となります。後者の場合、如何にも現実に起こりそうなことだと説得しなければなりません。
 この作品は後者であると考えるのですが、説得力を与える過程が足りていないように思えます。
 言葉にはしにくいのですが、症例が単調です。乱暴に片づけてしまうと耳鳴りの音量の変化しかありません。細かいところで頭の中を虫が這っているようなという描写がありますが、やはり直接的なものは耳鳴りだけです。
 最初、単なる耳鳴りから始まって、主人公はただの耳鳴りと聞き流していた。ところが、耳鳴りは徐々に大きくなっていくばかり。次第に行動にまで支障が現れる。やたらと甘いものが欲しくなり、時折体の自由がきかなくなる。定期的に現れる強烈な頭痛は日によって場所が違い、まるで、何かが頭の中を動いているようだ。など。
 この類の作品で大切なことは、読者に絵空事をどこまで現実に起こりそうだと、自分にも起こりそうだと捉えてもらえるかにあります。
 主人公が自分の身に起きた異変を、虫が頭の中にいるという現実を受け入れていく過程がそのまま読者が現実にも起こりそうだと納得してもらうための過程につながると考えるのです。
 この作品は短編であるため、詳細な設定を紹介することはなかなかできないでしょう。
 ただ、二つ注文があります。
 主人公が徐々に蝕まれているという描写をより鮮明にしていただきたいと考えています。脳に事実上寄生されているというのに耳鳴りがするというだけではもったいない。行動さえ変化させられるような表現があった方がより脳を侵されているという様子が伝わってきます。余談ですが、甘いものが欲しくなるというのは脳に寄生した虫が栄養を求めて、脳に栄養を与えるブドウ糖の摂取を宿主に命じているという表現として使われていました。
 また、感染経路、発症原因を設定すべきです。得体の知れない恐怖ということも大事ですが、まず絵空事では仕方がありません。自分の身にも起こりそうだと思ってもらえれば成功です。そのためにも虫に寄生される日常的なものにするなどしてより親しみのある恐怖を演出してもらいたいと考えています。
 この作品では虫ではないということのようですが、その発症の原因がわからず作品としての物足りなさがあるとともに脳に虫が湧くのは怖いけど、そんなこと現実的には起こらないという余計な安心感が芽生えてしまっているように思えます。
 結論として、脳が侵されているにしては耳鳴りだけ、発症経路がわからず読者へのアクセスがない。
 短編として文字数に限りがある中矛盾する注文とは思いますが、現実感を加えていただきたいと考えています。そのための一つの方法は設定の詳細さです。細かい設定をさももっともらしく説明することで作品と現実とを重ね合わせることが恐怖の親近感を上げてくれると思います。
 この作品ではテーマは良好、作品としての形式も整っています。ただ、完成された作品かと問われると、残念ながら疑問符をつけざるを得ません。
 古い作品で恐縮ですが、「天使の囀り」というホラー小説をご存じでしょうか。こちらは完全に脳に寄生する虫をテーマとした作品で短編ではないのですが、組み上げられた設定と本来脈絡のない事実をこじつけ見事に融合させる手並み、現実にこんなことが起こりうるのではないかと乱暴といえるまでの説得力を持った展開は、物語本編そのものよりもここまで書けなければプロにはなれないのかと別の意味で恐怖させられたほどです。先述の脳が甘いものを欲するというお話もここから持ってきたものにすぎません。
 ご存じならばいいのですが、同じホラーというジャンルにおいて道標となる作品であると確信しています。設定だけでも調べるに値すると考えます。

 また、依拠という言葉の使われ方に違和感があります。依拠とは、何かをよりどころとして考え方などを作り出すことのようです。法律だと、著作権法の構成要件として、先行作品への類似性と依拠性がある、などのような使われ方をするようです。
 何かに依存しているとはニュアンスが若干異なるような気がしましたので、一応載せておきます。

 私は以前短編ホラーに手を出して大火傷した身の上としてつい細かく書いてしまいましたが、そもそも恐怖というものは本能に根ざしています。人は、車にひかれて死ぬことよりもサメに喰われて死ぬことを恐れます。交通事故では年間6000人を超える人が亡くなり、サメによる死亡事故なんて滅多に起こらないにも関わらずです。しかし戦争で死ぬことを恐れている人は日本には多くはないでしょう。車よりもサメの方が捕食されたくないという本能的な防衛反応に基づき、また、戦争よりもサメの方が現実可能性が高いと脳が判断しているからです。海水浴に行くことはあっても戦場に行くことはまずないからです。
 この作品では車ではなくサメを選択できています。しかし、まだ戦争です。起こるかもしれないけど、やっぱり現実感が持てない。
 是非とも完全なサメを目指していただきたいと考えます。
 どこまで具体的な感想にできたかはわかりませんが、この作品は幼いサメのような作品です。姿はすでに親と同じですが、まだのびしろがある。そんな作品のように思えます。
 長くなってしまいましたが、以上とします。
  • 投稿者: 退会済み
  • 2011年 06月29日 22時47分
管理
後藤さん、この度は鬼門である短編ホラーを読んでいただき、ありがとうございました。
丁寧でホラーとして形を成しているという褒め言葉は大変嬉しく、自信に繋がります。
しかし、一方で自分が懸念していた設定の甘さ、不備を見事に指摘され、返す言葉もございません。まさしくその通りのご意見で、痛いところを衝かれました。
今回この作品を書いて痛感したのは、有り得ない設定をいかにリアリティあるものとして伝えるか、その難しさです。
自分自身、プロの小説を読んでいて、現実的には有り得ないけども、鮮やかで巧みな文章力と詳細な設定で、さも現実に起こりそうな説得力を感じます。自分にはそれが欠けていました。内容的に短編向きではなかったのかもしれません。
本物の虫に寄生された事にするか、それとも虫のような腫瘍にするかで迷い、感染経路や発症原因を疎かにしてうやむやにしてしまいました。
耳鳴りだけというのも“音”にこだわった結果です。確かに単調と言わざるをえません。甘い物を欲しがる、なるほど、思いつきませんでした。「天使の囀り」という作品も知りませんでした。設定が似てますね。参考にしてみます。
依存と依拠は微妙に違うのですね。気をつけます。
車ではなくサメではあるが、まだ戦争――非常に分かりやすい例えですね。今度は完全なサメを目指したいと思います。

長々とすみません。大変勉強になりました。貴重な時間を割いて批評して下さり、誠にありがとうございました!
[一言]
気持ち悪いな
  • 投稿者: 晴彦
  • 23歳~29歳 男性
  • 2011年 06月14日 22時22分
ありがとうございます。気持ち悪さが伝わって良かったです。
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