感想一覧

旦那さんが本当はどんな人だったのか。語られないその部分で、読んだ人によっては様々な見え方が出来る気がします。
奥さんは善良そうな人ですが、旦那さんの事は片目で見ていた気がします。そう望まれていたから。本当はもっと色んなことを分かっているけれど、深くは聞かない。亡くなった旦那さんにとっては、居心地の良い場所だったのでは。
全ての真実を知る事だけが、良い事とは限りませんよね。

結果的にほのぼの物語にも読めますが...
奥様がひたすら善人故に屑な寄生虫達から搾取されまくるホラーにも見えてくるのが面白かったです
おそらく、凄いポジティブなので幸せでしょうけど最初の夫も亡くなった夫も周囲からの評価は低そうですし可愛そうな人と思われてそう
世の中理不尽まみれで不幸そうでも本人は幸せそうだったり、客観的にめちゃくちゃ恵まれてるのに本人は不幸だったりするからよくある話とは思います

強かな人は、人の善意を嗅ぎ分ける能力にたけてるんだなー
と、文字におこしていただいて、妙に納得しました。
寄生先って大切ですね

そんな優しい旦那様が出張先で一夜限りの女性と子供を作るとは思えないので、逆にどんな事情があるのか気になりますよね。
奥様も動揺することなく子供の面倒を見てあげているので、奥様も相当なお人好しなのだろうなと思いました。
子供のお母様が遺言に残してまで「奥様に」会いに行かせたのだから、本当に子供を託したかったのは奥様なのかもしれない。

ややこしい事情がありそうなタイトルとは裏腹に、とても誠実な人たちのお話でしたね。地の文で細かい説明がなくとも、きっと登場人物たちはこんな人なのだろうというのが丁寧で穏やかな言葉遣いから想像できる、読みやすく品のある文章。読後感もさわやかで良いお話が読めたと思える素晴らしい作品でした。

簡単でありながら手間のかかる、フレンチトーストのような作品でした。
一つ一つの要素は分かりやすくありながら、それらが絡まり重厚な味わいに仕上がっていますね。

最初は少し重そうで、最後にはフワフワと軽やかでどこかに飛んでいきそうな。
それでいて、これで良いのだと腑に落ちる。　
なんとも面白い料理でした。