感想一覧
▽感想を書く こんにちは〜、いつぞやの掲示板でお世話になった若宮澪です。本当は掲示板にコメントしたほうが良いとは思いますが、自分がずいぶん昔に立てた板が上に上がってしまうのと、あとはちゃんとした批評にならないだろうというのもあり、こちらの方で感想を送らせていただきます。ご迷惑をかけて申し訳ありません。
さて初読感なのですが「サイバーパンク×犯罪小説のテンプレっぽいけど、やっぱりおもしろい!」でした。というのも私自身そういう世界観の話が好きなもので……。倫理観ゆるふわのサイバーパンクって、なんかこう、くるものがありますね。どこか達観して世の中斜に構えている感じの中年男性が、技術ばかりが進歩した低俗な空気感の世界を生きている、というのもすごい好きです。
気になったところといえば、中盤後半の美鶴による殺戮シーンでしょうか? あとは掲示板でサタン様が指摘なさっていたのと同じ、抱擁シーン。私の場合だと特に前者が気になりました。レーティングとかの問題もあるかもですが、やたら表現があっさりしてるかな、と。こういった雰囲気の小説だと、殺戮シーンってもう少し混乱気味に、そしてグロテスクに描かれている気がします。
まずは混乱気味に、の部分から。「娘に似たホロウ」が「いきなり殺戮を働いた」わけなので、どんな人でもさすがに一瞬で「何が起こったか」を把握するのは難しいです……よね? できればその「何が起こったかわからない」という感覚を読者に共有させてほしい。
具体的には
>フィニッシュに向けて、ネヴァンはポールの上へと登っていく。足を絡ませ、頭を下にして逆さまになるジェミニの形になった彼女の目が、一瞬で表情を失くした。薄い腹を開いて両手を突っ込み、引き抜いたその手にはハンドガンが握られていた。
>誰もがそれを凶器と認識するより先に、ハンドガンが火を吹いた。やかましい音楽を掻き消すほどの銃声に、断末魔と悲鳴が重なる。客も従業員も見境なく撃ち続ける間、虎臣はソファの上で頭を抱えて体を丸めることしかできなかった。
ここの二段落分の表現なのですが。
できればここを、もう少し混乱した書き口にしてほしい。たとえば「握られていたハンドガン」と最初から断定してしまうのではなく
>虎臣の眼に、銀色の何かが映る。ネヴィルの取り出したそれが、何も気づいていない男娼に向けられる。
みたいな感じにして「何が起こって……?」という感覚を読者に共有させてほしい、という気がしました。
そしてグロテスクに、の部分なのですが。
これに関しては「写実的に」の意味合いが強いです。つまり、目の前で起こっていることを「ありのまま、五感を通じて」表現してほしい。たとえば銃声にしても、虎臣の恐怖感、あるいは思考の混乱を踏まえた感じで聞こえさせてほしいです。
語彙力がないので上手くかけてないかもですが
>何かが炸裂する、同時に甲高い着弾音が聞こえる。従業員の悲鳴と嬌声が響きわたった。ハンドガンの火薬だ、と一瞬遅れて気づく。
こんな感じに、混乱しているのを込みで書いて欲しいかな、と。それで、誰かに銃弾が当たって血液が飛び散ったとなると
>赤色の華が咲く、つい先程まではそこにあった男娼の頭が消し飛ぶ。頭蓋骨をぶち壊した弾丸が、鮮やかな赤色液体を飛び散らせる。視界が赤色に染まった。
一瞬遅れて、顔に冷たさを感じる。鉄と生臭さの入り交じった異臭が、鼻腔の中にへばりつく。べちゃり、と虎臣の顔にかかったその液体は、血液だった。
こんな感じにグロテスクな表現になる。あくまでもこうやって書いてあると読んでて物語に入り込めるな、というだけですし、しかも私の主観なので何とも言えないのですが……。
一応、私からの感想というか、助言みたいなものは以上です。たぶんさそり様の方が描写力とか語彙力は高いと思うので、いいと思ったところだけ聞き入れてくれれば。
◆ここからは考察というか、ただの妄言です。
>二八〇年前に終結した第三次世界大戦は、
最初に読んだ時にはやたらと「古いな」と感じました、だって今の私達からみれば1745年にあたるわけですし。フランス革命が1789年だと考えると、ちょっと想像しがたいかな……? 一世代20年と考えても14世前かあ、って思いましたね。でもそれが
>メンテナンスを続けながら唯一の生体組織である脳が死ぬまでの約三百年間を生きるのだ。
この表現で解消される、これ凄いなって本当に思いました! 私達からみれば長い時間でも、この世界の住人にとっては精々が一生涯分の長さでしかない。その価値観の違い的なものをこんな風に表現するのか、と。脱帽です。
>首都であったワシントンを堅牢な壁で囲い、内側になるほど裕福な者たちが暮らしていた。
格差が相当に広がってますね、これは。極端な貧富の格差があるのもサイバーパンクらしくていい! というか、この調子だとあと数百年したら事実上の貴族制度が復活してそう。いずれにしても、細かな表現から色々考察できますね〜。
>十八歳以上の人間は全てこの擬骸に精神を移すことが義務付けられ、
>一気に増やせば社会的負担も大きくなるから出生数も管理され、養育適性検査に合格した夫婦だけが子供を持つことを許されるのだ。
絶対これ、違反者がストリートに溢れてますよね……。サタン様は「かなり徹底された管理社会」と書いておられましたが、私はむしろ「法規制を無視した、どこか薄暗い活発さ」を暗喩しているのかなと思いました。というのも、作中で語られている人達は「俗世的」で「活動的」なわけでして。
おそらく市の中心部だと管理が行き届いてるんだろうけど、これが「ノース・エリア」ともなれば違反者が山ほどいる。けれども、そういう人達は良いように使われて、うまーく秘匿されいるんじゃないかな、と。虎臣が触れる機会がなかっただけで、生身の人のいる風俗店も実在するんじゃなかろうか、たとえば地下街とか。スラム街が出来上がっていて、警察もそこには、下手には手出しできない。ノース・エリアのギャングたちを敵に回してしまうかもしれないから。そんな感じの雰囲気を感じました。
>ペットなどの愛玩動物を擬骸カヴァーにすることは違法ではなく、所持に税金もかからないことから富裕層で人気の娯楽だ。しかし、そこを抜け道にして動物の空擬骸を違法に改造して人型をとれるようにし、金のかからない労働力として使役する企業が現れたのだ。
サイバーパンクみたいな世界観であるあるの「抜け穴探し」、やっぱりこういうのも読んでて楽しいですね。人が刹那の快楽を求めるために法律をくぐり抜けようとしているの、なんだか笑えてきちゃうんですよね。そんな刹那の快楽を得るためにそんな行為までして、というか。
でも彼らの気持ちもわかるから、すごくリアル。実際に政治とかでも抜け穴を通じて利益を得る行為は日常茶飯事だったからこそ、笑えるけども笑えない、シリアスな笑いが生まれる。つらつら書きましたけど、こういうのすごい好きです。
>両腕に抱き締めた娘は、幼子のような寝顔で、死んだように収まっていた。
ベタだけど! ベタだけど良い、これは良い! 本来ならば残っているはずのない人格が干渉してしまうのも、愛が殺しをためらわせるのも、人形でいられなくしてしまうのも良い! んまあこれは完全に私の性癖ですが……。
少なくとも私は好きです、この作品。世界観しかり雰囲気しかり物語の展開しかり。確かにサイバーパンクでみたらテンプレかもですが、それは置いておいても凄い好みで、面白かったです。ハヤカワ文庫とかの大賞に応募してみてほしい、と思うくらいには。
続きが気になるかどうですが、私は気になります。王道だと分かっていても読みたくなる良さというか、ザ・王道だからこその良さがあるというか……。
っと、凄い長々と書いてしまいました、すみません。SF好きなもので……。参考になるところがあれば(あるのか疑問ですが)幸いです。執筆活動頑張ってください!
さて初読感なのですが「サイバーパンク×犯罪小説のテンプレっぽいけど、やっぱりおもしろい!」でした。というのも私自身そういう世界観の話が好きなもので……。倫理観ゆるふわのサイバーパンクって、なんかこう、くるものがありますね。どこか達観して世の中斜に構えている感じの中年男性が、技術ばかりが進歩した低俗な空気感の世界を生きている、というのもすごい好きです。
気になったところといえば、中盤後半の美鶴による殺戮シーンでしょうか? あとは掲示板でサタン様が指摘なさっていたのと同じ、抱擁シーン。私の場合だと特に前者が気になりました。レーティングとかの問題もあるかもですが、やたら表現があっさりしてるかな、と。こういった雰囲気の小説だと、殺戮シーンってもう少し混乱気味に、そしてグロテスクに描かれている気がします。
まずは混乱気味に、の部分から。「娘に似たホロウ」が「いきなり殺戮を働いた」わけなので、どんな人でもさすがに一瞬で「何が起こったか」を把握するのは難しいです……よね? できればその「何が起こったかわからない」という感覚を読者に共有させてほしい。
具体的には
>フィニッシュに向けて、ネヴァンはポールの上へと登っていく。足を絡ませ、頭を下にして逆さまになるジェミニの形になった彼女の目が、一瞬で表情を失くした。薄い腹を開いて両手を突っ込み、引き抜いたその手にはハンドガンが握られていた。
>誰もがそれを凶器と認識するより先に、ハンドガンが火を吹いた。やかましい音楽を掻き消すほどの銃声に、断末魔と悲鳴が重なる。客も従業員も見境なく撃ち続ける間、虎臣はソファの上で頭を抱えて体を丸めることしかできなかった。
ここの二段落分の表現なのですが。
できればここを、もう少し混乱した書き口にしてほしい。たとえば「握られていたハンドガン」と最初から断定してしまうのではなく
>虎臣の眼に、銀色の何かが映る。ネヴィルの取り出したそれが、何も気づいていない男娼に向けられる。
みたいな感じにして「何が起こって……?」という感覚を読者に共有させてほしい、という気がしました。
そしてグロテスクに、の部分なのですが。
これに関しては「写実的に」の意味合いが強いです。つまり、目の前で起こっていることを「ありのまま、五感を通じて」表現してほしい。たとえば銃声にしても、虎臣の恐怖感、あるいは思考の混乱を踏まえた感じで聞こえさせてほしいです。
語彙力がないので上手くかけてないかもですが
>何かが炸裂する、同時に甲高い着弾音が聞こえる。従業員の悲鳴と嬌声が響きわたった。ハンドガンの火薬だ、と一瞬遅れて気づく。
こんな感じに、混乱しているのを込みで書いて欲しいかな、と。それで、誰かに銃弾が当たって血液が飛び散ったとなると
>赤色の華が咲く、つい先程まではそこにあった男娼の頭が消し飛ぶ。頭蓋骨をぶち壊した弾丸が、鮮やかな赤色液体を飛び散らせる。視界が赤色に染まった。
一瞬遅れて、顔に冷たさを感じる。鉄と生臭さの入り交じった異臭が、鼻腔の中にへばりつく。べちゃり、と虎臣の顔にかかったその液体は、血液だった。
こんな感じにグロテスクな表現になる。あくまでもこうやって書いてあると読んでて物語に入り込めるな、というだけですし、しかも私の主観なので何とも言えないのですが……。
一応、私からの感想というか、助言みたいなものは以上です。たぶんさそり様の方が描写力とか語彙力は高いと思うので、いいと思ったところだけ聞き入れてくれれば。
◆ここからは考察というか、ただの妄言です。
>二八〇年前に終結した第三次世界大戦は、
最初に読んだ時にはやたらと「古いな」と感じました、だって今の私達からみれば1745年にあたるわけですし。フランス革命が1789年だと考えると、ちょっと想像しがたいかな……? 一世代20年と考えても14世前かあ、って思いましたね。でもそれが
>メンテナンスを続けながら唯一の生体組織である脳が死ぬまでの約三百年間を生きるのだ。
この表現で解消される、これ凄いなって本当に思いました! 私達からみれば長い時間でも、この世界の住人にとっては精々が一生涯分の長さでしかない。その価値観の違い的なものをこんな風に表現するのか、と。脱帽です。
>首都であったワシントンを堅牢な壁で囲い、内側になるほど裕福な者たちが暮らしていた。
格差が相当に広がってますね、これは。極端な貧富の格差があるのもサイバーパンクらしくていい! というか、この調子だとあと数百年したら事実上の貴族制度が復活してそう。いずれにしても、細かな表現から色々考察できますね〜。
>十八歳以上の人間は全てこの擬骸に精神を移すことが義務付けられ、
>一気に増やせば社会的負担も大きくなるから出生数も管理され、養育適性検査に合格した夫婦だけが子供を持つことを許されるのだ。
絶対これ、違反者がストリートに溢れてますよね……。サタン様は「かなり徹底された管理社会」と書いておられましたが、私はむしろ「法規制を無視した、どこか薄暗い活発さ」を暗喩しているのかなと思いました。というのも、作中で語られている人達は「俗世的」で「活動的」なわけでして。
おそらく市の中心部だと管理が行き届いてるんだろうけど、これが「ノース・エリア」ともなれば違反者が山ほどいる。けれども、そういう人達は良いように使われて、うまーく秘匿されいるんじゃないかな、と。虎臣が触れる機会がなかっただけで、生身の人のいる風俗店も実在するんじゃなかろうか、たとえば地下街とか。スラム街が出来上がっていて、警察もそこには、下手には手出しできない。ノース・エリアのギャングたちを敵に回してしまうかもしれないから。そんな感じの雰囲気を感じました。
>ペットなどの愛玩動物を擬骸カヴァーにすることは違法ではなく、所持に税金もかからないことから富裕層で人気の娯楽だ。しかし、そこを抜け道にして動物の空擬骸を違法に改造して人型をとれるようにし、金のかからない労働力として使役する企業が現れたのだ。
サイバーパンクみたいな世界観であるあるの「抜け穴探し」、やっぱりこういうのも読んでて楽しいですね。人が刹那の快楽を求めるために法律をくぐり抜けようとしているの、なんだか笑えてきちゃうんですよね。そんな刹那の快楽を得るためにそんな行為までして、というか。
でも彼らの気持ちもわかるから、すごくリアル。実際に政治とかでも抜け穴を通じて利益を得る行為は日常茶飯事だったからこそ、笑えるけども笑えない、シリアスな笑いが生まれる。つらつら書きましたけど、こういうのすごい好きです。
>両腕に抱き締めた娘は、幼子のような寝顔で、死んだように収まっていた。
ベタだけど! ベタだけど良い、これは良い! 本来ならば残っているはずのない人格が干渉してしまうのも、愛が殺しをためらわせるのも、人形でいられなくしてしまうのも良い! んまあこれは完全に私の性癖ですが……。
少なくとも私は好きです、この作品。世界観しかり雰囲気しかり物語の展開しかり。確かにサイバーパンクでみたらテンプレかもですが、それは置いておいても凄い好みで、面白かったです。ハヤカワ文庫とかの大賞に応募してみてほしい、と思うくらいには。
続きが気になるかどうですが、私は気になります。王道だと分かっていても読みたくなる良さというか、ザ・王道だからこその良さがあるというか……。
っと、凄い長々と書いてしまいました、すみません。SF好きなもので……。参考になるところがあれば(あるのか疑問ですが)幸いです。執筆活動頑張ってください!
こんにちは。感想ありがとうございます!
丁寧に読み込んでくださり嬉しいです。ご指摘の部分など、大変参考になりました。あまり書き込み過ぎると他部分とのバランスが取れなくなるかなとも考えてしまって、描写の濃度を抑えてしまいました。殺戮シーンは音楽でいうところの転調部分なので、仰る通り、もう少し描写のウェイトを重くしてメリハリを効かせても良かったかもしれません。
その辺りは書き手ではなかなか判断しづらい部分なので、ご意見を頂けて嬉しいです。
作品を好きと仰って頂けたのは、とても嬉しいです。こういった秩序と混沌がアンバランスな世界を書いてみたいと思っていましたので、ちゃんと伝わるように書けていたようで安心しました。
今は全体を根底から見直しているところで、次にアップする時はストーリーも全く違うものになるかと思います。世界観も設定も、より深く煮詰めていきたいと考えています。
今回は貴重なご意見をありがとうございました!
丁寧に読み込んでくださり嬉しいです。ご指摘の部分など、大変参考になりました。あまり書き込み過ぎると他部分とのバランスが取れなくなるかなとも考えてしまって、描写の濃度を抑えてしまいました。殺戮シーンは音楽でいうところの転調部分なので、仰る通り、もう少し描写のウェイトを重くしてメリハリを効かせても良かったかもしれません。
その辺りは書き手ではなかなか判断しづらい部分なので、ご意見を頂けて嬉しいです。
作品を好きと仰って頂けたのは、とても嬉しいです。こういった秩序と混沌がアンバランスな世界を書いてみたいと思っていましたので、ちゃんと伝わるように書けていたようで安心しました。
今は全体を根底から見直しているところで、次にアップする時はストーリーも全く違うものになるかと思います。世界観も設定も、より深く煮詰めていきたいと考えています。
今回は貴重なご意見をありがとうございました!
- 琥珀さそり
- 2025年 01月16日 23時05分
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