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[一言]
お世話になっております。
「白鷽と嘘発見器」読ませていただきました。

一読した印象は、少年マンガ的な内容だな、という感じでしたね。
ラブレターによる導入、謎の美少女との出会い、
特殊な能力、世界を脅かす敵、それとの戦い、
ある意味ベタな要素ではありますが、だからこそ分かりやすくはあります。
独自の要素は、嘘発見器と称する主人公の能力でしょう。
人格とも密接に関わっていて、行動原理にも影響している。
テーマ的にはこのへんの推移がメインになってくるものと思われます。

ただ、作品を読み終わった感想として、その意図はあまり正確に伝わっていない感がしました。
主人公の「嘘発見」能力が要所でしか描かれず、行動原理として示されてもイマイチ共感しきれないからです。

より詳しく言えば、実際に有効に働いたのがラストのイアに対する個所だけな感じがするからです。
作中で具体的な発露を示した個所が他にありません。
回想の中で周囲の嘘を看過したようなものはありましたが、
たとえ能力がなくとも、同世代が同様の経験をすれば
だいたい似たような結論に達するでしょう。
学校生活においても、これといって周囲と協調できていないようでもない。
関わる人物が親友格の二人だけだからでしょうが、普通どころか極めて明るく接しているため、
周囲を批判的に捉えている感じが伝わってこないのです。
電話や呼び出しにおける先生とのやりとり、隣人のおばちゃんとの関係性からも、
主人公がごく当たり前の生活環境にいるという印象を覚えました。
コミカルな展開の演出だとは思うのですが、日常である分、人物の基本的なイメージにつながります。
これでラストに「嘘つきを見る度に殺してやりたくなる」と言われても、
読者として「え?」と思う人は多いのではないでしょうか。

ラストのイア程度の嘘で突き放すのであれば、
日常で関わる人々、あるいは親友二人に対しても、まともに接することが出来る気がしません。
それまで読者とほぼ等しい価値観で行動を共有できていたものが、
この「嘘発見」の強調により崩れている感じすらします。

構造的に、このテーマを扱ってこの作品の雰囲気を保つのは非常に難しい気はします。
本質で嘘を否定している人格には、日常の当たり前なやりとりも否定の原因になるでしょうから。
この許容範囲をなるべく早めに示すことは、改善の一手になるかもしれません。
ただ、主人公の軸であり行動原理に関わることなので、全体もかなり調整しないとならないでしょうが。


文体に関しては、一人称のコミカルな地の文で軽快に読めるものだと思いました。
感覚や表現に共感できれば、楽しんで読み進められるでしょう。

文章的にちと気になったのは、一文がかなり長く、句読点が少ないため、理解に少々手間がかかるところです。
例を上げると、
「
 既にその身体に濡れていないところはなく服も髪も少女の身体にくっついていたが、少女はそれを不快に感じてはいないようで、むしろ楽しそうに鼻唄を口ずさんでいた。
」
この文、一つとしてはけっこう長く、情報量も多い気がします。
「
 既にその身体で濡れていないところはなく、服も髪も少女の身体にくっついていた。だが、少女はそれを不快に感じてはいないようで、むしろ楽しそうに鼻唄を口ずさんでいる。
」
こんな風に句読点を打つだけでも、情報の切れ目が明確になって理解しやすくなると思います。
まぁ、このへんの感覚は作者読者の好みもあるので、一概に正しいとは言いきれませんが。


以下では内容を順繰り追い、気になった個所を上げていきます。

失踪事件や古書のくだり、龍平はともかく美咲に関して、やや扱いが唐突に感じました。
後に出てくるジャベリンや、神様の情報に関しても。
それぞれ伏線だということは分かりますが、ストーリーの自然さを損ねてしまうこともあります。
順序や内容を丁寧に配置すれば、個々のキャラを印象づける機会にもなると思います。

「嘘発見器、襲われる」の中で
「最近ここら辺で起きてる連続失踪事件もそれが原因じゃないか!」
という断定がありますが、これは論理が飛躍しています。
作者としては明らかなのでしょうが、読者にとっても、主人公にとっても、
直結できるほどの情報は提示されていないでしょう。

主人公が神様の存在やイアの言葉を無条件に信じてしまうことも、少々ご都合に感じました。
嘘をついていないと分かるとしても、ヤバい宗教の熱心な信者ということだってあります。
そういった可能性を排除せずに信じてしまうのは、主人公の評価を下げることにもなりかねません。
例えば、話を聞いている間は疑っていたが、同調を行われて信じざるをえなくなった、
というような展開ならば、読者の納得も誘えるでしょう。

同様の傾向が他の個所、
同調の使い方に対する慣れっぷりや、
禍渦の形状に関する部分などにも感じられました。
ストーリーを先に進めたい気持ちは分かりますが、こういった細かい認識を丁寧に誘導しないと、
小さなズレが累積し、読者の意識と齟齬を生みかねません。
作者が書きたいものではなく、読者が読みたいと思える配慮を行うことが、
全体の分かりやすさを向上させると思います。

「嘘発見器、燃える」の中で、
「嘘つきがいくら喰われたところで俺には関係ない。」という認識が出てきますが、
どうも主人公の基本的なスタンスが分からなくなります。
連続失踪事件の原因として驚いたということは、
他者の生命に対してある程度配慮するような印象でしたので。
動機としてはイアの純真を裏切らないため、という感じなのでしょうが、
能力的な限界ふくめて、いくつかの疑問が生じます。
どう見ても人間ではないイアに対し、嘘発見は有効なのか?
少なくとも、頼人にそれを判断することはできないでしょう。
イアが嘘をついた状況を、この時点では経験していないのだから。
感覚的に有効だと分かったとして、頼人の価値基準において、
嘘の有無は人間か否かよりも上の理由であるのか?
ここまでの流れをみるに、どうやらそのようだと判断せざるを得ません。
それが良いか悪いかは問題ではなく、このへんの判断基準が
イマイチあやふやに感じることは、よろしくない気がします。
嘘発見の能力とそれに基づく行動理念の難しさの一つでしょう。

「嘘発見器、見抜く」から、
「懐から取り出したものはガムテープ。」のくだり、
ずいぶんと冷静な判断だと感じます。
はじめから侵入を考えていなければ、この持ち物選択には至らないでしょう。
それだけの冷静があるのなら、まずは学校や龍平に連絡しそうなものです。
ただ、ストーリーの都合上それは出来ないでしょう。
理由としては美咲の安否を確認するため焦っていた、という解釈が出来ますが、
だとするなら、このガムテープを用意していた冷静と矛盾してしまいます。
想像するに、この侵入方法により主人公の有能さを強調したかったのではないかと思うのですが、
上記のような理由から、逆に解釈を困難にしている気がします。
優れた演出も、状況を見誤るとおかしな展開になりかねません。
あくまで個人的な解釈ではありますが。

同章に「それだけのために命を懸けに行くの!?」というイアのセリフがありますが、
これはイアの価値基準を曖昧に感じさせました。
彼女は禍渦破壊の理由として、人間の正しくない死を防ぐ、という名目を持ち出していたはずです。
それなのに人の死を「それだけのために」と言うのは、なにかズレを感じます。
ただ、あくまで禍渦を破壊することが目的なのだな、と思わせるつもりであるなら、成功でしょう。
頼人の命を重視しているようでもありますが、それならそもそも禍渦破壊を頼む理屈がなくなってしまう。
心情的な複雑さというより、状況的な曖昧さを感じてしまいました。
なんというか、頼人にカッコいいこと言わせるため、
無理に挑戦的なセリフを押しこんだのではないかと思えてしまいます。
むしろイアに対する評価が下がってしまうのではないでしょうか。
判断基準が曖昧なので、読者は困惑するかもしれません。

その後の戦闘、蜘蛛の糸の性質を利用したシーンですが、
せっかくの作戦が説明で終わっているのはもったいない気がしました。
前の段階で見栄を張ったのだから、
相応の派手な描写と緊迫した動きが映えるシーンになるでしょう。

狛蜘蛛の伝承に関して。
禍渦との戦いにおいて重要な役割を果たす伝承ですが、
ある程度の早い段階で、半分ぐらいは提示しておいた方がよい気がします。
住処である洞窟、二匹であること、退治されたという辺りまでは、
日常の雑談の中で龍平から強引に聞かされていれば、
それらに対する伏線にもなり、龍平のキャラを強調することもでき、
対処法を彼に聞く積極的な理由にもなるでしょう。

タイトルに関して。
白鷽は白い嘘からの連想なのだと思いますが、
鳥の鷽につなげるには、やや要素が足りない感がします。
イアに鳥的なイメージがあるわけでもなく、なぜ鷽が出て来たのか、よくわかりません。
例えば神様の方にも伝承があり、その眷属や従獣として鷽を使役していた、などの背景があれば
イアを鷽と捉えることにも、すんなり納得がいく気がします。


とりあえず、「白鷽と嘘発見器」に対してはこんなところで。
「鷽から出たマコトの世界」はもう少しお待ちください。
いや、けっこうかかるかもw
気を長くしておいていただけると助かります。
こちらの指定した三作もそれなりにボリュームがありますからね。
他の作業を圧迫したりしていなければよいのですが。
分量に対しても対応いたしますので、なにかあればご連絡ください。
  • 投稿者: 退会済み
  • 2013年 06月26日 18時10分
管理
 大変遅くなりました。久安です。感想どうもありがとうございました。それでは言い訳☆タイム開始です。

 大体の印象としてはその通りかと。初めて書く作品だったので自分の書きやすいモノをと思って書いていると少年漫画風というか少年漫画になってしまった次第です。そのため展開、演出はともに書きやすかったのですが、本作の特徴としての「嘘発見器」としての印象が薄いというのは痛いところですね。これは確実に当時の私の力不足によるものです。たとえば修正するとしてトランプのシーンを削り、同級生が嘘を吐いているシーンを導入することでその同級生に対する行動により嘘の基準、その力について説明しやすかったようにも思えます。いまパッと思いつくことが当時の私には思いつかず、それが限界だったということでしょう。
 日常生活が送れていたという点に関してですが、当初、主人公の人間関係は断絶したモノだったのですが、それでは話の展開のさせようがなかったので、何とか我慢できる嘘の基準をやや下げある程度の生活が送れるように調整したという経緯がありまして。もっと内心憤慨している描写などを加えていれば彼がどのような精神状態で生活しているのかということがもっと理解しやすくなっていたかと思います。

>「嘘発見器、襲われる」の中で~
 失踪事件、イアを信じた主人公の件に関しては順序が逆になっていたり、構成がおかしくなっていたりとご指摘いただいた通り不自然さがありました。その他に関しても順序がおかしいことで不自然さを与えている箇所があったのでその辺り改善の余地がありますね。

>「嘘発見器、燃える」の中で~
 主人公が失踪事件の原因として驚いていたのは、単純に事実として驚いたというだけの事であり事件に巻き込まれた人を想ってではありません。彼は基本的に嘘か真か、嘘吐きか、正直者かで物事を判断する傾向にありますので、全然関係ない人間が死んだ場合、その人が正直者だったらもったいないなーくらいのスタンスです。
 またイアが言ったことが嘘か本当かわかった、又はそう思ったのは、主人公が力に慣れ過ぎていたからということがあります。言葉が通じ、意思疎通が図れるのであれば自身の力の有効範囲であると判断していた、と思っていただければ問題ありません。――がこれも説明不足でしたね。

>「嘘発見器、見抜く」から~
 これは完全に展開上、構成上、演出上の都合によるものでした。また誰かがいることを望んでいる主人公が窓をブチ破って侵入するのは如何なものか? と思いまして。ですので矛盾は当然のことと思われます。ただ、上手くその辺り処理することがどうにもできませんでその矛盾を解消することができませんでした。
 またイアの台詞に関しては彼女の立場が関係しています。この時点では、彼女は禍渦を壊す為に製造されたモノであり、それこそが第一目的でした。ここで主人公に死なれてしまっては今後禍渦の破壊が大幅に遅れる。そのためにいま少数を見捨てることで後々大勢を救えるのであればそれも致し方ないという判断をした訳です。『鷽から出たマコト』と違い、この頃はまだ結構ドライです、彼女。

>狛蜘蛛の伝承に関して~
 これに関しては、ああ成程なと素直に思ってしまいました(笑)。ご提案頂きました展開の方がスッキリしますし。やはりこの辺りいまも未熟だなあと思えます。

>タイトルに関して~
 鷽と関連させたのは「鷽替え行事」という神事からです。災厄を嘘として、鷽替え人形を用いて、吉と成す。自分では的確なタイトルかと思っていたのですが、確かに本編で何にも触れていないので混乱するかも知れません。これも読み手への配慮不足ですね……。

 以上で言い訳☆タイム終了です。他に書いていただいた感想についても順次書いていきますので、もう少々、もう少々お待ちくださいませ。