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まず特筆すべきは、リリアの語り口の親しみやすさと、彼女の成長物語としての手触りです。薬屋の娘としての知識を活かしつつ、「物流」という未知の分野へ踏み出す彼女の視点が一貫しており、読者が世界の仕組みを彼女と一緒に学んでいける構成になっています。さらに、ケンタという異世界から来た存在が導き役として、ただの運送屋ではなく“想いを届ける物流の革新者”として機能しているのも秀逸です。

また、登場人物一人ひとりが生きており、市場や村の風景描写は五感を通じて臨場感を与えてくれます。特に「月光草」や「せせらぎの村の蜂蜜」など、ファンタジーらしい品物の設定がリアルな物流の課題と結びついている点に、この作品ならではの創意工夫が感じられます。

何より、この作品は“物を運ぶ”という行為の背後にある「人の生活」や「夢」までも描いており、最終盤でリリアが口にする「目に見えない大切なものも一緒に運んでいるんだなって」というセリフは、作品全体の核を成しています。

読後感も爽やかで、次なる調査や発見を期待させてくれる余韻のある終わり方でした。