感想一覧

▽感想を書く
物語としてはテンプレではありますが大逆転ざまぁもので、ストーリーとしては爽快でとても楽しめました。
ただ、ちょっと設定の作り込みが甘いというか。


ロキの地位が高すぎるんですよ。
「王太子」っていう地位は、「次期王位継承確定者」なんですよ。つまり次期王としての教育とか公務とかでスケジュールがみっちりで、そうそう他国に出歩いたりできないですし、万が一何かあっては一大事なので、どこに行くにも護衛や従者がわらわらついてくるはずなんです。身分を隠して他国の子爵令嬢とのんびり恋愛やってられるような立場じゃないんです。
なので、ここは単に「王子」とするだけで良かったんじゃないかなと思います。継承権の低い、例えば第六王子あたりなら、ふらふら遊び歩いててもそこまで不自然でもないというか。

ロキを王太子にした弊害は他にもあって、例えば侯爵家(高位貴族)の子であるアリューゼが他国の王太子を知らないって相当まずいことですよ。侯爵家の結婚披露宴に呼ばれるような参列者も高位貴族が中心になるはずなので、彼らも彼らで気づかないのが不自然です。
国交も何もない遠い国とか、存在さえ軽視されるような小国とかならまだ分からなくもないですが、ロキの父王と主人公の国の王とで対等に近い親交があるようですから、少なくとも力関係の似通った隣国とかに見えますし、それだとなおさら「王太子」を知らないのはまずいですね。魔法で姿を変えていたとかにしないと、整合性が取れないと思います。

あと主人公の母親。「昔、ロキの両親を世話したことがある」ってそれ他国の王と王妃ってことになりますが、なんでそんな話が社交界で伝わってないんてすかね?しかも自国の王様は知ってるのに貴族たち(アリューゼの披露宴参列者たち)が知らないって、余計に不自然じゃないですか?
それとロキの両親である国王夫妻が、主人公の母モーラに世話されたことに対してどんな恩を返したんだろうか、ってのも気になります。モーラが独身時代の話なら、子爵に嫁ぐなんてさせないでもっといい縁談を用意して然るべきだし、子爵夫人になっていたのであればその件で子爵家自体がもっと脚光を浴びてる=アリューゼが婚約破棄する理由がなくなる(婚約破棄のデメリットがとんでもないことになる)わけで、お話が根底から崩れてしまいます。
モーラの娘を王子(王太子)と結婚させることで恩に報いるつもりがあったのなら、そもそもマリアがアリューゼと婚約していた事実が矛盾してしまうことにもなるわけです。
それと、いくら昔世話した相手の子だからって敬称もなしに呼び捨てはまずいですよ(笑)。正体を隠してた間ならともかく、正体を明かしてからはちゃんと「殿下」って呼ばせましょう。モーラは子爵夫人でしかないのですから。

こういう細かい部分のリアリティって、細かいですけど作品のクオリティに大きく影響すると思うんですよ。お話が面白いのに細かい矛盾が目について楽しめない、ってなると読む側としてもガッカリしますし。
そういう意味でも、もう少し設定をしっかり練って欲しかったなあってのが正直な感想でした。次回作以降に役立てて頂ければ幸いです。
  • 投稿者: 杜野秋人
  • 男性
  • 2025年 06月20日 15時26分
↑ページトップへ