感想一覧

[良い点]
戦争から生まれる復讐に焦点を当てたところ。アクションやヒューマンドラマの作りやすい戦時中を題材にする作品は多いけれど、終戦後の、しかもレジスタンス的ではないテーマを扱った点に、作者の独創性を強く感じる。目の付け所が渋くて素敵です。
[気になる点]
庭師、メイド、騎士と、個性的なキャラクターが登場するものの、結局その個性が外見や戦闘能力に終止している点は惜しいと思う。終わらぬ復讐に酔う3人を描くことは、それだけ復讐とは業が深いのだというテーマに肉薄することに繋がるが、裏を返せば3人のエピソードは没個性的に見えるし、結論を繰り返しているようで少々鬱陶しい。復讐にも三者三様の「色」があることを丁寧に書いてほしかったです。
[一言]
短編ということを考慮しての構成、そしてテーマ設定が素晴らしく、作品として非常に安定していると思います。言葉の選び方、句読点の使い方に若干不安があるものの、文の流れを綺麗に見せようとする相剋様のこだわりが随所に見られ、粋なセリフも心地良いです。
テーマとなっている復讐ですが、最後の姫の決断が良いアクセントとなって、読後感も暗く重い雰囲気にならず、古き良き口承文学を楽しんでいるような感じになりました。おそらく相剋様は、この姫の決断と対比させる形で歪んだ３人の復讐者を設定したと思うのですが、上記にも書きました通り、メリットとデメリットがあると思います。拙筆ではございますが、少しでもお役に立てれば幸いです。

[一言]
壮絶。凄惨。なのに目が離せず一気に読了してしまいました。憎悪と言うテーマから、ここまで深く、斬新な物語を引き出された作者様の手腕には、ただただ尊敬です。短いセンテンスをたたみかけるような筆致には、迫力と美しさがありました。
いずれも血塗られた道を歩むキャラクターたちですが、読み終えた後はこれで良かった、これしかなかったんだという得心と、清々しさを感じました。