感想一覧
▽感想を書くこの小説は「失恋」や「執着」の物語というよりも──手放すことそのものの痛みを書いている。
主人公が「あなた」を追いかけながら、その手を伸ばす前に、自ら手を引っ込めてしまい。
「わたしが絡みつく前に」と願う一節には、自己嫌悪と理性の共存が残る。
主人公は、愛してしまう自分を知っているし、その果てに壊れる自分もわかっている。
それでも、止められない。
だからこそ「どうか飛んでいって」と願い祈る。まるで、愛する人を解放することでしか自分を守れないように。
三連目の「誰もわたしを救えないから」で、物語の重心が沈む。
この一行がすべてを語っている。恋愛ではなく、自我と依存の断絶。
人を好きになるという行為が、どれほど残酷で、美しいかを知っている人の言葉だと言うように語る。
そして終盤、「バイバイ」と「おはよう」が並ぶ。
別れと始まり。喪失と日常。
この対比が、時間の残酷さをやわらかく包んでいる。
忘れようとするたび、思い出す。進もうとするたび、燻む。
その矛盾が、「大人の恋」の現実というのを綺麗に表している。
「鈍色の心」という表現が素晴らしく感じます。
銀でも灰でもない、曖昧で濁った色。
それはきっと、どんな大人も胸の奥に持っている“終われなかった恋”の色。
この作品は、詩でありながら明確に「物語」として成立しています。
構成がとても綺麗ですね。
冒頭の“遠くへ”から始まり、終盤で“進む”へと至る流れが、まるで心の距離が描かれているようで、読後に静かな余韻が残る。
言葉選びのセンスも抜群です。「絡みつく前に」「鈍色の心」など、繊細な感情を装飾せずに見せてくる。
抑えた筆致なのに情が滲み、成熟した痛みがある。
恋を手放す過程を、感傷に沈まず、詩的な構成で昇華している。
美しく、冷たく、そして誠実な一篇ですね。
まさか、またネットの海で貴方の作品に出会えるとは思いませんでした……!
今回もとても素晴らしい詩で、そしてまた小説を書いてくれたことが何より嬉しいです!
また、黄昏と凪さんの小説を読めることを楽しみにしています。
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