感想一覧

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三人それぞれの「正しさ」が全部きちんと立っていて、読んでいてずっと考えさせられる短編でした。
リュミエールの「怪我人に立場も何もありません」という一言がまず刺さりました。
現場で目の前の命を支える人間からしたら、それはたしかに揺らぎようのない正しさで、だからこそアルトの“正論”と噛み合わない。そのズレが、とてもリアルでした。
後であのアルトが、自分の手を汚しながらちゃんと動くようになっているのも、彼自身が“試されて”変わっていく感じがあって好きです。
フィオナのパートは、レオンの「微笑みの貴公子」の仮面が剥がれていく瞬間が印象的でした。
聖女の力でも救えない場面で、「君は聖女だろう!」と感情をぶつけるレオンと、「精一杯やりました」と淡々と言うフィオナ。
そこから「忘れない。それしか、人間には出来ません」という言葉に落ちていく流れが、とても静かで残酷で、それでも優しい。
“助けられない”側の感情までちゃんと描いてくれる物語なんだな、と感じました。
エリシアとカイアス殿下のやりとりもよかったです。
社会構造を変えようとする殿下の正しさも分かるし、それでも「では、今この場で試される覚悟は?」と突きつけるエリシアの視線の強さも分かる。
あの一言で、「机上の正しさ」と「現場の正しさ」がガチンと噛み合う音がした気がしました。
終盤、殿下が「どちらか一つを選ぶ必要はない」と言い直してくるのも、最初の彼を否定するんじゃなく、視野が一段広がった“アップデート”として描かれているのが心地よかったです。
誰か一人を悪者にしてスッキリ終わる話ではなくて、
・目の前の命を救うこと
・救えないことを抱え続けること
・未来のために仕組みを整えること
それぞれが「何/誰を救おうとしているのか」を、丁寧に見せてくれる物語だと感じました。
読み終えてから、自分は今どのスタンスに近いかな、と少し考え込んでしまいました。
素敵な短編をありがとうございました。
ここまで丁寧に読み取ってくださり、本当にありがとうございます。
それぞれの「正しさ」が噛み合わない感覚を、ズレとして受け止めていただけたことがとても嬉しいです。
フィオナの「忘れない。それしか、人間には出来ません」という部分に触れていただけたのも印象的でした。
書いている側としても、あの言葉は一番静かで、一番重たい場所でした。
読後に立ち止まって考えてもらえる作品になっていたなら、これ以上のことはありません。
素敵な感想をありがとうございました。
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