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xから来ました。
序盤を読んでまず感じたのは、この作品が 「能力」と呼べるものの正体自体が人間の倫理や精神の歪みと直結する、極めて哲学的・心理的なSF物語 になっているということでした。〈特異値〉と呼ばれる数値は単なる戦闘能力ではなく、同族を殺した者にだけ開示され、世界の見え方そのものを変えてしまうという――まさに能力の定義すら「病」に近いものとして設定されています。このルールの提示だけで、世界がどう変質するのかという問いが読者の内部に静かに投げかけられ、力の獲得と代償、正しさの是非というテーマが冒頭から強く立ち上がっているのが印象的でした。
主人公・宮原瑞希は、高校二年生にして偶発的な殺人の当事者となってしまい、その結果として〈特異値〉が開示されます。序盤の描写は決して感情的な高揚や派手なバトルではなく、刑事の取り調べ室という静かな空間で心の奥底に沈む冷たい恐怖や孤独、自己嫌悪と向き合う瑞希の姿が強烈に胸を打ちます。 まるで自分自身の罪と、これから背負うことになる世界の異様さを、じっくりと噛み締めるような描写が「能力もの」の常識を覆す深みを与えています。
またこの作品の魅力は、単に暗く重いだけではなく、「合理性」と「正しさ」の対立を人間の心の中で丁寧に描き出している点にあります。〈特異値〉によって世界が明晰に見えるようになる――つまり合理的な判断が可能になるという特性を持つこの数値は、一見すると万能のように思えますが、物語を進めるごとに、**「合理性を追求することが必ずしも人間を救うものではない」**という問いが浮かび上がってきます。作品世界では、正しさを盲信する者たちが社会を「最適化」しようとして静かに世界を壊していく様子が描かれ、読者はただの勧善懲悪でない、複雑な倫理の問題を突きつけられます。
ここまでの展開は、派手なアクションや派手な演出よりも、静かに、しかし確実に人間の内面と社会の崩壊への問いを積み上げるタイプの物語で主人公自身が抱える罪の重さとその結果手にした〈特異値〉、そしてそれを巡る世界の反応――どれもが「人を救うとは何か」という問いを深く掘り下げていく構造になっており、読後には単なる能力バトルものとは明らかに一線を画す重厚な余韻が残りました。人間の正義、人間の弱さ、そして救いとは何かを考えさせられる、 静かに胸の奥に迫るダークSF序盤 でした。 続きものんびり読ませていただきます。
ブクマ 評価つけさせていただきました。
よろしければ昨年から私もカキカキしています。
読んでいただければ幸いです。
教室の乾いた空気から一転して凄惨な事件に巻き込まれる瑞希の姿に胸を締めつけられました。謝罪が癖になっているような控えめな少年が自らの手で命を奪うという重すぎる責任を引き受けたことにやるせなさを感じますし、両親の教えが最悪の形で現実となり目の前に現れたウィンドウのおめでとうという言葉が残酷に響きました。事情聴取で刑事から責任感の強さを指摘されながらも誰からも免罪符を貰えないまま雨の中へと歩き出す孤独な後ろ姿が目に焼き付きますね…
  • 投稿者: 退会済み
  • 2026年 01月16日 03時14分
管理
ご感想ありがとうございます。
瑞希の最初の立ち位置や、教室との落差をそこまで強く受け取っていただけたことが、とても嬉しいです。

控えめで、謝罪が癖になっている少年だからこそ、「自分の手で選んだ」という事実を誰にも預けられなかった。その重さを引き受けてしまった瞬間を書きたいと思っていました。

両親の教えが最悪の形で現実化し、祝福として表示されるウィンドウが残酷に響く、という読みもまさに狙い通りです。

事情聴取の場面で誰からも免罪符を渡されず、雨の中へ一人で歩いていく後ろ姿は、この物語における「最初の断絶」でした。救われなかった、というよりも、まだ、どこにも属せていない状態として描いています。

丁寧に受け取ってくださり、ありがとうございました。
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