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読み終えたあと、胸の奥がじんわり痛くて、しばらく画面を閉じられませんでした。
この物語は「親子の和解」や「再生」を安易に描かず、名前・仕事・成功・沈黙という複数の層を、水の街ヴェネツィアの湿度で包み込むように描いていて、とても深かったです。

特に印象に残ったのは、「凛」というペンネームと本名の距離感です。
本名を捨てることで守ったものと、同時に失っていたもの。その両方が、父との関係や仕事の危機と絡み合い、少しずつほどけていく過程が、痛いほどリアルでした。

父は決して分かりやすく善い存在ではなく、謝罪も遅く、不器用で、ずるい。
でもその「ずるさ」こそが、現実の親子関係に近く、簡単に嫌いにも許しにも振り切れない感情を丁寧にすくい取っていると感じました。

最後に主人公が選ぶのは、完全な許しでも、決別でもなく、
**「少しずつほどく」**という選択。
その曖昧さが、この作品をとても誠実な物語にしていると思います。

静かだけれど、確実に心に残る一作でした。
  • 投稿者: 麗奈
  • 2026年 01月15日 00時14分
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