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崩壊寸前の北方戦線を守り抜いた英雄は、何ゆえに死地へ送り込まれたのか。生きて戻った彼を幾重もの冤罪で殺そうとするのはなぜなのか。
それは、この作品の本題ではないのでしょうが、ひとつ確かに思えるのは、この国は誰も第三王子を守ろうとしていないということです。

本来であれば、国の存亡にかかわる重要な決定は、王が王の名において為すべきことであり、第三王子ひとりが敵と交渉を行って、宰相も知らぬ密約を結び、その責任を負うのはあまりにも歪です。

清濁併せ呑むのが政治ですが、多くを生かすために犠牲を払い、血を流す決断を強いられ、汚名を被せられるのは、政治的な生贄に他なりません。

淡々と誤りを正しながらも、国のあるべき姿のため、自身を処断する第三王子の孤高の姿と、浅ましい茶番劇を繰り広げる王宮、そして、そのような状況に追い込んだ無力な王の対比が際立ちます。

北方の吹雪に消えた第三王子の献身にも関わらず、この国の先行きは暗いのではないでしょうか。
旅立つ彼を見送ったエリシアが、その思いを受け継ぐことだけが、最後に残された希望なのかも知れません。
とても深く読み取っていただき、ありがとうございます。

仰る通りで、この物語の中で一番歪んでいるのは、
「第三王子ひとりに決断と責任が集中している構造」そのものだと思っています。
本来は王が、そして国家が引き受けるべき選択を、
彼一人が背負わされている状態は、英雄というより生贄に近い。

北方戦線を守った功績も、
敵と交渉し、戦争を止めた決断も、
どれも国家としては“使い切っていい存在”のように扱われている。
だからこそ彼は裁かれなかったのに、守られもしない。

この国は、第三王子を救おうとはしていません。
むしろ「彼が汚れてくれるから国が保っている」という前提の上に、
無自覚に安住している場所です。
その意味で、国の先行きが暗いというご指摘は、
物語としてとても正しいと思います。

この短編は
「真犯人を捕まえる話」でも
「王国が浄化される話」でもなく、
“正しさを一身に背負わされた人間が舞台を降りる話”です。

だから彼が去った後、
王国はすぐには良くならないし、
むしろしばらくは、より歪みが露呈するでしょう。

ただ、その中で唯一、希望の種になるのがエリシアです。
彼女は彼を理想化もせず、断罪もせず、
それでも「彼の見ていた国の在り方」を引き継ぐ側に立ちました。
英雄を失った国ではなく、
英雄を必要としない国へ向かえるかどうかは、
彼女のような存在が増えるかにかかっている。

とても本質を突いた感想をいただけて、
この作品の核を正面から受け取ってもらえたことが、本当に嬉しいです。
面白かった。

ただ、皇子が犯人だということが冤罪なだけで事件があったのは事実なんだから、
本件終わった感出して次に備える話題だけではなく、「王子は舞台から降りたけど真犯人探しは続く」的なニュアンス欲しいな。
  • 投稿者: ペンチ
  • 男性
  • 2026年 01月27日 08時31分
感想ありがとうございます。
とても嬉しいです。

仰る通り、この話は「事件が解決した話」ではなく
「この断罪は間違っていた」と証明された話でしかありません。
真犯人も、歪んだ構造も、まだ王国の中に残っています。

ただ、この短編では
“真犯人を捕まえる物語”ではなく、
“裁かれなかった人間がどう舞台を降りるか”
に焦点を当てました。

レオニスが去った後も、
宰相や王国側は当然、事件の検証と後始末を続けますし、
むしろここからが「本当の片付け」になります。

ただそれは、彼の物語ではなく、
王国そのものの物語になる部分なので、
今回はあえて描かず、余白として残しました。

「終わっていない感じ」を受け取ってもらえたのなら、
それはとても嬉しい読み方です。
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