感想一覧

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>「罪状は三つ。第一に、民を見下し、慈悲を欠いたこと。第二に、王太子である私を操り、国政を私物化したこと。第三に、忠誠を装いながら王国の秩序を乱し、貴族社会を混乱させたこと!」
>追放令は迅速だった。荷物は最低限。付き人は許されず、馬車一台、護衛の騎士は国境まで。王都の門を出るとき、石畳の隙間に落ちた光が、奇妙に冷たく見えた。
>クラウスは、エリシアを“判断の場”に同席させた。だが彼女に決めさせない。決めさせないことが、彼女を守る最善だと直感していた。
ほぼほぼ結果だけが描写されて、何がどうなってそのような状況になっているか、具体的なことが意図的に省かれている上に常識論で考えるとありえないツッコミどころ満載な流ればかりなのだが、
そこは『小説家になろう』を席巻している『婚約破棄もの』のいつもの流れからテンプレがなくても書き手と読み手の間にある共通認識や流行知識からすんなりと納得できてしまうのがその小説投稿サイトで培われた文化の妙だろうな。
逆に言えば、みなが知っているというテンプレ通りのお約束の前提で創作すれば、具体的な描写に文量を割くこともなく、端的な詩的な表現になって言わんとしたいことが伝わっていくのだな。ついにここまで来たなぁといった感じ。
それは作中でも言及されていることであり、プロフィールを信じるなら国家資格者としての学識と教養からか、理屈っぽい作風だけれども、駄弁を弄するのを嫌い、簡潔かつ明瞭で教養と知性のある社会の到来を切望していることがヒシヒシと伝わる。そういったテーマの作品を次々と投稿しているのだ。
>「言葉にできない理由か」
>「言葉にしたら、壊れる理由」
>クラウスは頷いた。理屈では分からないが、感覚として分かる。説明は、ときに本体を削る。

最後に“座敷わらし”というのは聞き慣れない表現ではあるが、たしかに社会の仕組を円滑にする“調停者”として最大の成果を発揮できるタイミングを逃さずに必要な時に必要なことを必要なだけ実施できる才覚と天運があるというのは事実なのだろう。
少なくとも、具体的な罪状が示されずに『王太子である私を操り、国政を私物化したこと』で裁かれたというのは、“調停者”としての才覚と天運が人間離れしていて、彼女が発言するとなぜか全てが上手くいくことへの違和感を凡人たちが呑み込めなかったからなのだろうな。
その上で場の流れは掌握したところで決断は自分ではなく然るべき立場の人間にいちいち委ねるのだ。この“いちいち”がこの話の肝で、本来は立場を弁えて手順を徹底していることが逆に不信感を抱かれるのだから、つくづく度し難いものだな。
まあ、一緒にいて気持ち良くはさせてくれない人間ではあるから、出世欲や名誉欲、自己顕示欲に満ちた爛熟した貴族社会では長生きできないのは道理ではある。
だから、生まれた身分や権力に胡座をかく人間:現実が見えていない青臭さが抜けない王子なんかとは相性が悪く、現実の面倒臭さを理解して職務に励める重役:仕事熱心な人員調整が上手い宰相あたりとは相性が良いため、収まるべき場所に収まったという話だな。
  • 投稿者: LN58
  • 2026年 02月20日 22時36分
なるほど。エリシア嬢は座敷わらしでしたか。
そりゃ追い出した国はこうもなる。

座敷わらし云々を抜きにしても、“場を取り持つ力を持つ存在”を蔑ろにすれば極論として国の運営が上手く行かなくなるのも必然。(これって日常生活中でも大なり小なりあるのですよね。仕事ができる頼りになる先輩が上司に手柄取られたら自分のことではないのに何かムカつくじゃないですか)

“正義を守る”ことは大切かもしれませんが、感情論的な“それ”は害悪であることが非常に多い。なろうでよく見るざまぁパターンですね。

ご馳走様でした。
いつも“気付き”を与えてくださる月白ふゆ様のお話は読んでいてとても楽しいです。ありがとうございます。
  • 投稿者: にえんて
  • 30歳~39歳 女性
  • 2026年 02月18日 21時51分
感想ありがとうございます。
そこまで丁寧に読み取っていただけて、とても嬉しいです。

エリシアが何者だったのか、あるいは本当に「何か」だったのかについては、作中ではあえて輪郭を曖昧にしたままにしましたが、お書きいただいたように、“場を取り持つ力を持つ存在”を軽んじた結果として国が歪んでいく、という読み方もまた自然だと思っています。

超常の話としても、現実の組織や人間関係の話としても、どちらにも引き寄せられる余地があればいいな、という距離感で書いていました。

正義や断罪そのものよりも、そのあとに何が残り、何が失われたのかを感じていただけたなら幸いです。
こちらこそ、いつも丁寧な感想をありがとうございます。
座敷童子が出て行った家は、不幸に見舞われるんですよね。
王家が食中毒で全滅しそう
感想ありがとうございます。

確かに、そういう話もありますね。
ただ、何が原因だったのかは、
当事者たちにも最後まで分からなかった、
という距離感で書いています。
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