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[良い点]
ヒロインの諒子は客観的には「男にだらしない女」そのものであるけれど、
そういう自分を正当化したり陶酔したりせず、どこか突き放した視点で眺めている点に好感を持ちました。

恋愛的な関係を拒絶する真一に対して、涙を見せたくないと感じる等、諒子の心理描写にも目を引かれました。

対照的だけれど、どちらも諒子を救済する役割を果たす真一と健介の造型も魅力的です。

健介がなぜそんなにも諒子に親切にするのか、
そこに恋愛感情が介在しているかの様な雰囲気はありますが、
敢えて想像の余地を残して終わる結末も粋です。
[気になる点]
具体的なエピソードや発言を織り交ぜて描くべきところを説明で片付けてしまっている部分が所々で目立ちました。

例えば、一晩を共にした後、諒子が涙ながらに真一に語る場面で、相手の真一がどの様に返事をしたのか、具体的な描写を丸ごと省略してしまっているので、
読者には諒子がなぜ真一に対して信頼感を抱き、三日間も彼の部屋で過ごしたのか、今一つ腑に落ちません。

また、真一が恋愛を拒絶する理由として「自分の夢があるから」という主旨を述べていますが、
その夢が何なのか、漠然と匂わす形ですら示されていないので、読者の目から見て彼の発言は信憑性に欠ける上に、
卑怯な逃げ口上という印象が生じてしまいます。

そもそも、酔って意識も朦朧とした女性に性的な行為をするという最初の行動自体が、社会通念としては卑劣な行動ですから
(酔った時点での諒子は真一との関係を望んではいなかったわけで、そこからするとレイプにも等しい行為)、
その辺りが他ならぬ相手の諒子や第三者の健介から不問に付されているのはどうなのかと気に懸かりました。

健介が語る「アンティーク」への思いはそれ自体は確かに魅力あるものではありますが、
タイトルにも入れるのであれば、もっと話全体のイメージにも反映されるべきではないか、と感じました
(ベタですが、登場人物それぞれがどこかしら自分の思い入れのある品物を身辺に置いている、等)。

最後に、せっかく主人公たちが本屋で働く設定があるわけですから、もっとその辺りを物語に活かしても良かった気がします。
[一言]
色々書きましたが、鋭い描写には最後まで惹きつけられました。
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