エピソード89の感想一覧
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[一言]
古蔦さん、こんばんは。少し慌ただしくしていたとはいえ、一月も留守にしてしまいほんとうにすみませんでした。それに、私こそこれからの日々を彩ることのできるお話をたくさん聞かせてもらえてとても嬉しく思っているところです。
「ハウルの動く城」、私はまだ観たことがないのですが、「未消化の問題をやみくもに詰め込んだ」や、「物語のどこかでそれは踏みにじられていて」という言葉に惹かれるものを感じました。再び日々のなかで物語に触れるようになって、自分が抱いてきた物語への見方を突き崩すような作品に出会いたいと思っていたところなので、ちょっと手に入れてみようと思います。作品の完成度という言葉にこれまで自分がとらわれすぎていたような思いがあって、本来開かれた作品世界に対してもっと広くふるまえるようになるヒントが古蔦さんの言葉にはあるような気がしています。
「千と千尋の神隠し」は、私も家族と何度も観ました。実際の色づかいも素敵ですが、あの作品にはいくつもの読みのグラデーションが利いているはずなのに、もっとも自然な次元でこちらの心を揺さぶり、そして鎮めてしまうのがすごいですよね。あの電車のシーン、私も好きです。これまで垂直的に描かれてきた世界の奥行きがすうっと水平に開かれる光景にはただただ心を奪われますし、色彩や動静のコントラストがとても映えていて、それだけで何か赦されたような気持ちになります。誰かに甘えたくて、散々ダダをこねたあとの憑き物が落ちたような、しゅんとしたカオナシの佇まいも愛らしくていいですよね。
「生と死のあわいの国で美しいものや心に触れるものに出会う」というのも、ほんとうにそうですね。私もちょうど臨死体験のような不思議な世界を描いた小説を読んでいたので、あの影のない人々が手前の駅で降り立つシーンを思い出していたところなんです。こうして知らない誰かの間で同じ光景が焼き付いているなんて、宮崎アニメってやっぱりすごいですね。
宮沢賢治はもう三十年近く読んでない気がしますが、思えばこの作家の名は、いつも私が惹かれてきた人たちの口から聞かされてきたというのに、どうして通り過ぎてしまったのか。これも改めて読んでそのうち古蔦さんとお話できたらいいなと思います。これでもうポイントもたくさん溜まりましたから、今ならきっと宮沢賢治とも仲良くなれそうな気がします。
それとムスカのこと、何だか古蔦さんらしい感じ方だなと思いました。悪意の捉え方にどこか誠意があるというか、一途さや似つかわしさにおいて悪を見つめるスタンスというんでしょうか。
そういう「救いようのない悪」にまで行きついてしまったムスカの知性と情熱なり、彼の人間性というものを思うと、物語が彼に負わせることになった罪科とは別の場所で、悪を悼むような空間があってもいいのかなと私も思います。
古蔦さんの作品でも個人がそれぞれの文脈から発現させた悪意や、集合的に持ち寄られたような悪意がよく顔を覗かせていますし、もっと言えば物語の根源的なところにも結び付いているように思います。私の近況では、川の王のくだりが強く印象的なのですが、彼の死を前にしても、モリオンには悲しみはあっても憎しみのような「仇」といった感情がありませんよね。ルビーも同じで人間の所業というものをただ静かに思い返していて、そうしたものから正義を語ろうとしないところに何か真摯で気高いものを感じますし、悪を私たちから切り離して排そうとはしない古蔦さんの受け止め方が滲んでいるようにも思いました。もちろんそうせざるを得ないこともあるでしょうが、悪というのがある状況で育まれた悲しい必然だということを、近しさをもって語ろうとする古蔦さんの言葉には親しみを覚えます。それにあの場面の「食べる」ことの描写は、こちらの世界の見方をそっくり反転させるさせるもので、ちょっと震えました。とてもよかったです。
あとはそうですね、私にも好きなものはありますが、私には初めからあなたの書いたものに引き寄せられるだろうという予感がありましたよ。最初の一節を読んだときに、ああ、ここには自分の物語を語ろうとしている人がいるんだって強く思ったことを覚えています。「危ないといつもいわれているのに、どうして海面にのぼっていってこの空が見たくなってしまうのか」、今思えばこの一文が私をここまで連れ出してくれたのです。あのとき勇気を出してほんとうによかったと思っています。それでは。
古蔦さん、こんばんは。少し慌ただしくしていたとはいえ、一月も留守にしてしまいほんとうにすみませんでした。それに、私こそこれからの日々を彩ることのできるお話をたくさん聞かせてもらえてとても嬉しく思っているところです。
「ハウルの動く城」、私はまだ観たことがないのですが、「未消化の問題をやみくもに詰め込んだ」や、「物語のどこかでそれは踏みにじられていて」という言葉に惹かれるものを感じました。再び日々のなかで物語に触れるようになって、自分が抱いてきた物語への見方を突き崩すような作品に出会いたいと思っていたところなので、ちょっと手に入れてみようと思います。作品の完成度という言葉にこれまで自分がとらわれすぎていたような思いがあって、本来開かれた作品世界に対してもっと広くふるまえるようになるヒントが古蔦さんの言葉にはあるような気がしています。
「千と千尋の神隠し」は、私も家族と何度も観ました。実際の色づかいも素敵ですが、あの作品にはいくつもの読みのグラデーションが利いているはずなのに、もっとも自然な次元でこちらの心を揺さぶり、そして鎮めてしまうのがすごいですよね。あの電車のシーン、私も好きです。これまで垂直的に描かれてきた世界の奥行きがすうっと水平に開かれる光景にはただただ心を奪われますし、色彩や動静のコントラストがとても映えていて、それだけで何か赦されたような気持ちになります。誰かに甘えたくて、散々ダダをこねたあとの憑き物が落ちたような、しゅんとしたカオナシの佇まいも愛らしくていいですよね。
「生と死のあわいの国で美しいものや心に触れるものに出会う」というのも、ほんとうにそうですね。私もちょうど臨死体験のような不思議な世界を描いた小説を読んでいたので、あの影のない人々が手前の駅で降り立つシーンを思い出していたところなんです。こうして知らない誰かの間で同じ光景が焼き付いているなんて、宮崎アニメってやっぱりすごいですね。
宮沢賢治はもう三十年近く読んでない気がしますが、思えばこの作家の名は、いつも私が惹かれてきた人たちの口から聞かされてきたというのに、どうして通り過ぎてしまったのか。これも改めて読んでそのうち古蔦さんとお話できたらいいなと思います。これでもうポイントもたくさん溜まりましたから、今ならきっと宮沢賢治とも仲良くなれそうな気がします。
それとムスカのこと、何だか古蔦さんらしい感じ方だなと思いました。悪意の捉え方にどこか誠意があるというか、一途さや似つかわしさにおいて悪を見つめるスタンスというんでしょうか。
そういう「救いようのない悪」にまで行きついてしまったムスカの知性と情熱なり、彼の人間性というものを思うと、物語が彼に負わせることになった罪科とは別の場所で、悪を悼むような空間があってもいいのかなと私も思います。
古蔦さんの作品でも個人がそれぞれの文脈から発現させた悪意や、集合的に持ち寄られたような悪意がよく顔を覗かせていますし、もっと言えば物語の根源的なところにも結び付いているように思います。私の近況では、川の王のくだりが強く印象的なのですが、彼の死を前にしても、モリオンには悲しみはあっても憎しみのような「仇」といった感情がありませんよね。ルビーも同じで人間の所業というものをただ静かに思い返していて、そうしたものから正義を語ろうとしないところに何か真摯で気高いものを感じますし、悪を私たちから切り離して排そうとはしない古蔦さんの受け止め方が滲んでいるようにも思いました。もちろんそうせざるを得ないこともあるでしょうが、悪というのがある状況で育まれた悲しい必然だということを、近しさをもって語ろうとする古蔦さんの言葉には親しみを覚えます。それにあの場面の「食べる」ことの描写は、こちらの世界の見方をそっくり反転させるさせるもので、ちょっと震えました。とてもよかったです。
あとはそうですね、私にも好きなものはありますが、私には初めからあなたの書いたものに引き寄せられるだろうという予感がありましたよ。最初の一節を読んだときに、ああ、ここには自分の物語を語ろうとしている人がいるんだって強く思ったことを覚えています。「危ないといつもいわれているのに、どうして海面にのぼっていってこの空が見たくなってしまうのか」、今思えばこの一文が私をここまで連れ出してくれたのです。あのとき勇気を出してほんとうによかったと思っています。それでは。
エピソード89
返信がとてもとても遅くなってしまい、申し訳ありません。
宮崎アニメ……見てらっしゃる前提で話題にしていました。ちょっとうかつでした。
ハウルの動く城、ネタバレになってなければよかったのですが……。
作品の完成度というのはどうなんでしょう。私はあまり判断できないのですよ。映画を観たり物語を読んだときに「この話は胸を打つ」という感覚はよくわかっても、完成度の高い低いは時として自分には判断が難しくて。
たくさんの感想もありがとうございます。
悪意のことと悪のこと。食べるという行為について。
モヤモヤとしたものを何とか形にして表現しようとはしても、ほんとうに物語として綺麗に昇華できていなかったり不完全だったりもするのですが、そういったところを越えて読み取っていただけるのが、本当に嬉しいです。
すごく伝わっているのを感じる部分もありますし、おはなしを通じて書こうとしていたものを私自身追体験させてもらうような感覚でもあります。
仇を討つ、という視点は、確かにあまりありませんでした。モリオンについてはまだ描写できていない部分が多いので控えますが、思い返せばルビーにも仇討ちの感覚はないかもしれません。
ルビーはアシュレイの死を悼んでも、アシュレイをとらえた漁師に復讐しようとは思いも及びませんし……。(いえ、漁師は日々の糧のために銛を打つのでそもそも悪とは無関係ですが……)
ただし、この世界は、本当に悪いことを人たちには報いがある世界ではあるのです。人の心を失ったり、幸せを感じることを失ったり、自分自身を失ったり……。だれかが復讐することで不幸になるのではなく、悪を為すことそのものがどうしようもない恐ろしい破滅そのものなのだと表現したいのかも。
なんとか描写できたらよいのですが、難しいです。
宮崎アニメ……見てらっしゃる前提で話題にしていました。ちょっとうかつでした。
ハウルの動く城、ネタバレになってなければよかったのですが……。
作品の完成度というのはどうなんでしょう。私はあまり判断できないのですよ。映画を観たり物語を読んだときに「この話は胸を打つ」という感覚はよくわかっても、完成度の高い低いは時として自分には判断が難しくて。
たくさんの感想もありがとうございます。
悪意のことと悪のこと。食べるという行為について。
モヤモヤとしたものを何とか形にして表現しようとはしても、ほんとうに物語として綺麗に昇華できていなかったり不完全だったりもするのですが、そういったところを越えて読み取っていただけるのが、本当に嬉しいです。
すごく伝わっているのを感じる部分もありますし、おはなしを通じて書こうとしていたものを私自身追体験させてもらうような感覚でもあります。
仇を討つ、という視点は、確かにあまりありませんでした。モリオンについてはまだ描写できていない部分が多いので控えますが、思い返せばルビーにも仇討ちの感覚はないかもしれません。
ルビーはアシュレイの死を悼んでも、アシュレイをとらえた漁師に復讐しようとは思いも及びませんし……。(いえ、漁師は日々の糧のために銛を打つのでそもそも悪とは無関係ですが……)
ただし、この世界は、本当に悪いことを人たちには報いがある世界ではあるのです。人の心を失ったり、幸せを感じることを失ったり、自分自身を失ったり……。だれかが復讐することで不幸になるのではなく、悪を為すことそのものがどうしようもない恐ろしい破滅そのものなのだと表現したいのかも。
なんとか描写できたらよいのですが、難しいです。
- 古蔦瑠璃
- 2023年 07月16日 23時06分
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