感想一覧

[一言]
「夢」というのは不思議なものである。意味と時間の鎖から解き放たれた「過去」の記憶でありながら、正夢のように「未来」の現実の出来事を暗示したり、導くことがある。この作品は夢の中で過去を旅する男に訪れた、とある奇跡を描いたものである。
　この作品にはふたつの「出会い」が描かれている。ひとつは思春期の中学生
のように恋愛に対してピュアな幻想を描く会社員と女性の「出会い」。
そしてもうひとつは出会い系という現代を象徴するような効率的な「装置」と
ただ一度会っただけの人を３年もの間意識のかたすみに持ち続けるという古風で不器用な「想い」との出会いである。犯罪の温床だと頭でっかちに出会い系を批判する自称モラリスト達に「こんな風に素敵で確かな出会いもあるはずだ！」と力強く一石を投じる佳作だと思う。
　
　出会ったばかりのふたりのようにかわいらしくて初々しく、
再会するまでのふたりのように謎めいていて深い・・・新進作家「過去未来」氏のこれが、デビュー作！