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[良い点]
筋立てがわかりやすく、先の気になる展開で、さくさくと読めました。
[気になる点]
子どもの病気の下りの虚実がわからなかったのが、自分の中で少々引っ掛かりました……とても大きなことなので。
[一言]
今回は「O.S.Tへようこそ」の中の、『道化者』について感想を書かせていただきます。
サイレント・スニーカーで展開した架空の戦記物とはがらりと世界が変わって、現実の生臭い男の葛藤が描かれた物語ですね。
何かとても男の葛藤をリアルに感じることができて、素直に面白かったです。
水瀬のバーの隠しメニュー「ミントカクテル」から話が展開し、客がカクテルの力で自分のインナースペースに飛ばされて、自分のストーリーと向き合う……
そこで、夢見る者の一人称で語られる世界はあまりにリアルで、これが「カクテルの中の世界だ」ということを忘れ、一人の人生の中に読者は連れ込まれます。
平和に妻子と暮らしていた男の日常から突然妻が失踪。娘を一人で育て上げ結婚相手を紹介され、承諾し、一仕事終えたはずが、娘の裏切りを知る。なにも知らない自分一人が道化者だった……
このストーリーそのままなら、両親に挟まれそれぞれの幸せを願った娘もまた被害者にも見えます。そして怒り心頭の男の気持ちはわかるけれど、その仕打ちはあまりにむごい。けれどその先に待つどんでん返しと暗転……
男の目覚めとともに、読者としては「これが記憶でなく夢ならば、どこまでが記憶に沿ったものでどこからがユメセカイ、或はカクテルの効果による創作なのか?がしばしわからなくなりました。
一説によれば、睡眠中の脳は「何を覚えておくか」「何を忘れるか」の選択をし、整理をし、最も重要と思われる要素だけを記憶するよう場面を再構築しているといわれています。
夢はいわば未来に起こりうることへのシュミレーション、現実に立ち向かうための訓練ともいえると。
もしミントカクテルの役割がそれを増強したようなものなら、カクテルの世界の中の「空港で起きたこと」は、それこそ未来に起こりうることへのシュミレーション、立ち向かう戦士となるための訓練、だと考えるととても興味深いですね。
彼は自分の怒りの深淵を見据え、それを手紙という形にしてストレートに娘に突き付けて現実への未練に別れを告げた。
ミントカクテル、という名前と甘い口触りに騙されると、とんでもない目に遭う。でも、カクテルで自分を見据えた男と見据えずに通過した男と、どちらが男にとって「本音の人生になったか」?
あれこれ考えると、傷に蓋をして生き続けていく人の蓋を取る、そんな罪な飲み物だと思えてきます。
わたしだったら、その効能を知っていたら……
怖くて、飲めませんねえ。怖いです、ミントさん(笑)


  • 投稿者: pinkmint
  • 2018年 06月30日 22時46分
 Pinkmintさんには、毎度お世話になります。
 この度は感想を寄せていただき、誠にありがとうございます。

 流れとしては#3と似ていますが、あっちはゲストが最初ヤクザ者だったのがラストにはスーパーの店員になっているのに、#4ではミントカクテルを飲む前と飲んだ後が同じ世界となっています。
 まぁ、今回も#3の様にハッピーエンドにしてもよかったのですが、あえてゲストが誰も手放しで幸せにならない感じにしています。
 正直こんなネタでみんな幸せになったら、一人バカを見た男の気持ちはどこへやればよいのかと思いあんな感じのエンディングにしました。


>娘は被害者

 そうかもしれません。男の妻が失踪したタイミングが、まだまだ娘にとって母親が必要な時期だったため、母親に再会できて舞い上がってしまったのでしょう。
 そして母親の相手にも受け入れられて、おそらく実の娘と思われるくらいには大切にされたのでしょう。
 最初は男に対して罪悪感もあったかもですが、何年もそうされている内に状況に慣れてしまい2つの家族を行ったり来たりするようになったのでしょう。
 でも結局それを最初に男に言わなかった時点で、彼女も妻の"共犯者"になってしまったのですよ。

 まぁ、娘の子があんな目に遭ってしまうのは、娘や男の妻が一方的に悪いわけではないとは思ってはいます。
 娘の披露宴で会った時、その後でも十分な話をして妻やその相手に対して制裁をしたり、娘を妻の方に押し付ける(つまり妻とその相手を結婚させ、娘を引き取らせる)こともできたはずです。
 しかし男は何も言わずただ離婚届を押し付けただけに終わったので、そういう意味では男が嫌なことから逃げた思う人もいるかもしれませんね。
 でも家族に縁遠かった男が手に入れた幸せを踏みにじったのは妻で、さらなる追い打ちをかけたのが娘だから、最終的にああなっても仕方のない事だと思います。


>どこまでが記憶に沿ったものでどこからがユメセカイ、或はカクテルの効果による創作なのか?

 裏の話になりますが、空港へ行く手前までが男の記憶のトレースになっています。
 つまり、娘の子は病気になっています。
 ただ、ドナーが必要ではあるが空港のシーンに至るほど切羽詰まっていないのと、娘としては男にそこまで拒絶される理由が分かっていないので彼と話をするために探している、そんな状況です。
 空港のシーンについて、実は男の願望でもあったりします。
 要はこれ以上傷つきたくない、これ以上自分の中の大切なものを壊されたくないというある意味"逃げ"な思いからですね。

 でももしかすると、"ミントカクテル"が男を"死に戻り"させることで、彼を現実に引き戻させたのかもしれませんねぇ……フフフ。


>傷に蓋をして生き続けていく人の蓋を取る、そんな罪な飲み物

 ん~まぁ、人によってはそうなるかも(^^;
 でも"お酒"ってそんな側面も持ってるのではないですかねぇ。
 劇中で火置が語っていますが、アルコールって神経の働きを阻害するのですよ。といっても鈍らせる程度ですが。
 よく酒の席でしょうもないことから殴り合いになったり、相手を殺してしまったり、逆に本音をぶつけ合って和解するとかあったりすることがありますよね。
 結局、"ミントカクテル"に限らず、"お酒"というのは多少なりとそんな効能があると思いますよ。


 では、この度はどうもありがとうございました。
 #5もちまちまと書いていますが、この話みたくビター(バッド)エンドにはならないので投稿した折にはまたよろしくお願いしますm(._.)m
[良い点]
ハードボイルド風味にSFファンタジーをからませて、お酒を垂らした風情がいいですね。出だしから見るとかなり意外な方向に結末が転がっていく、その話の運びがよかったと思います。荒れた空気で始まっているのに、読後感がよく、さわやかに読み終われました。
映画館が併設されたバー、そしてカクテルつきの人生の止まり木に集まる人々と、いくらでもどんなストーリーでもどの方向にでも深めていけそうな設定は、結構欲張りですが、とても面白い試みだと思います。
[気になる点]
デビュー作ですから文章が説明調なのはまだ当然だし、私も現在進行形で修業中の身なので偉そうには言えません。
それを踏まえたうえで言わせていただくと、やはり出だしあたりの表現で、いささか引っかかってしまう部分が目立ったのが勿体なかったかなと。
例えば、
「その足取りは重く、当人としてはさっさと歩いているつもりだったが、傍から見ると酔っ払いが千鳥足で歩いているのとさして変わらなかった」
「黒のジャンパーに色褪せた紺のジーンズ、使い古したジョギングシューズを着けていた。顔立ちは瓜実顔で目も大きく快活そうなのだが、今はどこか痛むのか顔をしかめていてそんな雰囲気は微塵も無かった」
ここはどういう風情の男がどんな様子かを読者にわかってもらってさっさと先に読み進めてもらいたいところなので、ふらふらした足取りであること、どこかにけがをしている様子であること程度にとどめ、後の表現も半分ぐらいで流していいように思います。
あるいは、「最初はその形相に驚いたものの、わき腹に怪我をしているのを見て取った水瀬はとにかく応急処置をと客に声を掛け、奥へ救急箱を取りに行こうとした」等は、本人の行動を客観的に表現してあればほとんどいらない表現なので、すでに読者の脳裏に展開している(はずの)映像と説明文を重複させないほうが、文が重たくならないと思います。
[一言]
あれこれ細かくてごめんなさい。
読者から書き手への挑戦を前から知らせていただいていて、初めての作品に立ち会わせていただいたので、追加上にあれこれ書いてしまいました。

これはタイムパラドックスファンタジーという多重構造を持つお話ですよね。こういう不思議風味が好きな私には、楽しかったです。しかも、異なる世界が展開してゆくそのきっかけが、なにか正体不明のバーテンがいるバーで、きっかけが美しいカクテル。なかなか粋な構造ですよね。
その世界にずずいっと一人でも多くの読者様にお入りいただくためにも、
文章は軽めに、設定はわかりやすく。好奇心は存分にそそって。
を心掛けたほうがいいと、余計なおせっかいながら思ったものですから。

なぜ自分を助けたと問う男の問いに、バーテンが「あなたは客で私はバーテンでここは酒を出すところだから」と答えたところ、いいですね。簡単な答えだけれど、深いものを含んでいると思います。
ひとが交差するところに酒がある、そしてその色と香りによって人生に奇跡を呼ぶことも。そんな出逢いを心のどこかで願って、人は自分のカクテルを選びに行くのかもしれませんから。
では、これから先も執筆、頑張ってくださいね。
  • 投稿者: pinkmint
  • 女性
  • 2014年 04月30日 00時39分
 ご感想ありがとうございますm(._.)m

 いやぁ投稿した時は感想なんぞ読んだら、顔から火が出るくらい恥ずかしくなると思っていたのですが、意外にも冷静に読めてしまいました。
 投稿前もそうだったのですが、やってしまえばそれほど感じないのかもしれませんね。


>荒れた空気で始まっているのに、読後感がよく、さわやかに読み終われました

 もうこの一言だけで今回の話は成功したかな、と。

 この手の話は過去いろんな方が漫画なり小説なりで書かれてきたので、書きながら"アレ? これってどこかで見たような話だなぁ"とは思いましたが、お酒を使って話を作ったのはおそらくそれほどないだろうと踏んでそのままいっちゃいました。

 こういった手合いの話はダークエンドになる、というかあまり主人公にいい事がないパターンが多いのですが、ハッピー好きな自分としては現実はどうあれせめて話の中だけでも幸せになってくれたらいいなぁ、とあんな感じになりました。


>結構欲張りですが、とても面白い試みだと思います

 前にもメッセで書いたとは思いますが"O.S.T"ってOSというか、プラットフォームなんですよ。
 物語ごとに設定を作るのが面倒くさいというものぐさな自分にも合うかなぁなどと不届きなことを考えたのと、こういう固定された場所における連作短編の話って結構好きなものでして。
 だもんで、ここでは"お酒"と"映画"という自分の好きなものを使って色々とやってみようと思い立った次第です。

 って、pinkmintさんには今更言うことじゃないか……(^^;)


>あなたは客で私はバーテンで

 こういうことをしれっと言えるあたりが水瀬の"プロのバーテンダー"としてのプライドの現われだったりします。
 まぁ、彼の人物像は某漫画の主人公のキャラがかなりの割合で入っていますが、自分としてもこういうことをしれっと言えるようになりたいなぁと常々思っていますのでそういった願望とが合体したものとも言えますね。

 もしかすると勘違いされるかもと思ったので書きますが、別に自分が"プロ"だと言いたいんじゃなくて、客からの要望に対してどのようなことであってもできることならサラリとできてしまえるよう(仮にこっちからして無茶と思えるようなものでも)に、また客から見てそう思われるようになりたいと思っているだけですけどね。


>感想読後

 その、なんていうか、格闘技の道場なんかで実戦形式の練習でボコボコにされた後、傷の手当をしてもらっている、そんな気分です。
 指摘された部分が痛いこともありましたが、言ってもらうことで次へのステップが踏めるような気がする、まさにそんな感じでした。

 拙作に感想を書いていただき、本当にありがとうございましたm(_ _)m

 これを励みに次の話を書いていきたいと思います。

 今後ともよろしくお願いします。
 ってか、新作投稿されたらまた感想を書きに行きますねぇ(^^)b
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