感想一覧

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[一言]
男性三人とも主人公の気持ち無視で、自分の考えを押し付けて好き勝手に生きる、身内にしたくないタイプの人間ですね。
体に害のある煙でなく、服やお茶を与えるところだけ夫はマシですが、内面を大切にしてくれないから主人公の精神面では有害ですし。
そんな男達に養われなければ、生きていけない身である主人公の窮屈さ、失望、諦め、憤り、惨めさ、虚しさは想像を絶するものでしょう。
主人公の内面など実体のない煙の如く気にもかけない男達の扱いで、主人公が病んで自身を煙のように空虚なのものと感じて粗略に扱うようにならないことを願っています。
煙のように空虚で有害なのは男達の存在とその男達との関係だけで十分です。

  • 投稿者: もぐら
  • 2014年 11月24日 13時30分
モグラさん

お久しぶりです。

拙作へのご感想どうもありがとうございます。
あまり注目されない作品に目を向けていただけて嬉しいです。

確かに本編に出てくる男性三人(ヒロインの父、兄、夫)はそれぞれ異なる形でヒロインに自分の考えを押し付けて生きていると言えますね。

そもそもがそういう時代だったと言えますが。

ヒロインもそうですが、父親に関しては彼自身が時代の犠牲者とも言えますね。

実際、アヘンは当初は中国では毒性がよく認識されないまま普及してしまったので、中毒者が続出した側面もあります。

夫からの手紙が彼女にとって転機をもたらすものであることを祈りたいですね。
[一言]
 こんにちは。清朝の中国を舞台にした作品って好きです。チャンパオやチャイナドレスは素敵だと思いますし、雑然とした雰囲気のフートンは人間の生き生きしたところを感じさせてくれます。清朝の中国の様子は映画などでは観たことがないのですが、皇なつきという漫画家の「燕京伶人抄」という作品の雰囲気をイメージしながら読ませていただきました。あれも清朝の中国だったので。
 切ないですね。結局は教育や育った環境や見る男性の価値観によるものなのに、古い女・新しい女と判別されて疎まれるのですから。中国の女性は元気なイメージがありますが、男尊女卑が強い時代はこういうこともあっただろうなあと思いながら読みました。
 色を使った心情の描写も面白かったです。それに日本とは色のイメージが全然違うという点に異国情緒を感じました。
  • 投稿者: 酒田青
  • 2014年 07月09日 00時18分
酒田青枝さん

拙作へのご感想どうもありがとうございます。

私も長袍(チャンパオ)や旗袍(チャイナドレス)には惹かれます。

ただ、古都の印象の強い北京よりはモダンな上海の方が好きですね。

皇なつきさんの「燕京伶人抄」は私も以前読んで感銘を受けまして、正直、本編のヒロインも彼女の描くような清艶な佳人のイメージを意識して書きました。

話としても、「燕京伶人抄」に影響を受けたものは多いですね。

例を挙げると、緋色の花嫁衣裳を纏って嫁ぐ伝統的な結婚をしたものの、夫に愛されたいと願う若妻が、次第に夫が傾倒する京劇役者の青年に憎しみを燃やす話。

芝居好きの少女がファンである役者本人から「現実を見なさい」と諭され、「きっと幸せになれるはずだ」と希望を抱いて、親の決めた相手と結婚する話。

一度は親の言いつけで娶った従順で古風な妻を捨て、留学仲間である「新しい女」と結婚し娘を儲けたものの、社会の壁に挫折し、待ち続けていた元の妻の下に戻っていく話
(妻としても母としても挫折を強いられる『新しい女』と笑顔の奥に憎しみを秘めた『古い女』の対比が鮮やかです)。

暴虐で好色な夫が次々妾を作っても笑顔を絶やさず、むしろ進んで若い妾を差し向ける態度すら取っていた正妻が、実は妾にされた少女たち以上に理不尽な形でこの夫に添わされた過去を抱えており、最後はむしろ憎むべき夫から逃れるべく殺される話。

ただ、私の書く作品においては、上記に挙げた作品のような主人公たちの衝突や崩壊は敢えて避け、本当の意味での結末も示しませんでした。

中国女性は確かに生命力が強く押し強いイメージが私にもありますが、この作品は時代を描くことに主眼を置いたので、古い枠からは抜け出せないと自覚した女性像になりました。

ただし、このヒロインは父親に膳を運んだり、夫に好かれるべく新しい装いをしたり、彼女なりに与えられた境遇で生きようとはしているのです。

色についても着目していただけて嬉しいです。

花嫁衣裳は紅、喪服は白、という風に、日本とはかなり異なるのです。
[一言]
全編に渡って背景にながれる煙。煙にはそこはかとない敗退的な雰囲気というか、アンニュイなイメージが含まれていて、この作品全体にフィルターをかけています。特に阿片の煙は中国の暗部を象徴する様で、無気力な時代を想起させました。箱入り娘からすると、嫌だけど撥ね退けられない男達の澱、それが煙という形で纏わり付いて離れない様を思わせる、淡い情感の作品でした。
パン×クロックスさん

拙作へのご感想どうもありがとうございます。
独特の感性が窺われる読み込みですね。

ご賢察の通り、作中でヒロインの父親が耽溺する鴉片は当時の中国の暗部を象徴するものです。

アヘン戦争で弱体化した清朝が倒れて中華民国が成立しましたが、それはこの父親のような士大夫層には没落や挫折を意味していました。

当時の中国社会を伝える記録には、鬱屈から鴉片に溺れ、やがて心身ともに衰弱して死んでいった人々の姿がよく出てきます。

兄の嗜好する煙草は当時こそ鴉片のように明確な害毒が認識されていませんでしたが、現在の私たちの目にはその毒性は明らかですよね。

ヒロイン本人は鴉片にも煙草にも手を染めていませんが、受動喫煙が体に害をもたらすように、彼女の精神も知らず知らず煙に蝕まれています。

夫からの手紙が救いとなるか、新たな痛みをもたらすかは書き手としても想像していただきたいところです。
[一言]
象徴的なタイトルですね。
視界を曖昧にするくせに、実体がなく、あっという間に儚く消えてしまう「けむり」。
父が身を滅ぼした阿片の煙、兄が吐き出す毒のある紫煙、そしてラストで遠くへ流れ去ってゆく汽車の煙と、それぞれのシーンで実に効果的に使われていて、お見事でした。

ごく個人的な意見ですが、自ら悲しみの虜となって自滅した父よりも、あっけらかんと女性を見下してそれでいて好色な兄よりも、ヒロインの夫がいちばんタチが悪いように思いました。まさに妻を飼い殺しにしてるわけですもんね……憎悪の対象にならないところが、ナチュラルに悪い男です(笑)。

ヒロインのこの静かすぎる諦観は、やはり私などには理解しにくいものがあります。しかし、こういった生き方も幸せなのだろうと想像はできます。現代に生きる女性には選択肢が多いぶん自己責任が重すぎて、彼女のようなひとつ道を行くしかない生き方に憧れてしまうのかもしれません。

西洋と東洋の入り混じった、曖昧で美しい時代背景もロマンチックでした。けむりと紅茶の匂いが立ち上ってくるような一篇でした。
  • 投稿者: 橘 塔子
  • 女性
  • 2014年 07月07日 20時59分
橘さん

拙作のご高覧及びご感想ありがとうございます。
いつもながらに的確な読み込みで敬服します。

鴉片の白い煙、煙草の紫煙、そして、ヒロインは直接目にしていないけれど、汽車の黒煙、という風に、煙にもそれぞれ異なる色彩を持たせたつもりです。

ヒロインの夫については敢えて内面は謎のままにしていますが、見ようによっては確かに一番邪悪な感じもしますね。

夫がヒロインを故郷の実家に置いたままにしているのは、ヒロインが考えているように、一種の政略結婚で娶った古風な育ちの妻に対して退屈さを覚えているからかもしれない。

しかし、当時の上海は治安の面で危険であるばかりでなく、風紀的にも乱れた面があり、主人公の兄のように既婚男性がプロの女性と不倫をするケースもたくさんありましたが、人妻の不倫やそれに対する誘惑も多かったのです。

ヒロインのように富裕層の人妻で、しかも若く美しい女性となれば、必然的にそうした誘惑も多くなるので、夫としては飽くまで平和な郷里に縛り付けておいているのかもしれない。

どの道、男性のエゴではありますけどね。

「亭主元気で留守がいい」という皮肉が示すように、ヒロインが夫に憎悪を抱かないのは留守がちで、日常的な摩擦がないからとも言えます。

更に言えば、現状から抜け出る力を持たない彼女にとって、夫への憎悪は日々を不幸にするものにしかならないので、無意識にそういった感情を回避しているとも考えられます。

彼女が幸せかどうかは、本人にも答えの出ない問いかもしれませんね。

現代に生きる女性は自己責任は重くなったけれど、本当の意味で選択肢が多いのかは、私自身の実感としても疑問です。

それはさておき、西洋と東洋が魅惑的に融合した時代の雰囲気を少しでもお伝えできたようで、書き手としては嬉しいです。
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