感想一覧

▽感想を書く
感想絞り込み
全て表示
[良い点]
ロボット工学と生物工学の要素をバランス良く取り入れながら現代の日本に通じる問題を背景としたことで、斬新でユニークな世界観が描き出されています。

従来のアンドロイド像を覆す、個性豊かで人間らしく魅力的なDOLL達。
彼女達との触れ合いを経て成長してゆく主人公。
都市伝説めいた失踪事件から巨大な陰謀が徐々に明らかとなる展開は読み応えがありました。

個人的に感銘を受けたのは、DOLL達の言葉に人ならぬ彼女達だからこその重みがあったことです。
自分達が作られた存在であることを否定することなく、プログラムの先にある個性と感情を持って成長する彼女達の言葉が胸を打ちます。

個人的には、第5章における朝奈の言葉に出会えただけでも、この作品を読む価値があったと思います。
[気になる点]
主人公の活躍がDOLL達のそれに埋もれてしまっている感があります。
また、DOLL一人一人が個性的に描かれているだけに、ヒロインである桜の個性と活躍に抜き出でたものが欲しかったと思います。

[一言]
SF要素と政治サスペンス要素を巧みに組み合わせた本作で描かれる『近くて遠い未来』は娯楽作品の背景として実に魅力的です。

あくまでミクロの視点で考え、行動する主人公の姿には共感しつつ、考えさせられるものがありました。
中華連邦側の視点を持つ人物がほぼ登場しないことは異論もあるでしょうが、個人的には不要と思います。
本作はあくまで主人公の視点であり、終始一貫してその軸はぶれていません。

桜と瑠璃の会話で某ロボットアニメのそれと酷似した言葉があったことには困惑しましたが、DOLLのプログラムと思考に既存のメディア作品が影響を与えた可能性から、それもあるかと考え直しました。
桜が『山本五十子の決断』を知っているくらいですし。

『良い点』でも申し上げた通り、個人的に最も感銘を受けたのが朝奈の台詞です。
私は本作で描かれるDOLLは旧来のアンドロイド像を覆すものであり、貴重です。
この世界観を有する作品がこの作品だけであることは勿体ないと思います。

良い作品をありがとうございました。
読者の一人として、今後も陰ながら応援して参ります。
鳥羽さん、いつも読んで下さってありがとうございます。
本作はラノベ応募を意識した長編で、ギャルゲーで学んだキャラ毎のシナリオを取り入れ、初めて一人称を導入した鹿鳴館的な作品でした。
意欲作であるが故にあれこれ世界観と設定を詰め込み過ぎて消化しきれず冗長となり、またサブヒロイン達のシナリオに力を注ぐあまり、メインヒロインと主人公が埋没したのはお気付きの通りです。
選考も二次で落ちてしまいましたが、私にとっては今でも大切な物語で、それゆえ鳥羽さんにご読了・ご感想を頂けたことが本当に嬉しいです。

先に悪い点を整理すると、
メインヒロインの桜が物語の核心に関わっていない。涼宮ハルヒも物語の核心を知らないことが多いですが、それは彼女自身が物語の核心だから許されることです。普段憎たらしい性格なのは良いんですが、ここぞというときにメインヒロインらしさ(優しさ、行動力、色気等)を発揮させるべきでしたね。

主人公は物語の視点として各ヒロインに接触し、推理によって過去へと辿っていくのですが、最終的に物語を決定的に左右するようなことをしません(いくつかアクションは起こすものの)。世界観に身を任せている感じです。
これは、世界観が優先でキャラはそれに付随するものという、私の過去の悪しき習慣の名残です。キャラ小説では世界観は舞台装置ではなく、キャラが着るスーツぐらいの感覚でないといけないそうです。

シリアス場面にパロディがある。
桜と瑠璃ではなく、たぶん蛍と瑠璃ですね。これは他の方からもお叱りを頂きました。ごめんなさい。


しかし、朝菜に注目して頂けるとは。
本作を読んで下さった方の間では瑠璃の人気が高いのですが、朝菜も書き手としては当然好きなキャラで、しかもあの場面には特に思い入れがありました。ありがたいことです。
意思って何だろう。
私のある友人は、「君が今コップを手に取ったその行為が君の意思かどうかは、科学では証明できないんだよ」と作中の蛍みたいなことをよく言っていました。
例えば私が歩き回りながら文章を考える癖は、幼い頃母が家と駅との送り迎えの間に私の「お話」を訊いてくれた名残と思われます。私の中で文章のアウトプットと歩くという行為が条件付けられてしまったわけで、今も鳥羽さんへの返信を書くために何度か立ち上がって歩いていますが、別に私が好きでやっていることではないんですね。
本作のDOLLは個性や感情がプログラムにコーティングされたような電子頭脳を持っており、プログラムに影響されています。
一方の人間は完全に自由であるべきで、そうでないことは徹底して取り除いていこうというのは思い上がりではないかと私は思うのです。
それが朝菜の言っていた結婚の話に飛ぶんですが、家、親、地域の習わしの中で男女が結婚するのは日本でもつい最近まで普通だったし、世界の一部の先進国を除いたほとんどで今日でも続いていると思います。無論、虐待や人身売買といった人権侵害は取り締まるべきですが、いわゆる自由恋愛によらない結婚の類の精神面にまで(そこに「恋」があるか、とか)土足で入っていくのはおかしい。


世界観について。
最初にロボットと緑化都市というテーマで書き始めたので、どうすれば自然エネルギーに需要が生じるかを考えたとき、物語を構想したのが3・11前だったので、原発の稼働停止は想定せず、戦争の敗北によってシーレーンの海上優勢を失う状況を想定しました。
あくまでエンターテイメントとしてのリアリティを追求するためで、政治的なメッセージとかは特に意識していないです。
そうでなくても我々は今、日本が世界を牽引するような未来像は描けなくなっていると思います。優れた科学技術を持ちながら閉塞し自信を失った日本、そのイメージに合った作品を提供しようと考えました。

中華連邦(カクヨム版では蒙古連邦)は敢えて代弁者のいない、怪物のような単純な敵として描きました。主人公のミクロの視点を大切にしたかったからですが、フェアではなかったかもしれません。こうした反省は「山本五十子の決断」で改善を試みています。
異世界を舞台にすれば良かったのかもしれませんが、リアリティを大事にしたかったので(笑。
牡蠣を焼いたり鍋にしたりすれば安全なところを、私は牡蠣をどうしても生で食べさせたかったということですね。
ご読了・ご感想本当にありがとうございました。今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
[良い点]
こんにちは。
作品、興味深く読ませていただきました。

瑠璃と蛍が非常に魅力的でした。特に瑠璃は、冷徹な経営者としての一面をプログラムされた一方で、人の痛みに触れた時に座視できないという情の深さを持っています。それがとても人間臭く、魅力的です。また蛍には、年上のお姉さんが好きだという如月さんの萌えが遺憾なく発揮されていて、彼女の魅力がよく伝わってきます。

また、作品を書くにあたっての取材の綿密さも長所に挙げずにはいられません。それがストーリーやキャラクターにリアリティを与えていると思います。
[気になる点]
しかし、いくつか気になった点があります。

まず、私がこの作品の面白さを認識したのは瑠璃の隠された一面、眼帯の理由が明かされた時でした。この作品でも展開の遅さという如月さんの課題が見えるような気がします。

例えば、主人公が当事者意識を持って事件に当たるのが非常に遅いですよね。事件を起こすために必要な情報を読者に伝える一方で、主人公に当事者意識を持たせる部分も同時進行させた方がいいと感じました。

如月さんの作品をいくつか読ませていただきましたが、異邦人である主人公が新しい世界に誘われ、そこで事件や冒険に巻き込まれるという構図は共通していると思います。しかし、主人公が訪ねることになった新しい世界で確立されてある人間関係などは、主人公の登場によって変化したようには感じられません。また、主人公が異邦人であるだけに、前述した当事者意識の確立が遅い点も気にかかります。このあたり、如月さんの愛読している『フルメタル・パニック』ではどうなっているのでしょうか?

また、如月さんの主義主張が強く出過ぎているようにも感じられました。ここで宮崎駿監督を例に挙げたいと思います。宮崎駿監督の主義主張はおそらく如月さんとは真逆のものでしょう。しかし、日本が戦前から現代に至るまで抱えている問題について、批判的な眼差しを持っていることは共通していると思います。

では監督の作品はどうなのか。例えば『風立ちぬ』は戦前の日本と第二次世界大戦を題材としていますが、関東大震災や貧しい暮らしを送る子供たちも併せて描くなど、多くの人々が共感できる内容としています。博識として知られる監督なら、いくらでも戦前の日本に対し批判的なメッセージを盛り込むことができたでしょう。しかし、もしそうしていたら『風立ちぬ』が大衆に受け入れられることもなかったのではないでしょうか。監督が模型雑誌で連載していた漫画を読み、監督があの戦争にどういう眼差しを持っているのか知っていると、より一層、監督の凄さを実感します。

如月さんは以前、投稿した新人賞の評価シートで中国を敵国として描くことに否定的な見解が示されたとおっしゃっていましたね。私は、中国を敵国として描いたという表面的な理由ではなく、作品全体を覆う如月さんの主義主張を見た時、自分と考えの違う読者への配慮が欠けていると感じました。

もちろん、作者が意識しているか意識していないかを問わず、自分と同じ主義主張の読者にだけ届けば良いと考えていると思しき作品はたくさんあります。ラノベを含めて、です。それで成功した作品があるだけに、一概に否定することはできません。

如月さんは私同様、不器用な作家だと思います。自分が主張したいことが強烈にあり、それを隠すことのできない如月さんの鋭さを、私は好ましいものとして見ています。しかし、誰に配慮し、誰に配慮しないのか、という作家や作品の立ち位置を考えて欲しいとも思っています。如月さんには自分がどういう作家になりたいか、自分なりの答えを見つけて欲しいです。
[一言]
長々と書いてしまいました。自分でも苦いことを言ったと自覚しています。ご不快に思われたかもしれません。もしそうなら、私はお詫びするしかありません。
  • 投稿者: 退会済み
  • 2016年 04月18日 18時59分
管理
おお! 拙作を沢山読んで下さってありがとうございます! ご感想ありがとうございます!

蛍は、クジラさんには「空の唄」を先にお読み頂いているのでお気付きかと思いますが、スターシステムです。
ですが、こちらでは主人公から見た年上の女性としての艶めいた部分を強調しました。

瑠璃を一番評価して頂いているのがとても嬉しいです。
彼女は敵役として、特に力を入れてキャラ設定を練りました。
DOLLが単なる人工知能ではなく、プログラムで感情を抑え込む一種の枷だということを、瑠璃が最も体現しています。
……彼女をメインヒロインにすべきだったのかもしれませんね。私自身、書いていて彼女に一番惚れ込んでしまいましたから。

そもそも、瑠璃の眼帯のエピソードまで面白いものが無かったというのは、展開が遅いというよりは、メインヒロインと双子の姉妹の魅力が壊滅的ということですね(汗。

主人公の事件への当事者意識の芽生え、確かに遅いですね。当時流行っていた無気力系主人公をやってみたのですが。
最初に喰われるキャラにもっと感情移入させておけば、あるいは。ただ被害者への感情移入を増やせば増やすほど犯人へのヘイトが高まるので、そこのバランスが難しいんですよね。
この作品は、誰かが悪という話にしたくなかったんです。
国家や大人の都合で踏みにじられた若者達の青春劇、というような。

>主人公が訪ねることになった新しい世界で確立されてある人間関係などは、主人公の登場によって変化したようには感じられません。
これは痛い。私自身、「山本五十子の決断」で気になっていたところです。
五十子と宇垣束は主人公が現れたとき、関係がギクシャクしていました。本来は主人公の登場が何らかの形で作用して、2人の関係が良くなるようなストーリーにできれば良かったんですが。完全に私の力不足です。
この作品では、逆に一見とても仲の良さそうに見えた双子の姉妹に実は隠された問題があったことが明らかになっていくのですが、それは主人公が、というより、事件の進行とともに明らかになっていったことですから。
一応「北洋戦記―明日への翼―」のナターシャとルーシーは、のどかの介入で変化したとは思います。

「フルメタル・パニック!」ですか。あれは主人公が異邦人ではなく最初から組織に属しており、護衛対象になるヒロインの方が異邦人なんですが、主人公の組織での人間関係は既に出来上がっていて、そこは少なくとも第一巻では変わらないんですよね。
変わり始めるのは4巻からですね。それまで主人公は組織から「彼女を護衛しろ」という命令を受けてヒロインの傍にいたのが、組織が命令を変更したとき初めて組織に逆らって自らの意志でヒロインの傍にいることを選ぶ。
出版されたものではなく、新人賞で出したバージョンは違うかもしれませんけどね。
少なくとも私が新人賞に応募するなら、1巻からそれ(自分の意志で彼女の傍にいることを選ぶ)をやらなければ落とされるでしょう。
すみません、ご質問の主旨とはちょっとずれてしまったかもしれません。

>主義主張
本題に入る前に。宮崎駿監督の「風立ちぬ」は、上から目線ですみませんがとても偉いと思いました。
宮崎駿氏は、家が旧中島飛行機の下請けメーカーをしていたことから「軍用飛行機は大好きなんだけど反戦」という面白い人で、思想的には天安門事件が起こるまで中華人民共和国を理想の国だと言っていたバリバリの左翼なんですが、
あの「風立ちぬ」では、戦前の日本が震災や不況でどれほど困窮していたか、その苦しさの中で日本が戦争に突入していったことをきちんと描いていました。
正直驚きました。
日本が今の豊かな状態と全く同じコンディションで戦争を始めたと本気で思っている(思わされている)人が世の中には相当数います。
そういう認識を広めたい人達にとって、戦前の日本が今の日本とは全く違う、餓死や身売りが当たり前だったことは知られては困るんです。世界の広範囲が欧米列強の植民地で、日本が物を輸出したくても自由に輸出できない世界だったと知られては困るんです。「風立ちぬ」のような映画も邪魔なんです。
だから「風立ちぬ」は左からも叩かれました。
素晴らしい映画だと思います。

私自身の主義主張は、この作品の主人公、あるいは瑠璃と同じではありません。
「国際政治は現状維持だ」というのが私の信条です。現状維持というのは過去の歴史や領土を巡る主張はしながらも、各国がお互い今の境界線を維持して共存する、ということです。
たとえどんなに苦しくても、自国から戦争を始めることはあってはならない。「渇しても盗泉の水を飲まず」です。そういう意味で、私は右とも左とも違う人間です。
この信条が「山本五十子の決断」では皆さんから共感され易い方向に発揮されていて、この作品では逆に作用してしまっているのかな?

この作品は一応、精神的に未熟な主人公が最初は自分を取り巻く世界の不条理への怒り、中華連邦という巨大な敵への復讐という単純な目標に支配されているんだけれど、事件に(瑠璃の思想に)触れることで世界の複雑さを知る、しかし敢えて結論は出さない終わり方にしています。
必ずしも中華連邦だけを悪にしないよう、遠藤周作の「海と毒薬」を一部オマージュしています。
「海と毒薬」がどんな話か簡単に説明すると、福岡を無差別爆撃したB29が墜落して、その乗組員の米兵を福岡大学が人体実験したという戦時中の実話を元にした小説です。
小学生並みの感想としては「無差別爆撃はよくないです、でも人体実験はもっとよくないです」といったところです。
不条理なのは中華連邦の侵略だけでなく、瑠璃の義父の会社、米軍、蓮華先輩、その他諸々、なストーリーにしたつもりだったのですが……。

しかし、時事ネタも絡めたことによって中華連邦=悪が私の伝えたいこと、だという不本意な見方が避けられなくなっているのは否めません。
これでは中華連邦のモデルになっている国が嫌いな人たちからは喜ばれても、穏健な方には忌避されてしまうかもしれませんね。

私が当初考えていた構想は、この学園は世界中のDOLLが通っていて、中華連邦のDOLLも在籍している、というものでした。
中華連邦のDOLLをレギュラーメンバーに加えることで視点を増やし、「人口爆発に苦しむ中華連邦が、侵略してでも版図を拡げなければならない」という敵側の事情も語らせるつもりでした。
当初の殴り書きプロットでは、「我々は10億の民を食わせてやらねばならんのだ」「この美しい島を焦土にして、何のための占領ですか!」などという中華連邦側のセリフもありました。
新人賞に応募するために文字数を削減しなければならず、こうした部分を根こそぎカットしてしまった結果、中華連邦=完全悪になってしまったような。

「山本五十子の決断」は、この反省を踏まえて執筆しているものです。
この作品の主人公が瑠璃に「中華連邦の政府や軍と国民は違う」と言いますが、そこをより強調しています。敵国であっても、相手は同じ人間なのだということ。
また、どんな敵キャラにも理由があるのだということ。
少なくとも今の「山本五十子の決断」を読んで頂ければ、憎い国があるからといってその国の人々も憎んでいいとは受け取られないはずです。
しかし、視点を増やした代償として「山本五十子の決断」はより冗長になり展開が遅くなっています。
難しいところです。

>ご不快に思われたかもしれません。
とんでもない。
こんなに沢山、拙作を読んで下さり、忌憚なく意見を言って下さる方は本当にかけがえのない存在です。
クジラさんの投資に応えなければなりませんね。
精進します。
[良い点]
ライトノベルの新人賞への応募用ということですが、バックボーンが凄いです。
アガサ・クリスティ、遠藤周作、「故郷」と、如月先生の引き出しの多さと発想の豊かさに感嘆しますし、これだけ多くのモチーフがありながら決して振り回されることなく、練りに練って1巻完結のライトノベルとして短く纏めるのは大変なことだと思います。
リアリティーのある世界観。国際政治や軍事への造詣の深さがあってのものだと思いますが、ここまで精密な世界観をつくるための資料集めと考証に費やした時間、それをさらにエンターテイメントにするために取捨選択して圧縮するのにかかった労力は並大抵のものではないでしょう。
ミステリーとしてのクオリティも非常に高いです。特にタイトル自体が伏線だと気付いた時は目から鱗でした。
個人的には瑠璃のことが好きになったのですが、彼女がその後どうなったかがとても気になります。エピローグで例の本を課題図書に指定したのは、瑠璃の置かれた状況を考えれば、あれが精一杯の告発だったのでしょうか。考えさせられるラストでした。

[一言]
完結お疲れ様です!
こちらの作品も前から気になっていたのですが、このたび読んで凄い力作だなと思いました。レビュー書かせて頂きます。
また、山本五十子の決断より前の作品だと思うのですが、如月先生のスターシステム?朝菜は宇垣束、蓮華は嶋野大臣、瑠璃はセシリア・ニミッツと、キャラの系譜を感じられてファンとしても大満足でした!
山本五十子の決断も、続き楽しみにしています!どうか頑張って下さい!

  • 投稿者: とっか
  • 2015年 07月28日 07時07分
とっか様、いつもご感想ありがとうございます!
前の五十子と同様、細やかに読んで下さったようで、そして初レビューまでm(__)m
本当に書いていて良かった、いえ、生きる希望を貰っています。

スターシステム……自覚は無かったのですが、自分だとわからないキャラクター作りの癖を気付いて頂けて嬉しいです。
蓮華、嶋野大臣、それに「狼の翼」にもベアトリクスという悪役がいるのですが、彼女達は私の自己投影かもしれないと最近思います。
政治という文脈でしか人間(物語)を見ることのできない。

本作は私が初めてライトノベルを意識して書いたお話なので、自分の得意分野を全部出し切ろうと張り切って引き出しを開け過ぎまして。とっ散らかって空き巣が入った後の部屋みたいになってないでしょうか(汗。
文字数こそ標準的なラノベ新人賞へ応募可能な量におさめているのですが、取捨選択は自分としてはまだまだだなと反省しています。
ご指摘の通り本作はロボット、緑化都市、バイオテクノロジー、それに国際情勢と、それぞれ長文の説明を要する設定があります。
今書いてる五十子でまだあれでも説明を端折れたのは、この国の史実という誰もが知っている物語をなぞっているからです。小説家になろうが歴史小説を二次創作に関するガイドラインの中で取り上げているのは、独特ですがその通りだなと思います。
珊瑚海海戦やミッドウェー海戦などの詳細は艦これブームのおかげで従来の戦史オタク以外のライトなオタク層にもかなり知れ渡りましたし。
「聖上」といえば、どんな御方をさすのか言わずもがなですよね。
もし問題にされたら「聖上とは、私が大好きなゲーム兼アニメ『うたわれるもの』の主人公のことです。この小説は、『うたわれるもの』のパクリです」とにっこり笑顔で答えるつもりです。
その繋がりでいくと、今アニメ放送しているアルファポリスのGATEで1話の皇居避難シーン、漫画では電話を受けた皇宮警察官が「陛…」まで言いかける台詞がありますが、アニメではそれをカットしてても電話を受けた警官の身体がこわばる様子と、その後の「国民の安全が最優先とのことです」という台詞だけで、私達は何があったか察することができますよね。後は、アメリカ大統領ならあらゆるフィクションでいくらでも悪役にしてOKなようですが、某国の主席が登場して「人民の半分を移住させたい」と言っていたのは、え、これ某国の主席を悪役で出しちゃうのって、自衛隊広報タイアップのアニメとしてありなの? とびっくりしました。
出版界のタブーの線引きってどこにあるのか、本当にわからなくて困っています。
本作の「中華連邦」なんて、完全に架空の国ですからね! 架空の国ですから!(大事なことなので二度)
「中華連邦という国のモデルは何ですか」と質問されたら「私の大好きなコードギアスというアニメに出てくる架空の国です! この小説はコードギアスのパクリです!」とにっこり笑顔で答えたい。
とりあえず私はカトリックの学校出身なので信者になろうと思えば1年くらいの研修で容易に洗礼を受けれるらしいのですが、日本のラノベ漫画アニメがカトリックの総本山であるバチカン市国をとんでもない敵役として描いたフィクションで誹謗中傷し続けていることについて、信者になって謝罪と賠償を要求(嘘です平野さんのフォロワーです許して下さい。

ええと、脱線しましたがこのように話が冗長というご指摘を頂いているわけであります。
クリスティのポアロについてはあとがきで書きましたので、とっか様がタイトルが伏線だと気付いて下さったということもあり、最後に作中で夏休みの課題図書として登場する、遠藤周作の「海と毒薬」について触れて終わりたいと思います。
何を隠そう、私の高校の夏休みの課題図書が「海と毒薬」だったんです。
遠藤周作の小説のメインといえば、江戸時代にカトリックの信者や聖職者が幕府の拷問を受けて信仰を捨てる話ですよね。
そして「海と毒薬」では、ごく平凡な日本人たちの人生が淡々と綴られ、戦時下でも今と大して変わらぬ大病院の院内政治があり、その淡々とした群像劇の結節点として米兵捕虜への人体実験が描かれる。
日本人が同調圧力に弱いという論調は、私も全く同感です。ただそれが日本人にキリスト教の唯一神信仰の概念が無いからだという遠藤周作の理由付けは、私個人は納得できません。キリスト教徒の欧米人でも同調圧力に弱いことは、ナチスのホロコーストに事務的に協力した公務員や、スタンフォード監獄実験を見れば明らかです。
これは、同じ「日本人は同調圧力に弱い」という結論でも、そこへ至った原体験が違うからだと思うので、決して間違っているとは言えませんが。
ただ私が「海と毒薬」の米兵捕虜人体実験で忘れるべきではないと思っているのは、彼等が福岡空襲を行ったB29の乗組員たちであったということです。
B29は堅牢な装甲を施され対空機銃座を要所に配した空の要塞ですから、そう簡単には墜とされません。それが何故墜落したのかというと、B29に少年兵の防空機が空中特攻、つまり体当たりして墜落させたのです。
彼等は市街地への無差別爆撃という国際法違反を行った。日本の住宅が木と紙でできていることを知った米軍は、実際に本国の砂漠に日本の街をつくってみて燃やす実験までして、人口密集地を取り囲むように焼夷弾を落とした。
日本上空の制空権を完全に奪ってからは、戦闘機が低空に降りて逃げる市民を機銃掃射していました。つい最近他界した友人のおばあさんも、学校の校舎で米戦闘機に機銃掃射されたと言っていました。女学生を撃ったわけです。
これがもし敗戦国なら、戦闘機のパイロット、爆撃機の乗組員に至るまで人道に対する罪で裁かれるでしょう。
ナチスのホロコーストでは、命令に従っただけの下級官吏までが有罪になっていますから。
しかし、たとえ無差別爆撃がどれだけ理不尽であっても、その乗組員を人体実験に使うのは、決して正当化できない、許してはいけない行為です。
ここに葛藤があります。
本作の瑠璃にも、自分が正しいと信じて携わっていた計画の裏で義父が何をしていたかを知った時、「海と毒薬」を読んで私が感じたのと同じ葛藤が生まれたと思います。

このたびは丁寧なご感想とレビュー、本当にありがとうございました。これを糧に、山本五十子の決断の執筆を頑張りますので、今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
[良い点]
精妙な人物描写

「山本五十子」でも思ったのですが、登場人物たちの存在感がどれもしっかり表現されていてハマりやすかったです。
個人的には終盤あたりの軽音部の子達が良かったです。
脇役でも、しっかり記憶に残る個性がありました。

Doll達の在り方。

本格SFから軽いラノベまで用いられる範囲が多いロボットですが、貴作ではそれらある種の「お約束」がしっかり盛り込まれているように感じました。

人間との接触で得たブレイクスルー、機械であるが故の合理的かつ極端すぎる思考判断、そして人間と見分けがつかなくなりそうになる程の人格etc……

まさにDoll「人形(ヒトガタ・にんぎょう)」と呼ぶにふさわしい存在だと思いました。

創作物、トロイの木馬。

最初は伝説の方かと思ったのですが……読み進めていき、その真の意味に気が付いてぞっとしました。
伏線としてはこの上ない仕込み方だと思います。

パロディの仕込み方。

「山本五十子」と同様、この作品にもパロディがそれとなくちりばめられていて面白かったです。
ただ、謎解き場面での黒幕のあのセリフはどうかと思いましたが……
あれだけは、場面とあっていなかったように思います。


p.s.

こっちの世界にもあの架空戦記あったんですね。
しかも書籍化されていたとは…………主人公が読んだらどう思うのやら。
[気になる点]
夕菜と朝菜の関係について。

途中までは良かったのですが、最後の方で仲たがいした後の仲直り描写が欠けていたのが惜しかったです。
話としてはほぼ完成しているので、それだけに細かな欠如であるこれが欠けていたのは残念だと思いました。
[一言]
完結お疲れ様&おめでとうございます。

完結したのを知って読んでみたのですが、他二作品と同様、あるいはそれ以上に盛り込まれているのを感じ、一気に読破してしまいました。

一般的な推理ものというより、もう一つの神秘や超自然が強く表れている雰囲気を感じましたが、非常によく作り込まれていると思います。

アルファポリスの方も一票入れてきました。今後もお体に気を付けて、執筆頑張ってください。
長文失礼しました。
  • 投稿者: 退会済み
  • 2015年 07月14日 00時49分
管理
吉武様、ご感想ありがとうございます。
山本五十子の決断で、吉武様に人物描写、特に第7話の後半が良かったよとおっしゃって頂いた時、小説を書いてて良かったなと思いました。こちらの作品も読んで頂けて、本当に嬉しいです。

キャラクターの外的目的と隠された内的目的を物語の軸にするというスタンスは、五十子でも本作でも変わりないです。行動原理をプログラムされて生まれてくる一方で自分自身の感情も芽生えるDOLLという設定は、そのために好都合でした。
また本作はミステリー小説として、主人公の行動次第で物語が大きく展開していくノベルゲーム的要素、一見ギャグシーンに見えるような日常パートの何気ない言動や人間関係がシリアスパートで明かされる真相への手がかり(事件そのものの真相とは限らない)になるよう伏線とその回収を特に注意して織り込んだつもりです。

ですが、終盤にかけてはやはり事件そのものの真相解明のカタルシスを優先するあまり、個々のキャラクターの扱いが不完全燃焼気味なのは、私自身反省しているところです。
ご指摘頂いた夕菜・朝菜については正におっしゃる通りですし、瑠璃の扱いについても、同じように満足していません。
パロディをシリアス場面で使ったのも、どこのことだかわかりますが、確かに緊張感を削いでしまったかもしれませんね。ぴったりだったのでつい(汗。

>こっちの世界にもあの架空戦記あったんですね。
気付いて下さってありがとうございます!
実は本作の初稿を書き上げたのはあの架空戦記より前で、私の中でアイデアしか存在していませんでしたが、タイトルは当時から決まっておりました(笑。
アルファポリスご投票ありがとうございます! 今後ともよろしくお願いします!
[一言]
世界観がリアル! 人物描写の奥が深い! DOLLかわいい!
すごく面白いです! 続き待ってます!
幸せの靴音様

ご感想ありがとうございます!
こちらの更新が滞っていて申し訳ないです、続き頑張ります!
↑ページトップへ