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[良い点]
非常に興味深い優れた小説でした。髙津さんの語り口の引力に知らず知らずグイグイと引っ張られて気づいたら物語の渦中へと取り囲まれてしまったみたいです。
内容は二つの軸を行き来しながらの構造でよく練られていて感心し、とても面白く、とても勉強になりました。
ボクの場合はどうしてもハッタリをかまそうとすると直球勝負になりがちなので、髙津さんの知的な戦略にはなるほど、と思いました、かなりストーリーテリングにおける参考になりました。ありがとうございます。

この作品で気づいたのは、怪談における真実味というのは構造が反転していて面白いなということでした。髙津さんがこの作品で描いた二つの恐怖はちょうどそれらがきれいに対比されていたので、主題としても優れたものだし、構造としても攻めていていいなと感じました。
どういう気づきかというと、昔から文学で描かれてきた因果応報的なものが、霊を媒介として紡がれていくいわばファンタジックな怪談話の肝の部分、霊と因縁の合わさった力、それは現実からすればとても非現実な荒唐無稽ですが、この物語のもうひとつの恐怖の軸となった怪談話をカモフラージュの道具とし、現実の悪事を濁そうとする、というあり得そうなあり得なさそうな現実的要素のほうが、なぜかしらシュールな感覚を与えるために、いっそ怪談の荒唐無稽が現実に根差したリアリズムを持っているという不思議な感覚への気づきがありました。

それは、構成にも上手く取り込まれていて、中盤シュールな現実の裏事情へと推進力を持ちながら、物語はホラーテイストのミステリに近づいていきましたが、結の部分で老僧の語る怪談話で物語はストン、と荒唐無稽な現実感覚へと綺麗に落とされてクッキリ鮮やかな語り口だと思い感心しました。
その読み味の満足感を助長させているのが老僧の語り口、文体であり、怪談の描写と内容の興味深さでした。
それほど怪談を読んではいないので、ボクにとってその手の文学といえば鏡花ですが、この結の怪談の出来はあの鏡花にもひけをとらないほどの読み応えがあるとボクは感じました。それほど高い次元で練られていて、エキセントリックな部分は突抜けさせて、といった感じの、素晴らしい読み応えのある面白いパートでありラストだったと思います。
[一言]
今個人的に読み専活動をしているので、お邪魔させていただきますね。
この作品は内容、特に構成の見せ方が素晴らしかったですが、基本的にボクは自分の文体に対比させたり影響を受けるために、文体を読むことが一番の主眼としています。
髙津さんはまだ『入道雲』を読んでいただけなので、長いものは初めてになりましたが、恐らくいくつかあるバリエーションのうちのひとつなのかな? と予想しました。これから何作か読ませていただくので楽しみです。

この作品の文体の印象は、まず、大げさに云えば土着的な話だったので、関西かその周辺の言葉づかいでした。
ただ、極力それにはとらわれずに読み透かさんと読んでいき得られた感覚をお伝えしますね。この作品の文章の多くは、短い文を連ねていき、それにより大きなパワーを得ていくタイプが取られていました。ひょっとするとこの書き方は他の作品にも髙津さんの軸として採用される作風の代表なのかなと現時点では考えます。ブレの少ない構えで小パンチ中パンチをストイックに撃ち続けて後々得られる破壊力は相当な威力で、そんなマジックがあります。決して関西弁だからではなかったと思います。髙津さんの言い回しには本来エネルギッシュなパワーがどこかしらに潜んでいて、それが節々で漏れて現れているような感じです、ボクは、髙津さんの文体でファンタジー世界ならどう効果するのかな、ととても興味深く頭に浮かべました。

もうひとつの特徴は、グラデーションがある、一筋縄にいかない、複雑でハイセンスな物語性を有しているということでした。髙津さんは独特の感性、作家性をお持ちで、作品にも充分に活かされていると思いました。
今ツインピークスがリバイバルで盛り上がっていますが、よそ者の対峙する土着の内実の闇、という構造はピタリ同じラインにはまっているので、ボク的には今この小説を推されたらいい感じかもって思っちゃいました笑

クセがないのにアジがある、単なるフラットではないアダルトな文体であるからこそ、よりその魅力を雑味なく伝えることができるのかもしれないですね?
 ご高覧いただき、ありがとうございます。

 某所で、他所の地域には地蔵盆の習慣がない、と聞いて「えっ? 他所の子は夏休みの終わり頃にお菓子もらえないの?」と思ったのがきっかけで書いたものでした。
 子供の頃のことを思い出し、また、改めてネットで調べたところ、近畿地方でも所によって少しずつ行事の内容などが違うことがわかって興味深かったです。

 ローカルな習慣、古い時代にありがちな残念な出来事、現代で発生する残念な出来事などを捏ねて、過去と現在の二軸でいってみました。
 所謂オカルトの呪いは「みんなが信じているからそうなる」と言う側面もあるので、お地蔵さんへのオレンジリボン運動的なあれも、現実の対応と結果にリンクしやすくなるかな、思って取り入れました。

 今はあまり読んでいませんが一時期、怪談を読むのにハマっていました。
 現在でも日々、怪談話は生まれていて、ネット上でも「実体験」として語られるものがたくさんあります。そう言う話もきちんと保存されれば、何百年後かに学問として研究されるのかなぁ、などと夢想してみたり……
 その辺も、作中の掲示板シーンに盛り込みました。

 たくさん褒めていただいてありがとうございます。
 色んな要素を詰め込み過ぎてどうやって辻褄を合わせるか、脂汗を流したのを思い出しました。
 老僧の昔語りは、民話の類が好きで色々読んだので、日本の昔話や説話、今昔物語や世界各地の民話……その辺りの影響もあるかも知れません。

 詳細な分析も、恐れ入ります。自分でも気付いていなかった文章の癖がわかって、目から鱗が落ちた思いです。
 文体は、ストーリーの雰囲気に合わせてなるべく変えようとしていますが、上手くいったと思える話もあれば、微妙な出来に終わった話もあり、まだまだ研究中です。
 雰囲気に合わせつつ、読みやすくを目指していますが、なかなか……某文体診断サイトでチェックしてみたら、九割方「E:文章が硬い」と出て「地蔵盆」もそうでした。

 一文が短いのは、スマホだと一文が長いと読みにくいかな、と思って意図的に短くしている部分はありますが、解析を見た限りスマホ派が圧倒的に少ないので、まだかなり読みにくいようです。
 体調にも左右されるようで、体調があまり良くない時に書いた部分は息継ぎの「、」が無闇に多くなるみたいで、気が付いたら減らすようにしています。
 連載中のファンタジーな群像劇「すべて ひとしい ひとつの花」は、枝葉のエピソードを切らずに全部入れたら何文字になるか実験中なので、ダラダラ長くてストーリーの進捗は遅いです。

 丁寧に読み込んで下さってありがとうございました。
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