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[一言]
※今回SFレビューから降りたので削除したものをこちらに転記する。
申し訳ない。

不条理の行方

 はっきり言って、「リング」系の「バッドチェーンメール」系短編であり、新鮮味はない。しかし、幸か不幸か、加害者の罪悪感を葛藤に至る前に端折ったため、妙にドラスティックな作品として立った。
 不条理という言葉がある。道理を外れた「意味が解らない」理に合わない事を指すのだが、この作品に限らずショートショート系お得意のエッセンスに不条理はある。
 不条理という言葉は恐ろしい。常識も正義も時には人の存在までもどこぞの誰か解らぬ存在に否定されてしまう。
 因みに存在が解っている場合は理不尽と言う。理不尽の場合は相手が有っての事だから対処法もある(かも知れない)。
 ショートショートでは理不尽系が多い。作者はその理不尽を通す存在を見せる事で「意味が解らない」状況を説明し、それに翻弄される人々(乃至は個人)を悲惨に見せたり滑稽にしたりと料理出来る。しかし、不条理が主題の本作は翻弄される人々、即ち被害者を記号化し、方程式の回答の様にあっさりと示す。逆に不条理の手先となる少女ら(複数いる、というくだりはショートショートならではだが)加害者の罪悪感を、放っておけば自分も被害者になるから、という理由だけで、あっさり解決させる。時間が無いとはいえ、何とか殺人をしないように済ませる方法を考えない加害者。腕輪のアイテムとしての恐怖より、その加害者の罪悪感葛藤のなさが、秋葉原や土浦の無差別通り魔をも連想させる。それはそれで恐ろしいのだ。

  • 投稿者: 四十万
  • 2009年 09月17日 07時49分
[一言]
 ども、近藤です。
 これはやはり、現実的な話として読むのが正しいのではないでしょうか。近藤もうっかりすると何かのはずみで人間の二、三十人殺してしまうのではないかとひやひやしながら生きているのですが、幸いにしてお縄を頂戴したことはありません。
 冗談はともかくとして、そもそも我我は何かを殺しながらでなければ生きていけません。SFの裏側には確実に現実が描かれているのです。
 落ち着いた三人称の文体がとてもいいと思いました。
 ではまた。
  • 投稿者: 退会済み
  • 30歳~39歳 男性
  • 2009年 09月09日 21時19分
管理
[一言]
 何というか、怖いって言えば怖いですね。
 もし、僕が同じ状況になったら、好奇心で選択してしまうと思います。
 誰かを殺してしまうかも、と言うのではなくて、殺したくない人を殺してしまうかも、というのが怖いですね。
 
 もし、一度選択してしまったら、出来る事なんて限られてます。
 本当なら、直ちに、マスコミや警察に連絡するのが、一番良いのでしょうが、難しい話ですよね。
 今までの人生・現在の立場・これからの可能性。
 それらを捨てる事なんて、普通は中々出来るものでは無いですから。
 
 時間がないからなのか、主人公の性格からなのか、とてもドライな作品になってます。
 淡々と描かれているからこそ、逆に怖いのかも知れません。
 もし、自分が同じ状況に置かれたら、自分も、淡々と人を殺してしまうのではないか。
 そして、たまたまそこにいた、大切な人・殺したくない人を――。
 
 裏設定としては、
・宇宙人が地球人で実験している。
 もしくは、
・超大国が秘密裏に開発していた、軍事衛星からのビーム兵器。
・世界的なテロ組織が、そのコントロールを奪い、腕輪を作成。何も知らない一般人の手に届くよう画策。
 といった感じでしょうか。
 ネタバレになりそうなので言いませんが、注意書き等にも、いくつか予想が有ります。
 
 僅か20分足らずで読めてしまうのに、色々考えてしまう、深い作品でした。
 では、失礼致します。

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