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[良い点]
日本と言う国の本質を個人の集合体と言う新しい概念で捉えている所。
日露戦争において最終的に帝国陸軍が負ければと言う目新しい過程が提案されている点。
[気になる点]
最終段階で想定されている日独伊+ソ連と言う組合せは、国家社会主義と言う思想ではほぼ不可能であるという点。
前記にも通ずるのですが、他国の思想や動向についてほとんど触れられていない点。
[一言]
まず日露戦争の最終局面で陸軍が負けた場合、朝鮮半島自体はロシアに帰属する事になるでしょう。これは鴨緑江軍という事実上の朝鮮防衛軍が越境して戦線に参戦しているからです。奉天会戦以降も極東ロシア軍自体は、潰滅も全滅もしていません。日本側は既に補給限界に達しており、後退したロシア軍に追撃をかける余力など望むべくもありませんでした。つまり日本側がこれ以上の動員を掛けたとしても、補給能力の関係上ロシアの予備兵力に対抗するのは不可能だったと言う事です。当然旅順港も奪い返されてしまいます。結果日本は大陸から駆逐され、日本海を挟んでロシアと対峙するしかなくなります。勿論そのような状況下では、日本は三流国のままですし満州もロシアの勢力下になります。大陸から駆逐された日本が明石機関を使って共産主義者に援助する意味もなくなり、共産革命も発生しないでしょう。戦時国債の償還も難しくなり、最早日本は英国か米国の保護国乃至保護領になる以外の選択肢はなくなります。残念ながら日露戦争最終段階での帝国陸軍の敗退は、大日本帝国の終焉を招くのみとなります。実際は引き分けでも同じ結果になりかねないほど、綱渡りの停戦だったと言えるでしょう。
次に日独伊+ソ連と言う構想について。これは松岡洋右外相の腹案と同じです。しかし共産主義と国家社会主義と言うイデオロギー闘争を理解しているなら、引いてはナチス党をキチンと観察していたなら到達不可能な概念です。元々ナチス党は英仏と組んでの対ソ軍事同盟を模索していました。これが不調な為、日本との軍事同盟でソ連に二正面作戦を想定させて押さえ込もうとしました。これは日本側の海軍三羽烏(米内海軍大臣、山本海軍次官、井上海軍軍務局長)による強硬な反対で流産します。すかさずナチス党は、自身の二正面作戦を回避する為にソ連と不可侵条約を締結しました。生来の軍事蔑視思想の為か、日本側の政治家並びに官僚はこのナチス党の軍事戦略が理解出来ず、松岡洋右に至っては日独伊+ソ連による同盟と言うイデオロギー的な整合性の無い思い付きを言い出す始末。反共産主義とユダヤ人&ドイツ国内の少数民族排斥を旗印に政権を取ったナチス党が、ソ連と軍事同盟を結ぶなど西から日が昇るのと同じくらい有り得ない事態です。独ソ不可侵条約そのものは、単なる時間稼ぎに過ぎません。しかし日本側の要路はこれが理解出来ませんでした。軍事の専門家である軍人達ですらです。日独伊枢軸同盟が成立すれば、独ソ不可侵条約は不要になるので独ソ開戦に至るのは時間の問題でした。もっともスターリンは、日独伊+ソ連と言う選択肢を自身の外交カードと考えていたフシはあります。しかしヒトラーは首尾一貫、ソ連を利用はしてもソ連打倒自体は既定路線でした。つまり不可侵条約を結んだ日独ソの三国は、典型的な同床異夢状態だったと言えます。
どうも我々日本人は、宗教やイデオロギーに対して異様に鈍感です。ハッキリ言えば、それ等を無視していると言えます。特に戦後、唯物史観が幅を利かせるようになってからはこの傾向に拍車が掛かったかに感じます。しかし戦争を考察する際、宗教やイデオロギーは行動の指針として非常に大きな要因となります。此等を無視してしまうと、成立し得ない仮説を想定してしまう事になります。この点に留意して見ては如何でしょうか?
  • 投稿者: ぼ~ず!
  • 50歳~59歳 男性
  • 2017年 05月24日 11時25分
[一言]
アメリカと戦争しないで済めばベストだったと思うのです。ワシントン体制が穴だらけで、日本がアメリカと平和路線を歩むと、中華民国で侮日が進むという図式を断ち切れればいいと思うのですが、国際関係は常に他者がどう動くか分からん中の暗中模索。
国防のフリーハンドが無いとまずという永田鉄山の考えをドグマ化してしまったその後陸軍統制派もどーなんだろと思います。しかし、日本は一度組織の方針が決まると説得コストに耐えられないので身動きできなくなってしまうのです。

  • 投稿者: 退会済み
  • 2016年 01月05日 00時21分
管理
垢のついた夜食様
 感想コメントありがとうございます。
 おっしゃられるとおり、日本の組織方針は、前段階の調整である程度決まっていて、会議や委員会はそのために存在するというのがあります。会議等の参加者は、そのためのデータ作りを主作業にしているところです。これは、戦後も変わっておらず、無茶な命令や指示であっても、出来る限りなんとか遂行することが目標となります。
 個人個人は、説得が可能というところもあるので、根回し段階での対応が求められるというのが、日本の実情でしょう。

 アメリカと戦争することは、誰も得をしないということは理解されてた。問題は、強調することで失われる利権に対して、どのように対応するかの代替が出来なかった。日米開戦の本質は、交渉のテーブルに利権を載せることができず、かといって時間が経過すればするほど勝てる要素がなくなる交渉相手であったことだと思います。正直、相手が悪い。
 アメリカからすれば、引き伸ばせば引き伸ばすほどに有利になる。日本なんて、ゆっくり時間をかけて、真綿で首を絞めるように交渉すれば良い。こんな閉塞感と絶望から、開戦を選択したというところでしょうねぇ。
  • sugc1965
  • 2016年 01月06日 09時56分
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