感想一覧
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[良い点]
この作品の肝というのは、もちろん読む人によって色柄を変えるとは思うんですけども、、、
やはり、色々な『悪人』、色々な『善人』、つまり、色々な人間存在を描いている点にあって、なんだろう、その色々なキャラクターごとに人生を抱えている感じがすごくあるんですが、、、
で、作者は、そうした色々な観方というものを一概に否定してないというか、語り部として、そうした様々な正義の話に対してバイアスをかけてない感じがあるという所が、やはり肝だったんじゃないかなーと思います。
[気になる点]
あえて言えば、というか今後の展開に期待したい所でいうならば、以下の部分が気になりました。
◆
結局、この物語の悲劇性というのは、本当は、世界が滅びるという部分にあるべきなんですけども、今の所、物語としては主人公の個人的な悲劇性みたいな所で、テーマ(問い)みたいなものが進んでいて、つまり、『個人の内側で完結可能な物語』として展開されている。 端的に言えば、『個人として納得できるかどうか』という文脈であって、他人からどう思われても、実はどうでもいいみたいな所がある。
たとえば、主人公は他人からよく思われたいと思っているんだけども、それは極めて合理的な損得において、図られている。
もちろん、承認欲求というか、コンプレックスというか、個人的なある種の渇望が常に漂ってもいて、同時に人間的でもあるんですけども、しかし、世界が滅びるという状況において、うーん、奇妙な程に重荷がないんですよね。まさに言葉だけ。気持ちだけ。それは、マハトリオで出会った軽薄な異世界人らと根底的には同じなんですよね。
で、それは何故かといえば、それは主人公の気質という以上に、主人公は救世主としてまだ求められていないからじゃないか、と思うんです。
で、この物語の続編があるとしたならば、そうした所も期待している感じはあります。
◆
私が好きなFT作品に『信ぜざる者コブナント』という作品があって、この作品以上に主人公の男が暗愚なんです。
正直、主人公に感情移入するのが難しい。
でも、読んじゃうんです。
結局、『世界が滅びる』という状況において、暗愚な主人公が救世主として選ばれる、という理不尽さにおいて、どうしようもない主人公に同情してしまう訳です。そして、「この暗愚な主人公が、どうやって世界を救うのだろう?」という、その期待によって、読んじゃうんですよ。
『信ぜざる者コブナント』は、この物語と違って、個人性(主人公のようにある種の意志があるわけでもなく)という所でストーリーが動いていず、押し寄せる運命において、ひたすら流されるままなんです。
もっといえば、主人公だけでなくて、もはや、それぞれの個人ではどうにもならない状況にまで既になっていて、だから、、人々が団結するしかないんですね。
で、個人ではどうにもならない巨大な運命の波みたいなものが、そうした団結した個々を踏みつぶしてゆくわけです。
で、救世主としての暗愚な主人公が『最後の希望』として、死ぬ行く人々から望みを託されていく。
暗愚で無能でどうしようもない主人公なのに、古の予言みたいなモノだけで、主人公が世界を救ってくれると、皆が信じているんですよ。
もうね、これはね、悲劇ですよ。胸を裂かれるような悲劇ですよ。自分に優しくしてゆく人が、己に希望を託してどんどん死んでゆく、でも、そんな実力も気概もない、「なんで俺なんだ? やめてくれ、期待するのはやめてくれ、そんな立派な奴じゃないんだ」みたいな。
実際、主人公は耐えられずに逃げるんだけど、でも逃げ切れない。もはや、そういう運命に為っちゃっている。これは、まぁ、辛い。
で、そうした意味では、この作品はちょっと主人公の内側だけに苦しさがある感じがあって、それは大きな所では主人公が救世主として期待されていないからだと思うんですけど、で、そうした状況というのは、ある意味、当人が納得さえすれば、いつでも逃げれる状態というか、誰も期待していないという意味において、何の責任もないというか、守るべき人も約束もない、みたいな、そういう感じがあるとは思うんです。
ここにおいて、主人公が(精神的に)逃げることができない枷みたいなものが無さすぎる点において、気軽なところがあるとは思いました。
ある意味、育ての親が生きてるなら、それが枷になったんでしょうけども。
[一言]
いつのまにか終わっていて驚きました。
去年の秋ごろから、少しなろうから離れていて、読む作品も軽めのものだけにしていたので、この作品は後回しにしていたんですけども、ふーむ。
でも読み終わった感じとしては、すごく綺麗な終わり方というか、区切り方だったと思いました。
とても面白かったというか、それだけでなくて、やはり凄い作品だと思います。
◆
いわゆるテンプレ作品というものを、あえて個人的に『一言』で定義するとしたら、『世界(観)を疑わない物語』だと思っていて、つまり、ある前提となる世界の価値意識みたいなもので、すべてが動くような極めて合理的(ご都合的)な世界です。
しかしFTとかSFというのは、本質的には『世界(観)を問うジャンル』だと思うので、とくにFTとかSFのテンプレっていうのは、ジャンルとしては機能してないよなー、とかはよく思います。
この作品は、ひたすらに世界を疑っているという意味において、極めて非テンプレであると思います。
もっといえば幻想文学、ってことだと思う。
内容は正直、すごく面白かったです。
ただ、たぶん、育ての親を殺してしまった事で、ライトな作品じゃなくなっていて、なろう的には厳しかったとは思いますけども、しかし、きわめて価値ある作品だと思います。
なろう文学史みたいなモノがあるとしたら、すごく意義ある作品として記載されるんじゃないだろうか、と思うぐらいには。
10年後20年後ぐらいに大々的に評価されても、私は驚かないです。野心的であり、また本当の意味で大衆小説だと思います。ある意味、現代の大衆における下衆な様が表現されているからです。
記憶に残る作品。
この作品の肝というのは、もちろん読む人によって色柄を変えるとは思うんですけども、、、
やはり、色々な『悪人』、色々な『善人』、つまり、色々な人間存在を描いている点にあって、なんだろう、その色々なキャラクターごとに人生を抱えている感じがすごくあるんですが、、、
で、作者は、そうした色々な観方というものを一概に否定してないというか、語り部として、そうした様々な正義の話に対してバイアスをかけてない感じがあるという所が、やはり肝だったんじゃないかなーと思います。
[気になる点]
あえて言えば、というか今後の展開に期待したい所でいうならば、以下の部分が気になりました。
◆
結局、この物語の悲劇性というのは、本当は、世界が滅びるという部分にあるべきなんですけども、今の所、物語としては主人公の個人的な悲劇性みたいな所で、テーマ(問い)みたいなものが進んでいて、つまり、『個人の内側で完結可能な物語』として展開されている。 端的に言えば、『個人として納得できるかどうか』という文脈であって、他人からどう思われても、実はどうでもいいみたいな所がある。
たとえば、主人公は他人からよく思われたいと思っているんだけども、それは極めて合理的な損得において、図られている。
もちろん、承認欲求というか、コンプレックスというか、個人的なある種の渇望が常に漂ってもいて、同時に人間的でもあるんですけども、しかし、世界が滅びるという状況において、うーん、奇妙な程に重荷がないんですよね。まさに言葉だけ。気持ちだけ。それは、マハトリオで出会った軽薄な異世界人らと根底的には同じなんですよね。
で、それは何故かといえば、それは主人公の気質という以上に、主人公は救世主としてまだ求められていないからじゃないか、と思うんです。
で、この物語の続編があるとしたならば、そうした所も期待している感じはあります。
◆
私が好きなFT作品に『信ぜざる者コブナント』という作品があって、この作品以上に主人公の男が暗愚なんです。
正直、主人公に感情移入するのが難しい。
でも、読んじゃうんです。
結局、『世界が滅びる』という状況において、暗愚な主人公が救世主として選ばれる、という理不尽さにおいて、どうしようもない主人公に同情してしまう訳です。そして、「この暗愚な主人公が、どうやって世界を救うのだろう?」という、その期待によって、読んじゃうんですよ。
『信ぜざる者コブナント』は、この物語と違って、個人性(主人公のようにある種の意志があるわけでもなく)という所でストーリーが動いていず、押し寄せる運命において、ひたすら流されるままなんです。
もっといえば、主人公だけでなくて、もはや、それぞれの個人ではどうにもならない状況にまで既になっていて、だから、、人々が団結するしかないんですね。
で、個人ではどうにもならない巨大な運命の波みたいなものが、そうした団結した個々を踏みつぶしてゆくわけです。
で、救世主としての暗愚な主人公が『最後の希望』として、死ぬ行く人々から望みを託されていく。
暗愚で無能でどうしようもない主人公なのに、古の予言みたいなモノだけで、主人公が世界を救ってくれると、皆が信じているんですよ。
もうね、これはね、悲劇ですよ。胸を裂かれるような悲劇ですよ。自分に優しくしてゆく人が、己に希望を託してどんどん死んでゆく、でも、そんな実力も気概もない、「なんで俺なんだ? やめてくれ、期待するのはやめてくれ、そんな立派な奴じゃないんだ」みたいな。
実際、主人公は耐えられずに逃げるんだけど、でも逃げ切れない。もはや、そういう運命に為っちゃっている。これは、まぁ、辛い。
で、そうした意味では、この作品はちょっと主人公の内側だけに苦しさがある感じがあって、それは大きな所では主人公が救世主として期待されていないからだと思うんですけど、で、そうした状況というのは、ある意味、当人が納得さえすれば、いつでも逃げれる状態というか、誰も期待していないという意味において、何の責任もないというか、守るべき人も約束もない、みたいな、そういう感じがあるとは思うんです。
ここにおいて、主人公が(精神的に)逃げることができない枷みたいなものが無さすぎる点において、気軽なところがあるとは思いました。
ある意味、育ての親が生きてるなら、それが枷になったんでしょうけども。
[一言]
いつのまにか終わっていて驚きました。
去年の秋ごろから、少しなろうから離れていて、読む作品も軽めのものだけにしていたので、この作品は後回しにしていたんですけども、ふーむ。
でも読み終わった感じとしては、すごく綺麗な終わり方というか、区切り方だったと思いました。
とても面白かったというか、それだけでなくて、やはり凄い作品だと思います。
◆
いわゆるテンプレ作品というものを、あえて個人的に『一言』で定義するとしたら、『世界(観)を疑わない物語』だと思っていて、つまり、ある前提となる世界の価値意識みたいなもので、すべてが動くような極めて合理的(ご都合的)な世界です。
しかしFTとかSFというのは、本質的には『世界(観)を問うジャンル』だと思うので、とくにFTとかSFのテンプレっていうのは、ジャンルとしては機能してないよなー、とかはよく思います。
この作品は、ひたすらに世界を疑っているという意味において、極めて非テンプレであると思います。
もっといえば幻想文学、ってことだと思う。
内容は正直、すごく面白かったです。
ただ、たぶん、育ての親を殺してしまった事で、ライトな作品じゃなくなっていて、なろう的には厳しかったとは思いますけども、しかし、きわめて価値ある作品だと思います。
なろう文学史みたいなモノがあるとしたら、すごく意義ある作品として記載されるんじゃないだろうか、と思うぐらいには。
10年後20年後ぐらいに大々的に評価されても、私は驚かないです。野心的であり、また本当の意味で大衆小説だと思います。ある意味、現代の大衆における下衆な様が表現されているからです。
記憶に残る作品。
まずそこまでこの作品を思っていただいたことに深い感謝を申し上げます。ありがとうございます。
また、過分な評価を頂き恐縮です。
この先は作品の種明かし的な要素を含みます。
求めていない場合は、読み飛ばしください。
ネタバレも含みます。
さて、私はあくまでもテンプレートの異世界転生物を書こうと思い、この物語を書き始めました。
しかし、リビィという意識ある能動的な主人公や、リクリエットというヒロイン候補が勝手に動き回り、育ての親であるリンスや奴隷商のグレイ、スーズーといったあくまでも受動的な人間を巻き込んでかき乱してしまいました。作者として、リビィがリクリエットだけではなくリンスをも殺してしまったことに驚いたのを覚えています。
私は小説を書く上で、大筋のプロットは作成しますがあとはキャラクターに任せるようにしているところがあります。そういうところでキャラクターたちが独自の思考や正義を育ててくれたのだと思います。
北條は、良いキャラクターになってくれたと自負しております。クロスオーバー様の主人公の考察は作者ですが、なるほどなぁと思わされました。
そうですよ。
リビィは薄っぺらいんです。
薄い言葉だけの正義を書こうと思っていたのが、うまく表現できていて嬉しい限りです。
それは大きくは一口両舌という魂の性質に大きく由来しているものであると思っていました。でも世界からなんの期待もされていない、自己で完結している正義だからそう感じられるのですね。
続きですが本当にいつか書き切りたいと思っています。タイトルにあるように、主人公は主人公のままで世界を救います。それが多くの人間を殺した彼の贖罪と罰になる予定です。本当に熱い感想をありがとうございました。何度も何度も感想を読み返しました。
それでは、北條にも一言貰いますね。
「リビィ。お前が世界から期待される訳がない。お前は悪党だ。そんなお前が世界から期待されちゃダメだ。お前は常に、逃げれる、何も背負うものがない。
おいおい。
死んだ人間の意思を継いでる?
冗談言うなよ。
お前に死人が文句のひとつでもくれてやるのかよ?
お前はお前なんだよ。なぁ、リビィ!
お前の後ろには結局死人の言葉しかない。
お前は薄っぺらな人間だ。
一緒さ。お前はお前が見下したあの転生者の楽園の奴等となんにも変わらねぇ。変わらねぇんだ。
だって仕方ねぇよなぁ。
二枚舌なんだからよ。魂がそう定めているからよぉ。だから、お前はお前なんだ。魂なんて誰が決めたかわからない振り分けられた性質に左右される。
自分で自分の性格も決められない。
一方で
俺は違う。違うんだ。
俺はなぁ、悪だ。正しく悪逆非道だ。
魂で決められたからじゃない。
性格がそうだからじゃない。
環境がそうさせたわけでもない。
俺が決めたからだ。
俺は俺が決めたから、悪なんだよ。
わかるか
?お前とは同じ悪でも純度が違うんだよ。
つまりは、お前は決めきらないのさ。
自分を最終的に追い込んで正義の側に置けない。どっち付かずの二枚舌、それがおまえだ。」
最後になりましたが、少しだけ続きです。
もしよければお読みください。
⬇⬇⬇⬇⬇⬇⬇⬇⬇⬇⬇⬇⬇
暗い暗い螺旋階段を一人の女がコツン、コツンと足音を立てながら下へ下へと降りて行く。女の前を先行する光の玉だけが、辺りを照らしている。
どこまでも、どこまでも降りた先の牢獄に「それ」はいた。見上げれば、天より降る光が豆粒ほどの大きさに見えるほどに、地下へと降りてきたのだと分かる。その場所は、あまりにも暗くて、あまりにも陰気で、あまりにも腐臭がする。
しかし、聖なる力に守られた女にとってはそんなものは些末なことだ。女は、暗い暗い地の底で目的の「もの」を見つけ、破顔した。
「こんにちは。漸く会えましたね。サック。
いいえ、リビィと呼んだ方がいいのかしら?」
天真爛漫に、純粋無垢に、無邪気に、そして清らかに女は笑った。
「それ」は動かなかった。
腕を枕にして横向けに縮こまって眠っている。
「ねぇ、リビィ?聞こえているのでしょう?」
女は先程より少し大きな声で呼び掛けた。「それ」は、煩わしそうに頭を上げて、女の方を見た。そして、すぐに顔を引っ込める。
「うっ……」と呻き声を上げて顔を背け、先程よりもさらに身を縮めた。
「ごめんなさい。そう言えばあなたはもう何年も日の光に当たって無かったのでしたね。」
女は慌てて光の玉を消した。「それ」は、それでも女の方を再度見ようとはしなかった。
「何しに来た?」
「それ」がうねるように声を出す。
女は、以前の可愛らしい声から随分と声変わりしてしまったことに寂しさを感じながらも答えた。
「友達に会うのに理由なんているかしら?マハトリオで私は、貴方と友達になったはずですよ。」
「それは、俺の正体を知らなかったからだ。」
「確かに貴方の事を知ったときはショックを受けました。ですが、貴方と一緒に冒険したことが全て嘘になるわけではありません。」
「俺はお前とバーストを騙していた。裏では魔族と繋がり、バーストを殺した。君守ったように見せかけて、その実、お前と、お前の師匠を利用した。」
「それ」は、泣いていた。
声色は変わってはいなかった。
涙も恐らくは流していないのだろう。
それでも、「それ」が泣いているのだと女にはわかった。
「許します。
例え世界中の全てが貴方を許さなくとも。私は貴方を許します。
それが私がこの8年で出した結論です。そして、私はもう一度誘うと決めたのです。
私と一緒に旅をしませんか?」
「それ」は一瞬びくりと体を震わせた。しかし、返事はしなかった。
女は、それでも反応があったことに喜んだ。あのとき、あの場での話を覚えてくれている事が嬉しかったのだ。
「8年前。私は、私の責任で貴方の手足を失わせてしまったと思った。その自責の念から貴方を旅に誘いました。けれど、旅に誘った理由は自責の念からだけではありません。
私は師匠が指摘していたように、貴方と一緒に冒険がしたかったのです。
貴方と一緒に居たかった。
リビィ……貴方とです。
もう一度、改めて誘います。
私と、一緒に旅をしましょう。」
「それ」は、動かない。だが確かに女の話を聞いていた。一言一句逃さぬように、大切に、大切に聞いていた。
「貴方は度重なる拷問の中で言っていたそうですね。自分はリクリエット=リ=グランリースを殺してしまった。だから、その代わりに意思を引き継ぎ世界を救わなければならないと。
貴方が世界を救うと言う話は、看守たちに笑い話にされていました。
気の狂った闇子が、戯言を言っている。
奇人の狂言だ。
あんなのが、世界を救えるはずがない。
どの口がほざいているのだ。
等々誰も真には向き合わなかったと聞きました。
でも、私は笑いません。私は決してその意思を笑えません。
リクリエット様は、とても苛烈に世界を救うことを願っておられたと聞きます。貴方はその意思を継ぎたかったのではないですか?
貴方はきっと
ただひたすらに
手段を選ばず
立場を問わず、
他人を顧みず、
ただ世界を救う事だけを求めたのです。
確かに、貴方は間違っておりました。一から十、全てにおいて誤っておりました。
貴方の願いは叶わずに結果は何一つ良いようにはなりませんでした。
でも、それは所詮は結果です。
貴方は純粋に、世界の救いだけを求めた。それが上手くいかなかった。言ってしまえばそれだけです。
貴方がリクリエット=リ=グランリースの意志と共に狂い求めた世界平和を、結果が伴わなかったと言うだけで否定してしまえば、それまででしょう。
そして、すべからく人類は皆貴方の思いを蔑み、否定し、恨むでしょう。貴方がマントハンリとライファル教国に滅びをもたらしたからです。
でもね。
悲しいではないですか?
それほどにこいねがった思いまでも全て踏み潰されて、逆に全世界より憎悪を向けられる。
それでは、貴方の気持ちは、思いはどうなりましょう?
私くらいは貴方の気持ちを尊重してもいいと思うのです。
苛烈に、熾烈に、強烈に、狂喜に、凶悪に世界の救いをこいねがった貴方の気持ちを私は受け止めます。受け止めたいと思っています。
リビィ、私と共に世界を救いましょう。」
「後悔することになる。お前は必ず、俺と旅することを悔やむ日が来る。マリー……」
「それ」いや、リビィはのっそりと立ち上がった。自発的に行動するのを辞め、ただ物のようにあることだけを考えて過ごした日々を捨ててリビィは、立ち上がった。
「それでも、それでも、です。私はこの八年間後悔しない日など無かった。
なぜあのとき強引にでも貴方を連れていかなかったのか?
貴方からの不穏な魔力を感じていながら、なぜ気のせいだと切り捨てたのか?
なぜあの胡乱なギリー=ガン=ミラーを信じたのか?
なぜあのときウォークターを殺す力がなかったのか?
後悔はつきませんでした。
もうそんな悲しい後悔はしません。私、あれから8年で正式に師匠を超え勇者になりました。
私が全てを守って見せます。貴方も含めた世界を救ってみせましょう。」
マリーは、美しかった。少女だったマリーが大人の女に成長しているのに些末な寂しさを感じながらも、リビィはマリーの正面にたち彼女を見た。
久しく止まっていたのではないかと思う心臓が高く高く脈打つ。
泣いていた。マリーは、透明なほどに白い頬に涙を添わせて声もなく泣いていた。
「やっと見てくれましたね。」
そしてポロポロと涙を流しながら、リビィをみてニッコリと微笑んだ。リビィは目をそらさず、真っ直ぐとマリーを見つめる。
美しいと思った。
心のそこからマリーのことを美しいと感じた。
また、過分な評価を頂き恐縮です。
この先は作品の種明かし的な要素を含みます。
求めていない場合は、読み飛ばしください。
ネタバレも含みます。
さて、私はあくまでもテンプレートの異世界転生物を書こうと思い、この物語を書き始めました。
しかし、リビィという意識ある能動的な主人公や、リクリエットというヒロイン候補が勝手に動き回り、育ての親であるリンスや奴隷商のグレイ、スーズーといったあくまでも受動的な人間を巻き込んでかき乱してしまいました。作者として、リビィがリクリエットだけではなくリンスをも殺してしまったことに驚いたのを覚えています。
私は小説を書く上で、大筋のプロットは作成しますがあとはキャラクターに任せるようにしているところがあります。そういうところでキャラクターたちが独自の思考や正義を育ててくれたのだと思います。
北條は、良いキャラクターになってくれたと自負しております。クロスオーバー様の主人公の考察は作者ですが、なるほどなぁと思わされました。
そうですよ。
リビィは薄っぺらいんです。
薄い言葉だけの正義を書こうと思っていたのが、うまく表現できていて嬉しい限りです。
それは大きくは一口両舌という魂の性質に大きく由来しているものであると思っていました。でも世界からなんの期待もされていない、自己で完結している正義だからそう感じられるのですね。
続きですが本当にいつか書き切りたいと思っています。タイトルにあるように、主人公は主人公のままで世界を救います。それが多くの人間を殺した彼の贖罪と罰になる予定です。本当に熱い感想をありがとうございました。何度も何度も感想を読み返しました。
それでは、北條にも一言貰いますね。
「リビィ。お前が世界から期待される訳がない。お前は悪党だ。そんなお前が世界から期待されちゃダメだ。お前は常に、逃げれる、何も背負うものがない。
おいおい。
死んだ人間の意思を継いでる?
冗談言うなよ。
お前に死人が文句のひとつでもくれてやるのかよ?
お前はお前なんだよ。なぁ、リビィ!
お前の後ろには結局死人の言葉しかない。
お前は薄っぺらな人間だ。
一緒さ。お前はお前が見下したあの転生者の楽園の奴等となんにも変わらねぇ。変わらねぇんだ。
だって仕方ねぇよなぁ。
二枚舌なんだからよ。魂がそう定めているからよぉ。だから、お前はお前なんだ。魂なんて誰が決めたかわからない振り分けられた性質に左右される。
自分で自分の性格も決められない。
一方で
俺は違う。違うんだ。
俺はなぁ、悪だ。正しく悪逆非道だ。
魂で決められたからじゃない。
性格がそうだからじゃない。
環境がそうさせたわけでもない。
俺が決めたからだ。
俺は俺が決めたから、悪なんだよ。
わかるか
?お前とは同じ悪でも純度が違うんだよ。
つまりは、お前は決めきらないのさ。
自分を最終的に追い込んで正義の側に置けない。どっち付かずの二枚舌、それがおまえだ。」
最後になりましたが、少しだけ続きです。
もしよければお読みください。
⬇⬇⬇⬇⬇⬇⬇⬇⬇⬇⬇⬇⬇
暗い暗い螺旋階段を一人の女がコツン、コツンと足音を立てながら下へ下へと降りて行く。女の前を先行する光の玉だけが、辺りを照らしている。
どこまでも、どこまでも降りた先の牢獄に「それ」はいた。見上げれば、天より降る光が豆粒ほどの大きさに見えるほどに、地下へと降りてきたのだと分かる。その場所は、あまりにも暗くて、あまりにも陰気で、あまりにも腐臭がする。
しかし、聖なる力に守られた女にとってはそんなものは些末なことだ。女は、暗い暗い地の底で目的の「もの」を見つけ、破顔した。
「こんにちは。漸く会えましたね。サック。
いいえ、リビィと呼んだ方がいいのかしら?」
天真爛漫に、純粋無垢に、無邪気に、そして清らかに女は笑った。
「それ」は動かなかった。
腕を枕にして横向けに縮こまって眠っている。
「ねぇ、リビィ?聞こえているのでしょう?」
女は先程より少し大きな声で呼び掛けた。「それ」は、煩わしそうに頭を上げて、女の方を見た。そして、すぐに顔を引っ込める。
「うっ……」と呻き声を上げて顔を背け、先程よりもさらに身を縮めた。
「ごめんなさい。そう言えばあなたはもう何年も日の光に当たって無かったのでしたね。」
女は慌てて光の玉を消した。「それ」は、それでも女の方を再度見ようとはしなかった。
「何しに来た?」
「それ」がうねるように声を出す。
女は、以前の可愛らしい声から随分と声変わりしてしまったことに寂しさを感じながらも答えた。
「友達に会うのに理由なんているかしら?マハトリオで私は、貴方と友達になったはずですよ。」
「それは、俺の正体を知らなかったからだ。」
「確かに貴方の事を知ったときはショックを受けました。ですが、貴方と一緒に冒険したことが全て嘘になるわけではありません。」
「俺はお前とバーストを騙していた。裏では魔族と繋がり、バーストを殺した。君守ったように見せかけて、その実、お前と、お前の師匠を利用した。」
「それ」は、泣いていた。
声色は変わってはいなかった。
涙も恐らくは流していないのだろう。
それでも、「それ」が泣いているのだと女にはわかった。
「許します。
例え世界中の全てが貴方を許さなくとも。私は貴方を許します。
それが私がこの8年で出した結論です。そして、私はもう一度誘うと決めたのです。
私と一緒に旅をしませんか?」
「それ」は一瞬びくりと体を震わせた。しかし、返事はしなかった。
女は、それでも反応があったことに喜んだ。あのとき、あの場での話を覚えてくれている事が嬉しかったのだ。
「8年前。私は、私の責任で貴方の手足を失わせてしまったと思った。その自責の念から貴方を旅に誘いました。けれど、旅に誘った理由は自責の念からだけではありません。
私は師匠が指摘していたように、貴方と一緒に冒険がしたかったのです。
貴方と一緒に居たかった。
リビィ……貴方とです。
もう一度、改めて誘います。
私と、一緒に旅をしましょう。」
「それ」は、動かない。だが確かに女の話を聞いていた。一言一句逃さぬように、大切に、大切に聞いていた。
「貴方は度重なる拷問の中で言っていたそうですね。自分はリクリエット=リ=グランリースを殺してしまった。だから、その代わりに意思を引き継ぎ世界を救わなければならないと。
貴方が世界を救うと言う話は、看守たちに笑い話にされていました。
気の狂った闇子が、戯言を言っている。
奇人の狂言だ。
あんなのが、世界を救えるはずがない。
どの口がほざいているのだ。
等々誰も真には向き合わなかったと聞きました。
でも、私は笑いません。私は決してその意思を笑えません。
リクリエット様は、とても苛烈に世界を救うことを願っておられたと聞きます。貴方はその意思を継ぎたかったのではないですか?
貴方はきっと
ただひたすらに
手段を選ばず
立場を問わず、
他人を顧みず、
ただ世界を救う事だけを求めたのです。
確かに、貴方は間違っておりました。一から十、全てにおいて誤っておりました。
貴方の願いは叶わずに結果は何一つ良いようにはなりませんでした。
でも、それは所詮は結果です。
貴方は純粋に、世界の救いだけを求めた。それが上手くいかなかった。言ってしまえばそれだけです。
貴方がリクリエット=リ=グランリースの意志と共に狂い求めた世界平和を、結果が伴わなかったと言うだけで否定してしまえば、それまででしょう。
そして、すべからく人類は皆貴方の思いを蔑み、否定し、恨むでしょう。貴方がマントハンリとライファル教国に滅びをもたらしたからです。
でもね。
悲しいではないですか?
それほどにこいねがった思いまでも全て踏み潰されて、逆に全世界より憎悪を向けられる。
それでは、貴方の気持ちは、思いはどうなりましょう?
私くらいは貴方の気持ちを尊重してもいいと思うのです。
苛烈に、熾烈に、強烈に、狂喜に、凶悪に世界の救いをこいねがった貴方の気持ちを私は受け止めます。受け止めたいと思っています。
リビィ、私と共に世界を救いましょう。」
「後悔することになる。お前は必ず、俺と旅することを悔やむ日が来る。マリー……」
「それ」いや、リビィはのっそりと立ち上がった。自発的に行動するのを辞め、ただ物のようにあることだけを考えて過ごした日々を捨ててリビィは、立ち上がった。
「それでも、それでも、です。私はこの八年間後悔しない日など無かった。
なぜあのとき強引にでも貴方を連れていかなかったのか?
貴方からの不穏な魔力を感じていながら、なぜ気のせいだと切り捨てたのか?
なぜあの胡乱なギリー=ガン=ミラーを信じたのか?
なぜあのときウォークターを殺す力がなかったのか?
後悔はつきませんでした。
もうそんな悲しい後悔はしません。私、あれから8年で正式に師匠を超え勇者になりました。
私が全てを守って見せます。貴方も含めた世界を救ってみせましょう。」
マリーは、美しかった。少女だったマリーが大人の女に成長しているのに些末な寂しさを感じながらも、リビィはマリーの正面にたち彼女を見た。
久しく止まっていたのではないかと思う心臓が高く高く脈打つ。
泣いていた。マリーは、透明なほどに白い頬に涙を添わせて声もなく泣いていた。
「やっと見てくれましたね。」
そしてポロポロと涙を流しながら、リビィをみてニッコリと微笑んだ。リビィは目をそらさず、真っ直ぐとマリーを見つめる。
美しいと思った。
心のそこからマリーのことを美しいと感じた。
- カタヌシ
- 2019年 04月22日 19時37分
[一言]
面白かったです。いつか続きが読めると嬉しいです。
面白かったです。いつか続きが読めると嬉しいです。
感想ありがとうございます。
いつになるかはわかりませんが、リビィの贖罪をきちんと終わらせたいと思います。読んでいただいてありがとうございました!
いつになるかはわかりませんが、リビィの贖罪をきちんと終わらせたいと思います。読んでいただいてありがとうございました!
- カタヌシ
- 2018年 12月24日 22時55分
[良い点]
とても面白いかったのに、終わってしまって残念です。もう少し読みたかったです。番外編をすこし期待しています♪
とても面白いかったのに、終わってしまって残念です。もう少し読みたかったです。番外編をすこし期待しています♪
感想ありがとうございます。凄く嬉しいです。
いつか続きは書きたいと思っています。
機会があればまた読んでやってください。
いつか続きは書きたいと思っています。
機会があればまた読んでやってください。
- カタヌシ
- 2018年 12月14日 19時24分
[良い点]
リアリティのある描写。
現実の不条理が、これでもか、とあった事。
ダメな人間というか、犯罪者や過激派などにおける、ご都合的思考が非常に巧みに表現されていた事。
[一言]
残虐だけど、表現としては抑えめで、読みやすい作品だと思うし、主人公が活躍するという意味では、割と爽快感もあるストーリーだと思う。
なんだけど、救いのない話は敬遠されるのが、なろうスタンダード……。
ヒロインまたは癒やしとしてのペット(相棒)がいれば、割と違ってくるかもしれない。
個人的には、凄く面白かったです。
あと、タグに『シリアス』をつけるといいかもしれません。
リアリティのある描写。
現実の不条理が、これでもか、とあった事。
ダメな人間というか、犯罪者や過激派などにおける、ご都合的思考が非常に巧みに表現されていた事。
[一言]
残虐だけど、表現としては抑えめで、読みやすい作品だと思うし、主人公が活躍するという意味では、割と爽快感もあるストーリーだと思う。
なんだけど、救いのない話は敬遠されるのが、なろうスタンダード……。
ヒロインまたは癒やしとしてのペット(相棒)がいれば、割と違ってくるかもしれない。
個人的には、凄く面白かったです。
あと、タグに『シリアス』をつけるといいかもしれません。
感想ありがとうございます。なろうで初の感想だったのでとても嬉しかったです。今後もシリアスな話が続きますが、よろしくお願いします。
- カタヌシ
- 2017年 05月06日 20時40分
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