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[良い点]
 まず、魔術師の設定が良いですね。すごく素敵です。世界観も落ち着いたフラットな感じがします。
 箱庭と言うのでしょうか、リアルの人間の匂いがしない、そんな思いを抱きました。

 テーマは「喪ったものを求め続ける男」、それを非日常的な世界が補強しているのを強く感じます。禁じられた方法であっても、そこに手段があり実行できる能力が備わっていたことが、運命の分かれ目だったのでしょう。

 しかし実際に手にしたのは、透子じゃなかった。望が片想いで良かったです。透子と恋人同士だったら、「失敗」だった時点で紫苑は殺されていたでしょうからね。

 同じ顔をした紫苑は、望にとってはかなり危険な存在でしたね。苦い失敗の生き証人。紫苑を見ていると色んな感情に見舞われたことでしょうね。

 悲しみ、怒り、不甲斐なさ、後悔、(生きている紫苑への)嫉妬、欲望、苛立ち、罪悪感、そして…愛情。

 望視点で進む物語において、紫苑が無表情ながらもきちんとした感情を持つ女性として描かれているところに、望が紫苑を心憎からず想っているのが読み取れました。

 もっとこちらに重点を置いて描写があると、後半で透子のエピソードが出てから戸惑わなかったのではないかと思いました。
[一言]
 長い物語のほんの一節を切り取ってきた、という印象で、アニメで言えば三話目までしかない感じです。
 明かされていない謎も多くて、1クール全部見せて欲しいな、と(笑)。

 閉じた二人の箱庭に、灯火ちゃんが入ってきたことで動き出した物語。どこに終着するのか、読者としては気になります。

 ところで、第6部(第5話)から、ガラッと印象が変わりましたね。魔術という言葉や習性(?)から、西洋風をイメージしていました。
 それが「鬼」が出てきて刀で戦って…。ここだけどうも、ちぐはぐな感じを受けてしまいました。

 現代伝奇物はあまり読まないのですが、楽しく読めました。ありがとうございました。
感想ありがとうございます。
この作品は、あらすじにもあります通り作者の初期作です。
こう歯ごたえのあるものにしたくて、やたら複雑な設定と説明をいれてしまったものなので読了感謝します。

〝どこか〟人の匂いがしない彼ら。
 その反面、後半に急速に人間染みる主人公。

 元々この物語は過去を曖昧された彼が自分の業と記憶を再び、散策と戦闘の中で強く自覚する物語でありました。
 ご指摘の部分、紫苑や透子のくだりはこのバランスのため、作者の力量もあり今でも反省の残るところでもあります。
 前半で趣を置きすぎると、そのフラットな雰囲気が壊れてしまうためです。

 あと「鬼」のくだりなのですが、この前半と後半のギャップを演出するために主人公に「変心」して貰うためのギミックだったので、ちぐはぐに感じられるのはある意味正解でもあります。もっと自然にいれたかったですね。

 「再生」の魔術師の望まない日々の軌跡と、怪異の物語は書き出せばほんと長いのですが、当時色々ありここで止まりました(笑)

 すこしだけ補足しておくと、物語のキーとなっている「水無透子」は非常に共感力が高いが、反面他人の中にしか自己を見いだせないいわゆる神降ろし「巫女」のような女性でありました。自己の薄い彼女。しかし紫苑と同じように彼女にも意志はありました。それが、彼女自身の死に繋がると彼女は知っていても選びました。

望の想いはやはりどうあっても遠く、それでも自分を愛する紫苑と彼は寄り添って生きていかねばならないのです。
  • 白河律
  • 2016年 11月20日 20時34分
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