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[一言]
面白かったので、私も検索してみました。台湾中央研究院の漢籍電子文献(http://hanchi.ihp.sinica.edu.tw/ihp/hanji.htm)
で、「側妃」を検索すると(無料版ですが)、たしかに『清史稿』しか出てきません。これは言い換えれば、『史記』『漢書』より『明史』に至る二十四史には「側妃」という語は登場しないということです。
 で、『清史稿』で側妃がいるという太祖(ヌルハチ)と太宗(ホンタイジ)ですが、この二帝は入関以前(紫禁城の支配者となる以前)の、中国的な王朝となる以前の、満州族の王朝である時代の皇帝であり、その後の清朝の皇帝の妃嬪の号位としての、「側妃」は『清史稿』にすら出てきません。
 このことから、皇帝の妃嬪としての「側妃」という称号は、①明代以前の中国皇帝の後宮には少なくとも正規の位号としては存在しない。②清朝においても順治帝以後の後宮において、少なくとも正規の位号としては存在しない。
 という二点は確実に言えるのではないでしょうか。

 では、太祖と太宗の後宮についてのみ、「側妃」という言葉が現れる理由は、おそらくは満州族の風俗を根強く残した、まだ皇帝の後宮制度としては確立されていない二帝の妻妾について記述する際に、「側妃」という語を用いたに過ぎないのであり、順治帝以後、後宮が制度的に整備された後には使用されることはなかったのだと思います。

 ですから、君主の側妾としての「側妃」という語が、中国皇帝の後宮制度に由来するということは絶対にないし、清朝のある時期限定の制度に由来する可能性も極めて低いと私は考えます。

 というわけで、小説家になろうで散見する「側妃」という語は、コメント欄でも指摘されている、誰かが適当に作った造語、という説に私は一票を入れます。

 ちなみに『清史稿』において「側妃」は他に、皇子の妻妾(親王の嫡妃・側妃)の服飾規定の部分(輿服志一)に登場します。清朝は満州族ですから、皇子の妃は「福晋」という特殊な呼称を使用しますが、正室を「嫡福晋」、側室を「側福晋」と称します。伝統的な皇子の正妻の号である「妃」の呼び変えて、「嫡妃」「側妃」と呼ぶことはあったようです。ですから、清代において、皇子さまの側室を「側妃」と称するのは、それなりに一般的であったかもしれません。

 ですので、「側妃」という言葉が中国由来である可能性までは私は否定しませんが、ただ「中国皇帝の後宮制度」に由来することはないであろうと思います。





  • 投稿者: 無憂
  • 2016年 11月20日 12時33分
度々すみません。


返信の最後の文章が変だったので、ちょっと訂正させて下さい。

「側妃」はネット小説発の造語だ、そんな言葉は存在しないと言う人もいるようでしたので、そんな頭ごなしに言わなくても、と思ってこのエッセイを書きました。



それから、現代の中国人が「側妃」をどう使っているかを調べていなかったと思って「百度」で検索してみたのですが、彼らも清朝以外の場面で使用しているみたいですね。
中国人もそんな感じなので、やっぱり清朝で使われていた「側妃」とは関係無いのかもしれません。
感想、そして詳細かつ分かりやすい解説ありがとうございます!

歴史は苦手だし後宮もよく分からないからもういいや、と投げてしまった部分なので、大変助かります。

「清朝のある時期限定の制度」由来の語をわざわざ使う理由も思いつきませんし、造語が偶然一致した可能性の方が高いと私も思います。

ただ、「側妃」はネット小説発の造語だ、そんな言葉は存在しないという考えがあるようでしたので、そんな頭ごなしに言わなくても、と思って書きました。
[一言]
なるほど…面白い着眼点ですね。

なろうからの造語説に一票です。
古文に使用されていたことは偶然の一致かな?
感想ありがとうございます!

現状ではどの説が正解かわかりませんが、人間の発想というのは似たり寄ったりなので偶然一致したとしてもおかしくないと思います。

答えが出なくても、こうなのかな、ああなのかな、と想像するのは楽しいですね。
[一言]
側女、の漢字遊びから発生に一票。

女を妃に変えると単語の見た目が栄える……ような錯覚になりませんか?

特になろうだと説明文を載せるくらいなら『みんな、なんとなく意味は感じれるでしょ的単語や言葉並び』が多いような気がしますし。
  • 投稿者: 川哲
  • 男性
  • 2016年 11月20日 00時34分
感想ありがとうございます!

確かに「側女」より「側妃」の方が良いイメージがあるような気がします。

言葉が使われる時にはそういう印象が重要だったりしますよね。
「側女」の漢字遊び説もありえると思います。
[良い点]
正解かどうかは知りませんが、なろうとかが流行る前に個人のHPで「側妃」がタイトルに含まれた結構面白い小説があったんですが、途中でエタってさらにHPもなくなったはずだし正確なタイトルは失念。
内容的には今なろうで書かれていてもおかしくない設定(女性主人公・転生?・現代知識を生かした内政系)で、バランス、構成や文章もしっかりしていたし評判は良かったと思います。

なろう以前からネット小説を読んでいた人でないと当然しらないと思うけど、ジャンル的にはなろう界隈とは非常に相性が良いですから、何となく記憶にある単語として使ってしまった人がなろう界隈で何人かいたんじゃないんですかね。
  • 投稿者: popesyu
  • 2016年 11月19日 10時35分
感想ありがとうございます!

なろう以前のネット小説でも使われていたんですね。
なろうで使われ始めたきっかけはそこからなのかもしれませんね。

その個人サイトの小説は中華風世界なのでしょうか。
もし中華風世界で他に「庶妃」なども出てくるなら清の後宮制度由来かもしれませんし、ヨーロッパ風世界で「側妃」が「側室」と同じ意味・用法で使われているならやっぱり造語の可能性が高いかな、なんて考えてみたりします。
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