エピソード815の感想一覧
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[気になる点]
マアの独白で気づいたけどチンピラを働き手にするよりトラインにわざとチンピラを絡ませる方が何倍もヒラクに怒られそうだな
マアの独白で気づいたけどチンピラを働き手にするよりトラインにわざとチンピラを絡ませる方が何倍もヒラクに怒られそうだな
エピソード815
[一言]
>山エルフと村長の関係
名前が明かされていない3人との間に2男1女(こちらも名前は未公開)が誕生。女の子の産声が一番大きかった。
なお、長であるヤーは「本気で子供を作る気があるのか?」と経産婦達に呆れられている模様。
記憶違いでなければ、こうだった筈。
>山エルフと村長の関係
名前が明かされていない3人との間に2男1女(こちらも名前は未公開)が誕生。女の子の産声が一番大きかった。
なお、長であるヤーは「本気で子供を作る気があるのか?」と経産婦達に呆れられている模様。
記憶違いでなければ、こうだった筈。
- 投稿者: 通りすがりのおっさん
- 50歳~59歳 男性
- 2023年 09月30日 14時46分
エピソード815
[良い点]
マア視点のお話が伺えて嬉しいです♪。
マア、所謂「ボクっ娘」なのですね!。 しかも、トラインに対する自分の気持ちに無自覚だなんて・・・なんて見事な萌えキャラ!(笑。 「なぜチンピラが僕に絡んでくる?」「女だからかな?」と云う言葉から、マアが「美少女」で、そのことについても無自覚なことが窺えます。
マアの、自分の恋心の自覚と、トラインとの関係の進展、期待しています♪。
[気になる点]
マア、トラインは「ちゃん」付けで、他の人は「さま」や「さん」付けで呼ぶのに、魔王は「魔王」と呼び捨てなんですね・・・魔王に対してなにか思うところがあるのでしょうか?。 急ぎでの大量発注をされて、過労死しそうになった、とか(笑。 村長は、ブラック企業勤めが祟って死亡した癖に、以前から、文官娘衆とか、村人の過重労働には無頓着ですからね~(笑。
マアが何故魔王だけは呼び捨てなのか?・・・真相が明らかになることを期待しています。
[一言]
>屋根裏にはキアービットさんの家具が置かれていた
「家具」て・・・「ベッド」でしょうか?(笑。
アルフレートの「秘密基地」は、トラインの家の屋根裏部屋ではなかったようですね。 でも、何故、トラインの家の屋根裏部屋にキアービットの家具が置いてあったのでしょう?。 キアービットの、「同居希望!」のアピールでしょうか?。 それとも・・・キアービットが、トラインとの関係の進展を狙い、”外堀を埋める”一環として、アルフレートに自宅の部屋を「秘密基地」として提供したため、溢れた家具を置かせてもらっていた・・・のでしょうか?。
ティゼルでさえ捕捉できないアルフレートの「秘密基地」、何処に作られたのか、興味があります。
>それでも聞いてもらえないときは、村長に報告だ
ベルパーク翁の一件が村長の耳に入る伏線でしょうか?。 ベルパーク翁、平穏な日々には別れを告げることになりそうですね(笑。
マア視点のお話が伺えて嬉しいです♪。
マア、所謂「ボクっ娘」なのですね!。 しかも、トラインに対する自分の気持ちに無自覚だなんて・・・なんて見事な萌えキャラ!(笑。 「なぜチンピラが僕に絡んでくる?」「女だからかな?」と云う言葉から、マアが「美少女」で、そのことについても無自覚なことが窺えます。
マアの、自分の恋心の自覚と、トラインとの関係の進展、期待しています♪。
[気になる点]
マア、トラインは「ちゃん」付けで、他の人は「さま」や「さん」付けで呼ぶのに、魔王は「魔王」と呼び捨てなんですね・・・魔王に対してなにか思うところがあるのでしょうか?。 急ぎでの大量発注をされて、過労死しそうになった、とか(笑。 村長は、ブラック企業勤めが祟って死亡した癖に、以前から、文官娘衆とか、村人の過重労働には無頓着ですからね~(笑。
マアが何故魔王だけは呼び捨てなのか?・・・真相が明らかになることを期待しています。
[一言]
>屋根裏にはキアービットさんの家具が置かれていた
「家具」て・・・「ベッド」でしょうか?(笑。
アルフレートの「秘密基地」は、トラインの家の屋根裏部屋ではなかったようですね。 でも、何故、トラインの家の屋根裏部屋にキアービットの家具が置いてあったのでしょう?。 キアービットの、「同居希望!」のアピールでしょうか?。 それとも・・・キアービットが、トラインとの関係の進展を狙い、”外堀を埋める”一環として、アルフレートに自宅の部屋を「秘密基地」として提供したため、溢れた家具を置かせてもらっていた・・・のでしょうか?。
ティゼルでさえ捕捉できないアルフレートの「秘密基地」、何処に作られたのか、興味があります。
>それでも聞いてもらえないときは、村長に報告だ
ベルパーク翁の一件が村長の耳に入る伏線でしょうか?。 ベルパーク翁、平穏な日々には別れを告げることになりそうですね(笑。
エピソード815
[気になる点]
ウルザさま【に】物を置いてもいいですよと では?
>蒸気を使って
鉄製ですと、製鉄技術が足らないのでは?
でも、こちらにはとんでも金属があるのでw
でもバネは…
バネにピッタリの魔金属はきっとある
[一言]
コンバイン:刈取機と脱穀機を組み合わせた収穫機械
ウルザさま【に】物を置いてもいいですよと では?
>蒸気を使って
鉄製ですと、製鉄技術が足らないのでは?
でも、こちらにはとんでも金属があるのでw
でもバネは…
バネにピッタリの魔金属はきっとある
[一言]
コンバイン:刈取機と脱穀機を組み合わせた収穫機械
- 投稿者: bkz
- 2023年 09月30日 02時15分
エピソード815
指摘、ありがとうございます。
修正しました。
修正しました。
- 内藤騎之介
- 2023年 09月30日 07時58分
[一言]
山エルフと村長の関係って、どうだったっけ……
山エルフと村長の関係って、どうだったっけ……
エピソード815
[良い点]
更新おつかれさまです
[気になる点]
>> 僕の名はマア。
となると今回はさしづめ「マアちゃんの日記帳」?
:某「漫画の神様」版であればココの台詞は「ボクノ ナマエハ マア」になってた所かも。
となると山エルフ町にあるオウチにはオトウサンとオカアサンと囲む卓袱台(当然丸くて木製で脚がパンタ式に畳める)が四畳半の畳居間(なお三球ラジヲ木製はあるがテレビヂョンは無い)にあって、日頃はトンチャンと彼女(全73話シリーズ通してキャラが一貫してないんだよねぇ)と一緒に遊んでた幼稚園児時代(当時まだ国内に保育園は無い)だったのだろうかと。
:幻の友人(だって全集には収録されてないんだもん)ことフクちゃんは似てなかったなぁ原作と
>> 僕はどうも発想力が弱いらしく、すでにある物を作るのは得意なのだけど、新しい物を作るのは苦手だ。
日本人か!? 貴様、日本人だな! しかも東通工ではなく大阪の家電屋だな間違いない!
:何時まで昭和だよw
>> 山エルフB「マアがいなくなったからでしょ。あの娘、量産とか得意だったから」
やっぱり貴様、日本人じゃないか! となると門真の立ち上げに居たな。ともに幸之助翁の真使命こと7精神を守ろうではないか。
:ラインの構想設計から維持管理に至るまで、ホント生管や品管や工管とかお世話になってます
>> 治安の悪い場所を歩いて、チンピラを捕まえるのは釣りとは言わないと思う。
いや前回以来、こうしてガラが悪い連中ばかり狩り集めて作るミニ国家ってどんなん?と考えてますけど、こう他人手まで使って積極的に狩ってる(つっても数十万人は集まらないだろ精々数万人)となると「もしかして常識的な“国家”ではないのでは?」とまで考えられてしまってコワイw
>> 心配なのは、この方法で捕まえたチンピラが役に立つか怪しいこと。
:「役立つ」=「使える」≒「使い潰してOK」なら、こうだろうなぁ
握手しながら足を踏む程度の仲(よくあるある)な数カ国の国境が入り交じる何処かの峻険な山岳地こと不毛地域に不戦緩衝地域を兼ね置かれた国家を標榜する組織。当然に1次産業も2次産業も成り立たない(故に既存な国際ギルドを招けないから3次産業も起きない&国際即時通信網も無いから銀行保険証券債権業も仮想流通貿易機関も開設できない=タックスヘイブンもローヘイブンも夢だ)から必然的に国家産業として外貨を稼ぐのは国民派遣業こと【傭兵】。「御依頼あらば何時でも何処でも誰へでも」を謳うティゼル創設の異世界初PMC(カンパニーではなくカントリーなのが肝要)が「抑止力軍事国家」として世界平和に睨みを効かせる時代が来るまで、あと十数年てとこか?
:適当な頃に「永世中立国家」を宣言するでしょーな、強力な国民皆兵軍事力を背景にして、国家そのものが天然の要害だし
まぁその頃には精密機械産業が起きてるだろうし、平和になった周辺国家から集まった「いわくつきなカネ」で興した金融業が世界に冠たる国際銀行へ育つのも間を置かないだろうて。尤もそれまでの間には何回か、ティゼルPMCの傭兵同士が戦線を挟んで対峙する事態に陥るだろうけど、地球と違って異世界には問答無用で紛争をナシにするほど強力かつ理不尽な暴力的抑止力種こと竜がいるし、その手のツテに国家主席は困らないだろうしなぁ。
:竜が歯向かったらどうするのかって? 当然「パパおねがい(はぁと)」になるに決まっとろーが
そのティゼル国家創設運営顛末を誰か書いてくれんもんだろか「異世界で近代的悪役女王をやるのはちょっと大変」とかのタイトルで。
[一言]
>> 構想を無理やりまとめた模型を作ったら、それをみた村長はコンバインと呟やいていた。
「なんでコレが『コンバイン』なの?」
と不思議そうにトラインちゃんが呟いた。そうなんだよねぇ、そこが僕ことマアも不思議。
「一応、格好はゴーレムね?」
「腕脚は普通に付いていますし、頭もきっちり首付きで別れていますし」
ウルザ様も疑わしそうだ。脇でフォローするメットーラさんも疑問に思ってくれてたらしい。
「アレですかね? こないだの王都パレードでお披露目した合体馬車」
「アレか? でもあの合体馬車は結局あのドサクサに紛れて公開し損なっていただろう」
「しかも最初から合体させっぱなしだったんで山エルフたち『折角のワンダバがぁ』と残念がってたけどなぁ」
「え、そうだったの? でも村長は何時もの村長にしか見えなかったけど」
ふと思い付いた様に言ったアースさんだったけど、何時もの様にアサさんが諌めた。そこをフォローになってないフォローでアルフレート様が繋ぎ、やっぱりキアービットさんはアルフレート様をフォローする様でいながら視線がつい村長を追ってしまう癖が抜けてない。うん、何時もの食卓なやり取り、つまり学園「大樹の村」ハウスの日常。なんでかアースさんの思い付きは何時も浅いらしいんだよね、知らないけど。
「でも父さんが『コンバイン』と言ってる以上、そこには何か意味がある筈よ。何かが」
ただ一人、最初から真剣に農業ゴーレム模型を見つめていたティゼル様が、そこで誰へともなく呟いた。そこでまた「う~む」と集った皆が悩み始め、つまりはまた最初からやり直し。
どうも苦手だなぁ、こう言った真面目な雰囲気。もう1時間近く、こんな検討会がウチこと学園トライン邸の地下研究ラボで続いてる。皆の眼の前には、この農業用ゴーレム。
考え過ぎかなぁ? でも村長がポツンと呟いた一言が意外に鍵だった事って、よくあるよね。
七転八倒(主に「常在戦場の危機意識からやっぱりアレモコレモと戻すウルザ様」vs「イザとなったら母を呼ぶで全返しのトラインちゃん」vs「どーでもいーよとティゼル様」vs「ほらマアちゃんも困ってるからと外面優しいアルフレート様」で地下武装ストッカーの改廃を巡る攻防戦)の末に片付いた地下ラボに先ず搬入されたのが、この開発中だった農業ゴーレム。大樹の村に居た頃から開発を続けてたんで王都へ向かう際でも手放し難かったし、村長も魔王様も「できれば開発を続けてくれ」と言っていたので、この学園トライン邸の地下ラボで研究と開発を続ける事にしたんだ。アルフレート様が割合と広めに武器庫もとい地下ラボを作ってくれてたのが幸い。
「最初から検討し直してみましょう。これは農業ゴーレムで間違いないのですね?」
「はい、その見方で間違いないです」
「で、収穫用に特化していると」
「一応、そのつもりです。開発目標は、だったんです。です、が……」
「今は違う、のかな?」
えーっとえーっと。そこんとこ、もう僕にも判んなくなってきてるんだよお。
改めてメットーラさんに問い直され、ウルザ様にツッコまれた通り、確かにこの農業ゴーレムは先ず収穫用を目指して作り始めたんだ。それは間違いない。だって大樹の村で一番忙しい時期は、年に3回ある収穫期だから。
何故に年間3回も収穫できるのか、それは村長でも解らない。
けれど春と夏の間、夏と秋の間にある収穫即植付の時期の多忙さって言ったら毎年何時もとんでもない。表方で実作業を取り仕切り働き詰めになるハイエルフや山エルフやリザードマンや天使族や一村の方々は勿論、裏方で収穫の計数と納税と配送の手配と差配をする一方で次期作付計画に沿った田起こし畝起こしから種や苗の手配と人手割り振りの差配を取り仕切る文官娘集な皆様の多忙っぷりと言ったらハンパじゃない。誰かが「こんなにブラックワークが続くんなら、そのうちトラックに撥ねられて異世界転生できるかも」とか言ってたくらい。
トラックって何だろう、それは誰にも解らない。
「今は違う、って、何処が?」
「ほら、村にあるコンバインつまり刈り入れ機ってクローラに載せたブレードを動かすタイプだろ? でもこれは、」
「流石に違いますねぇ、そもそも見るからに人形(ヒトガタ)ですし」
先の会話でその違いを問い直したアルフレート様にティゼル様が問うと、アルフレート様が大樹の村で使われているコンバインこと刈り入れ機を例に出して答え、それへ重ねてアースさんが指摘した。うんその通り、そこをツッコまれると流石に研究開発担当マアこと僕も反論できない。
「そもそも、なんでヒトガタにしたんだ?」
「そうそう、なんでなんで? カッコいいよ」
ほら、アサさんにもツッコまれちゃった。でもトラインちゃん、無理やり議論に参加しなくても良いんですよ。
仕方なく大人しく正直に答える。隠す理由も無いものね。
「始まりは、あの合体馬車だったんです」
えぇ?と言った怪訝な顔で僕を見ないで、みんな。僕だって良く解ってないんだから。
「最初は本当に収穫特化向けのゴーレムだったんです。だから最初は村で使っているコンバイン、あのクローラの上にブレードとコンベアとコンテナを積んでるアレの改造から始めたんです」
「それがどこをどーしたらこーなるのよ?」
「ティゼル様のお母様の所為ですよ」
重ねてツッコんできたティゼル様へそう返すと、えぇえ?と首まで傾げてティゼル様は怪訝な顔を返してくれた。うん、そんな顔がルー様に悩まされてるお母様とよく似ている、気もしないでもないです。なんて思いながらも正直に返答する。チームで動く技術者ですから、僕。
「収穫期に多忙を極めるのは主に人手が絶対的に足りないせいです。なので収穫機械の極力なまでの省人化、出来れば無人化が望ましいとされました。そのため今は複数人のチームが乗って動かしているコンバインことクローラを自動化して汎用化する為に、ティア様のゴーレム汎用OSをインストールしたんです」
そこまで聞いて、あー、と納得気味な顔を返してくれた皆。これで一発で判ってくれるあたり、この面子も技術センス高いな。
「ティア母さんのゴーレム汎用OSは長年ずっと研究と改良を重ね続けアップデートを繰り返してきただけ、出来が良くって頑丈で速くて汎用性高いもの」
「大樹の村で山エルフたちが作るゴーレムは、ほぼティア母さんのOSで動いてるものな」
「それだけティア様のゴーレム技術は並外れているのです。あのルー様がティア様に頼み込んでイフルス学園の魔導機学部制御学科ゼミ室へ導入してもらった程なのですから」
納得したウルザ様にアルフレート様が重ね、メットーラさんが締め括ってくれた。そうなんだよねぇ、サイズとかランタイムとかスパゲッティとかあちこち目を瞑れば、ティア様のゴーレム汎用OSは本当に出来と使い勝手が良いんだ。ただ、
「でも、お母様のゴーレム汎用OSはヒトガタ特化だもんねぇ」
「両腕でバランスを取る仕組みだから致し方なし、と言うのがティア様の何時もの言い訳ですな」
はあー、と溜め息をつきながらティゼル様が曰わった。でもそれフォローになってないですよアサさん。事実ですけど。
「ま、そんな理由だから後付けでも無理矢理でも腕とか付けなきゃならなかった、と?」
「カッコいいよ! 腕とか角とか盾とか」
で、深く考えないアースさんが浅くとも的確なツッコミを回してくれやがった。だから無理矢理にトークへ参加してくていいんですってばトラインちゃん。
「まぁそうです。尤も農業ゴーレムとして汎用化を目指した時点で収穫特化からは外れましたから五本指の手を持つ両腕を付けるのが決まりましたし、荒地開拓や森林開削も含めた時点でクローラを両脚に換えるのも決まりましたから、ティア様の汎用OSを導入するのはその時点で自明の理みたいになりました」
「え? なら問題ないじゃない。何時もの大樹の村ゴーレムでしょそれ」
「でも本当の問題はOSを採用してからの話なんです」
「えぇ? 母様のOSが問題、じゃなくて母様のOSから始まる問題なの?」
ますます解らない、と言った表情でティゼル様が首を傾げた。いーから話せと睨む表情が怖いですメットーラさん。
「ほら。ゴーレムの話とは別に動力源の話もあったじゃないですか。この農業ゴーレムは、その動力源のテストベッドも兼ねているんです」
「あ! あのゴーレム技術を使わない動力源のこと?」
「そうですトライン様。まぁゴーレムを動かすのにゴーレムな動力源を使わないってのも如何なのよ?とかルー様にもヤー様にもツッコまれましたけど、そこは試験機械あるあるですから」
「な、なんだかよくわかんない」
「で、その新動力源の制御もティア様のOSに任せましたらば」
「……もしかすると、その新動力源ごと大型化した、と?」
「その大型化した動力源ユニットを囲む形で両腕両脚を付けて汎用ゴーレムの形に仕上げましたらば」
「そりゃまー確かに、こうもなるわねぇ」
こくん、と首を縦に振って肯定する。ツッコんだは良いものの結局よくわかんないらしいトラインちゃんを除いて、他の皆はまーまー納得してくれたらしい。次々にツッコんでくれましたアルフレート様ウルザ様ティゼル様ありがとうございます。
と言っても、これでまだ話半分なんだけどね。
「ま、まぁヒトガタになった経緯は解ったとしよう。汎用化と自動化のため、そして動力源のためか」
「ねーねー、その動力源って蒸気? もしかして蒸気? それならおっきくなるよね」
アサさんが纏めてくれましたけど、トラインちゃんがナナメウエからツッコんでくれました。イタい所を。
「蒸気……って、あの? 何時までも魔石動力のゴーレム動力車じゃコストがペイしない、って五村の丘山麓を走らせる木道車両の動力に換えて使おうか、ってヨウコさんがシャシャートのミヨさんを巻き込んでドワーフ鍛冶街に発注かけた、ってんで五村のロク君がひぃひぃ言ってた、あの?」
「いえ、違います。いや蒸気動力の開発は今でも大樹の村の山エルフ技術局重機開発部と五村ドワーフ鍛冶技術試験所の連携で進んでますけど、この農業ゴーレムにはそれとは違う新動力源を使っています」
蒸気機関は頑丈で大型化がシンプル直線的で仕組みが解り易いから好評なんだけど、どうしても大出力化と大型化がリニアに関連するし上下左右に揺さぶる様な運転に弱いし、何より重い。機関のエネルギー源こと水缶も石炭庫も。ひたすら重い。軌道車両に使うのはともかく、ヒトガタゴーレムに使うのは、ちょっと。
「ならば何を使っているのですか?」
「魔石の魔力から等価交換されたクーロン力とマグネタイドです」
全然ピンと来ない顔で今度は全員が首を傾げた。やだトラインちゃん可愛い。
それはともかく、まぁこうなるわな。僕だって村長からこれを聞いた時には同じ顔をして首を傾げていたと思う。でも村長の解説へ最後まで付き合ったの僕だけだったし結局あの時。「マア、本当に解ったのか?」と村長が死屍累々な講義室を見渡しながら唯一の生き残りだった僕へ言ってくれたのが、今でもちょっと誇らしい。
「え? なんて? 等価交換って錬金術師? 兄さん解った?」
「ごめん、僕もサッパリ。大方また父さん用語だと思うんだけど」
「ごめんなさい、もう少し判りやすく言ってもらえる? クーなんとかとマグネなんとか、って?」
と即座にツッコんでくれるティゼル様アルフレート様ウルザ様。この御兄弟姉妹はホント頭の回転が速くて助かる。とは言え、
「それを話し始めますと、先ず『電気ってなぁに?』『どうして磁石は北と南を指すの?』から始めて実用超統一理論拡張概略まで話さねばなりませんから、かな~り時間が掛かりますが」
「電気って、あの? カミナリの? それと磁石って、村の子供が玩具に使ってるあの鉱石の?」
「そんな代物が、どうやって魔石から作られて、果ては動力源にまでなるのだ?」
「いえ待ちなさい。そんな所から話を始めて、私たちがそれを理解するまで、どれ程が掛かるのですか?」
僕の回答へアースさんが判りやすくツッコみアサさんが若干興味ある風に尋ね最後にメットーラさんが冷静に引き取ってくれた。あぁ良かった、でないと今から皆を本格的に死屍累々に落とし込まなきゃいけなくなる所だったから。だから僕は正直に答えた。
「そうですね、最低でも教科書3冊から6冊づつの後に進級テストを挟みながらな説明を6回りってトコですか。都合6-3-3-4-2-5なターンで」
「あぁ23分?」
「いえ23年くらいかと。最後の4-2-5な所は進みにくいですから下手するとプラス10年コースかもです」
ごがががががん!と派手な音が鳴り響いた。う~ん地下ラボのテーブルは重量物の試験台も兼ねてるから無垢の重量大理石の削り出し5トン岩塊なんで、そうやって頭を打ち付けると痛いですよみんな?
「そーじゃないでしょ! 何よそれ!? そんな訳わかんない動力源なんか使ってるの!?」
「ティゼルぅ声を抑えて。それは確かにティア母さんの汎用OSでも制御が難しいかもなぁ」
「ま、まぁ、恐ろしく難しく高度な技術の動力源が使われている事は解ったわ。いえ説明は結構よ」
「あれ? 諦めるんですか? ウルザ様」
「人には向き不向きがあるものよ、メットーラ。適材適所と父さんも何時も言ってるでしょう」
「流石ウルザ様。積極果断な即決、このアース感服仕りました」
「お勉強が始まらずに済んでホッとしてるだけだろうが。いやマーキュリー種と言えど知識のオフラインインストールは面倒極まるので解説は結構です」
最後のアサさんだけは「pdfをオンラインで送れ」と言いかねないかなと思ってたんでホッとした。が、まだまだ続きはあるんだもんなあ。
「じゃあ省力化と無人化に伴う両腕両脚と動力源、それから始まるティア母さんのゴーレム汎用OSの導入と大型化、までは納得したとしよう。してないけど。微塵も判んなかったけど」
「言わないでアルフレート。でないと話が進まないわ、タダでさえもう250行も使ってるのに。ではここまではヨシとしましょう。よくはないけど。仕方ないけど」
「ウルザ姉様、それじゃ現場猫です。村のライギエルたちに笑われてしまいます」
「いたいよぉメットーラぁ」
「トライン様までオデコ打つこと無かったんですのに」
「あー赤くなっちゃってまぁ。アサ、冷やしてやってくれ」
「自分が魔法を使えない土人形だからって私に回すな。あートライン様、氷魔法で冷しますからね」
えーっと、いいですか続き?
「再開しましょ。面倒くさくなる前に片付けるわよ断固。そーじゃなきゃ今晩の食事が不味くなっちゃう」
「ティゼルの言う通り。さてそうなると、父さんの『コンバイン』論点は寧ろ、今までの話とは無関係?」
「そうとは言い切れないんじゃない? とりあえず保留ぐらいにしておきましょう」
「となるとウルザ様。この農業ゴーレムには、まだまだ村長が引っ掛かりそうなポイントがあると?」
「えぇ。まだ肝心の話が出てないもの」
ウルザ様にツッコんだメットーラさんが「はて?」と首を傾げた。平常心を取り戻したウルザ様が注意深く話を戻した。
「最初に言ったわね、マア? 始まりは合体馬車だ、と」
そうだった!とウルザ様以外の全員が吃驚顔をして僕に向いた。あぁ漸くこの話が出来るのか。
「そうだった合体馬車だ。確かにマアは話をそう始めた。まだ出てきてないよな合体馬車とゴーレムの話」
「落ち着けアース。そこが肝要なのかもしれないのだからな」
姿勢を直したアースさんとアサさんが身を乗り出して尋ねてきた。さ、ここからが話の話、て奴だ。僕は山エルフの誇りにかけて真実を話そう。
「そうなんです。さてこの農業ゴーレム、見てもらった通り随分と大型化してます。ここまで大型化したヒトガタゴーレムは大樹の村でも珍しいかもです」
「大樹の村どころか魔王国いや大陸全土を見渡したって珍しいと思うぞ」
「カッコいいよね!」
ツッコミありがとうございますアサさん、フォローありがとうございますトラインちゃん。
「でも、ここまで大型化したヒトガタだと、かなり頻繁に困る事態が想定されました」
「大きければ大きいほど開拓や開墾には有利かと思われますが」
「そーそー。父様も村長浴場で良く『♪おーきいっコトはイーことだ~』って歌ってるもん」
「その話やめときません? ティア様やアン様やハクレン様とかは喜んでますけど、ルー様リア様ラスティ様あたりがムクれますから」
メットーラさんが混ぜっ返した所をティゼル様がズラした話を、何とかアースさんが戻してくれた。
「移動時、かな? この巨体が現場から現場へズシンズシン歩くとなると、ちょっとゾッとするよね」
で、アルフレート様から上手い具合にフォロー頂けた。感謝しますアルフレート様。
「はい。それでなくとも巨大ヒトガタゴーレムは威圧的ですし、移動跡に残る足跡も馬鹿にできません。それにもし事故でも起こして転倒でもしたら」
「……大惨事ね」
ぶるっ、と震え上がったウルザ様が漏らした一言が部屋の雰囲気を支配した。
「巨大で威圧的なゴーレムは、強大な軍事力として竜族にとって見逃せない存在です。出来れば解体をお勧めします」
そして冷徹にメットーラさんが言い放った。そうだったメットーラさんは竜族からの目付役としても学園にいるんだった。なので僕はあっさりそれを認めた。
「はい、何もかも皆さんが仰る通りです。なので、合体馬車なのです」
またピンと来ない顔で首を傾げた皆だったけど、すぐにアルフレート様が吃驚顔で言ってくれた。
「……まさか、このゴーレム……分離合体変形、するの?」
幾分、いや言葉の途中からかなりワクワクした顔で。
まさか!と言った吃驚顔で、先ずアルフレート様を振り返り、そして僕へ振り向き直る皆。さ、論より証拠の時間だ。
僕が手元のコンソールにコマンドを叩き込む。地下ラボの壁面に広がるスクリーンに分割表示されているステータスインジケータの一つが表示を切り替える。
“MODE:COMBINED” から “MODE:BATTLE-MACHINE”へと。
途端にゴーレム全体を稲光が包み込む。驚く皆だったけど、仕方ないんだ。だってこのゴーレム、巨大で重量級だからラッチやアームの噛み込みだけじゃ合体させたまま激しく腕脚を振り回して動きまくるなんて出来なかったんだ。
だから合体には新動力源からのパワーをそのまんま使ってる。クーロン力とマグネトロンを。
電気の力と、磁気の力を。
これを一纏めにして村長は 「 超 電 磁 力 」 と言っていたっけ。
で、この農業ゴーレムが移動用の各分割ゴーレムへ分離する際には、合体時に使っていた電磁気力をこうして開放する。それが空中に放散されると、こうして稲光と轟音になって拡散する訳だ。勿論、噛み込んでいたラッチやアームが外れる轟音も響き渡るから、今の地下ラボはかなり五月蝿い。
まぁ僕たち皆が集っているここ地下ラボの管制ルームの向こうに見えてる、農業ゴーレムの収容施設こと合体フォーム格納庫の中は、もっともっと五月蝿いに違いない。なんと平均2m厚の耐爆耐衝撃防音遮蔽壁と1.5m厚のアクリル透明窓越しでも、こんなに分離合体時の轟音が響くものなんだな。知らなかった。
唖然としてアクリル透明窓越しに見守る皆の前で、農業ゴーレムは幾つかに分離し、それぞれ変形してゆく。そりゃまあヒトガタゴーレムな各部の形のまんま移動しようとすると格好がキモいからね、少しは見栄え良いフォルムに纏まる様にしたんだ。だから分離と合体そして変形。必須必要でしょ?
首から別れた頭部は、顔面を機体下部に格納し垂直尾翼を立てて、ブレンデッドウィングなウェーブライダー形状に。
頭を切り離し胸下から胴体と別れた胸腕部は、両手を格納し肘から腕を折り畳みノズルを露出してステルス爆撃飛行形態に。
胸上を切り離し腰内へ入れ子だった両脚が抜けた胴体は、格納してあったクローラを露出して陸上走行形態に。
胴体にドッキングしていたコクピットを抜いた両脚は、その両脚を束ね足首を切り離しノズルを露出させ補助翼を展開し、空海中巡航形態に。
そして切り離された両足首は2つ纏めて合体し、クローラをそのままに陸上走行形態へ。なおフロントアンダーから露出するドリルブラストを使えば地中潜航も可能だ。勿論このドリルは合体ゴーレム時にもキックでの武器になる。
雷鳴轟く稲光を撒き散らし轟音を響かせながら分離した農業ゴーレムは、こうして五体の移動ゴーレムへと変形した。五体それぞれを支えていた巨大かつ強大なガントリーアームが、それぞれの機体をそれぞれの発進ゲートへ繋がるトンネルレールへ自動で移動させ、重量級複々線レールに乗った各移動ゴーレムはドーリーテーブルに載せられたまま各ゲートへのトンネルに吸い込まれていった。トンネルの先は当然、各ゴーレムが発進する緊急ゲート、村長命名のワンダバカタパルトへ繋がっている。
どうやら今回も順調に自動ゴーレム機械たちは動いてくれた模様だ。ティア様の汎用OSは確かに凄いが、大樹の村の山エルフ仲間たちが組み込む制御コマンド群も大したものだと感嘆する。いつもこうして僕ひとりでも、あの巨大な農業ゴーレムをメンテできてるし。
あの 「 ♪身長57m・体重550t 」 の巨大ゴーレムを。
アルフレート様が大き目に地下ラボを建造しておいてくれて、本当に助かったんだ。まぁ実際は合体済みな農業ゴーレムを立てて入れてもまだ余りある程に巨大な空間なんだけど。アルフレート様は事もなく「大樹の村の中庭にある地下倉庫ダンジョンの建築技術を使ったから手間いらずだったよ」と仰ってたけど、それに託け甘えて剣から槍から弓から矢から盾から鎧から充満済MATRIX式銃器棚から戦馬から戦闘馬車から簡易城塞から軍船から軍艦から巡洋艦から戦艦から空母から戦闘機から爆撃機から攻撃型空中母艦から宇宙戦艦からデス・スターから仕舞い込んでたウルザ様は流石にどうかと思ったけどね。にしても良くここから運び出せてアルフレート様邸の地下へ仕舞い直せたなぁデス・スターとか。どうやったんだろ?
そんな僕の思惑はともかく。唖然として全てを無言で見送っていた皆が、格納庫へ視線を貼り付けていた大窓からギギギと音がしそうな動きで首を回し、おもむろに僕を見た。やだなそんなに見たっておやつはまだですよ?
「な……なに? いまの?」
片言になってますよウルザ様。はいコレが農業ゴーレムです。ちょっと大きいですけど。分離合体変形しますけど。
「分離、変形……もしかして、これを逆にした合体、も?」
驚きはしてる様だけど、それ以上にワクワクが止まんねぇぜてな表情でアルフレート様が聞いてくる。その通りなんですけど、その変形合体が「空中で行われる」とか聞いたら、間違いなく「見せて見せて!つーか乗せて乗せて!!」が止まんねぇぜになるだろうなぁ。
「こ、こ、こここここ……こんなの作ってぇ! だいたい幾ら掛かってるのよこれぇ!!」
村の鶏かと思いましたよティゼル様。いやそんなに掛かっちゃいませんよ? 村の金倉だって3つも空けてませんし。
「3つ……となると、2つは空けた、と? 金貨だけでも、あの王城宝物庫に匹敵する収蔵量な、村の金倉、を?」
ま、まぁそうなるかもです、いやなりますなりましたメットーラ様。だからそんなに睨まないで、村長だってノリノリで使ってたんですから不可抗力ですよ。
「そこは只でさえ黒字過剰在庫気味な大樹の村のバランスシートを赤字寄りへ傾けた功績として認めるに如かずともですね、こぉんな巨大かつ強大かつ満艦飾な代物を、本気で農業ゴーレムだと言い張るつもりですか君は?」
アサさんも怖いですよぉ。でなければ何と言えば良いと? 軍事ゴーレムなんて言ったら竜族が総出で潰しに来ちゃいますよ。
「どーせ村に居た時にゃマーキュリー種のヨルも噛んでるんだろ? だったら武装の一つも着いてるよな?」
ふっふっふ、甘いです甘過ぎますアースさん。パンチだキックだチョップだ回し蹴りだなんてのも含めると40種類以上は軽くあります。中でも強力なのが腰に付いてる円盤型の武器ことバトルリターンを2つ合わせて撃つ超電磁ヨー……
「……でぇ? なにか言い訳はあるの??」
……だから怖いですってばウルザ様もティゼル様もメットーラさんも。なので聞いて下さい話の芯はここからなんですってば。
かぁっこいー! カッコいー! とぴょんこぴょんこ跳ねて喜んでるトラインちゃんだけが癒やしだなぁホント。
とは言え、流石に何か起死回生な決め手を言わねば、このまま吊し上げで煮られたり焼かれたり食われたりされてしまうのが、流石の僕だって判る。ならば言おう、いよいよのオチを。
「だから、これを見た時に村長が 『 コ ン バ イ ン 』 と言ったんです」
それまで烈火の如くな夜叉顔だった皆が、ぱちくり、と魂を抜かれた様な顔になった。おぉ決まった決まった良かった良かった。
「……え? 父さん、これを見た時に、それ言ったの?」
と信じられない様な表情で問うウルザ様。そうですその通りです、正しくはコレの変形合体を144分の1サイズな樹脂模型を使ったブンドドで見せた時なんですけどね。あ、あの模型ったら抜き差し無しで完全変形と合体分離が出来るものですから、その出来が良過ぎて売れて売れて転売屋が蔓延っちゃって社会問題にまでなっちゃいまして、今ではちょっと大きめの100分の1サイズとかなり大きめの60分の1サイズ、それとサイズ同じで内部構造まで精密に作り上げる模型も売り出してまして、それぞれ「高級階位」「達人階位」「完璧階位」「実級階位」と名付けまして、今度はもっと作りやすい「入門階位」も出そうかと、
「そんなのはいーから! でも後で教えなさいよ金型も回しなさいよ王都で売り出すからダルフォン商会の伝手で」
「やめとこうよティゼル、また、まだ、儲けるつもりなの? 幾ら貯め込んでると思ってるんだよ」
「兄さま甘ぁい。国家設立には兆単位どころか京単位な資本があったって足りゃしないんだから」
「そこは上手くやろうよ、父さんだって言ってるだろ『人は石垣なり』って」
「人は城 人は石垣 人は堀 情けは味方 仇は敵なり、ですね。抱える人材こそ大事なり、を唱えた名言です」
「でも村長が言ってましたよ? それを唱えた戦乱時代の名将は、騙すわ諮るわ謀るわな裏切り上等で条約破棄常套な付き合いを身内も含めた国内ばかりか周辺国とも繰り広げた挙げ句に、結局は御家滅亡したって話だって」
「そんな世知辛い話はともかくとして話を戻すぞ。村長は何の何処を見て『コンバイン』と言ったのだ?」
途端に商機へ逸ったティゼル様を諌めるアルフレート様だったけど、折角にメットーラさんがフォローを入れてくれたのにアースさんが台無しに。こう言った所が浅いと言われてるのかな? ともあれ話はアサさんが戻してくれた。ポカン顔で「ぼくわかんない」面を晒してないで、お話に参加しましょうよトラインちゃん。
「えーっとですね。正確には、この模型を使って各機を変形させて、こう、各機を合体させてヒトガタゴーレムへと変形させている、その最中ですね」
地下ラボ管制室のオブジェとして飾っておいた最初期金型の樹脂模型(市販品の量産型が市場を占める今となっちゃスーパープレミアのオク超高額落札査定な品)を取り外してきて、村長にデモした時と同じ様なブンドドをラボの卓上で皆に見せる僕。しまったな、山エルフの仲間には魔法コマンドの組み合わせで自動稼働するブロック樹脂玩具を使い、これの完全自動変形合体ポージングまでする40分の1疑似模型を作ってる奴も居たんだ。それ借りときゃ良かった、アレは僕も「おぉー(欲しい)」とか声あげちゃったもんな。
とは言え、これでも十分に皆へはアピールできた様だ。アルフレート様なんか「(ぅわー)」てな感じで模型に手を伸ばしてはウルザ様に睨まれて引っ込め「(でもー)」てな感じで模型に手を伸ばしてはティゼル様に睨まれて引っ込めしてるくらいだ。
まぁでも結局「何故に村長はコレを見て『コンバイン』と言ったのか?」は判らないんだけどね。
「つまりゴーレムの分離も変形も合体も、コンバインこと収穫機械を連想させる要素は無いわね」
「ですねウルザ様。となると、最早これは我々の考え損な草臥れ儲け、でしたかな?」
「アサ、貴方ねぇ、でもうーんう~んうむむむむ……うん、そうかもね。ごめんなさい、私の考え過ぎだったみたい」
「謝る事ないさ。ティゼルが深く考えてくれるから、僕たちは何時も助かってるんだから」
「アルフレート様の仰る通りです、ティゼル様。お気を取り戻し下さいな。お夕食にはティゼル様のお好きなコーヒープディングをお出ししますから」
「メットーラさん? それウチのショップのドルチェじゃないですか?」
「ぼくも好きだよ、アースのお店のおかし。美味しいよね」
「やーありがとうございますトライン様。癒やされますねぇトライン様にはホント」
そうですアースさん、トラインちゃんは皆の癒やしなんですから。
「あ、でも、」
と、ほっこりさせてくれていたトラインちゃんから不穏な台詞が。え、何事?
「どうしたのですか、トライン様?」
「うん。メットーラは知らないかもだけど、父さまが畑へ行く時なんかに偶に口ずさんでる歌があるんだ。そこに確か『こんばいん』って言葉が、あったようななかったような……」
初耳です。と言うか、村長が畑へ通う時に脇へ着いていた様な側仕えを務めた方なんて、此処には居ませんからね。メットーラさんは王都からの側仕え、アサさんも温泉管理人から王都勤務への転属、辛うじてアースさんが最も大樹の村の村長に近かったくらいですか。僕? もっぱら山エルフ居住区と研究棟との行き来だけでしたけど何か?
「でも俺が大樹の村で村長の側で暮らしていた頃は、まだミニサイズな土人形まるだしのボディだったからなぁ。そもそもその頃だって村長の側よりウルザ様の側にべったりだったし」
そうでしたそうでしたアースさん。土人形まんまじゃ歌なんか聞き取れませんよね耳とか無いですし。
「え? そんな歌とかあった? あたし知らないんだけど」
「赤ちゃんとかの頃ならともかく、そこそこ大きくなってからはティゼルったら父さんから離れて、ハクレン母さんやルー母さんから魔法を習ってばっかりだったものね。ティア母さんは攻撃魔法ばっかりだからって避けてて、ティア母さん寂しがってたよ」
「父さんも寂しがってた、かしら? でもそれはアルフレート貴方もそうよ。ガルドさんダガさん達の剣術訓練に入り浸ったり、ガットさん所の鍛冶場で刀剣類の鍛造現場に入り浸ったり、山エルフ製造工廠のゴーレム製造ラインで有人搭乗型ゴーレムの製作に夢中になってたり。まぁルー母さんがイフルス学園に入り浸りだったから丁度良かったのかもだけど」
「えーそれを言うならウルザ姉さまもそうじゃない? 大樹の村の子供達を纏め五村の街の子供達を纏めしてた時なんか、すっかり子供自治会の首長やっててスッキリ父さんからもハクレン母さんからも離れてたでしょ。ハクレン母さん寂しがってたよ?」
「それでヒイチロウが出来たんだから良いのよ問題なしよノーカンよ無事これ名馬よ」
「ぜ、前後関係、合ってるかなぁ?」
ご兄弟姉妹の仲が宜しい様で僥倖。にしても、となると村長の近くで村長から歌を聞いていたのは、実質トラインちゃんだけですか? よく村長の側へ着けましたね。
「ぼく、母様が父様の側付き当番だった時には、一緒に畑とか回ってたから」
「あぁ鬼人族メイドたちの当番ルーチンですか。え? アン様も村長当番やってたのですか? アレは辛い食事も片手間にしなきゃならん何よりトイレへ行く暇が無い、と或る鬼人族メイドが一コマ連載コミックエッセーを単行本コラムへ載せてましたが」
「そう言うメタなネタはともかくアサさん、アン母さんが村長の1日側仕えが出来る機会を逃すとでも?」
「……失敬。浅慮を恥じ入るばかりです。これではアースを笑えませんな」
「ねぇイチイチ俺を引き合いに出すの、やめない?」
そんなジャレアイは置いといて、トラインちゃん。それで村長の歌、とは?
「うーんとね、えーっとね、う~んう~ん…… 確か、こんな歌だと覚えてるんだけど」
と前置きしてトラインちゃんが歌ってくれました。ああ、確かに「こんばいん」なる単語が出てきます。しかも農業従事者向けらしい歌です。ちょっと珍しい音階メロディとリズムですが、これは応援歌でしょうか?
「ワンフレーズにも満たないじゃない。これを父さんが歌ってたの?」
「うんティゼル姉さま。この後なんか続くらしいんだけど、父さまは知らないんだって」
「知らない単語が出てきたなぁ。歌始めのは掛け声かな? “超電磁”はさっきのマアの話のアレだろうけど、“ロボ”って何? それと最後の、何かの名前は……」
「それは、アル兄さま、ぼくも知らない」
「確か村長がクロを名付けする時に、そんな名前が候補に挙がってた様な? その歌が元ネタかしら?」
「ウルザ姉さま、それ何年前の話? だいたいウルザ姉さまだって、その頃の父さんなんか知らないでしょ」
ほのぼのした兄弟姉妹の会話が続く。癒やされるわぁホント、トラインちゃんには。
が、そこを中断せしむる一陣の風。具体的にはメットーラさんの冷徹な御指摘。
「待って下さい。そうなると、その歌は村長の原初記憶からある歌、と言う事ですか?」
はっ!としてフリーズし真剣な表情へと一変する皆。え? そんなに大事な予感?
「えぇ? となると大事ですよメットーラさん。村長の謎起源を探る手掛かりになる鍵、って事じゃないですか」
「待てアース、早まるな。それをこの歌から探れば、もしかしたら逆に取り返しがつかない事態すら招きかねない」
「え、アサ? それってどういう事かな?」
「簡単ですよアルフレート様。この歌には既に“超電磁”なる単語が表れているのです。他にも不明な単語も山ほども」
「待ってアサ! と言う事は、今こうやってマアがようやっと実用化した“超電磁”な新動力源とかゴーレムとかを、村長の謎故郷はとっくに実用化しているって言うの? 村長が“死の森”に現れた以前の、20年近くも昔に!?」
「その通りですティゼル様。しかも相当にポピュラーな形で、でしょう。理由は簡単、この歌が明らかに子供向けだからです。そんな歌の中ですら歌われている“超電磁”技術、きっと村長の謎故郷では子供ですら良く識る技術なのでしょう。だからこうして高らかに子供向けな応援歌として歌われていて、歌中での子供向け解説すら要らない程に子供にも馴染みが既に十分ある技術な事が伺われます」
「父さんの謎技術や謎知識は、ひょっとしたら魔王国いや大陸の技術より数百年は進んでるんじゃないか、と疑われた事もあったわね。それが父さんの鼻歌一つからも読み取れた、そういう事なのアサ?」
「仰る通りですウルザ様。だからこそ、私は怖いのです。村長の歌を、そして“超電磁”技術を歌から探る事を」
ぞッ、としない顔で俯くアサさん、そして愕然とした表情でフリーズする皆。トラインちゃんだけは「なになにどゆこと?」とキョロキョロしてる可愛い、んだけどそんな雰囲気じゃないよね今。
「……ひとまず、歌の中身を精査する事は保留します。棚上げのまま、ルー母さんティア母さん達に任せましょう」
「ウルザ様、竜族へも一報入れて宜しいでしょうか? 今のアサの意見も添えてドース様へ直接送りたいのですが」
「竜族への対応はメットーラ貴方に任せます。但し父さんへ余計な手が伸びないよう細心にも細心の留意を」
「姉さま、魔王のオジさんには?」
「そっちはティゼル、貴方にお願い。出来ればビーゼルさん達の四天王が一緒に集まってる機会が良いわ。王城の定例会議は何時かしら?」
「任せて、適当に予定を押し込むから。アル兄、防諜対策よろしくね」
「わかった。アサ、手伝ってくれるかな。王城と学園に配備済みのジャミングドローンを密にしたい」
「アースと一緒に重ね直します。明日のカフェ営業は休みだな」
「いやアサ、下手に不定期休みなんか入れて逆に探られるのも拙いぞ。エルフたちに任せて通常営業させるさ、数日くらいなら大丈夫だろう」
な、なんだか大事になってきちゃったカモ? そんなつもりで作ったんじゃないんだけどなぁ農業ゴーレム、つか超電磁ロボ。あ、カッコ良いかも“超電磁ロボ”なネーミング。
「メモします。トライン様、もう一度、歌って貰えますか?」
「う、うんわかった」
そしてトラインちゃんの可愛らしい歌声が地下ラボの管制室に流れた。じ、と皆が聞き入ってる。真剣に。とても真剣に。
♪ ぶい、ぶい、ぶい びくとりーぃ
♪ こーん ばいーん いち、にぃ、さんっ
♪ しーごーと のらしごとー
♪ だいちをたがやす ちょーでんじ ろぼー
♪ のうかのみかただ こーんばとらー ぶぃー ……
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【出典】成井紀郎「ゴーゴー悟空」 アベンジャーズ系アニパロの原初にして起源だと思われます 師の前作も含めて
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
キアービット「私、台詞、1個だけ……?」
すまん。正直、すっかり途中から忘れてたw あれかな? やっぱりキーちゃんには歳相応になるまで隠棲していて欲しいのかな俺??
更新おつかれさまです
[気になる点]
>> 僕の名はマア。
となると今回はさしづめ「マアちゃんの日記帳」?
:某「漫画の神様」版であればココの台詞は「ボクノ ナマエハ マア」になってた所かも。
となると山エルフ町にあるオウチにはオトウサンとオカアサンと囲む卓袱台(当然丸くて木製で脚がパンタ式に畳める)が四畳半の畳居間(なお三球ラジヲ木製はあるがテレビヂョンは無い)にあって、日頃はトンチャンと彼女(全73話シリーズ通してキャラが一貫してないんだよねぇ)と一緒に遊んでた幼稚園児時代(当時まだ国内に保育園は無い)だったのだろうかと。
:幻の友人(だって全集には収録されてないんだもん)ことフクちゃんは似てなかったなぁ原作と
>> 僕はどうも発想力が弱いらしく、すでにある物を作るのは得意なのだけど、新しい物を作るのは苦手だ。
日本人か!? 貴様、日本人だな! しかも東通工ではなく大阪の家電屋だな間違いない!
:何時まで昭和だよw
>> 山エルフB「マアがいなくなったからでしょ。あの娘、量産とか得意だったから」
やっぱり貴様、日本人じゃないか! となると門真の立ち上げに居たな。ともに幸之助翁の真使命こと7精神を守ろうではないか。
:ラインの構想設計から維持管理に至るまで、ホント生管や品管や工管とかお世話になってます
>> 治安の悪い場所を歩いて、チンピラを捕まえるのは釣りとは言わないと思う。
いや前回以来、こうしてガラが悪い連中ばかり狩り集めて作るミニ国家ってどんなん?と考えてますけど、こう他人手まで使って積極的に狩ってる(つっても数十万人は集まらないだろ精々数万人)となると「もしかして常識的な“国家”ではないのでは?」とまで考えられてしまってコワイw
>> 心配なのは、この方法で捕まえたチンピラが役に立つか怪しいこと。
:「役立つ」=「使える」≒「使い潰してOK」なら、こうだろうなぁ
握手しながら足を踏む程度の仲(よくあるある)な数カ国の国境が入り交じる何処かの峻険な山岳地こと不毛地域に不戦緩衝地域を兼ね置かれた国家を標榜する組織。当然に1次産業も2次産業も成り立たない(故に既存な国際ギルドを招けないから3次産業も起きない&国際即時通信網も無いから銀行保険証券債権業も仮想流通貿易機関も開設できない=タックスヘイブンもローヘイブンも夢だ)から必然的に国家産業として外貨を稼ぐのは国民派遣業こと【傭兵】。「御依頼あらば何時でも何処でも誰へでも」を謳うティゼル創設の異世界初PMC(カンパニーではなくカントリーなのが肝要)が「抑止力軍事国家」として世界平和に睨みを効かせる時代が来るまで、あと十数年てとこか?
:適当な頃に「永世中立国家」を宣言するでしょーな、強力な国民皆兵軍事力を背景にして、国家そのものが天然の要害だし
まぁその頃には精密機械産業が起きてるだろうし、平和になった周辺国家から集まった「いわくつきなカネ」で興した金融業が世界に冠たる国際銀行へ育つのも間を置かないだろうて。尤もそれまでの間には何回か、ティゼルPMCの傭兵同士が戦線を挟んで対峙する事態に陥るだろうけど、地球と違って異世界には問答無用で紛争をナシにするほど強力かつ理不尽な暴力的抑止力種こと竜がいるし、その手のツテに国家主席は困らないだろうしなぁ。
:竜が歯向かったらどうするのかって? 当然「パパおねがい(はぁと)」になるに決まっとろーが
そのティゼル国家創設運営顛末を誰か書いてくれんもんだろか「異世界で近代的悪役女王をやるのはちょっと大変」とかのタイトルで。
[一言]
>> 構想を無理やりまとめた模型を作ったら、それをみた村長はコンバインと呟やいていた。
「なんでコレが『コンバイン』なの?」
と不思議そうにトラインちゃんが呟いた。そうなんだよねぇ、そこが僕ことマアも不思議。
「一応、格好はゴーレムね?」
「腕脚は普通に付いていますし、頭もきっちり首付きで別れていますし」
ウルザ様も疑わしそうだ。脇でフォローするメットーラさんも疑問に思ってくれてたらしい。
「アレですかね? こないだの王都パレードでお披露目した合体馬車」
「アレか? でもあの合体馬車は結局あのドサクサに紛れて公開し損なっていただろう」
「しかも最初から合体させっぱなしだったんで山エルフたち『折角のワンダバがぁ』と残念がってたけどなぁ」
「え、そうだったの? でも村長は何時もの村長にしか見えなかったけど」
ふと思い付いた様に言ったアースさんだったけど、何時もの様にアサさんが諌めた。そこをフォローになってないフォローでアルフレート様が繋ぎ、やっぱりキアービットさんはアルフレート様をフォローする様でいながら視線がつい村長を追ってしまう癖が抜けてない。うん、何時もの食卓なやり取り、つまり学園「大樹の村」ハウスの日常。なんでかアースさんの思い付きは何時も浅いらしいんだよね、知らないけど。
「でも父さんが『コンバイン』と言ってる以上、そこには何か意味がある筈よ。何かが」
ただ一人、最初から真剣に農業ゴーレム模型を見つめていたティゼル様が、そこで誰へともなく呟いた。そこでまた「う~む」と集った皆が悩み始め、つまりはまた最初からやり直し。
どうも苦手だなぁ、こう言った真面目な雰囲気。もう1時間近く、こんな検討会がウチこと学園トライン邸の地下研究ラボで続いてる。皆の眼の前には、この農業用ゴーレム。
考え過ぎかなぁ? でも村長がポツンと呟いた一言が意外に鍵だった事って、よくあるよね。
七転八倒(主に「常在戦場の危機意識からやっぱりアレモコレモと戻すウルザ様」vs「イザとなったら母を呼ぶで全返しのトラインちゃん」vs「どーでもいーよとティゼル様」vs「ほらマアちゃんも困ってるからと外面優しいアルフレート様」で地下武装ストッカーの改廃を巡る攻防戦)の末に片付いた地下ラボに先ず搬入されたのが、この開発中だった農業ゴーレム。大樹の村に居た頃から開発を続けてたんで王都へ向かう際でも手放し難かったし、村長も魔王様も「できれば開発を続けてくれ」と言っていたので、この学園トライン邸の地下ラボで研究と開発を続ける事にしたんだ。アルフレート様が割合と広めに武器庫もとい地下ラボを作ってくれてたのが幸い。
「最初から検討し直してみましょう。これは農業ゴーレムで間違いないのですね?」
「はい、その見方で間違いないです」
「で、収穫用に特化していると」
「一応、そのつもりです。開発目標は、だったんです。です、が……」
「今は違う、のかな?」
えーっとえーっと。そこんとこ、もう僕にも判んなくなってきてるんだよお。
改めてメットーラさんに問い直され、ウルザ様にツッコまれた通り、確かにこの農業ゴーレムは先ず収穫用を目指して作り始めたんだ。それは間違いない。だって大樹の村で一番忙しい時期は、年に3回ある収穫期だから。
何故に年間3回も収穫できるのか、それは村長でも解らない。
けれど春と夏の間、夏と秋の間にある収穫即植付の時期の多忙さって言ったら毎年何時もとんでもない。表方で実作業を取り仕切り働き詰めになるハイエルフや山エルフやリザードマンや天使族や一村の方々は勿論、裏方で収穫の計数と納税と配送の手配と差配をする一方で次期作付計画に沿った田起こし畝起こしから種や苗の手配と人手割り振りの差配を取り仕切る文官娘集な皆様の多忙っぷりと言ったらハンパじゃない。誰かが「こんなにブラックワークが続くんなら、そのうちトラックに撥ねられて異世界転生できるかも」とか言ってたくらい。
トラックって何だろう、それは誰にも解らない。
「今は違う、って、何処が?」
「ほら、村にあるコンバインつまり刈り入れ機ってクローラに載せたブレードを動かすタイプだろ? でもこれは、」
「流石に違いますねぇ、そもそも見るからに人形(ヒトガタ)ですし」
先の会話でその違いを問い直したアルフレート様にティゼル様が問うと、アルフレート様が大樹の村で使われているコンバインこと刈り入れ機を例に出して答え、それへ重ねてアースさんが指摘した。うんその通り、そこをツッコまれると流石に研究開発担当マアこと僕も反論できない。
「そもそも、なんでヒトガタにしたんだ?」
「そうそう、なんでなんで? カッコいいよ」
ほら、アサさんにもツッコまれちゃった。でもトラインちゃん、無理やり議論に参加しなくても良いんですよ。
仕方なく大人しく正直に答える。隠す理由も無いものね。
「始まりは、あの合体馬車だったんです」
えぇ?と言った怪訝な顔で僕を見ないで、みんな。僕だって良く解ってないんだから。
「最初は本当に収穫特化向けのゴーレムだったんです。だから最初は村で使っているコンバイン、あのクローラの上にブレードとコンベアとコンテナを積んでるアレの改造から始めたんです」
「それがどこをどーしたらこーなるのよ?」
「ティゼル様のお母様の所為ですよ」
重ねてツッコんできたティゼル様へそう返すと、えぇえ?と首まで傾げてティゼル様は怪訝な顔を返してくれた。うん、そんな顔がルー様に悩まされてるお母様とよく似ている、気もしないでもないです。なんて思いながらも正直に返答する。チームで動く技術者ですから、僕。
「収穫期に多忙を極めるのは主に人手が絶対的に足りないせいです。なので収穫機械の極力なまでの省人化、出来れば無人化が望ましいとされました。そのため今は複数人のチームが乗って動かしているコンバインことクローラを自動化して汎用化する為に、ティア様のゴーレム汎用OSをインストールしたんです」
そこまで聞いて、あー、と納得気味な顔を返してくれた皆。これで一発で判ってくれるあたり、この面子も技術センス高いな。
「ティア母さんのゴーレム汎用OSは長年ずっと研究と改良を重ね続けアップデートを繰り返してきただけ、出来が良くって頑丈で速くて汎用性高いもの」
「大樹の村で山エルフたちが作るゴーレムは、ほぼティア母さんのOSで動いてるものな」
「それだけティア様のゴーレム技術は並外れているのです。あのルー様がティア様に頼み込んでイフルス学園の魔導機学部制御学科ゼミ室へ導入してもらった程なのですから」
納得したウルザ様にアルフレート様が重ね、メットーラさんが締め括ってくれた。そうなんだよねぇ、サイズとかランタイムとかスパゲッティとかあちこち目を瞑れば、ティア様のゴーレム汎用OSは本当に出来と使い勝手が良いんだ。ただ、
「でも、お母様のゴーレム汎用OSはヒトガタ特化だもんねぇ」
「両腕でバランスを取る仕組みだから致し方なし、と言うのがティア様の何時もの言い訳ですな」
はあー、と溜め息をつきながらティゼル様が曰わった。でもそれフォローになってないですよアサさん。事実ですけど。
「ま、そんな理由だから後付けでも無理矢理でも腕とか付けなきゃならなかった、と?」
「カッコいいよ! 腕とか角とか盾とか」
で、深く考えないアースさんが浅くとも的確なツッコミを回してくれやがった。だから無理矢理にトークへ参加してくていいんですってばトラインちゃん。
「まぁそうです。尤も農業ゴーレムとして汎用化を目指した時点で収穫特化からは外れましたから五本指の手を持つ両腕を付けるのが決まりましたし、荒地開拓や森林開削も含めた時点でクローラを両脚に換えるのも決まりましたから、ティア様の汎用OSを導入するのはその時点で自明の理みたいになりました」
「え? なら問題ないじゃない。何時もの大樹の村ゴーレムでしょそれ」
「でも本当の問題はOSを採用してからの話なんです」
「えぇ? 母様のOSが問題、じゃなくて母様のOSから始まる問題なの?」
ますます解らない、と言った表情でティゼル様が首を傾げた。いーから話せと睨む表情が怖いですメットーラさん。
「ほら。ゴーレムの話とは別に動力源の話もあったじゃないですか。この農業ゴーレムは、その動力源のテストベッドも兼ねているんです」
「あ! あのゴーレム技術を使わない動力源のこと?」
「そうですトライン様。まぁゴーレムを動かすのにゴーレムな動力源を使わないってのも如何なのよ?とかルー様にもヤー様にもツッコまれましたけど、そこは試験機械あるあるですから」
「な、なんだかよくわかんない」
「で、その新動力源の制御もティア様のOSに任せましたらば」
「……もしかすると、その新動力源ごと大型化した、と?」
「その大型化した動力源ユニットを囲む形で両腕両脚を付けて汎用ゴーレムの形に仕上げましたらば」
「そりゃまー確かに、こうもなるわねぇ」
こくん、と首を縦に振って肯定する。ツッコんだは良いものの結局よくわかんないらしいトラインちゃんを除いて、他の皆はまーまー納得してくれたらしい。次々にツッコんでくれましたアルフレート様ウルザ様ティゼル様ありがとうございます。
と言っても、これでまだ話半分なんだけどね。
「ま、まぁヒトガタになった経緯は解ったとしよう。汎用化と自動化のため、そして動力源のためか」
「ねーねー、その動力源って蒸気? もしかして蒸気? それならおっきくなるよね」
アサさんが纏めてくれましたけど、トラインちゃんがナナメウエからツッコんでくれました。イタい所を。
「蒸気……って、あの? 何時までも魔石動力のゴーレム動力車じゃコストがペイしない、って五村の丘山麓を走らせる木道車両の動力に換えて使おうか、ってヨウコさんがシャシャートのミヨさんを巻き込んでドワーフ鍛冶街に発注かけた、ってんで五村のロク君がひぃひぃ言ってた、あの?」
「いえ、違います。いや蒸気動力の開発は今でも大樹の村の山エルフ技術局重機開発部と五村ドワーフ鍛冶技術試験所の連携で進んでますけど、この農業ゴーレムにはそれとは違う新動力源を使っています」
蒸気機関は頑丈で大型化がシンプル直線的で仕組みが解り易いから好評なんだけど、どうしても大出力化と大型化がリニアに関連するし上下左右に揺さぶる様な運転に弱いし、何より重い。機関のエネルギー源こと水缶も石炭庫も。ひたすら重い。軌道車両に使うのはともかく、ヒトガタゴーレムに使うのは、ちょっと。
「ならば何を使っているのですか?」
「魔石の魔力から等価交換されたクーロン力とマグネタイドです」
全然ピンと来ない顔で今度は全員が首を傾げた。やだトラインちゃん可愛い。
それはともかく、まぁこうなるわな。僕だって村長からこれを聞いた時には同じ顔をして首を傾げていたと思う。でも村長の解説へ最後まで付き合ったの僕だけだったし結局あの時。「マア、本当に解ったのか?」と村長が死屍累々な講義室を見渡しながら唯一の生き残りだった僕へ言ってくれたのが、今でもちょっと誇らしい。
「え? なんて? 等価交換って錬金術師? 兄さん解った?」
「ごめん、僕もサッパリ。大方また父さん用語だと思うんだけど」
「ごめんなさい、もう少し判りやすく言ってもらえる? クーなんとかとマグネなんとか、って?」
と即座にツッコんでくれるティゼル様アルフレート様ウルザ様。この御兄弟姉妹はホント頭の回転が速くて助かる。とは言え、
「それを話し始めますと、先ず『電気ってなぁに?』『どうして磁石は北と南を指すの?』から始めて実用超統一理論拡張概略まで話さねばなりませんから、かな~り時間が掛かりますが」
「電気って、あの? カミナリの? それと磁石って、村の子供が玩具に使ってるあの鉱石の?」
「そんな代物が、どうやって魔石から作られて、果ては動力源にまでなるのだ?」
「いえ待ちなさい。そんな所から話を始めて、私たちがそれを理解するまで、どれ程が掛かるのですか?」
僕の回答へアースさんが判りやすくツッコみアサさんが若干興味ある風に尋ね最後にメットーラさんが冷静に引き取ってくれた。あぁ良かった、でないと今から皆を本格的に死屍累々に落とし込まなきゃいけなくなる所だったから。だから僕は正直に答えた。
「そうですね、最低でも教科書3冊から6冊づつの後に進級テストを挟みながらな説明を6回りってトコですか。都合6-3-3-4-2-5なターンで」
「あぁ23分?」
「いえ23年くらいかと。最後の4-2-5な所は進みにくいですから下手するとプラス10年コースかもです」
ごがががががん!と派手な音が鳴り響いた。う~ん地下ラボのテーブルは重量物の試験台も兼ねてるから無垢の重量大理石の削り出し5トン岩塊なんで、そうやって頭を打ち付けると痛いですよみんな?
「そーじゃないでしょ! 何よそれ!? そんな訳わかんない動力源なんか使ってるの!?」
「ティゼルぅ声を抑えて。それは確かにティア母さんの汎用OSでも制御が難しいかもなぁ」
「ま、まぁ、恐ろしく難しく高度な技術の動力源が使われている事は解ったわ。いえ説明は結構よ」
「あれ? 諦めるんですか? ウルザ様」
「人には向き不向きがあるものよ、メットーラ。適材適所と父さんも何時も言ってるでしょう」
「流石ウルザ様。積極果断な即決、このアース感服仕りました」
「お勉強が始まらずに済んでホッとしてるだけだろうが。いやマーキュリー種と言えど知識のオフラインインストールは面倒極まるので解説は結構です」
最後のアサさんだけは「pdfをオンラインで送れ」と言いかねないかなと思ってたんでホッとした。が、まだまだ続きはあるんだもんなあ。
「じゃあ省力化と無人化に伴う両腕両脚と動力源、それから始まるティア母さんのゴーレム汎用OSの導入と大型化、までは納得したとしよう。してないけど。微塵も判んなかったけど」
「言わないでアルフレート。でないと話が進まないわ、タダでさえもう250行も使ってるのに。ではここまではヨシとしましょう。よくはないけど。仕方ないけど」
「ウルザ姉様、それじゃ現場猫です。村のライギエルたちに笑われてしまいます」
「いたいよぉメットーラぁ」
「トライン様までオデコ打つこと無かったんですのに」
「あー赤くなっちゃってまぁ。アサ、冷やしてやってくれ」
「自分が魔法を使えない土人形だからって私に回すな。あートライン様、氷魔法で冷しますからね」
えーっと、いいですか続き?
「再開しましょ。面倒くさくなる前に片付けるわよ断固。そーじゃなきゃ今晩の食事が不味くなっちゃう」
「ティゼルの言う通り。さてそうなると、父さんの『コンバイン』論点は寧ろ、今までの話とは無関係?」
「そうとは言い切れないんじゃない? とりあえず保留ぐらいにしておきましょう」
「となるとウルザ様。この農業ゴーレムには、まだまだ村長が引っ掛かりそうなポイントがあると?」
「えぇ。まだ肝心の話が出てないもの」
ウルザ様にツッコんだメットーラさんが「はて?」と首を傾げた。平常心を取り戻したウルザ様が注意深く話を戻した。
「最初に言ったわね、マア? 始まりは合体馬車だ、と」
そうだった!とウルザ様以外の全員が吃驚顔をして僕に向いた。あぁ漸くこの話が出来るのか。
「そうだった合体馬車だ。確かにマアは話をそう始めた。まだ出てきてないよな合体馬車とゴーレムの話」
「落ち着けアース。そこが肝要なのかもしれないのだからな」
姿勢を直したアースさんとアサさんが身を乗り出して尋ねてきた。さ、ここからが話の話、て奴だ。僕は山エルフの誇りにかけて真実を話そう。
「そうなんです。さてこの農業ゴーレム、見てもらった通り随分と大型化してます。ここまで大型化したヒトガタゴーレムは大樹の村でも珍しいかもです」
「大樹の村どころか魔王国いや大陸全土を見渡したって珍しいと思うぞ」
「カッコいいよね!」
ツッコミありがとうございますアサさん、フォローありがとうございますトラインちゃん。
「でも、ここまで大型化したヒトガタだと、かなり頻繁に困る事態が想定されました」
「大きければ大きいほど開拓や開墾には有利かと思われますが」
「そーそー。父様も村長浴場で良く『♪おーきいっコトはイーことだ~』って歌ってるもん」
「その話やめときません? ティア様やアン様やハクレン様とかは喜んでますけど、ルー様リア様ラスティ様あたりがムクれますから」
メットーラさんが混ぜっ返した所をティゼル様がズラした話を、何とかアースさんが戻してくれた。
「移動時、かな? この巨体が現場から現場へズシンズシン歩くとなると、ちょっとゾッとするよね」
で、アルフレート様から上手い具合にフォロー頂けた。感謝しますアルフレート様。
「はい。それでなくとも巨大ヒトガタゴーレムは威圧的ですし、移動跡に残る足跡も馬鹿にできません。それにもし事故でも起こして転倒でもしたら」
「……大惨事ね」
ぶるっ、と震え上がったウルザ様が漏らした一言が部屋の雰囲気を支配した。
「巨大で威圧的なゴーレムは、強大な軍事力として竜族にとって見逃せない存在です。出来れば解体をお勧めします」
そして冷徹にメットーラさんが言い放った。そうだったメットーラさんは竜族からの目付役としても学園にいるんだった。なので僕はあっさりそれを認めた。
「はい、何もかも皆さんが仰る通りです。なので、合体馬車なのです」
またピンと来ない顔で首を傾げた皆だったけど、すぐにアルフレート様が吃驚顔で言ってくれた。
「……まさか、このゴーレム……分離合体変形、するの?」
幾分、いや言葉の途中からかなりワクワクした顔で。
まさか!と言った吃驚顔で、先ずアルフレート様を振り返り、そして僕へ振り向き直る皆。さ、論より証拠の時間だ。
僕が手元のコンソールにコマンドを叩き込む。地下ラボの壁面に広がるスクリーンに分割表示されているステータスインジケータの一つが表示を切り替える。
“MODE:COMBINED” から “MODE:BATTLE-MACHINE”へと。
途端にゴーレム全体を稲光が包み込む。驚く皆だったけど、仕方ないんだ。だってこのゴーレム、巨大で重量級だからラッチやアームの噛み込みだけじゃ合体させたまま激しく腕脚を振り回して動きまくるなんて出来なかったんだ。
だから合体には新動力源からのパワーをそのまんま使ってる。クーロン力とマグネトロンを。
電気の力と、磁気の力を。
これを一纏めにして村長は 「 超 電 磁 力 」 と言っていたっけ。
で、この農業ゴーレムが移動用の各分割ゴーレムへ分離する際には、合体時に使っていた電磁気力をこうして開放する。それが空中に放散されると、こうして稲光と轟音になって拡散する訳だ。勿論、噛み込んでいたラッチやアームが外れる轟音も響き渡るから、今の地下ラボはかなり五月蝿い。
まぁ僕たち皆が集っているここ地下ラボの管制ルームの向こうに見えてる、農業ゴーレムの収容施設こと合体フォーム格納庫の中は、もっともっと五月蝿いに違いない。なんと平均2m厚の耐爆耐衝撃防音遮蔽壁と1.5m厚のアクリル透明窓越しでも、こんなに分離合体時の轟音が響くものなんだな。知らなかった。
唖然としてアクリル透明窓越しに見守る皆の前で、農業ゴーレムは幾つかに分離し、それぞれ変形してゆく。そりゃまあヒトガタゴーレムな各部の形のまんま移動しようとすると格好がキモいからね、少しは見栄え良いフォルムに纏まる様にしたんだ。だから分離と合体そして変形。必須必要でしょ?
首から別れた頭部は、顔面を機体下部に格納し垂直尾翼を立てて、ブレンデッドウィングなウェーブライダー形状に。
頭を切り離し胸下から胴体と別れた胸腕部は、両手を格納し肘から腕を折り畳みノズルを露出してステルス爆撃飛行形態に。
胸上を切り離し腰内へ入れ子だった両脚が抜けた胴体は、格納してあったクローラを露出して陸上走行形態に。
胴体にドッキングしていたコクピットを抜いた両脚は、その両脚を束ね足首を切り離しノズルを露出させ補助翼を展開し、空海中巡航形態に。
そして切り離された両足首は2つ纏めて合体し、クローラをそのままに陸上走行形態へ。なおフロントアンダーから露出するドリルブラストを使えば地中潜航も可能だ。勿論このドリルは合体ゴーレム時にもキックでの武器になる。
雷鳴轟く稲光を撒き散らし轟音を響かせながら分離した農業ゴーレムは、こうして五体の移動ゴーレムへと変形した。五体それぞれを支えていた巨大かつ強大なガントリーアームが、それぞれの機体をそれぞれの発進ゲートへ繋がるトンネルレールへ自動で移動させ、重量級複々線レールに乗った各移動ゴーレムはドーリーテーブルに載せられたまま各ゲートへのトンネルに吸い込まれていった。トンネルの先は当然、各ゴーレムが発進する緊急ゲート、村長命名のワンダバカタパルトへ繋がっている。
どうやら今回も順調に自動ゴーレム機械たちは動いてくれた模様だ。ティア様の汎用OSは確かに凄いが、大樹の村の山エルフ仲間たちが組み込む制御コマンド群も大したものだと感嘆する。いつもこうして僕ひとりでも、あの巨大な農業ゴーレムをメンテできてるし。
あの 「 ♪身長57m・体重550t 」 の巨大ゴーレムを。
アルフレート様が大き目に地下ラボを建造しておいてくれて、本当に助かったんだ。まぁ実際は合体済みな農業ゴーレムを立てて入れてもまだ余りある程に巨大な空間なんだけど。アルフレート様は事もなく「大樹の村の中庭にある地下倉庫ダンジョンの建築技術を使ったから手間いらずだったよ」と仰ってたけど、それに託け甘えて剣から槍から弓から矢から盾から鎧から充満済MATRIX式銃器棚から戦馬から戦闘馬車から簡易城塞から軍船から軍艦から巡洋艦から戦艦から空母から戦闘機から爆撃機から攻撃型空中母艦から宇宙戦艦からデス・スターから仕舞い込んでたウルザ様は流石にどうかと思ったけどね。にしても良くここから運び出せてアルフレート様邸の地下へ仕舞い直せたなぁデス・スターとか。どうやったんだろ?
そんな僕の思惑はともかく。唖然として全てを無言で見送っていた皆が、格納庫へ視線を貼り付けていた大窓からギギギと音がしそうな動きで首を回し、おもむろに僕を見た。やだなそんなに見たっておやつはまだですよ?
「な……なに? いまの?」
片言になってますよウルザ様。はいコレが農業ゴーレムです。ちょっと大きいですけど。分離合体変形しますけど。
「分離、変形……もしかして、これを逆にした合体、も?」
驚きはしてる様だけど、それ以上にワクワクが止まんねぇぜてな表情でアルフレート様が聞いてくる。その通りなんですけど、その変形合体が「空中で行われる」とか聞いたら、間違いなく「見せて見せて!つーか乗せて乗せて!!」が止まんねぇぜになるだろうなぁ。
「こ、こ、こここここ……こんなの作ってぇ! だいたい幾ら掛かってるのよこれぇ!!」
村の鶏かと思いましたよティゼル様。いやそんなに掛かっちゃいませんよ? 村の金倉だって3つも空けてませんし。
「3つ……となると、2つは空けた、と? 金貨だけでも、あの王城宝物庫に匹敵する収蔵量な、村の金倉、を?」
ま、まぁそうなるかもです、いやなりますなりましたメットーラ様。だからそんなに睨まないで、村長だってノリノリで使ってたんですから不可抗力ですよ。
「そこは只でさえ黒字過剰在庫気味な大樹の村のバランスシートを赤字寄りへ傾けた功績として認めるに如かずともですね、こぉんな巨大かつ強大かつ満艦飾な代物を、本気で農業ゴーレムだと言い張るつもりですか君は?」
アサさんも怖いですよぉ。でなければ何と言えば良いと? 軍事ゴーレムなんて言ったら竜族が総出で潰しに来ちゃいますよ。
「どーせ村に居た時にゃマーキュリー種のヨルも噛んでるんだろ? だったら武装の一つも着いてるよな?」
ふっふっふ、甘いです甘過ぎますアースさん。パンチだキックだチョップだ回し蹴りだなんてのも含めると40種類以上は軽くあります。中でも強力なのが腰に付いてる円盤型の武器ことバトルリターンを2つ合わせて撃つ超電磁ヨー……
「……でぇ? なにか言い訳はあるの??」
……だから怖いですってばウルザ様もティゼル様もメットーラさんも。なので聞いて下さい話の芯はここからなんですってば。
かぁっこいー! カッコいー! とぴょんこぴょんこ跳ねて喜んでるトラインちゃんだけが癒やしだなぁホント。
とは言え、流石に何か起死回生な決め手を言わねば、このまま吊し上げで煮られたり焼かれたり食われたりされてしまうのが、流石の僕だって判る。ならば言おう、いよいよのオチを。
「だから、これを見た時に村長が 『 コ ン バ イ ン 』 と言ったんです」
それまで烈火の如くな夜叉顔だった皆が、ぱちくり、と魂を抜かれた様な顔になった。おぉ決まった決まった良かった良かった。
「……え? 父さん、これを見た時に、それ言ったの?」
と信じられない様な表情で問うウルザ様。そうですその通りです、正しくはコレの変形合体を144分の1サイズな樹脂模型を使ったブンドドで見せた時なんですけどね。あ、あの模型ったら抜き差し無しで完全変形と合体分離が出来るものですから、その出来が良過ぎて売れて売れて転売屋が蔓延っちゃって社会問題にまでなっちゃいまして、今ではちょっと大きめの100分の1サイズとかなり大きめの60分の1サイズ、それとサイズ同じで内部構造まで精密に作り上げる模型も売り出してまして、それぞれ「高級階位」「達人階位」「完璧階位」「実級階位」と名付けまして、今度はもっと作りやすい「入門階位」も出そうかと、
「そんなのはいーから! でも後で教えなさいよ金型も回しなさいよ王都で売り出すからダルフォン商会の伝手で」
「やめとこうよティゼル、また、まだ、儲けるつもりなの? 幾ら貯め込んでると思ってるんだよ」
「兄さま甘ぁい。国家設立には兆単位どころか京単位な資本があったって足りゃしないんだから」
「そこは上手くやろうよ、父さんだって言ってるだろ『人は石垣なり』って」
「人は城 人は石垣 人は堀 情けは味方 仇は敵なり、ですね。抱える人材こそ大事なり、を唱えた名言です」
「でも村長が言ってましたよ? それを唱えた戦乱時代の名将は、騙すわ諮るわ謀るわな裏切り上等で条約破棄常套な付き合いを身内も含めた国内ばかりか周辺国とも繰り広げた挙げ句に、結局は御家滅亡したって話だって」
「そんな世知辛い話はともかくとして話を戻すぞ。村長は何の何処を見て『コンバイン』と言ったのだ?」
途端に商機へ逸ったティゼル様を諌めるアルフレート様だったけど、折角にメットーラさんがフォローを入れてくれたのにアースさんが台無しに。こう言った所が浅いと言われてるのかな? ともあれ話はアサさんが戻してくれた。ポカン顔で「ぼくわかんない」面を晒してないで、お話に参加しましょうよトラインちゃん。
「えーっとですね。正確には、この模型を使って各機を変形させて、こう、各機を合体させてヒトガタゴーレムへと変形させている、その最中ですね」
地下ラボ管制室のオブジェとして飾っておいた最初期金型の樹脂模型(市販品の量産型が市場を占める今となっちゃスーパープレミアのオク超高額落札査定な品)を取り外してきて、村長にデモした時と同じ様なブンドドをラボの卓上で皆に見せる僕。しまったな、山エルフの仲間には魔法コマンドの組み合わせで自動稼働するブロック樹脂玩具を使い、これの完全自動変形合体ポージングまでする40分の1疑似模型を作ってる奴も居たんだ。それ借りときゃ良かった、アレは僕も「おぉー(欲しい)」とか声あげちゃったもんな。
とは言え、これでも十分に皆へはアピールできた様だ。アルフレート様なんか「(ぅわー)」てな感じで模型に手を伸ばしてはウルザ様に睨まれて引っ込め「(でもー)」てな感じで模型に手を伸ばしてはティゼル様に睨まれて引っ込めしてるくらいだ。
まぁでも結局「何故に村長はコレを見て『コンバイン』と言ったのか?」は判らないんだけどね。
「つまりゴーレムの分離も変形も合体も、コンバインこと収穫機械を連想させる要素は無いわね」
「ですねウルザ様。となると、最早これは我々の考え損な草臥れ儲け、でしたかな?」
「アサ、貴方ねぇ、でもうーんう~んうむむむむ……うん、そうかもね。ごめんなさい、私の考え過ぎだったみたい」
「謝る事ないさ。ティゼルが深く考えてくれるから、僕たちは何時も助かってるんだから」
「アルフレート様の仰る通りです、ティゼル様。お気を取り戻し下さいな。お夕食にはティゼル様のお好きなコーヒープディングをお出ししますから」
「メットーラさん? それウチのショップのドルチェじゃないですか?」
「ぼくも好きだよ、アースのお店のおかし。美味しいよね」
「やーありがとうございますトライン様。癒やされますねぇトライン様にはホント」
そうですアースさん、トラインちゃんは皆の癒やしなんですから。
「あ、でも、」
と、ほっこりさせてくれていたトラインちゃんから不穏な台詞が。え、何事?
「どうしたのですか、トライン様?」
「うん。メットーラは知らないかもだけど、父さまが畑へ行く時なんかに偶に口ずさんでる歌があるんだ。そこに確か『こんばいん』って言葉が、あったようななかったような……」
初耳です。と言うか、村長が畑へ通う時に脇へ着いていた様な側仕えを務めた方なんて、此処には居ませんからね。メットーラさんは王都からの側仕え、アサさんも温泉管理人から王都勤務への転属、辛うじてアースさんが最も大樹の村の村長に近かったくらいですか。僕? もっぱら山エルフ居住区と研究棟との行き来だけでしたけど何か?
「でも俺が大樹の村で村長の側で暮らしていた頃は、まだミニサイズな土人形まるだしのボディだったからなぁ。そもそもその頃だって村長の側よりウルザ様の側にべったりだったし」
そうでしたそうでしたアースさん。土人形まんまじゃ歌なんか聞き取れませんよね耳とか無いですし。
「え? そんな歌とかあった? あたし知らないんだけど」
「赤ちゃんとかの頃ならともかく、そこそこ大きくなってからはティゼルったら父さんから離れて、ハクレン母さんやルー母さんから魔法を習ってばっかりだったものね。ティア母さんは攻撃魔法ばっかりだからって避けてて、ティア母さん寂しがってたよ」
「父さんも寂しがってた、かしら? でもそれはアルフレート貴方もそうよ。ガルドさんダガさん達の剣術訓練に入り浸ったり、ガットさん所の鍛冶場で刀剣類の鍛造現場に入り浸ったり、山エルフ製造工廠のゴーレム製造ラインで有人搭乗型ゴーレムの製作に夢中になってたり。まぁルー母さんがイフルス学園に入り浸りだったから丁度良かったのかもだけど」
「えーそれを言うならウルザ姉さまもそうじゃない? 大樹の村の子供達を纏め五村の街の子供達を纏めしてた時なんか、すっかり子供自治会の首長やっててスッキリ父さんからもハクレン母さんからも離れてたでしょ。ハクレン母さん寂しがってたよ?」
「それでヒイチロウが出来たんだから良いのよ問題なしよノーカンよ無事これ名馬よ」
「ぜ、前後関係、合ってるかなぁ?」
ご兄弟姉妹の仲が宜しい様で僥倖。にしても、となると村長の近くで村長から歌を聞いていたのは、実質トラインちゃんだけですか? よく村長の側へ着けましたね。
「ぼく、母様が父様の側付き当番だった時には、一緒に畑とか回ってたから」
「あぁ鬼人族メイドたちの当番ルーチンですか。え? アン様も村長当番やってたのですか? アレは辛い食事も片手間にしなきゃならん何よりトイレへ行く暇が無い、と或る鬼人族メイドが一コマ連載コミックエッセーを単行本コラムへ載せてましたが」
「そう言うメタなネタはともかくアサさん、アン母さんが村長の1日側仕えが出来る機会を逃すとでも?」
「……失敬。浅慮を恥じ入るばかりです。これではアースを笑えませんな」
「ねぇイチイチ俺を引き合いに出すの、やめない?」
そんなジャレアイは置いといて、トラインちゃん。それで村長の歌、とは?
「うーんとね、えーっとね、う~んう~ん…… 確か、こんな歌だと覚えてるんだけど」
と前置きしてトラインちゃんが歌ってくれました。ああ、確かに「こんばいん」なる単語が出てきます。しかも農業従事者向けらしい歌です。ちょっと珍しい音階メロディとリズムですが、これは応援歌でしょうか?
「ワンフレーズにも満たないじゃない。これを父さんが歌ってたの?」
「うんティゼル姉さま。この後なんか続くらしいんだけど、父さまは知らないんだって」
「知らない単語が出てきたなぁ。歌始めのは掛け声かな? “超電磁”はさっきのマアの話のアレだろうけど、“ロボ”って何? それと最後の、何かの名前は……」
「それは、アル兄さま、ぼくも知らない」
「確か村長がクロを名付けする時に、そんな名前が候補に挙がってた様な? その歌が元ネタかしら?」
「ウルザ姉さま、それ何年前の話? だいたいウルザ姉さまだって、その頃の父さんなんか知らないでしょ」
ほのぼのした兄弟姉妹の会話が続く。癒やされるわぁホント、トラインちゃんには。
が、そこを中断せしむる一陣の風。具体的にはメットーラさんの冷徹な御指摘。
「待って下さい。そうなると、その歌は村長の原初記憶からある歌、と言う事ですか?」
はっ!としてフリーズし真剣な表情へと一変する皆。え? そんなに大事な予感?
「えぇ? となると大事ですよメットーラさん。村長の謎起源を探る手掛かりになる鍵、って事じゃないですか」
「待てアース、早まるな。それをこの歌から探れば、もしかしたら逆に取り返しがつかない事態すら招きかねない」
「え、アサ? それってどういう事かな?」
「簡単ですよアルフレート様。この歌には既に“超電磁”なる単語が表れているのです。他にも不明な単語も山ほども」
「待ってアサ! と言う事は、今こうやってマアがようやっと実用化した“超電磁”な新動力源とかゴーレムとかを、村長の謎故郷はとっくに実用化しているって言うの? 村長が“死の森”に現れた以前の、20年近くも昔に!?」
「その通りですティゼル様。しかも相当にポピュラーな形で、でしょう。理由は簡単、この歌が明らかに子供向けだからです。そんな歌の中ですら歌われている“超電磁”技術、きっと村長の謎故郷では子供ですら良く識る技術なのでしょう。だからこうして高らかに子供向けな応援歌として歌われていて、歌中での子供向け解説すら要らない程に子供にも馴染みが既に十分ある技術な事が伺われます」
「父さんの謎技術や謎知識は、ひょっとしたら魔王国いや大陸の技術より数百年は進んでるんじゃないか、と疑われた事もあったわね。それが父さんの鼻歌一つからも読み取れた、そういう事なのアサ?」
「仰る通りですウルザ様。だからこそ、私は怖いのです。村長の歌を、そして“超電磁”技術を歌から探る事を」
ぞッ、としない顔で俯くアサさん、そして愕然とした表情でフリーズする皆。トラインちゃんだけは「なになにどゆこと?」とキョロキョロしてる可愛い、んだけどそんな雰囲気じゃないよね今。
「……ひとまず、歌の中身を精査する事は保留します。棚上げのまま、ルー母さんティア母さん達に任せましょう」
「ウルザ様、竜族へも一報入れて宜しいでしょうか? 今のアサの意見も添えてドース様へ直接送りたいのですが」
「竜族への対応はメットーラ貴方に任せます。但し父さんへ余計な手が伸びないよう細心にも細心の留意を」
「姉さま、魔王のオジさんには?」
「そっちはティゼル、貴方にお願い。出来ればビーゼルさん達の四天王が一緒に集まってる機会が良いわ。王城の定例会議は何時かしら?」
「任せて、適当に予定を押し込むから。アル兄、防諜対策よろしくね」
「わかった。アサ、手伝ってくれるかな。王城と学園に配備済みのジャミングドローンを密にしたい」
「アースと一緒に重ね直します。明日のカフェ営業は休みだな」
「いやアサ、下手に不定期休みなんか入れて逆に探られるのも拙いぞ。エルフたちに任せて通常営業させるさ、数日くらいなら大丈夫だろう」
な、なんだか大事になってきちゃったカモ? そんなつもりで作ったんじゃないんだけどなぁ農業ゴーレム、つか超電磁ロボ。あ、カッコ良いかも“超電磁ロボ”なネーミング。
「メモします。トライン様、もう一度、歌って貰えますか?」
「う、うんわかった」
そしてトラインちゃんの可愛らしい歌声が地下ラボの管制室に流れた。じ、と皆が聞き入ってる。真剣に。とても真剣に。
♪ ぶい、ぶい、ぶい びくとりーぃ
♪ こーん ばいーん いち、にぃ、さんっ
♪ しーごーと のらしごとー
♪ だいちをたがやす ちょーでんじ ろぼー
♪ のうかのみかただ こーんばとらー ぶぃー ……
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【出典】成井紀郎「ゴーゴー悟空」 アベンジャーズ系アニパロの原初にして起源だと思われます 師の前作も含めて
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
キアービット「私、台詞、1個だけ……?」
すまん。正直、すっかり途中から忘れてたw あれかな? やっぱりキーちゃんには歳相応になるまで隠棲していて欲しいのかな俺??
- 投稿者: 1946年連載開始 全集第129巻
- 2023年 09月29日 23時20分
エピソード815
[良い点]
大樹の村での自分の立ち位置に劣等感を持っていたマアが聞いたら喜ぶんじゃないかな?
[気になる点]
トラインだって村長の実子なんだからマアの対応に若干の違和感があるんですよね・・・
母親であるアンの教育方針が原因なのかな?
大樹の村での自分の立ち位置に劣等感を持っていたマアが聞いたら喜ぶんじゃないかな?
[気になる点]
トラインだって村長の実子なんだからマアの対応に若干の違和感があるんですよね・・・
母親であるアンの教育方針が原因なのかな?
- 投稿者: 焼肉大好き男
- 2023年 09月29日 21時55分
エピソード815
[気になる点]
山エルフだから、ヤーとマアなのか。ふむ。
キーちゃんと決闘に及ぶのか、拗らせショタ同士で共闘するのか。
トラインのことだからまとめて袖にしたりはしないと思うけど。
アルフレートたちと村長の妻たちは「さま」。
偉いが縁遠いビーゼルたち高官は「さん」。
天使族の首脳で村長の側近でもあるキアービットやマルビットも「さん」、メットーラたち同僚も「さん」。
魔王は「魔王」と地位の呼び捨て。
そんでもってトライン「ちゃん」……。
マアの考える格付けと愛情表現、なかなかに興味深い。
[一言]
マアは僕っ子なので、何とは無しにMachicoちゃんの声でこの回の語りが聞こえてきた。
でもよく考えたら、Machicoちゃんは既にセナ役でアニメ版に出てるんだよな……。
脳内キャスティングを変更しなきゃ。
山エルフだから、ヤーとマアなのか。ふむ。
キーちゃんと決闘に及ぶのか、拗らせショタ同士で共闘するのか。
トラインのことだからまとめて袖にしたりはしないと思うけど。
アルフレートたちと村長の妻たちは「さま」。
偉いが縁遠いビーゼルたち高官は「さん」。
天使族の首脳で村長の側近でもあるキアービットやマルビットも「さん」、メットーラたち同僚も「さん」。
魔王は「魔王」と地位の呼び捨て。
そんでもってトライン「ちゃん」……。
マアの考える格付けと愛情表現、なかなかに興味深い。
[一言]
マアは僕っ子なので、何とは無しにMachicoちゃんの声でこの回の語りが聞こえてきた。
でもよく考えたら、Machicoちゃんは既にセナ役でアニメ版に出てるんだよな……。
脳内キャスティングを変更しなきゃ。
エピソード815
[一言]
あー、耕すのは村長の仕事だから、トラクターより前にコンバインの発想になるのかなあ?
あー、耕すのは村長の仕事だから、トラクターより前にコンバインの発想になるのかなあ?
エピソード815
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