感想一覧

[一言]
　数学エッセイを探していてたどり着きました。ネタ（発想）はおもしろいと思うのですが、1 = 9⁰や2 = log[√9](9)などといったやり方は、料理の仕方としてあまり美しくないような気がします……。

　作者さんは「9⁰（1）を表すために四則演算の記号がいちいち登場するようでは」とか「いちいち四則演算の記号が出てくることの面倒臭さ」とかおっしゃいますが、それならlogやルートやmodが出てくるのは四則演算よりもマシだと考えていらっしゃるのですか？
　そもそも累乗というのは掛け算から導出される概念であり（掛け算が足し算から出てくるのと同じです）、累乗を使うというのは四則演算を前提していることになります。modも言うまでもなく割り算から出てくる概念です。
　５の表し方などもってのほかで、AVERAGEと書けば隠れたように見えますがこれは結局足し算と２で割る割り算を勝手に使っていますよね。言ってみればここでは、四則演算を見せかけ上回避するために、四則演算よりさらに複雑な概念を使ってしまっています。
　そういう意味では、9⁰などより9/9のほうがよほどプリミティブ（原始的、シンプルであって勝手に使う前提が少ないということ）であり適切で美しいと言えます。

　もっと悪いのは10を9⁰0、91を99⁰などと書いている部分です。見かけ上1や2という「文字」を使わないということに汲々としすぎていて本質を見失っています。
　ここでは十進の位取り記数法が暗黙の前提とされていますから、99⁰で「91」を表せるのは9×10＋9⁰のおかげであることが忘れられています。つまり断りなく「10」が使われてしまっています。
　やるべきことは1〜8という「文字」を隠すことではなく、1〜8がちゃんと0と9だけで表せたならばそれは土台とした上で安心して1〜8を使ってもいいのです。
　そしてネタを一貫させるのであれば、10以上もちゃんとこの方針で表さなければならないのではないでしょうか。

[良い点]
マジで実用書として役立ちませんね（褒め言葉）
それでいてきちんと説明できている辺り、感服いたします。
[一言]
読んでいたら何やら乾いた笑いが出てきました。何か血迷って元ネタの方を書いた黒羽です。
まとめと解説を見るとなぜだか理解できる、素晴らしい（）実用書だと思います。