感想

[良い点]
SSでお悩みの様なので。
では、此処で一発ネタおば(笑)
(鬱陶しかったら消してくださいね♪)
[一言]
●ルーシィさんの異世界単訪●本日の単訪先は!!『いねむりひめとおにいさま【プロット版】』だにゃ♪

「ほぉほぉ、此処が最近、この世界では『いねむりひめ』と言う童話が話題に成っているみたいだニャ……こりはこりは、なんだか、この街からは商売の良い匂いがするニャ』

そう言いながらソフトケースを持った大柄な銀髪の少女は。
ギッシリと予定が書きこまれて真っ黒に成っているスケジュール帳を、妙に納得しながらパタンっと閉じた。

なにか思い付いたのかして。
その口元には、なんとも言えない様な不敵な笑みをニヤリと浮かべて……

***

 そんな彼女が、街に入ってから最初にやって来たのは、矢張り書店。
……っと言うよりは『いねむりひめ』の童話を単独販売を行っている『ダ・コスタ商会』だった。

当然、店内に入ってからは、目的の商品である『いねむりひめ』の本をイノ一番に手にするのだが。
目的の商品を手に入れた割には、直ぐにそれを買って店からは出る事はせずに、慌てた様子もなく店内を物色し始める。


そんなのんびりとした感じで店内を一周しながら、銀髪の少女は店内にある商品を1つ1つ丁寧にチェックしていく。


『なるほどね。商人の元締めと言われているだけの事はあって、この店は良い品揃えだニャ♪……それに店内で面白い物を見付けたニャ』

少女は、再びニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
いや、これは既に、不敵な笑みと言うよりは『邪悪な笑み』と言った方が良いのかもしれない様な笑みだ。


彼女が、この笑みを浮かべると言う事は、明らかにロクデモナイ事を思い付いたに違いない。

そんな邪悪な笑みを一瞬だけ浮かべた後、直ぐに普段の表情に戻り。
最初に手にした『いねむりひめの本』と、なにやら店内で見付けた『面白い物』を手にして清算を済ます。


そして、その後は、何事も無かった様に店から出て行く。


***

 外に出た銀髪の少女は、街中をチェックする様にキョロキョロしながら歩いている。

それ自体に、特に変わった様子はないのだが。
お目当ての店があるのかして、時折、例の黒い手帳を出しながら、そこやかしこの店舗に入り。

中に居た店員と『なにやら話』をして、その都度メモを取りながら、話を聞き終わったら、ご機嫌な様子で外に出て行く。

こんな調子で、何件も店を回りながら話をし、その度に、彼女の機嫌は良く成っていく。


どうやら、この様子からして、なにやら自分の思惑通りに話が進んでいるのだろう。


しかし、そんな風に街中で奇妙な行動を繰り返している彼女なのだが、一体、何を話していたのだろうか?


その答えの一旦は『黒い手帳』の中に書かれていた。

そして、その書かれている内容と言うのは……
『活版技術とその相場』『色々な紙の相場』『布団屋で聞いた商品の相場』『色紙の値段』『細工物の値段』
それらの値段や相場が、事細かにキッチリと書き込まれていた。


「まぁ、今の所は、こんなもんで良いかね」

そう言いながら、例の黒手帳を閉じて、今度はとある酒場に入っていく。


時間は、ランチタイムを少しを回ったぐらいだ。


『カランコロン』

酒場に、来客を知らせる鈴の音が鳴り響いた。


「ごめんよぉ~~~。まだ店はやっとるのかね?」
「やってるよ。お昼ご飯かい?」
「うんにゃ、ちゃうよ。あちしは、今からお酒が飲みたいのさ」
「若い娘が、こんな時間からかい?」
「そそ」

そう言いながら、ソフトケースをカウンターの横に置いて。
アッケラカンとした態度のまま。
この時間から酒を飲むのが、さも当たり前の様な顔をしながらカウンターに腰を掛ける。

銀髪の少女のこのふてぶてしい態度に、店主であるマルガは、なんとも言えない様な違和感を感じるが。
不審に思いながらも、オーダーを取る事にした。


「こんな時間からお酒とは、あんまり関心はしないけど……なににするね?」
「とりま、この店で一番良いワインを一本と、宛は適当に。ただ、宛はそんなにいらないニャ」

エール(ビール)を頼むならまだしも。
銀髪の少女は、平然とした顔で、少々値の張るワインをボトルで注文してきた。

しかも、店で一番高いワインをだ。


これにより、マルガの不信感は溜まっていく一方だ。


「そっ、そうかい。……けど、アンタ、うちの一番高いワインを頼むようなお金は持ってるのかい?」
「あるよ。なんなら、先払いにしよっか?」

マルガの一抹の不安を感じ取ったのか。
銀髪の少女は革性の財布から金貨1枚を取り出し、なんの躊躇もなく店主に渡す。


「えっ?」
「なんじゃね?」
「なんだいなんだい?豪く羽振りが良いんだね。あんた、貴族の娘さんなのかい?」
「ちゃうよ。あちしは、通りすがりの吟遊詩人だニャ」
「そっ、そうかい」

普段は、余り動揺をする事のないマルガだったが。
この奇妙な少女のおかしな態度や言動には、どこかついて行けない物があった。


それはまるで、彼女の持つ、独特の変なペースに引き込まれていく様だった。


「まぁまぁ、そんな事はどうでも良いじゃニャいの。取り敢えず、お酒をおくれ」
「そっ、そうさね」

お金を頂いた以上、どんなに変わった人間でもお客には変わらない。
なんとも奇妙な感覚を持ったままマルガは、銀髪の少女にワインと、お酒の宛を出す事にした。

その間に、銀髪の少女は『いねむりひめの本』をカバンから取り出し、どうやら読み耽っているようだ。

そんな少女の姿が目に入ったマルガは。
元この店の従業員で、現『いねむりひめの絵師』であるユーリアの事を思い出し、銀髪の少女に声を掛けた。


「はい。ワインと宛だよ」
「あんがと、お姉さん」
「お姉さんって……それにしても、あんた」
「ほぇ?」
「昼間からワインとかを飲む割には、可愛い物を読むんだね」
「まぁねぇ。ってか、これ、面白いからね」
「そうかい。だったら、その絵本の挿絵を書いてるのが、うちの元従業員だって、少しは自慢出来そうさね」
「そうなの?おぉ……それは凄いねぇ♪」

感嘆の声を上げているが。
心の中では、明らかに知っていると言わんばかりの表情を浮かべている。

どうやら彼女は、マルガから、この言葉を引き出す為に、わざとこの店に立ち寄ったらしい。

なにか企みがあるようだ。

***

 この後、銀髪の少女は『それなら。こんな良い絵を描ける絵師ならば、是非、一度会ってお祝いをしたい』と言い出し。
夕方ぐらいには、言葉巧みに『絵師であるユーリア』をこの場に呼び出し、ユーリアを褒めちぎった上で、お祝いと称し大盤振る舞い。

更に、その後、店に来たお客たちにも大盤振る舞いをして、ユーリアのお祝いを大人数で敢行した。
当然の如く、客の口々からは、ユーリアを称える称賛の声が上がり続けていた。


ただユーリアは、何故、見知らぬ人間が、此処まで盛大にお祝いしてくれるのかが解らずに。
いつもの様に、はわわな状態に成りながらも、その理由を銀髪の少女に尋ねたのだが……

銀髪の少女は笑顔で、キッチリとした理由も明かさないまま、上手くはぐらかすだけに留まっていた。

ただその際に、お祝いのお礼としてユーリアには、色紙を10枚ほど『絵付き』で書いて貰っていた。


そして、夜半過ぎまで、そのどんちゃん騒ぎは続き。
みんながお酒で良い感じに仕上がったぐらいに、銀髪の少女は勘定を済ませて店を後にして行った。


そして、店を去り際に一言……


「ニャハハ♪この程度のお金で、情報操作が出来て、情報も得れるとは安いもんじゃのぉ」

矢張り、このお祝にも、なにか裏があるようだ。

***

 さて、そんな一日を、この町で過ごした銀髪の少女だったが。
翌朝早くには、色々な準備を整えてから来たのかして、大きな風呂敷を背中に背負って、ある商店の前に立っていた。

その商店の名は『ダ・コスタ商店』

再び、この大型商店の前に姿を現していた。


そしてオープンと同時に『100%なにかをやらかしそうな雰囲気を醸し出し』ながら店内に入っていく。

勿論、その予想に反する事なく……彼女はやらかす。


「ちょいちょい、そこの店員のお兄さんや」
「えっ?あぁはい、なんでしょうか?」
「此処の店は買取もやっとるのかね?」
「あぁはい。商品にもよりますが、当方、買取はしておりますよ」
「そか」
「そちらの大きな荷物が、本日の買取商品でしょうか?」
「うんにゃ、ちゃうよ」
「違うのですか?では、なにを売りたいと?」
「アイデア」
「はい?」

国内でも有数の大商店の中で銀髪の少女は、誰もが耳を疑う様な言葉を発してきた。

彼女は、なんの躊躇もなく。
この大店に『自分のアイデアを売りに来た』と言った。


ふてぶてしい態度にも程がある。
それに、失礼にも程がある言動だ。

国内で誰もが知っている様な大商店の店内で『自分のアイデアを売ってやるから買え』と堂々と言ってのけたのだから、これ以上の失礼な話はない。
しかも、大人びた雰囲気を持っているとは言え、ただの少女がだ。


「わからんのかね?あちしのアイデアを売ってあげる、って言ってんの」
「そんなご冗談を辞めて頂けませんか?」
「なんでじゃ?」
「失礼ですが、貴方の様な年端も行かぬ方にアイデアを売って頂く程、当方は商品戦略に於けるアイデアが枯渇しておりません。ですから、どうぞ、そのままお引き取りください」
「はぁ……この兄ちゃんアホだ。話にも成らないや」

完全に喧嘩を売っている。

勿論、大の大人が子供に、こんな事を言われて黙っていられる訳がない。


「なんですって?今、なんとおっしゃいましたか?」
「聞こえなかったのかね?お兄ちゃんアホなの?って言ったの」
「無礼な。いい加減にして下さいよ……」
「いい加減にするのは、お兄ちゃん方でしょ。お兄ちゃんは、商売の事がなにも解ってない」
「なにがですか?この状態で、私の、なにが解っていないと言うのですか?」
「あんねぇ。此処のお店は、そんな子供から見ても解る様な儲けの少ない商売の仕方をしてるから、あちしはアイデアを持ってきてあげたの。そんな事もわからんのかね?」
「なっ!!」
「それにさぁ。概要も何も聞かずに、ただ追い返そうとするだけなんて、こんなの本格的に商売の素人としか思えないよ。馬鹿じゃないの?」
「馬鹿は貴方ですよ。第一、そんな子供の意見なんて、誰がいちいち時間を割いてまで聞くんですか!!」

この意見は正論だとは思われる。

彼の言う通り、商売している大人が、子供の意見なんて聞くはずもなく。
また、普通の子供は、大の大人相手に向かって、こんな事は口が裂けても言わないのも事実。

この意見自体は、本当に何も間違ってはいない。


だが、正論だからと言って、それが必ず正しいとは限らない。

何故なら、彼女は、彼にこうハッキリとこう言っているからだ。
『子供から見ても解る様な儲けの少ない商売の仕方をしてる』と。

その言葉が子供から出ると言う事は、この大店自身に、なんかしろ致命的な欠点があると言う証拠。

それを堂々と……しかも、国内では誰もが知っている様な大店で言って来た。

だから、この時点でこの少女を注意深く観察して、この銀髪の少女が異常な存在だと、商人なら気付くべき所ではあった。


早い話、本当の儲け話を出来る人間と言うのは、一般論なんて無視して話が出来る『どこか螺子が吹き飛んでる』と言う事だ。


こう言う所の判別を出来る嗅覚に優れていないと、商人なんてやってはいけない。
故に『コイツには、なにかある』と相手に奇妙な違和感を感じた時点で、最低限は話だけでも聞くべきなのだ。


それにもし、その話が、ただの与太話であったのならば、それこそ放り出してしまえばいいだけの話なのだから。


「いや、子供に時間を割く処か、無駄な口論に時間を割いてると思うんじゃけど?それがお兄ちゃんの言う大人の対応なのかね?」
「また、そんな屁理屈を……」
「あっそ。今の話すら、そう言う風にとっちゃうんんだ。なら、もぉいいや。ホント、このお兄ちゃんじゃ話にも成んないや」
「この……店内だからって好い気になって。子供に用は有りません!!さっさと出て行って下さい!!」
「あっそ。んじゃあサラバじゃ」

そんな店員の言葉を聞いた銀髪の少女は、呆れ顔で店を出て行こうとする。


だが、そこに……


「なんだか騒がしいと思って降りてきたが、どうやら面白い来客が来られてるみたいだね。そこの君。そのお嬢さんは、誰だ?」
「イグナーツ会長……御屋形様」
「(ほぉほぉ。こりはまた、トンデモナイ大物が出て来たもんだニャ(にやり))」

銀髪の少女は、心の奥底からほくそ笑んだ。

この様子からして、この騒ぎは故意的に起こしたものだとハッキリわかる。


彼女は店で騒いで、彼の登場を狙っていたのであろう。

何処までも、ふてぶてしい女だ。


「お初にお目に掛かります。わたくし旅の行商をしながら、吟遊詩人をしております仲居間ルーシィと申します。以後お見知りおきを」
「なっ!!」

取って代わった様な態度。

その態度に、対応していた店員は呆気に取られるが。
ルーシィと名乗った女は、その店員を完全に無視した状態で、御屋形様に挨拶をした。


「ほぉ。この状況で、自ら挨拶をして来るとは、中々肝の据わったお嬢さんだ」
「恐縮です」
「して、そのルーシィ嬢は、当方に、どの様なご用件で?」
「細やかではございますが。御社の商品ラインナップについてのプレゼンテーションしたいと存じます」
「商品ラインナップとは、また。……それに付随する根拠は、なにかあっての事ですか?」
「勿論です。キッチリとリサーチをした上での、プレゼンテーションをしたいと思っておりますので」
「そうですか。では、上の階の応接間でお話を聞きしましょう」
「ありがとうございます」
「なっ!!」

ルーシィと言う少女に、なにか感じるものがあったのかして、イグナーツ会長は話を聞くと言い出した。

これは、先程言った『商人としての直感』と言う物が働いたのかもしれない。
商人と言う物は、兎に角、儲ける事に関しては矢鱈と鼻が利く。


だがそれだけに、特にルーシィになにも感じなかった店員には、おかしな光景に見えただろう。
その証拠に彼は、会長の言葉に「なっ!!」と言う声を上げている。

これが商人としての差と言う物なのだろう。


「但し」
「ただし?」
「商人が時間を割いてまで話を聞く以上、なんのメリットも無かったでは済みませんよ。時間の賠償はして頂きますよ」
「その辺は、よく心得ております」
「ハハハハハ……本当に肝の据わったお嬢さんだ」

***

 さて、そんな感じで、上の階の応接間に通されたルーシィなのですが。
応接間に入ってから直ぐに、プレゼンテーションを開始して、お茶を飲むとかの無駄な時間を一切使わなかった。

この辺は、相手方の忙しさを十分に熟知しての事だろう。


そしてそんな中、彼女は次々と資料を出しながら、商品の提案をしていく。

内容は、こんな感じのものだ。


①【簡易版「いねむりひめ」の作成】
童話の掛かれた本とは言え、この世界では本は高級品。
一般的な家庭では、早々に手が出せる商品ではない。

なので此処で、安い【わら半紙】を使ったもので簡易版のいねむりひめを作り、一般人の浸透率を上げると言う提案をした。

この情報については、昨日、酒場で得た情報の中に『話題には成っているが【子供に買ってやれない】』と言う、一般的な家庭の意見を聞いての発想である。
(ルーシィ本人は、元より、そのつもりではあったが、より解り易くする為に、この説明を加えた)


②【いねむりひめ愛用のクッションのレプリカ】
これについては【通信販売】による受注発注のみで販売する予定だが。
人間と言うのは、人気があるものに対して『その作者と同じものが欲しい』と言う欲求が出て来る可能性がある為、前以て企画の準備品としてのプレゼンテーションした。

当然、どれぐらいのコストが掛かって、どれぐらいの利益を生むのかは調査済みである。
(昨日、街をウロウロしながら描いていた黒手帳を参照)


③【黒髪ポニーテールの猫がクッションで寝ている小物】
このデザインについては④でも語らせて頂きますが。
タイトルが『いねむりひめ』である為に。
クッションで寝ると言うイメージが定着しており、その姿が【猫】を連想させる為に、このイメージで考案された商品だと思われる。

生産ルートに関しては、昨日街歩いて時に既に確保済みで、コチラは【通信販売】【店舗販売】の両方で行うのが良いのではないかと提案されている。


④【通信販売で『いねむりひめグッズを購入された方』へのユーリアのイラスト付きサイン色紙を抽選でプレゼント】
これも昨晩、ルーシィがユーリアに書かせたイラスト付きサイン色紙の事なのだが。
このサイン色紙のイラストの半分は、③の商品をイメージしたイラストが描き込まれており。

これにより、③のイメージの浸透度を上げようと言う作戦の様だ。


「……っと言う様な商品展開が『いねむりひめ』には望ましいと思うのですが、如何でしょうか?」
「ふむ。ルーシィ嬢の商品展開と言うのは、こういう意味だったのですね」
「ですね」
「うむ。ですが、解らなくもない展開ではあるが。現状では、このアイデアに買い取る訳にはいきませんね」
「でしょうね。現状では、その意見が全うだと思います。商人が『取らぬ狸の皮算よ』では話にもなりませんもんね」

まるでそうなる事が解っていたように、自ら出した案をアッサリ却下する。


これは一体、どう言う事なのだろうか?


「では、どうして、わざわざこの様な提案を?」
「対応の問題ですね」
「対応とは?」
「大した話ではないのですが。今現在でも貴族の皆様の間では、人気がある童話として『いねむりひめ』のファンは多く存在しています。ならば此処で、更にイメージアップの戦略さえ行えば『いねむりひめの売り上げ』は、今以上に上昇するのではないですか?」
「まぁ確かにそうですね」
「では、そのイメージアップを図る為にも、②③④と言う様な戦略もあると言う事を念頭に置いておけば。御社が別の企画を打ち出す際にも、企画の基盤が作り易く、即座に実行にも移せる。なら、その基盤だけでも先にお伝えして置けば、後は【ダ・コスタ商店様】の方で色々考案して頂けるのではないかと考えております。それで、それこそが今回の私の狙い。要するに、今回、私は『いねむりひめの本』を売る為の基盤の話をしているだけに過ぎない訳ですね」

そぉ。
この意見からも解る様に、ルーシィは、自分のメリットなどと言う物は一切考えていなかった。

あの下の店で起こした店員と揉めた事ですら、この話を聞いて貰う為の布石でしかなかったと言う事だ。


「しかし、それでは、貴方のメリットが何処にもないのではないのですか?」
「えぇそうですね。なにもありませんね。ですが、そんなものは最初から求めていませんよ」
「では、なんの為に、此処まで『いねむりひめ』に固執されているのです?」

本当に謎である。


「いえ、そこに関しましても、そんなに大層な話ではないのですが。私は、いねむりひめの作者であるルドヴィカ様の【病気に屈せず、強く生きようと言う精神】が甚く気に入りましてね。そういう強い精神を世に広げる為には『いねむりひめ』はうってつけの作品だと思うのですよ。ですから今回は、無償でご協力させて頂いただけですよ。……理由なんて、その程度の話です」
「では、そこまで言い切られると言う事は、このアイデアの買取金額が0だと言っても、文句は言わないと言う事ですな」
「えぇ、勿論。そんな野暮な事は言いませんよ。でも……」
「でも?」
「もし、②③④の企画を遂行されて、上手くいったのなら。その売り上げから【簡易版のいねむりひめ】を作る事をお約束ください。報酬は、それだけで結構ですから」

結局、②③④も、商会に儲けさせて【簡易版・いねむりひめ】を作る為の布石でしかなかったと言う事である。

ルーシィは、それ程までに【ルドヴィカの強い精神】が気に入っている証拠でもあると考えられる。


「クッハハハハハハハ!!そこまで入れ込んおられるとは、実に面白い。良いでしょう。その契約には乗りましょう」
「そうですか。では、精々、貴族様達からタップリと搾り取って、その契約を果たしてくださいな」
「えぇ、是非、そうさせて頂きましょうかね。クククククッ……」
「二ヒヒヒヒ……」

2人は悪人面を惜しげもなく応接間で晒しながら、この短い会合は終わっていった。


「しかし、ルーシィ嬢。一部の人間しか知らない筈のいねむりひめの作者が、どうしてルドヴィカ嬢だと、ご存じだったのですか?」
「なになに、そこは単純な話ですよ」
「それは一体?」
「人間、お酒に酔ったら口が軽くなるものなんですよ」
「あぁ、そこですか」
「それに、相手が酔った時に収集した情報から分析しても、此処まで明確に病気を描写できる人間が、彼女しか該当者が居なかった。理由としては、そんな単純な理由ですよ」
「なるほど。直接聞いた訳ではなくても、分析で割り出せたと言う事ですか……末恐ろしいお嬢さんだ」
「にゃはは」

あの酒場での大盤振る舞いには、そんな理由があったらしい。

この若さで、なんとも恐ろしい事を考える女だ。


そして、この後。
【ダ・コスタ商会の様々な眠り姫グッズ展開】で、更にいねむりひめの人気が上がって行くのだが……

それはもぉ少し後の話である。


おちまい('ω')v
  • 投稿者: アホなゴブリン('ω')
  • 2019年 05月29日 23時24分
アホなゴブリン('ω') 様

遠路遥々お運びいただきまして、大変恐縮でございます。
ラーラでございます。
ご挨拶できまして嬉しゅうございます。

貴重なお話を感想にていただけまして本当に感謝致します。
皆様に読んでいただけるようにしたいと思います。

気に掛けていただきましたこと、書いている人より感謝が伝えられております。
そして私を含め作中人物一同、同じ思いです。

「いねむりひめとおにいさま」は今後も変わらずに参りますので、お近くにお越しの際は是非またお立ち寄り下さいませ。

この度は本当にありがとうございます。
重ねて感謝申し上げます。
↑ページトップへ