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大きな代償を払ってもらって生き返らされた令嬢の葛藤と、家族や周囲との人間関係の変化が素晴らしい! 人生で築き上げたもの全てよりも大事な存在への想いの行方は?

  • 投稿者: hyoasa   [2017年 04月 01日 16時 18分]
 若くして病に倒れた公爵家のお姫様。本人も受け入れた死が、数日後に覆されることで始まるお話。失われたはずの生を維持するために不可欠な条件のせいで、蘇った彼女の日々はそれ以前のものから一変しました。やがて周囲の人々は、そして本人は――。

 “生きている”、“死んでいる”とは、肉体の代謝の有無? 本人の実感や充足感の有無? 周りの期待に応え、課された役割を果たすか否か? 誰が決め、その判断は本当に正しい?

 魔術師の行動や結末に、読み手の賛否は分かれるかもしれませんが、シンプルなストーリーながら、世の理を逸脱した彼女を通して生と死の諸側面を見事にあぶり出した短編です。

 彼女は「本当に生きているのでしょうか」、「真に生きていると言えるのか」――作中の指摘に何度も読み返しては考え込みました。翻って、私自身はどうだろう、と。初めて読んでから二週間近く経っても、私を未だに「縫い止め」ています。
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