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明日咲く花の色を、彼女は知らない

 暗殺者として育てられたヒロインは、それ以外の生き方を知らない。咲き誇る白い薔薇に惹かれながらも、自分の流した血で穢れることが恐ろしくて、あこがれることしかできない。

 この作品を支えるのは、無垢さと残酷さである。ヒロインも、相手役も、敵対する者たちも、どこまでもまっすぐで、ゆがんでいる。

 はっきりいえば、粗はある。たとえば、幼王は最後までその無邪気さを貫いてほしかったと思うし、ふしぎな剣の存在は、この作品の良さを逆に削いでしまっていると思う。
 しかし、作者が見せる、白い薔薇の上に飛び散る血は美しい。この作者が次に咲かせる世界を、見てみたいと思わせると思う。

 明日咲く花の色は、誰にもわからないのだ。
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