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意外や意外、男が振るう武器は……

  • 投稿者: 退会済み   [2017年 10月 09日 12時 29分]
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 ファンタジーといえば戦士が欠かせない存在だが、そんな戦士が振るうものといえば大半が剣。歩兵も騎馬も剣か槍を握るもの。あるいは戦場で最も血を啜った弓矢だろうか。
 しかし本作の主人公が振るうのは戦斧である。
 長く続いた戦乱も平定され、軍人であったが故に活躍の場を奪われた男はある事件をきっかけに傭兵団を築き上げ、己の戦斧を掲げ再び戦いの渦へと身を投じる。

 すでに完結済みで、続きを待つことなく好きな時に好きなだけ、最後まで楽しむことができます。

「奴等を屠れ!」    ―――傭兵は死なず。

帝国兵フランシスは、終戦により職を失った。
次に生きる当てもない彼の手にあるのは、1本の斧だけ。
戦後の混乱うずまく世界で、男が選んだ第2の人生は―――

「俺はフランシス。傭兵だ。今回、徴兵を行いにきた」


この作品のテーマになる戦争は、軍事戦略。
ひとりの怪物めいた英雄が一騎当千するわけではない。
「フォーメーション」
「地形」
「待ち伏せ」
「おとり」
現実の武器、戦術のみで展開されるストーリーはまさに圧巻。
フランシス率いる傭兵団は次の戦いへ、次の次の戦いへ―――

  そこに現れた、少女。

   「参謀を――戦術家を、必要とはしていないか?」

その戦いに痛みはありますか?

砂塵舞う戦場、鉄と鉄のぶつかり合い、戦士たちの雄叫び。

そんな謳い文句が似合う、ゴツゴツした硬派な戦記ものです。
魔法はなく、斧や剣、弓矢といった旧時代の武器だけの、泥臭く、無骨な戦場は、読んでいて自分の中で何か熱いものが込み上げる気分になりました。

それ程のめり込ませる訳は、この作品は戦いの中での「痛み」をしっかり表現できているからです。
情景の丁寧な描写に加えて、リアルな痛みの表現が、戦士の息づかいを感じるほどの臨場感を産み出しています。

薄ぺらい戦いじゃ満足できない人、泥臭く激しくぶつかり合う戦いか好きな人はお薦めです。
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