イチオシレビュー一覧

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きらきらと舞い落ちる光は、希望と甘い毒に満ちている

蝶の生態は不可思議だ。蛹から羽化に至るまでの過程は今の最新技術をもってしても謎に包まれているらしい。そうであれば、人を宿主としてひっそりと育ち、やがて羽化を迎える蝶が存在したとしてもおかしくないのかもしれない。

どうしてもうまく息ができない。生きていることが苦しくてたまらない。当たり前の日常の中で、自身を受け入れられない主人公は、ただ美しい蝶の糧となることを乞い願う。彼女だけでなく、社会からはみ出た者たちは、それぞれの想いから蝶に手を伸ばす。

犠牲者の中身を食い尽くし、蛹のようなヒトの皮だけを残し飛び立つ蝶の群れ。言葉だけを見ればホラー映画のような生態にもかかわらず、その姿はひたすらに幻想的な光景なのだ。それこそが希望の光だと信じ込むほどに。

せわしない日常の中でふと空を見上げてみれば、そこにはかすかにきらめくものがある。そのうちのいくつかは、甘美な蝶の羽ばたきなのかもしれない。

虹色の死をあげる

  • 投稿者: 退会済み   [2017年 08月 13日 13時 24分]
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死とは美である。
もしもそんなことをいえば、多くの人が私を責めるでしょう。
でも私は言いたい。死とは美であると。

死を美しくするのは、その死にまつわるバッグラウンドだと思います。美談、悲恋、あるいは麗しい凶手。

そしてこの物語の場合は、蝶でした。

どこからともなく現れ、人々を内側から食べつくし、やがて大空へ舞ってゆく蝶たち。その翅がまく虹色の鱗粉は、人々の恐怖も苦しみも、憧れも、なにもかもを呑み込んで死へと浄化させる。

そうしてすべてを、美しくさせる。

どことなく頽廃的な文体と相まって、蝶のもたらす死がより美しく映える。そんな作品でした。

みなさまも、ぜひこの作品を読んで、虹色の死を味わってくださいませ。
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