イチオシレビュー一覧

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芋をくなさい(ください)

家には鰐がいる。
庭に鶏では無く、家にワニである。

しかも芋を食べる。
しかも、ちょっとしゃべり方が拙くて可愛かったりする。

そんなワニが、前世あなたの恋人でしたと家に来たら、無下になんて出来やしない。



大学生の私は、ワニに翻弄される。
ワニは私に翻弄される。

ワニ事情は私は知らないけれど、でも何だか翻弄されるのだ。

シリアスの皮をかぶって、なんだかほんわかワニ物語。


そうだ。
ワニの唐揚げ、意外と美味しいですよ。

黄色いワニの心は目に見えない。

さつまいもを好む、どこかひょうひょうとしたワニは前世の恋人なのだという。押しかけワニは、いつの間にかすっかり主人公の生活に馴染んでいて、それを見守る我々もなぜか普通にそれを受け入れてしまう。この引き込みかたがさすがカラスウリ流なのだ。

作者様がたびたび描く不思議な恋人は、今回もまた読者を不思議なお伽噺の世界へ連れていってくれる。相手の心は目に見えない。星へ願いをかけたなら、気持ちがわかるようになるだろうか。

どうにもこうにも女の影が絶えず、もしかしたらこのワニは一途どころか、口の上手い浮気者なのかしらんとちらりと疑ってしまうのは女のさがなのか。

それでもワニの言葉が嘘か真か、確かめるすべはない。ただひとつわかることは、可愛いは正義だということ。つぶらな瞳に見つめられれば、すっかりほだされるよりほかに仕方がない。
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